日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」の中から運動療法について前回に続いて紹介します。
◎合併症のある糖尿病患者における運動療法
合併症のある糖尿病患者では、運動の強度、量、種類に配慮する必要がある。
心血管疾患のある者やそのリスクが高い場合は、負荷心電図などによる評価が必要である。治療が不十分な増殖網膜症では、高強度の有酸素ならびにレジスタンス運動(収縮期血圧を大幅に上げる)や頭位を下げる運動は眼圧を上げるため、また身体に衝撃の加わる運動は網膜出血のリスクを上げるため、避けるべきである。運動は、糖尿病腎症患者の身体機能とQOLを向上させ、透析患者においても有効である。しかしながら、心血管事故防止などの安全性の観点からは、血圧を高度に上げる(収縮期血圧180〜200mmHg)運動は避けるべきであり、進行した腎機能障害の患者を除いては、有酸素運動を主体とした中等度までの運動が推奨されると思われる。
近年、アルブミン尿を含めた蛋白尿と冠動脈疾患との関連が明らかになっており、運動開始前には心血管疾患の評価を行う必要がある。重篤な末梢神経障害を有する患者では下肢への荷重運動を控える必要があり、水泳やサイクリング、上半身運動などが勧められる。足病変に対してハイリスクの場合にはフットケアが重要である。自律神経障害を有する患者では運動中に血圧低下や上昇を起こしやすく、また運動中に突然死や無症候性心筋梗塞などの合併症を起こす恐れもあるため、慎重に運動療法を進めていく。また、高齢者や肥満者においては腰椎や下肢関節の整形外科的疾患を伴う場合が多く、このような場合、筋力の増強を図るとともに、水中歩行、椅子に座ってできる運動、腰痛体操を勧めるなどの配慮が必要である。
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文部科学省の「食に関する指導の手引」では教科ごとの食に関する指導を各論として掲載しています。ここでは家庭、技術・家庭の中学校の食に関連する内容を前回に続いて紹介します。
*中学生に必要な栄養の特徴については、身体の成長が盛んで活動が活発な時期であるため、エネルギーおよびタンパク質やカルシウムなどの栄養素を十分に摂取する必要があることがわかり、日常生活で栄養的に過不足のない食事をとる必要があることを理解できるようにします。例えば、身長や体重などの身体的発達の変化と食事摂取基準などから、調べる活動などが考えられます。
*健康によい食習慣については、健康などを視点として、自分の食習慣について課題を設定し、その解決方法を話し合い、自分の考えを明確にしたり、他者と意見を共有して互いの考えを深めたりできるようにします。
*栄養素の種類と働きについては、小学校における五大栄養素の基礎的学習を踏まえて、いろいろな栄養素が相互に関連し合い健康の保持増進や成長のために役立っていることが理解できるようにします。また、食品の栄養的な特徴については、食品に含まれる栄養素の種類と量など栄養的な特質によって食品は食品群に分類されることを理解できるようにします。例えば、学校給食や弁当の献立、家庭での食事などに使われている食品の栄養成分を日本食品標準成分表を用いて調べたり、それらの食品を食品群に分類したりして、食品の栄養的な特質を確認する活動などが考えられます。
*中学生の1日に必要な食品の種類と概量については、実際の食品を食品群に分類したり、計算したりすることなどの活動を通して、1日に必要な食品の概量を実感できるようにします。その際、食品群別摂取量の目安などの細かな数値にとらわれるのではなく、食事を食品の概量で捉えられるようにします。
コロナ禍で落ち込んだ営業成績を一気に取り戻そうとしたら、これまで続けてきて慣れていることで、周囲からも勢いを感じられる方法にしたいと考えるのは、ある意味では当たり前のことです。コロナ禍で客足が減って撤退を考える人がいる一方で、感染が収束してきた段階で客足が減ったとしても撤退した店が多いので、そんなには減らないと考える人もいます。コロナ禍を経験したことで意識が変わった市民の中には、これまでと同じ内容のサービスでは魅力に感じない、わざわざ足を運ぶ必要がないと感じる人も増えてきています。
これまでの代わり映えのない意識の中では、客が多ければ、やり方を変えれば集客できると考える人もいるのは当然のことですが、また厳しい状況になったら、同じ被害を受けることがわかっているところに、わざわざ踏み込んでいくのがよい選択であるのかというと、大いに疑問を感じるところです。今後も感染症は3〜5年ごとにあり、しかも今回と同様に複数年に渡る感染が予測される現状では、大津波で被害を受けたところに津波対策をしないで再度建物を作ろうとしていることと同じようにも見えます。
好きなことだから苦労をしても続けていれば報われるという「好きこそ物の上手なれ」という考え方ではなくて、新たな仕事場であっても努力が報われるところに踏み込むことも必要です。とはいっても、まったく新たな世界に踏み込むのは不安もあり、人脈も少ないことから、なかなか踏み込めないということも事実です。ということから、これまでの世界ではあっても、別の切り口、別の方向性で新たなことに取り組むことが必要ではないかとの考えもあります。
これまでの世界といっても、同じターゲットでの仕事では競争が厳しいところに踏み込むのは勇気がいりすぎますが、世界を変えずにターゲットを変えてみる、違うターゲットも受け入れてみるということを提案する意味で、「好きこそものの上手投げ」という言葉をあげています。
広く健康に関わる記念日について紹介します。
11月9日 いい靴の日プロジェクトが、いい(11)く(9)つの語呂合わせで「いい靴の日」と制定。ドリーム・アーツが、いい(11)空(9)気の語呂合わせで「IT断食の日」と制定。安曇野食品工業(長野県松本市)がタピオカミルクティーを2002年11月に日本で初めてチルドカップ容器で製造販売したことと、この商品がQ−PONと呼ばれたことからQ(9)と組み合わせて「タピオカの日」と制定。佐藤製薬が、いい(11)歯(8)ぐき(9)の語呂合わせで「歯ぐきの日」と制定。毎月9日は「クレープの日」(モンテール)。
11月10日 トイレの環境普及のために、いい(11)トイレ(10)の語呂合わせで「トイレの日」と制定。パナソニックが頭皮ケアの重要さをアピールすることを目的として、いい(11)頭(10)皮の語呂合わせで「いい頭皮の日」と制定。全日本断酒連盟が1963年の11月10日が設立記念日で、もう飲ベンバー(ノヴェンバー=11月)、酒、止まる(10日)の語呂合わせで「断酒宣言の日」と制定。デロンギ・ジャパンがヒーターを準備して寒い冬を暖かく過ごしてもらうことを目的として、ヒー(11)ト(10)の語呂合わせで「ヒーターの日」と制定。Style A 芝公園(東京都港区)がスラッとした美脚をイメージする11と痩せてはいないイメージの10から「下半身痩せの日」と制定。全国油菓工業協同組合が、かりんとうの形を11、砂糖の糖を10と読む語呂合わせで「かりんとうの日」と制定。毎月10日は「糖化の日」(AGE測定推進協会)、「パンケーキの日」(日本ハム)、「アメリカンフライドポテトの日」(米国ポテト協会)、「コッペパンの日」(全日本丸十パン商工業協同組合)。
11月11日 厚生労働省が介護について理解と認識を深め、介護従事者、介護サービス利用者、介護家族を支援するとともに、利用者、家族、介護従事者、それらを取り巻く地域社会における支え合いや交流を促進する観点から高齢者や障害者などに対する介護に関して国民への啓発を重点的に実施するための日として「介護の日」と制定。日本生ハム協会が生ハム生産が盛んなイタリアでサン・マルティンの日である11月11日に生ハムを作る習慣があることから「生ハムの日」と制定。キリンビールが一が最も多く並ぶ日を「キリン一番搾りの日」と制定。マルタイ(福岡県福岡市)が棒ラーメンを発売した1959年11月、1パックに2食入りが11に似ていることから「棒ラーメンの日」と制定。日本製麺協同組合連合会が細く長いめんのイメージと、いい(11)の語呂合わせで「めんの日」と制定。やおきん(東京都墨田区)が、うまい棒を4本並べると1111に似ていることから「うまい棒の日」と制定。山崎製パンがスティックパンが1111に似ていることから「スティックパンの日」と制定。岩下食品(栃木県栃木市)が新生姜が1111に似ていることから「岩下の新生姜の日」と制定。全日本漬物協同組合連合会が、たくあん用の大根が並んで干してある形が1111に似ていることと、たくさんの1(わん=あん)があることから「たくあんの日」と制定。かづのきりたんぽ倶楽部(秋田県鹿角市)が、たんぽ串が囲炉裏で焼かれている姿が1111に似ていることから「きりたんぽの日」と制定。鮭の日委員会が鮭に十一十一が含まれていることから「鮭の日」と制定。ピップが磁気治療器の普及を目的として11と11がN極(+)とS極(−)にちなんで「磁気の日」と制定。毎月11日は「めんの日」(日本製麺協同組合連合会)。
11月12日 日本臨床皮膚科医会が皮膚科の専門医療の理解を深めることを目的に、いい(11)皮膚(12)の語呂合わせで「皮膚の日」と制定。高知県農業協同組合が、にらの出荷量が増える11月、いい(1)に(2)らの語呂合わせで「いいにらの日」と制定。毎月12日は「育児の日」(神戸新聞社)。
11月13日 ゼリア新薬工業が膝関節痛の治療と予防を呼びかけることを目的に、いい(11)ひざ(13)の語呂合わせで「いいひざの日」と制定。丸善(東京都台東区)が11月11日が「チーズの日」、11月15日が「かまぼこの日」との説があることから中間に日を「チーかまの日」と制定。毎月13日は「一汁三菜の日」(一汁三菜ぷらす・みらいご飯)。
11月14日 Dプラス(東京都港区)が医師への感謝の気持ちを込めてハンカチを贈る日として、11が人と人(医師と患者)、14が医師と読めることから「医師に感謝する日」と制定。アンチエイジングネットワーク(東京都千代田区)が良い(いい)11と歳(とし)14の語呂合わせで「アンチエイジングの日」と制定。
11月15日 カンロが、いい(11)ひと(1)こ(5)えと読む語呂合わせで「のど飴の日」と制定。TAISHI Co.(大阪府大阪市)が、いい(11)イ(1)ベリコ(5)の語呂合わせで「イベリコ豚の日」と制定。
65歳の人が幼稚園児だったときに、60歳の人というと、随分と年を取っているように感じたはずですが、現在の60歳は昔に比べると随分と若くなっています。日本老年学会と日本老年医学会は「高齢者の定義を65歳以上から75歳以上とすること」を2017年(平成29年)に提言しました。
現在の分類は65〜74歳が前期高齢者、75歳以上が後期高齢者となっていますが、両学会の提言では3種類に区分けされていて、65〜74歳は准高齢者、75〜89歳は高齢者、そして90歳以降は超高齢者とされています。准高齢者は介護を受ける側ではなく、高齢者と超高齢者を介護する側であり、身体の健康度を維持することが求められています。
この定義への変更の根拠は、多くの研究によって現在の高齢者は身体的・機能的に10〜20年前に比べて10歳は若くなっているということですが、加齢による脳の機能低下は抑えにくく、それが認知症患者と軽度認知障害患者を大きく増やす結果となっています。
認知症患者は462万人(2012年統計)、その予備群である軽度認知障害患者は400万人と推定されています。これを合わせた862万人は65歳以上の4人に1人の割合となっています。
厚生労働省の「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%で、約602万人で、高齢者の6人に1人が認知症となります。
認知症と軽度認知障害の患者は高齢化が進む我が国においては増え続ける一方で、2025年には認知症患者は700万人、軽度認知障害は600万人を超えると推定されています。2025年の65歳以上の推定人口は3657万人であり、認知症患者と軽度認知障害患者を合わせた1300万人は高齢者の2.8人に1人にもなります。
軽度認知障害(MCI:Mind Cognitive Impairment)は厚生労働省研究班によって認知症の前段階として位置づけられ、従来の認知症の診断基準に示された項目を満たすようになった段階では、もはや早期とはいえないと指摘されています。軽度認知障害と認知症は特定の疾患ではなく、認知機能低下症状におけるステージや状態を示すもので、潜在的な疾病、疾患や身体状態が引き金になるとされています。
カルシウムは乳製品、肉類に多く含まれていますが、食事による摂取は国民健康・栄養調査によると推奨量に対して20〜30%も不足しています。体重の1〜2%も含まれていて、そのうちの99%は骨や歯に存在し、残りは血液、筋肉、神経などにあって神経伝達物質として使われています。
1日の推奨量と許容上限量については「日本人の食事摂取基準」(2020年版)に掲載されています。カルシウムの女性の推奨量は年齢によって異なります。
〔女性:カルシウム推奨量〕
1〜2歳:400mg、3〜5歳:550mg、6〜7歳:550mg、8〜9歳:700mg、10〜11歳:750mg、12〜14歳:800mg、15〜17歳:650mg、18〜29歳:650mg、30〜49歳:650mg、50〜64歳:650mg、65〜74歳:650mg、75歳以上:600mg。
カルシウムの女性の許容上限量は年齢によって異なります。1〜17歳の許容上限量は掲載されていません。
〔女性:カルシウム許容上限量〕
18〜29歳:2500mg、30〜49歳:2500mg、50〜64歳:2500mg、65〜74歳:2500mg、75歳以上:2500mg。
女性は男性に比べて体が小さいことから目安量は少なくなっていますが、8〜11歳に限っては男性よりも多くなっています。
カルシウムの吸収率は30%ほどで、イオン化することで吸収率が高まることから、胃液が分泌されない空腹時(起床後、就寝前)に摂るのが効果的です。
カルシウムは体内で不足すると骨から溶け出て補われます。また、汗とともに排出されるため、運動をする人は多く摂ることがすすめられます。
発達障害の一つの注意欠陥・多動性障害は、一般には落ち着きがなくて、集中ができない、場合によっては椅子に座り続けることができずに教室内を歩き回る、ときには外に出て行ってしまうということもあります。それが理解できずに、無理に座らせようとしたり、慌てて追いかけていっても、そんな注意をするだけで改善されるようなことではありません。
何も教師を困らせてやろう、他の子どもが集中して学べないようにしようとして他の子どもと違った行動をしているわけではありません。どんなに我慢して座り続けようとしても、それがイライラ感を高め、エネルギーが有り余って動かざるを得ないというのが注意欠陥・多動性障害の特性です。
この感情が抑えられないときに、もっと幼いときには周囲の子どもに当たったり、思わず手を出すという暴力的なことをしてしまうことがあります。これも本人は暴力だと意識しているわけではなくて、無意識の行動に近いのです。このような行動も、成長につれて変化をしてきて、自分に対しての行為となり、有り余ったエネルギーを他に発散させる方法がないと授業から離れるような行動を起こすようになります。
そんな行動に対して、放っておくということをする場合が多く、教室から出たら、そのまま家に帰ってしまうということは極めて例外的で、気が済めば戻ってくるのが普通の行動です。周りからしたら普通の行動ではないように思えて、まるで授業を妨害しているようにも感じてしまうかもしれません。いじめの場合には無視することはいけないことではあるものの、注意欠陥・多動性障害では、むしろ無視をしてくれて、戻ってきてからも、また席についてからも、何事も起こらなかったかのように接してくれるのが本人にとっては楽に学べる条件となっているのです。
「好きこそ物の上手なれ」は、どんなことであっても、人は好きなものに対しては熱心の努力をするので上達が早いという諺(ことわざ)です。好きであれば必ず上達するという意味で使っている人もいるようですが、今は未熟であっても本当に好きであったら上達する望みがあるということを指しています。本当に好きなのか、とことんのめり込んで達成するまで頑張れるのかということを見抜かないといけないということで、他にやることがないから、とりあえず楽だからということでは、この諺が示すポイントからはズレてしまいます。
今回のテーマは「好きこそ物の上手なれ」をもじった「好きこそものの上手投げ」です。上手という文字は“じょうず”とも“うわて”とも読む異音異義語です。ほかに“かみて”と読んで位置や方向が上の方のことを意味しています。
上手投げと下手投げの、どちらが相撲の技としては優れているかは別として、豪快に見えるのは上手投げのほうです。豪快に見えるもののほうが好きという人は多く、よい結果が出ることを選択するという人も多いのは事実です。
コロナ禍で大きく落ち込んでしまったことに対して、経済面にしろ健康面にしろ大きく回復させるための方策は派手なもののほうがウケがよいことから、厳しい状況にも果敢に取り組んでいくことが選択されがちです。コロナ後の対策を打ち出して戦った国政選挙でもウケ狙いの演説が多く見聞きされました。
上手投げと下手投げといっても野球とソフトボールの違いのことではなくて相撲の技のことですが、一般には上手投げのほうが有利とされています。有利であって豪快に見えるなら、そちらのほうが好まれて、稽古にも力が入るということですが、多くの人が選択することを選んでよいのか、自分の体格や体力を考えずに選択してよいのかという話を、コロナ後の活動の選択に置き換えて次回から考えていきます。
◎取材でわかった健康食品業界の実態
健康食品の記事の執筆を週刊誌の編集部から受けたときに、毎週の掲載で50回を目標にしました。実際には、もうじき100回という直前で終了したのですが、持ち込まれる有効性の物語だけでは面白くないので、誌面で取り上げるすべての会社を訪問して代表者や関係する研究者から話を聞きました。そのおかげで、健康食品業界の実態を知ることができました。取材先の会社はまともな商売をしていても、同業者のことを話題にすると、よくない話が出てくる出てくる!
もともと健康食品を規制する側のサポートをしていて、法律(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)と、法律に基づく監視指導マニュアルの作成にも関わってきたので、業界の実態や裏の話は行政にとっても有益が情報源でした。監視指導マニュアルは何度か改定されましたが、それは規制をくぐり抜けようとする会社があり、その手口を一つひとつ潰していくように、だんだんと細かな内容となっていきました。
そのときの取材で得た情報は、機能性表示食品の委員になったときも役立ちました。というよりも民間で、学者でもない私が委員として呼ばれたのは、業界の手口に精通しているからで、「その規制では、こういう逃れ方をしてくる」という規制のチェック役のような立場でした。
これは機能性表示食品だけでなく、すべての健康食品を使用する人にはプラスになったはずですが、健康食品業界には恨まれるようなことにもなりました。東京にいたときには、恨んでいても現役で行政とともに動いていたので、それなりの接触をしてきて、言えないことは言えないという立場でありながらも、講習などを求めてくる会社はありました。しかし、岡山に移住してからは、そのようなことで呼ばれることはなくなり、事情をあまりに知りすぎている人間は避ける対象でしかないということで、自分が健康食品業界を対象にしたジャーナリストであったことも忘れてしまったような状態でした。
そのときに得た情報は、今度は大学のスポーツ選手を対象に伝えるということで、再び陽の目を見ることになりました。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)
日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」の中から運動療法について前回に続いて紹介します。
◎運動療法の実際
冠動脈疾患の予防につながる運動の効果は、主としてエネルギー総消費量と関係があるといわれている。運動の強度は、運動中の酸素摂取量や心拍数ならびに自覚的運動強度(Borg指数)などで表されるが、一般に中等度の運動とは、最大酸素摂取量の40〜60%、あるいは個人の安静時の心拍数から最大心拍数に至るまでの50〜70%程度であるものを指し、自覚的には「ややきつい」と感じる程度である。個人の最大心拍数は段階的運動負荷試験で決定されるべきではあるが、簡易的には“220−年齢”で推定できる。また運動強度50%の時の心拍数は“138−年齢/2”で推定できる。
ただし、糖尿病神経障害を伴う場合や高齢者では、脈拍数を指標に運動強度を決定することは、不正確であったり危険を伴ったりする可能性もある。中等度以上の運動療法を行う際には、運動による望ましくない副作用や循環器系合併症の多くは運動の開始時か終了時に生じるため、運動の前後に各々約5分間の準備運動ならびに整理運動を行ったほうがよい。
近年、レジスタンス運動の有用性が注目されている。レジスタンス運動では、筋肉量や筋力を増加させるとともにインスリン抵抗性を改善し、血糖コントロールを改善する。一般的には週に2〜3日、主要な筋肉群を含んだ8〜10種類のレジスタンス運動を10〜15回繰り返す(1セット)により開始し、徐々に強度やセット数を増加させていくことが推奨されている。有酸素運動単独、レジスタンス運動単独と、それらの組み合わせを比較した検討では、HbA1c低下に相加的な効果を認めたとの報告とともに、併用によりHbA1c低下において有効性が高まることも示された。
レジスタンス運動の有効性が、有酸素運動に劣らないことが示され、有酸素運動の持続が困難な患者での選択肢となる可能性がある。しかし、高強度のレジスタンス運動は、虚血性心疾患などの合併症患者では不適切であり、高齢者においても有効性を示すエビデンスはあるものの、実際に行うことは困難であることから、レジスタンス運動における最低限必要な強度と量が明らかにされる必要がある。
運動療法の進め方は、個人の基礎体力、年齢、体重、健康状態などにより異なるが、最初は歩行時間を増やすなど無理のない程度に身体活動量を増加させることより始め、段階的に運動量を増加させていく。さらに、患者の嗜好にあった運動を取り入れるなど、安全かつ運動の楽しさを実感できるように工夫することにより、運動療法の継続が期待される。歩数計の利用は、糖尿病患者でも身体活動を増やす有効な手段となる可能性がある。運動は実生活のなかで実施可能な時間であればいつ行ってもよいが、食後1〜2時間頃に行うと食後の高血糖が改善する。運動療法の目標として一般的には、運動強度が中等度で持続時間が20〜60分程度の有酸素運動が勧められる。
また、糖尿病患者での糖代謝の改善は運動後12〜72時間持続することから、少なくとも週3〜5日間の運動が必要である。たとえば、体重60kgの人では1日に50分程度のウォーキング(速歩)または20分程度のジョギングを週5日行った場合、運動による消費エネルギーは1週間に約1000kcal程度となる。2年間観察を行った研究では、運動強度(METs)と運動時間(時)の積で表される身体活動量の単位「エクササイズ」(METs・時)が週あたり10を超えたエネルギー消費の運動増加を持続することで冠動脈疾患リスクが改善し、20を行えばその他のリスクを含めて有用な運動効果が得られたとしている。有酸素運動に関しては、運動を分割したほうが糖代謝を改善したとの報告もあり、持続的運動である必要は必ずしもないと考えられる。また、連続グルコース・モニタリング(continuous glucose monitoring:CGM)による解析では、単回の運動後24時間において、高強度の運動より低強度の運動において、血糖値の低下が見られたとの報告もある。





