長鎖脂肪酸は高級な脂肪酸なのか

「高級な脂肪酸は、どこが高級なんですか」という質問をセミナーでされたことがあります。ダイエットに関わるセミナーでのことで、脂肪酸の種類によって身体によいものと、よくないものに分けて考えて摂るべきだという話をしたのですが、そのときに高級脂肪酸という名前を聞いたことがあって質問をしたようです。高級な脂肪酸を摂っていれば健康によいのではないか、という考えがあってのことでした。
脂肪酸は、炭素、水素、酸素の原子で構成されていて、炭素原子が鎖状につながっています。食品に含まれる脂肪酸は炭水化物の一種であるグリセロールと結びついた中性脂肪として身体の中に入ってきます。これを分解するのは胃と膵臓から分泌される脂肪分解酵素のリパーゼです。脂肪酸は、その中にある炭素の数によって、短鎖脂肪酸(炭素数7以下)、中鎖脂肪酸(炭素数8〜10)長鎖脂肪酸(炭素数11以上)に分けられています。炭素数が10以下のものを低級脂肪酸、それ以上のものを高級脂肪酸という分類をしています。
一般には脂肪酸は、結合の仕方によって飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類する方法が知られていますが、炭素の鎖の数によって分ける方法もあるのです。高級脂肪酸というのは、脂肪酸が高級という意味ではなく、単なる分類だということです。それなのに“高級脂肪酸配合”といった表示で販売されている例があるので勘違いを起こさせているのです。
短鎖脂肪酸は水溶性で、そのまま吸収されます。中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸は脂溶性で、胆汁に含まれる胆汁酸によって分解されて吸収されやすい水溶性の性質に変化します。中鎖脂肪酸は鎖が短いことから分解されやすく、分解された脂肪酸はエネルギーとして燃焼しやすくなっています。健康面について考えるときに問題となるのは長鎖脂肪酸で、動物性食品に多く含まれていて、摂りすぎると血液中で固まり、動脈硬化のリスクを高めることが知られています。
脂肪の吸収を妨げる成分は、さまざま確認されています。流行ともいえるのが難消化性デキストリンというジャガイモやトウモロコシのデンプンから作られた消化酵素によって消化されないデンプンのことで、血糖値の上昇を緩やかにする、脂肪の吸収を抑えるというので健康機能を打ち出した食品に使われています。身体によい脂肪は吸収して、長鎖脂肪酸は吸収を抑えるということであればよいのですが、選択的に吸収を左右するという機能は認められていません。
しかし、業界で“スーパー難消化デキストリン”とも呼ばれているシクロデキストリンは長鎖脂肪酸の吸収を抑えて、短鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸は吸収を妨げないという特殊な性質を持っています。魚類に多く含まれるDHA、EPAは長鎖脂肪酸ですが、シクロデキストリンは、これらの身体に有効な長鎖脂肪酸の吸収は妨げてはいません。
シクロデキストリンは環状オリゴ糖とも呼ばれていて、原材料はトウモロコシのデンプンから作られるブドウ糖ですが、ブドウ糖6個が輪になってつながっています。一般のオリゴ糖が鎖状につながっているのに対して、輪になっていて、その数も決まっていることが特別な効果を生み出しているのです。
シクロデキストリンについては、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。