食事摂取基準313 鉄2

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から微量ミネラルの鉄の基本的事項の「消化、吸収、代謝」を紹介します。

〔消化、吸収、代謝〕
食事中の鉄は、十二指腸から空腸上部から吸収されます。

ヘム鉄は、特異的な担体によって小腸上皮細胞に吸収され、細胞内でヘムオキシゲナーゼによって2価鉄イオン(Fe2+)とポルフィリンに分解されます。

無機鉄は、鉄還元酵素duodenal cytochrome b(DCYTB)、アスコルビン酸等の還元物質によって2価鉄イオン(Fe2+)となり、上皮細胞刷子縁膜に存在するdivalent metal transporter1(DMT1)に結合して上皮細胞に吸収されます。

この吸収はマンガンと競合します。

吸収された2価鉄イオン(Fe2+)は、フェロポルチンと結合して、門脈側に移出された後に、鉄酸化酵素によって3価鉄イオン(Fe3+)となり、トランスフェリン結合鉄(血清鉄)として全身に運ばれます。

多くの血清鉄は、骨髄においてトランスフェリン受容体を介して、赤芽球に取り込まれ、赤血球の産生に利用されます。

約120日の寿命を終えた赤血球は網内系のマクロファージに捕食されますが、放出された鉄はマクロファージの中に留まってトランスフェリンと結合して、再度ヘモグロビン合成に利用されます。

鉄を排泄する能動的な経路が存在しないため、恒常性は鉄吸収の調節によって維持されます。

健康な人の場合、食事中の鉄の小腸上皮細胞への取り込み量と血液への移出量は、体内鉄量と反比例の関係にあります。

すなわち鉄の状態が低下すると、低酸素誘導因子hypoxia inducible factor2aが増加して、DCYTBとDMT1の発現を刺激し、上皮細胞への2価鉄イオン(Fe2+)の取り込み量が増加します。

同時にフェロポルチンの作用を抑制するヘプシジンが減少するため、フェロポルチンの作用が高まって、上皮細胞から血液への鉄の移出量も増加して、腸管での鉄の吸収率が高まります。

一方、鉄の充足時には、ヘプシジンが増加してフェロポルチンの作用が抑制されるため、鉄は上皮細胞内に留まり、鉄の吸収率は低下します。

留まった鉄は上皮細胞内にフェリチンとして貯蔵され、細胞の剥離に伴って消化管に排泄されます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕