学習支援48 話す相手を見ようとしない子どもの気持ち

「話をする人の顔を見て聞きなさい」というのは、話を聞く態度として当たり前のように言われます。日本人は顔を見て、と言うときには目を見るようにするのが普通で、「目は口ほどの物を言う」とも言われます。目を見て表情を読み取るという意味があります。
これに対して欧米人は口元を見て、相手の表情を読み取っています。微表情という微妙な変化を0.2秒で見抜く能力があります。サングラスをかけている人には日本人は表情がわからず戸惑うところですが、欧米人は口元が隠れるマスクに不安を感じます。コロナ対策でのマスク着用を少しでも早く終わらせようとした気持ちが、こんなところにも表れているのかもしれません。
発達障害がある子どもは他人とのコミュニケーションが苦手で、そのために目を見て話を聞くというのが苦手というよりも、避けるようにするところがあります。また、話をするときも相手の顔を見ていないということもあります。
この気持ちは多くの人に理解してもらえることと思いますが、筆者(日本メディカルダイエット支援機構理事長の小林正人)は自分のことのように感じています。というのは、顔を直視して話を聞くと不安定な気持ちになるからです。
一過性脳虚血発作という脳梗塞の一歩手前の状態になったことがあり、身体機能的には後遺症が出ることはなかったのですが、急に口の動きが言葉よりも遅れて見えるようになりました。精密検査の結果、そのズレは0.5秒で、脳の感覚器に届く時間の差と同じでした。聴覚は耳から入った音が短距離で脳の中央で反応しているのに対して、視覚は脳の後頭葉で画像化して、それを脳の上部で反応するために距離的にも時間的にもかかります。
その差が0.5秒なのですが、通常はズレを脳が調整して同時に見て聞いているように感じます。その調整がうまくいかなくなって、口の動きが遅れて見えることから気持ち悪い感覚があって、口の動きが見えないように視線を外して会話をしてしまいます。このことがわかってくれている人は気にしないで対応してもらえるのですが、そうでない人は不快に感じることもあり、これが疎外感にもつながります。
この疎外感こそが発達障害児に共通していることで、発達障害児、学習障害児を支援するのに役立っているということを伝えさせてもらっています。