言い間違い41 口先三寸

口先は口の端のことで、口先だけの人という使われ方をすると、「言うことは立派なようだが、実質が伴わない」というように、あまりよい印象が抱かれない言葉です。

口先だけの約束というと、約束には当たらないということで、よく使われるのは「口先三寸」です。

しかし、これは誤用とされていて、正しい使い方は「舌先三寸」です。その意味は、心がこもっていなくて、表面的な言葉だけを相手をうまくあしらうこと、その弁舌(ものの言い方)を指しています。

一寸は約3cmなので、三寸は約9cmです。日本人の舌の長さは7cmほどであるので、三寸は長い感じですが、「舌先三寸」と使われるときには、舌先から出る短い範囲の言葉を表しています。

短い範囲の言葉で済まずに、本心とは違うこと、誤魔化したり人を騙すような言葉を使うときには、饒舌(口数が多く、くどい)になる人が少なくありません。

舌先三寸と口先が混同したのが「口先三寸」ということですが、これが案外と多く使われています。

文化庁の『国語に関する世論調査』では、「本心でない上辺だけの巧みな言葉」として、舌先三寸と口先三寸のどちらを使うか聞いています。
本来の使い方の「舌先三寸」と回答したのが23.3%だったのに対して、本来の使い方ではない「口先三寸」と回答したのが56.3%という結果が発表されています。

残りは両方を使う、両方とも使わない、わからないとの回答でした。

誤用のほうが多い、それも大きな差をつけているということは、そのうち誤用の「口先三寸」が慣用句として使われるようになり、いつしか正しい使い方と認識される日も遠くはないのかもしれません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕