「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から脂溶性ビタミンのビタミンEの過剰摂取の回避の「基本的事項」と「耐容上限量の策定方法」を紹介します。
〔基本的事項〕
ビタミンEの過剰症としては、出血傾向の上昇があげられます。ビタミンEの過剰に対応する生体指標は確立されていません。
血中α–トコフェロール濃度と尿中α–CEHC排泄量が使用できる可能性がありますが、今回は採用していません。
〔耐容上限量の策定方法〕
*成人・高齢者・小児(耐容上限量)
ヒトを対象とした高用量のビタミンE摂取に関する研究の主要な副作用として血液凝固能の低下が対象とされています。
高用量のビタミンE(最高で727mg/日)(all–rac–α–tocopherol)を4か月間摂取させた結果、いずれの用量でもプラセボ群と比べてプロトロンビン時間の有意な延長は認められませんでした。
この研究では一般栄養状態、肝酵素機能、甲状腺ホルモン濃度、クレアチニン濃度、血清自己抗体、好中球によるカンジダアルビカンスに対する防御作用も評価されており、いずれの有害事象も認められませんでした。
その他、健康なヒト集団にビタミンEを与えた他の研究でも類似の結果が得られています。
さらに、ビタミンEの耐容上限量は、トコフェロール当量540〜800mg/日が適切と考えられるレビューもあります。
一方、ビタミンKが不足している状況では、高用量のα–トコフェロールで血液凝固能に障害が起こることが報告されています。
以上より、健康な成人のα–トコフェロールの健康障害非発現量は、現在のところ800mg/日と考えられます。
そして、最低健康被害発現量が明確でないことから不確実因子を1として、小児を含めて、800mg/日と参照体重を用いて体重比から性別と年齢区分ごとに耐容上限量を算出しました。
外挿の基となる体重には、日本人を対象とした研究の62.2kgを用いました。
ただし、800mg/日を超えた場合の過剰摂取による健康被害について、明確な科学的根拠があるとはいえないために、算定値が800mg/日を超える場合には800mg/日を設定しました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕






