温泉療法という言葉があるように、温泉は長い歴史を通じて、健康の増進や治療に利用されてきました。日本には10種類の療養泉(泉質)があり、それぞれ効能が異なると伝えられてきました。
その一方で、それらが健康な人に対して、どのような影響を与えるかについては、ほとんど解明がされず、効果の検証が望まれてきました。
その研究に取り組んだのは九州大学大学院工学研究院都市システム学講座の研究グループで、温泉入浴が腸内細菌叢を変化させて、泉質ごとに異なる腸内細菌を有意に増加させることを初めて明らかにしています。
研究グループでは別府市と別府市旅館ホテル組合連合会と共同で温泉の効果の検証を行ってきましたが、今回の研究では九州地方在住の18〜65歳の136人(男性80人、女性56人)の慢性病を有しない健康な成人を対象にして、別府温泉の異なる5泉質(単純泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、炭酸水素塩泉)の温泉入浴の前後の腸内細菌叢の変化を分析しました。
入浴期間は7日連続で、入浴時間は毎日20分以上、参加者の食生活は通常通りを維持することが求められました。
その結果、炭酸水素塩泉入浴によってビフィズス菌の一種が有意に増加していることが確認されました。他にも、単純泉、炭酸水素塩泉、硫黄泉では入浴後に、それぞれ異なる腸内細菌叢の有意な変化が確認されています。
この結果から、温泉浴の効果への理解を深めるとともに、異なる泉質が腸内細菌叢に与える影響を分析することで、温泉の種類による健康への具体的な効果が明らかにされました。
求める効能に合わせての入浴だけでなく、泉質の異なる温泉に入浴することによって、腸内環境を複合的に整えていくことが期待されることがわかりました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕