文部科学省の「初めての通級による指導を担当する教師のためのガイド」には発達障害に関する部分があり、障害の状態の把握について紹介します。
学習障害の状態の把握に当たっては、以下の点に留意しつつ、保健、福祉などの関係諸機関、専門家チーム、巡回相談などの各地域における支援体制や、校内委員会や特別支援教育コーディネーターなどの各学校における支援体制に蓄積されている知見を活用することが重要です。
(1)学習困難の評価
①国語、算数(数学)などの基礎的能力に著しいアンバランスがあること
校内委員会などで収集した資料、標準的な学力検査などから、国語、算数(数学)の基礎的能力(聞く、話す、読む、書くことや計算、図形の理解など)における著しいアンバランスの有無やその特徴を把握します。
必要に応じて、複数の心理検査などを実施したり、授業態度などの観察や保護者との面談などを実施したりして、対象となる子どもの認知能力にアンバランスがあることを確認するとともに、その特徴を把握します。
なお、英語については発音される要素が日本語より多種多様であり、表記とそれに対応する読みが複雑であるだけでなく不規則な表記が多く、日本語に比べ識字などの基礎的能力に著しいアンバランスが生じやすいとの指摘もなされています。
②全般的な知的発達の遅れがないこと
標準化された個別式知能検査の結果などから、全般的な知的発達の遅れがないことを確認します。ただし、小学校高学年以降にあっては、学習障害が原因となって、国語、算数(数学)の基礎的能力の遅れが全般的な遅れにつながっていることがあることに留意する必要があります。
(2)医学的な評価
学習障害かどうかの判断に当たっては、必要に応じて、専門の医師または医療機関による評価をうけることを検討すべきです。学習障害の原因となり得る中枢神経系の機能不全が、主治医の診断書や意見書などに記述されている場合には、特別に配慮すべきことがあるかどうか確認します。
(3)他の障害や環境的要因が直接的原因ではないこと
①他の障害や環境的要因が学習困難の直接的原因ではないこと
子どもの日常生活における行動の記録や校内委員会などで収集した資料などに基づいて、他の障害や環境的要因が学習困難の直接的原因ではないことを確認します。その際、必要に応じて、対象となる子どもが在籍する通常の学級における授業態度の観察や保護者との面談などを実施します。
②他の障害の判断をする場合の留意事項
注意欠如・多動性障害や高機能自閉症などが学習困難の直接的原因であれば、学習障害と判断することには慎重でなければなりません。しかし、その場合であっても学習障害が併存することも多く、また、その併存は判断が難しいことなどから、学習障害の可能性を即座に否定することなく、慎重に判断する必要があります。また、知的障害と学習障害は基本的には重複しないものの、過去には知的障害の疑いがあると判断された場合においても、学習障害の可能性を即座に否定することなく、慎重に判断する必要があります。