健康・火の用心12 コレステロールは悪いものではない

「悪玉コレステロール」という言葉があることから、コレステロールは身体によくないものと勘違いされることがあります。コレステロールは細胞膜の材料で、ホルモンの原料、胆汁の材料ともなっていることから、健康維持に欠かすことはできません。

悪玉コレステロールと呼ばれるのは、肝臓で合成されたコレステロールを全身の細胞に運ぶ役割をする低比重リポたんぱく(LDL)が増えると、血液中のコレステロールが増えて動脈硬化のリスクが高まるからです。血液中で余分となったコレステロールを集めて肝臓に戻す役割をするのは高比重リポたんぱく(HDL)で、動脈硬化のリスクを抑えることから善玉コレステロールと呼ばれます。

日本人の平均寿命が50歳を超えたのは昭和22年のことで、当時の食事は脂肪が不足していたことからコレステロールが少なく、血管が切れて亡くなる人が多くなっていました。今ではLDLが多くなることで血管が狭くなり、硬くなる動脈硬化が増えて、これに血栓が詰まることで起こる脳血管疾患や心疾患(心臓病)が起こることから、統計的には一緒であっても理由は逆になっています。

コレステロールが多く含まれる肉類を食べると血液中のコレステロール値が上昇するため、肉類を減らせばコレステロール値(LDLコレステロール値)が下がると思われがちです。しかし、実際にはコレステロールを減らしてもコレステロール値は下がりにくくなっています。それはコレステールが重要な成分であるために、多くが肝臓で合成されるからで、その材料となっているのは三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質です。

摂取エネルギー量を全体的に減らさないとコレステロール値は下がりにくくなっています。血液中のコレステロールのうち、食品に由来するのは20%程度とされ、残りの80%ほどは肝臓で合成されています。

食事で摂るコレステロールの量が増えれば、肝臓が合成量を調整して、コレステロール値が上がりすぎないようにしています。しかし、肝臓に負担がかかると調整が充分に行われなくなります。余分に合成されたコレステロールは肝臓内に蓄積されて脂肪肝が進んでいきます。

脂肪が過剰に蓄積した肝細胞は本来の働きをすることができなくなるため、コレステロールが多く含まれるうなぎ、うに、えび、いか、たこなどは食べすぎないことが大切とされているのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕