血流が低下すると酵素の働きも低下して、肝機能も低下しかねません。肝臓は酵素の働きによって数多くの働きをしているわけですが、現代人は運動不足で、血流の低下から手足の冷えを訴える人も多くなっています。
血液の温度は身体が冷える人も、そうでない人も大きな差はありません。日本人の場合には38〜39℃となっています。それなのに冷えを感じるのは、温かい血液が早く巡っていないために皮膚からの放熱に追いつかないからで、冷え性の人は冷えを感じる手足や腹部だけでなく、肝臓の血流量も少なくなっています。
脂肪肝の予防と改善のための運動については、日本肝臓学会の『NASH・NAFLDの診察ガイド』に、具体的な運動の程度や頻度の目安が掲げられています。それによると、運動の種類としては有酸素運動がすすめられています。実施する時間は毎日20分間以上、強度としては目標の心拍数が「(200-年齢)×60~70%」とされています。50歳の人で計算すると105~120回となります。ウォーキングの場合だと、スタスタと勢いよく歩く程度の運動量となります。
肝臓に多く蓄積された脂肪を減らすためには、脂肪燃焼効果が高い有酸素運動が有効とされていますが、20分間程度の運動では不足を感じるかもしれません。脂肪肝の解消には、毎日の運動ができない場合には週3回程度で、1日の運動も数回に分けて行っても効果がある程度期待できると、診療ガイドで紹介されています。この程度の運動でも効果があるのは、10~15分間の運動をして、ブドウ糖中心から脂肪中心に燃焼が切り換わったあとは、歩き終えてからも脂肪がエネルギー源として使われ続けているからです。
筋肉細胞の中で脂肪酸の多くがエネルギー化されていますが、そのときに働いているのは脂肪分解酵素のリパーゼです。この酵素が脂肪を分解したあと、脂肪が燃焼されます。その燃焼のために有酸素運動が効果的だというわけです。
リパーゼは運動を終えてからも30分間は、徐々に働きを低下させながらも働き続け、脂肪を分解し続けています。10~15分間の運動をすれば、そのあとも脂肪が分解して燃焼が進むので、時間は短めであっても運動の回数を増やすことで効果を上げることができるのです。