私の師匠は、分野によって何人もいるのですが、そのうちの1人の久郷晴彦先生(薬学博士)が時間について含蓄のある言葉を講演などで来場者や主催者に投げかけていました。
簡単にまとめると、以下のような感じになります。
「1時間の講演に参加するために時間を使ってくれただけではなくて、会場に来るまでの時間、その時間を作るために他の時間を犠牲にして、今ここにいるのだから、そのことに感謝して話をさせてもらいます」
そんな話をしている最中に会場に遅れて入ってきた人がいて、恐縮そうな表情だったのですが、久郷先生の言葉に何か感じていた人も多くて、一部ではあるものの拍手が起こりました。
拍手をされた人は何が起こったのか、また拍手が自分へのものだったのかもわからず、不審そうな表情をされていました。
その表情を、しっかりと見ることができたのは、私が久郷先生と一緒に舞台の上にいて、同じ方向(客席)を向いていたからです。そのため、そのときの久郷先生の表情は(斜め後ろの席に座っていたので)リアルでは見ていなかったのですが、後で講演風景のビデオを見せてもらったら、納得された表情をされていました。
講演する側も1時間の話であっても、その前後の時間が必要です。会場の行き来や打ち合わせにも時間がかかっています。
専門家の講演でよくあるのは画面(スクリーンやモニター)に話す内容を次々に映し出して、これを説明するようなことですが、これなら同じようなことを話すので、あまり準備の時間は必要ないかもしれません。
しかし、久郷先生は画面を使うようなことはなく、会場の方々を見ながら話をしています。会場内の皆さんの反応、会場の雰囲気に合わせて話を変えていくことにもなるので、どんなことがあっても対応できるように入念な準備をしているのも知っています。
この準備した資料だけでも1冊の本になるのではないかと感じたこともあります。
そのようなことを知っているのは、久郷先生が私の義父だからです。
〔セカンドステージ連盟 理事長:小林正人〕






