「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から水溶性ビタミンのビタミンB₁の「指標設定の基本的な考え方」を紹介します。
〔指標設定の基本的な考え方〕
推定平均必要量の設定の基本的な考え方について統一を図るため、不足または欠乏の症状を回避するための摂取量として検討されました。
ビタミンB₁摂取量が1000kcal当たり0.2mg以下であると欠乏の症状が出現するおそれがあり、1000kcal当たり0.3mgであれば欠乏の症状は認められません。
しかし、臨床症状の発現にはさまざまな要素が関連するために、臨床症状に基づいて推定平均必要量を設定するのは困難です。
そこでビタミンB₁の栄養状態を反映する生体指標に基づいて、推定平均必要量を設定することとしました。
ビタミンB₁の栄養状態を反映する生体指標として、血中ビタミンB₁濃度、尿中チアミン排泄量、赤血球トランスケトラーゼ活性が用いられます。
これらのうち、ビタミンB₁の不足、欠乏に鋭敏に反応する赤血球トランスケトラーゼ活性が信頼性の高い生化学的指標とされています。
トランスケトラーゼはグルコース代謝経路の1つであるペントースリン酸経路の酵素であり、チアミン二リン酸(ThDP)を補酵素としてケトール基転移反応を触媒します。
ビタミンB₁が不足もしくは欠乏すると、細胞内チアミン二リン酸(ThDP)の濃度の低下に伴ってビタミンB₁を必要とするトランスケトラーゼなどの酵素の活性が低下して、ビタミンB₁が関与する代謝経路が十分に機能しなくなります。
チアミン二リン酸(ThDP)添加の前後で酵素活性を測定して、添加によって赤血球トランスケトラーゼ活性が上昇すれば、ビタミンB₁の不足と欠乏の状態を判定することができます。
この生体指標を赤血球トランスケトラーゼ活性係数(αETK)といいます。
赤血球トランスケトラーゼ活性係数とビタミンB₁摂取量との関係について調べた報告に基づいて、ビタミンB₁の不足の回避に必要な摂取量として推定平均必要量を設定しました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕






