講話のまくら8 オンをオフで返す

「オンをオフで返す」は、「恩を仇で返す」という諺(ことわざ)をもじった言葉です。仇は“かたき”ではなくて“あだ”です。

恩をオン(on)にして、その対義語のオフ(off)を合わせて作った言葉ですが、講習で使ったときの反応は、そこそこです。

しかし、その意味するところを話すと、ほとんどの方に理解してもらえます。そして、私たちの講習などが目指しているところもわかってもらえます。

その意味するところというのは、私たちが恩を受けたオンをオフで返すという恩知らずの行為ではなくて、講習で知識を伝えるようにスイッチをオンにしたことが伝わらないとオフで返されることがあるということです。

聞いている方のことを思い、しっかりと伝わるように話さないで、講習テキストに沿った話をするだけだと、受け入れてもらえないことがある、ということを話しています。

講習で話したことに質問があったときに、それを無視するように講習テキストに沿った話を続けるようなことも「オンをオフで返す」態度となってしまうのですが、そんなことでは受講者からも「オンをオフで返す」というリアクションなしの面白くない講習にもなりかねません。

コロナ禍以降に広がったオンライン講習から経験したのは、しっかりと理解してもらい、それを活かしてもらうためには、テニスや卓球のようなラリーの応酬が必要だということです。

どうしても画面越しの対面では、充分には表情が見えず、表情の裏の思いや意図が伝わらずに、頑張って話をした割には、頑張って受講した割には「オンをオフで返す」ような結果となってしまいかねません。

そんなことを避けるために、講習では「ギブアンドギブ」ということも話しています。これは「ギブアンドテイク」(give and take)のテイク(相手から得る利益)ではなくて、相手に利益を与えるギブに変えています。ギブにギブを重ねて、それで当たり前という感覚で、1回のギブで1回のテイクを求めるのは、教える側としては欲張りすぎという感覚です。

give and giveどころか、give and give and giveでも、さらにgiveを重ねてもよいくらいです。つまり、give and give and give and giveと利益を与えて、最後にtakeを求めるくらいの心意気に気づいてもらえればよいとの考え方をしています。
〔小林正人〕