207 腸内細菌とアルツハイマー病の関係

腸内細菌とアルツハイマー型認知症の関係を調べた論文(2017年:アメリカ・ウィスコンシン公衆衛生医科大学)によって、アルツハイマー病の人はフィルミキュテス門とアクチノバクテリア門の細菌が減るのに対して、バクテロイデス門の細菌はアルツハイマー病では増えていることが確認されています。
アルツハイマー病では脳細胞にアミロイドβなどのタンパク質が増えていくことが知られていますが、バクテロイデス門の細菌が多い人ほどアミロイドβが増えている相関性が認められています。
細菌は単細胞という一つの細胞で、栄養源となるものを取り込み、細胞内で代謝を起こし、その代謝物を排出します。その働きは腸内細菌も同様で、健康に役立つ代謝物を排出するものが善玉菌と呼ばれ、健康の妨げになる代謝物を排出するものが悪玉菌と呼ばれます。善玉菌は腸内の発酵を進めて、酸性物質を排出して腸内を酸性化させるとともに、便を柔らかくして、便の量を増やす働きがあります。それに対して悪玉菌は腸内の腐敗を進めて、アルカリ性物質を排出して腸内の酸性度を下げるとともに、便を固くして、便の量を減らす働きがあります。
善玉菌は酸性環境で増殖しやすく、悪玉菌は酸性度が下がると増殖します。つまり、善玉菌が増えると腸内は善玉菌が増えやすく、悪玉菌が減りやすい環境になり、悪玉菌が増えると腸内は悪玉菌が増えやすく、善玉菌が減りやすい環境になります。腸内細菌の総数はほぼ決まっているため、善玉菌が増えた分だけ悪玉菌が減っていきます。腸内環境がよい状態では、腸内細菌は「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」の割合となっています。悪玉菌が増えると日和見菌が悪玉菌の味方をするようになるということは、できるだけ善玉菌が増える環境を作ることが重要になります。