言い違い9 爪痕を残す

「爪痕を残す」は、熊の爪痕(つめあと)が実際に建物や身体につけられるようなことが続いたこともあって、本来の意味が記憶や意識に刻まれたかと思っていましたが、今も良いことのイメージとして使っている人が少なくありません。

国語辞典の多くは、爪痕の意味として「爪でかいた傷あと」「災害や事件などが残した被害のあと」をあげています(表現は辞書で微妙に違っています)。

これが共通認識と思っていたのですが、テレビ番組を見ていても「爪痕を残したい」「爪痕を残すことができた」といった発言を耳にすることがありました。

最近では、民放のアナウンサーまでが印象づける、成果をあげるといった意味で「爪痕を残す」と平気で言うようになってきました。

言葉づかいに厳しいNHKでは、まだ耳にしたことはない(私だけの感覚)のですが、関連機関のNHK放送文化研究所の調査では、だんだんと使い分けができなくなっていることが感じられる結果が発表されています。

「爪痕を残す」の使い方の一般に認識について、素晴らしい演技をした場合に「今回の出演で爪痕を残すことができた」と表現することについて聞いてみたところ、「おかしい」と答えた人が40%、「おかしくない」が37%、「どちらともいえない」「わからない」が合わせて23%との結果でした。

若い世代ほど「おかしい」が少なく、「おかしくない」が多く、年齢が進むほど「おかしい」が増えていって、逆に「おかしくない」が減っていくという、多くが想像していたような結果となっていました。

そのうち、辞書にも第三の意味として、普通に記載される時間が近いのかもしれません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕