食事摂取基準165 ビタミンD15

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から脂溶性ビタミンのビタミンDの「生活習慣病の発症予防」を紹介します。

〔生活習慣病の発症予防〕
近年、ビタミンDに関しては、骨関連のみならず、心血管系・免疫系などに対して、種々の作用が報告されていますが、その多くが血中25−ヒドロキシビタミンD濃度との関連を報告しており、摂取量に言及した論文は限定されています。

諸外国の食事摂取基準では、唯一、骨折リスクのみが血中25−ヒドロキシビタミンD濃度と用量反応関係を示すとされています。

骨折リスクの低下が観察される血中25−ヒドロキシビタミンD濃度には研究によってばらつきがありますが、20ng/mLが閾値とされており、我が国のコホート研究の結果もおおむねこれに一致しています。ただし、それ以上の血中濃度を維持する意味は明確ではありません。

血中25−ヒドロキシビタミンD濃度低値がフレイルのリスクとなることが示されていますが、リスク低下の閾値は明確ではありません。

また、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度低値は転倒リスクとなることも示されており、日本人高齢者を対象としたコホート研究でも同様の結論が得られています。

ただし、転倒リスクが低下する血中25−ヒドロキシビタミンD濃度の閾値は明確ではなく、また転倒予防へのビタミンDの有効性は、高用量のビタミンD補給でも乏しいことが示されています。

以上より、いずれの疾患リスクに対しても、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度が20ng/mLを上回ることが望ましいと考えられますが、その血中濃度を達成するために摂取量を設定できるだけの科学的根拠は不十分です。

しかしながら、食事からの適切なビタミンDの摂取と日常生活における日光浴(日光曝露)を心がけることが望まれます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕