食の不都合な真実13 品種改良による栄養低下(ほうれん草3)

ほうれん草の可食部100gあたりのビタミンCは初版では150mgだったところから、改訂版が出るたびに100mg、65mgと低下していって、今では35mgにまで低下していることは前回までに説明しました。

また、平均が35mgであるものの、冬場(旬)には60mgであるのに対して夏場には20mgにも低下していることについても触れました。

日本食品標準成分表の初版が発表されたのは終戦から2年後の1947年(昭和22年)でしたが、調査は前年に行われています。終戦直後には農薬も有機肥料もほとんどない状態で、今でいう有機無農薬で栽培されていました。

では、現在のほうれん草を有機無農薬で栽培すれば栄養成分が多くなるのかというと、そのようなことは期待できません。というのは、以前のほうれん草と現在のほうれん草では品種が異なっているからです。

以前のほうれん草は東洋種で、東洋種といえば葉に切れ込みがあって、その当時に育った子どもが描いたほうれん草の絵は葉がギザギザした感じとなっていました。

これに対して現在のほうれん草は丸みのある葉となっています。この外観の特徴は西洋種ですが、実際には市販されているものの多くは東洋種と西洋種の掛け合わせとなっています。

西洋種は葉が厚くて調理しにくく、食べにくいこと、またシュウ酸が多く含まれていることもあって、西洋種に東洋種を掛け合わす品種改良が行われた結果です。

栄養価の低下は、品種改良だけではなくて、野菜全般で起こっていることです。ほうれん草といえばミネラルの鉄が多いことが知られていましたが、鉄は初版から13mgから現在の八訂増補版(2023年)では2mgにまで低下しています。

理由の一つは土壌の変化で、ミネラルはイオン化して根から吸収されます。現在の土壌は肥料の使用によって栄養豊富なイメージがあるものの、イオン化しにくく、根から吸収されにくくなっています。

それに加えて、気象の変化もあって、野菜本来の成長の条件とは異なる環境の中では栄養素の吸収度が低下しているので、日本食品標準成分表どおりの栄養価である保証はないということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕