私にとっての心の平穏を得る方法は、普通であったら興奮状態になったほうがよいとされる文筆です。
原稿を書き進めていくことによって集中力が高まり、それが坐禅や瞑想を行ったのと同じような結果となり、それが原稿の内容を高めることになります。
原稿を書くには、ある程度の脳の興奮状態は必要で、完全な覚醒状態では書くことができる内容に違いが出てきます。
文章を書くことを仕事にする前は、自分の中で満足がいく状態のものが書ければよかったので、覚醒状態でも、それなりの成果を出すことができました。
ところが、仕事で書くということは読む人のことを考えないといけないのは当然のことで、さらに私の文筆はゴーストライターや全国団体の機関誌などであったことから、発行する側や、そこに名前を出す人のことを常に念頭に入れておかないと“仕事にならない”ことになります。
かといって、興奮状態は長く続くものでなくて、私が手がけたゴーストライターの仕事は単行本で、400字詰めの原稿用紙にして300枚を書く必要がありました。1日に30枚を書いたとしても10日はかかるので、なかなかの仕事量でした。
しかも、主戦場はPHP研究所だったので、求められる内容の質は高くて、興奮しすぎても覚醒状態でもうまくいかないという瞑想状態で書き進めていかないと完成しないという、今にしてみれば恐ろしさも感じることを、よくも15年間、合計で150冊も書けたものだと振り返っています。
その15年間でも、初めのうちは原稿用紙に手書きをしていました。ところが、手の使いすぎでペンが持てなくなり、辞めようと思ったところに、当時は70万円以上もしたワードプロセッサーが届けられました。
そこからパソコンの日本語ソフトへと時代は変化していきましたが、スタートは400字で書いて、それを積み重ねていくという形であったので、初めから最後まで書き切るという、まるでタイプライターを使ったような書き方が身についてしまいました。
岡山に移住してから8年半の期間でゴーストライターとして書いたのは2冊だけですが、コロナ禍の3年間に、これまで書いてきたことを活かして、広く健康に関わる講習テキストの原稿を作成していました。
A4サイズで、そのままプリントすれば講習に使えるというものですが、講習テキストに使える内容に絞っても、健康に関わる6講習で、1000ページを超えていました。
〔小林正人〕






