糖尿病の倫理50 エネルギー産生栄養素バランス

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、糖尿病と特に関連の深い「エネルギー産生栄養素バランス」を取り上げています。

インスリンの作用は糖代謝のみならず、脂質代謝、たんぱく質代謝など多岐に及んでいて、これらは相互に密接な関連をもつことから、食事療法を実践する際のエネルギー産生栄養素バランスは個々の病態に合わせて、血糖値のみならず、あらゆる側面から、その妥当性が検証されなければなりません。

さらに、長期にわたる継続を可能にするためには、安全性とともに我が国の食文化あるいは患者の嗜好性に対する配慮が必要です。

また、各栄養素についての必要量の設定はあっても、特定のエネルギー産生栄養素バランスが糖尿病の管理で有効であるとする根拠は認められません。

そのため、エネルギー産生栄養素バランスの目安は健康な者の平均的な摂取量に基づいているのが現状です。

また、糖尿病があらゆる慢性疾患の基盤病態となることから、その予防と管理からみたエネルギー産生栄養素バランスの在り方は、種々の医学的見地から検討すべき課題です。

糖尿病がそのリスクとなる動脈硬化性疾患については脂質の摂取量、慢性腎臓病の最大の原因となる糖尿病性腎症については食塩とたんぱく質の摂取量、そして肥満症には総エネルギー摂取量が必要となります。

それらの推奨基準が日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」、日本人増学会の「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」、日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」に、それぞれ提示されています。

このように、糖尿病患者の食事療法の意義や進め方は、合併する臓器障害や年齢によって異なるため、患者が持つ多彩な条件に基づいて個別化を図る必要があるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕