発達障害児、学習障害児の支援をしてきた人(学校や特別支援学級の教師経験者、発達障害児の保護者など)は、なかなか進まない発達障害と学習障害の理解を広めていくための大きな存在として期待されています。いろいろな経験をしてきた人であっても、実際の困難さが理解できないことがあります。それは学習障害の識字障害、書字障害、算数障害のすべてに影響を与える視覚情報処理の異常の状態です。
視覚情報処理が脳の中で正常に行われていれば、普通に書かれたものは普通に見ることができます。ところが、視覚情報処理に異常があると、例えば文字が二重に見える、ゆがんで見える、にじんで見える、文字の大きさが違って見える、文字が動いて見える、左右が逆転した鏡文字に見える、白い紙がまぶしく見える、文字の一部が消える、といったことが起こります。
そのように見えているのは本人から説明を聞くからわかることで、本人以外が見ることはできません。視覚情報処理の異常がある人でも、他の人と同じように見えているわけではなくて、もしも同じことが起こっていたとしても状況が大きくことなり、場合によっては複数の状態が起こっていることもあるので、実際の状況を把握することが難しくなっています。そのような困難さを抱えながら、なんとか文字を読もうとしている苦しさや疲労感などは、理解しろと言うほうが無理だということです。
そのような困難さを理解して学習支援を実施しようとしているのは、私が視覚情報に困難さがあるからです。学習障害の視覚情報処理の異常ではないのですが、閃輝暗点が起こり、これによって視野の一部が見えにくくなることが日に何度も起こっているからです。閃輝暗点は閃輝と暗点があり、前者はキラキラ・ギザギザが視野に広がるもので、後者は暗くなって見えなくなるものです。視野の全部ではなくて一部であることが多く、閃輝の後に暗点が起こることもあります。
その原因は眼球から入ってきた画像を認識する脳の後頭葉の血流が低下するために、情報処理をする部分の酸素が不足することと考えられていて、頭を強く打つと星が見えるという状態に似ています。
私の場合は閃輝だけですが、視野の3分の1ほどがモザイク状になり、それが下側に現れるので、視野の下側の文字が見えなくなります。そのために、状態がおさまるまでに30分ほどは仕事ができなくなります。若いときに多くて、年齢とともに回数が減っていくとされているのですが、私の場合は年齢とともに回数が増え、出ている時間が長くなっています。
この困難さと、学習障害の視覚情報処理による異常による困難さは同じではないことは承知していますが、困難さの理解だけはできると考えています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)