食の不都合な真実11 品種改良による栄養低下(ほうれん草1)

野菜の質を高め、収穫量を増やし、おいしく食べられるようにするための品種改良は、さまざまな野菜で進められてきました。その特徴的なものの一つとしてあげられるのは、ほうれん草です。

ほうれん草は品種改良のたびに栄養素(ビタミン、ミネラル)が低下するということが起こっていました。しかし、調理しやすく、食べやすいことが優先されたことから、栄養素の低下については話題にのぼることが少なくなっていました。

以前のほうれん草の調理法といえば、アク抜きが必要でした。塩を入れたお湯で2〜3分、茹でるとシュウ酸が溶け出て安心して食べられるようになります。お湯で茹でるのではなくて、水にさらすことだけではシュウ酸が残るため、お湯で茹でるアク抜きが必要だとされてきました。

ところが、水にさらすだけでも、お湯で茹でたのと同じくらいにアク抜きができるほうれん草が登場しました。この場合でも2〜3分は水にさらさないといけなかったのですが、今では水にさらす必要もなくて、洗う(軽く水を流す)だけでサラダとして食べられるアク抜き不要という種類も出てきています。

これは品種の違いによるもので、以前のほうれん草というと葉に切れ込みがある東洋種がほとんどでした。これに対して西洋種は丸みのある葉となっています。現在は東洋種と西洋種の掛け合わせが多くなっています。

西洋種は葉が厚くてシュウ酸が多く含まれるのですが、東洋種は葉が薄くてシュウ酸が少なくなっています。従来の東洋種に西洋種を掛け合わせたら、シュウ酸が多くなってしまうわけですが、それでもシュウ酸が少なくなるように品種改良されたのが現在のほうれん草です。

ちなみに、アク抜きをするのは“えぐみ”をなくすことと、シュウ酸がカルシウムと結びつくことによってカルシウムの吸収が低下することを防ぐのが大きな理由です。

では、品種改良によって、ほうれん草の栄養素は、どのように変化したのかという話は次回(食の不都合な真実12)に続きます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕