采配(さいはい)は、大将(指揮官)が戦場で指揮をとるときに手にする持ち物で、厚紙を細く切った房(ふさ)を柄(え)の先につけたものです。
戦国時代には、この房状の采配を振ることによって軍勢を動かす合図を送ったことから、采配を振るという言葉が生まれました。
また、陣頭に立って指図をすること、指揮をすることが采配と呼ばれるようになりました。
采配がキーワードであることから、采配を振るでも采配を取るでも同じ意味になりましたが、今回のお題の「采配を振るう」が多く使われるようになっています。
多く使われていれば正しいとは限らないということですが、その判断として利用されるのは文化庁の『国語に関する世論調査』です。これによると「采配を振る」を使っている人は28.6%、「采配を振るう」を使っているのは58.4%となっています。
どちらが正しい使い方なのかというと、これまでの説明からわかるように「采配を振る」で、「采配を振るう」は誤用です。
国語辞典では、かつては「采配を振る」だけしか記載されていなかったのですが、少数派であっても「采配を振るう」が記載されるものも見られるようになりました。
「振るう」は、大きく揺り動かすことで、力や能力を発揮する、勢いが盛んな様子を示す言葉です。刀を振るう、辣腕(らつわん)を振るう、猛威を振るうといった使われ方をします。
勢いが盛んということと、武器を振るっているということで、これが混同して「采配を振るう」になったのではないかと考えられています。
「振る」は前後または左右に素早く動かすことを指していて、その振るものとしては手や旗などで、合図をする行動です。
となると、「采配を振る」が相応しいことになるのですが、使う人が多くなると誤用も慣例として認められるようになるのが世の流れなので、いつしか「采配を振るう」が「采配を振る」と並んで辞書に載る時代が来るのかもしれません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕






