食事摂取基準160 ビタミンD10

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から脂溶性ビタミンのビタミンDの欠乏回避の「目安量の策定方法」の続きを紹介します。

〔目安量の策定方法〕
*乳児(目安量)
乳児において、ビタミンD欠乏によるくる病は稀ではないことが、海外だけでなく、我が国でも報告され、日照機会の乏しいこと、母乳栄養などが、その危険因子としてあげられています。

京都で行われた疫学調査においても、新生児の22%に頭蓋癆(頭蓋骨に石灰化不良、原因としてビタミンD欠乏が疑われる)が見られ、頭蓋癆と診断された新生児の37%において、1か月健診時点でも血清25−ヒドロキシビタミンD濃度の低値(10ng/mL未満)が認められています。

日照を受ける機会が少なく、専ら母乳で哺育された乳児では、くる病のリスクが高いとの報告があります。

このような状態にある乳児に6か月間にわたってビタミンDを与えたところ、くる病の兆候を示した乳児はみられませんでした。

このときの総ビタミンD摂取量(母乳由来と補給の合計)は4.88μg/日が最低量でした。アメリカ小児学会では、2003年のガイドラインにおいて、くる病防止に必要な量として5μg/日を定めました。

さらに、2008年ガイドラインでは、10μg/日が必要と改訂しています。しかしながら、このガイドラインの達成率は実際には低いという報告もあります。

以上のような理由により、0〜5か月児における目安量を5μg/日としました。

また、香港で行われた観察研究では、生後6か月、12か月時のビタミンD摂取量が、それぞれ8.6μg/日、3.9μg/日であった乳児(150人)の18か月時における平均血清25−ヒドロキシビタミンD濃度の平均値は、すべて10ng/mL以上であったと報告されています。

十分な知見がそろっているとは言い難いものの、この結果と他の報告も参考として、適度な日照を受ける環境にある6〜11か月児の目安量を5μg/日としました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕