食事摂取基準211 ナイアシン9

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から水溶性ビタミンのナイアシンの過剰摂取回避の「摂取源となる食品」と「耐容上限量の策定方法」を紹介します。

〔摂取源となる食品〕
ニコチンアミドは動物性食品に存在しますが、多くても10mg/100g可食部程度です。ニコチン酸は植物性食品に存在しますが、多くても数mg/100g可食部程度です

通常の食品を摂取している人で、過剰摂取による健康被害が発現したとの報告は見当たりません。

〔耐容上限量の策定方法〕
*成人・高齢者・小児(耐容上限量)
ナイアシンの強化食品やサプリメントには、通常、ニコチン酸とニコチンアミドが使用されています。

ナイアシンの食事摂取基準に示される数値は、強化食品由来とサプリメント由来のニコチン酸あるいはニコチンアミドの耐容上限量です。

ニコチンアミドは1型糖尿病患者への、またニコチン酸は脂質異常症患者への治療薬として大量投与された報告が複数あります。

大量投与によって、消化器系(消化不良、重篤な下痢、便秘)や肝臓に障害(肝機能低下、劇症肝炎)が生じた例が報告されています。

これらをまとめた論文と関連する論文から、ニコチンアミドの健康障害非発現量を25mg/kg体重、ニコチン酸の健康障害非発現量を6.25mg/kg体重としました。

この健康障害非発現量は、成人における大量摂取データを基に設定された値で、慢性摂取によるデータではないことから、不確実性因子を5として、成人のニコチンアミドの耐容上限量算定の参照値を5mg/kg体重/日、ニコチン酸の耐容上限量算定の参照値を1.25mg/kg体重/日としました。

これらの値に各年令区分の参照体重を乗じて、性別と年令区分ごとの耐容上限量を算出して、平滑化を行いました。

なお、ニコチン酸摂取による軽度の皮膚発赤作用は一過性のものであり、健康上悪影響を及ぼすものではないことから、耐容上限量を設定する指標には用いていません。

*乳児(耐容上限量)
サプリメント等による摂取はないため、耐容上限量は設定されていません。

*妊婦・授乳婦(耐容上限量)
十分な報告がないため、耐容上限量は設定されていません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕