食事摂取基準316 鉄5

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から微量ミネラルの鉄の欠乏回避の「必要量を決めるために考慮すべき事項」の続きを紹介します。

〔必要量を決めるために考慮すべき事項〕
*吸収率
鉄の摂取量が少ない場合は、特に非ヘム鉄の吸収率が上昇するため、鉄の出納は維持されます。

近年の研究によって、食事からの鉄摂取量が少なく、鉄の栄養状態の指標である血清フェリチン濃度が60μg/L未満になると、鉄の吸収率は血清フェリチン濃度の低下に依存して上昇することが明確になりました。

このことから、血清フェリチン濃度から鉄摂取率を推定することは妥当と判断できます。

血清フェリチン濃度に基づいて、成人男性と月経がある成人女性の鉄摂取率を別々に推定する方法が考案されており、例えば月経のある女性の鉄摂取率は、血清フェリチン濃度15μg/Lの場合31%、45μg/Lの場合13%と見積もられています。

このように鉄摂取率は鉄の栄養状態によって大きく変動しますが、必要量の算定に用いる鉄摂取率は、鉄の栄養状態が適正な場合の数値を用いるべきです。

欧州食品安全機関(EFSA)は、上記の方法に従い、血清フェリチン濃度30μg/Lの場合の鉄吸収率を、月経のある女性については18%、それ以外の成人と12〜17歳の小児については16%と見積もり、鉄の必要量を算定しています。

鉄の栄養状態が適正である場合の血清フェリチン濃度が25〜250μg/Lとされていることから、その下限に近い血清フェリチン濃度30μg/Lの場合の鉄摂取率を必要量の算定に用いるというEFSAの考え方は、必要量を過大または過少に見積もることを避けるという観点から妥当と判断できます。

また、12歳未満の小児について、EFSAは、主に欧米の6歳以下の幼児を対象とした実験結果に基づいて、鉄吸収率を10%としています。

しかし、EFSAは同じ報告書の中で、乳幼児についても、成人と同様に鉄の状態は非ヘム鉄の吸収効率の重要な決定要因であると述べています。

すなわち、12歳未満の鉄吸収率が12歳以上と異なる積極的な理由はないと判断できます。

以上より、必要量の算定に用いる鉄吸収率は、月経のある女性の場合を18%、月経のない場合は6〜11か月児以上の全ての年齢区分について男女共通で一律で16%としました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕