感染拡大から考える脳と心臓の血管リスク

新型コロナウイルスは肺炎が急激に進んで、人工心肺装置を使っても救命できないという恐ろしい感染症となっています。亡くなった人について「急変」という言葉も使われています。これまでは喫煙歴があって肺の機能が低下している人、中でも高齢者は急変することが懸念されていましたが、若い世代でも急変が起こるようになっていて、別の要因が考えられるようになっています。
その、なぜ急変するのかということに対して、一つの答えが浮かび上がってきています。それは血栓です。血栓は血管内で血液が固まったもので、通常の状態では血栓によって出血が抑えられています。血栓が増えすぎると毛細血管を詰まらせることになり、これが脳梗塞や心筋梗塞を起こす原因となっています。アメリカでは新型コロナウイルスの患者の約10%に心筋梗塞などの心疾患がみられたとの報告があります。最も多かったのは30〜40代でした。新型コロナウイルスには血管を攻撃して血管を傷つけることがわかり、それが血栓を作る原因となっています。
血管が詰まると脳や心臓の細胞が死滅することが指摘されていますが、血流が途絶えることで何が不足するのかというと酸素です。新型コロナウイルスによって起こる肺炎は、肺の機能が低下して酸素を血液中に充分に送られなくなるものですが、酸素を運ぶ赤血球が毛細血管を通過しにくくなることで全身に運ばれる酸素の量が大きく減ることになります。それだけでなく、肺の毛細血管が詰まるようなことになると肺血栓となって、肺の能力が大きく低下します。
新型コロナウイルスになると免疫が過剰に反応するサイトカインストームが起こるようになります。サイトカインは細胞から放出されて、他の細胞の機能に影響を与えるタンパク質で、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインがあります。通常ではアクセルとブレーキが上手にコントロールされているのですが、新型コロナウイルスでは炎症性サイトカインの放出量が多くなり、外敵のウイルスだけではなくて、自分の身体も攻撃してしまうことになります。このことが血管を傷つける要因、血栓を作る原因になっているということなので、血管のリスクが高い人は全身の免疫も大きく低下することになります。もっと免疫強化に努めなければならない時代になっているということです。