「苦楽一如」は、苦しいことと楽しいことには区別なく、一つの真実の姿であることを示していますが、その手法を言い表す言葉として最後に書いておきたいのは「辛に一本足せば幸になる」です。
言葉遊びのように思われることもあるものの、真実に近いところがあり、これを話のネタとして使っている人もいます。
確かに、辛に一を合体させると幸となります。辛いというのは何か一つ足りない結果なので、何をプラスすればよいのかを考え、実行に移すことが大切だという教えとして使われています。
「辛い」と書いて、「つらい」と読む人と「からい」と読む人がいます。
辛い(つらい)のも辛い(からい)のも、同じような感覚だという人がいる一方で、辛い(からい)ものは大好きなので、激辛であっても辛い(つらい)とは感じないという人もいます。
だから、「辛」という漢字を示すときには辛い(つらい)を意味する漢字だと、はっきりと伝えないと、イメージされることに差が生じてしまいます。
「辛に一本足せば幸」という話をされた人は、よい話を聞いたということに満足することはなくて、実際に何が不足しているから辛いのか、何を加えれば辛い状態を幸せな状態に変化させられるのか、そのことがわからないと納得したことにはなりません。
自分が納得して、何をすればよいのかがわからないと、他の人に「辛に一本足せば幸」と話しても、よい結果にはならないはずです。
少なくとも、自分にとってプラスすべき“一”が何かわかった、実際にプラスして、こんなふうに変わったという実例を示してほしいのです。
〔小林正人〕






