運動は免疫を高めるためにはプラスになると言われているものの、負荷がかかりすぎる運動は、かえって免疫を低下させることになります。適度な運動がよいというわけですが、何をもって適度な運動となるのかは気になるところです。その適度のレベルの話の前に、免疫を低下させる運動について紹介させてもらいます。
運動の強度を示す指標としては最大酸素摂取量が一般に使われます。最大酸素摂取量は全力で走ったときに使われる酸素量のことで、それに対して、どれくらいの酸素摂取量であるかが示されます。よい指標ではあるものの、運動をしている人と、あまり運動していない人では、同じ運動量であっても酸素摂取量は違っています。運動習慣がある人は、身体的な負荷が強まっても、それほど多くの酸素を取り込まなくてよいということになります。
そこで私たちが簡易的な指標として採用しているのは心拍数です。1分間の心拍数は安静時には60拍とされています。1秒間に1回ということです。この心拍数が150拍を超えるとストレスホルモンのコルチゾールやカテコールアミンが多く分泌されて、免疫機能が低下します。免疫低下は短期的なものではなくて、1〜2週間後に半分ほどの人が免疫低下から風邪をひいたり、病原菌への抵抗力が低下することにもなります。心拍数が150拍を超えていなくても、1時間以上の持久性運動では同じような変化が起こります。ウォーキングであっても1時間以上は歩き続けないように、途中で休みの時間を入れるようにします。
有酸素運動は健康によいと言われてきたのに、負荷によっては、そうではないということですが、では無酸素運動なら問題はないのかというと、無酸素運動にもリスクがあります。激しい筋肉トレーニングは筋肉への血流量が増える一方で、皮膚や粘膜、そして内臓への血流が減ります。そのために病原菌などへのバリア機能が低下して、感染しやすい状態になります。“過ぎたるは及ばざるが如し”ということです。
免疫を高める適度な運動は、最大酸素摂取量と比較した場合には50〜60%とされています。1分間の心拍数では130拍となります。心拍数を測定しながら運動をすればよいわけですが、有酸素運動から無酸素運動に切り替わるレベルの運動量が心拍数130拍前後で、体感的にはうっすらと汗をかいてきて、呼吸数が大きく増えるタイミングです。これを超えて、ゼイゼイ、ハアハアと息があがるようになると“過ぎたる”状態になっています。
ウォーキングの場合でも、一緒に歩いている人と会話ができる程度の負荷が適度な運動量となり、会話ができないレベルとなると、これは免疫が低下してきている状態といえます。