投稿者「JMDS」のアーカイブ

糖尿病患者は間食の甘いものが禁止されるという話を前回したときに、お酒のほうが禁止は守られやすいという話をしたところ、すぐに雑誌の編集者から質問がありました。禁止されるといっても、中には許可される場合もあるということに反応したのです。糖尿病患者で、飲酒が許可されるのは、まずは血糖値のコントロールがうまくいっていることが大前提の条件となります。大前提が少しでも崩れていたら、絶対に飲酒は許可されません。血糖値のコントロールというと、血糖値が正常範囲まで下がっていれば、それでいいということではありません。何をやって血糖値を抑えているかです。
糖尿病の改善には食事療法が第一で、食事療法によって血糖値が下がっていればよいものの、食事療法だけで下がりきれないときには運動療法が指示されます。食事療法に運動療法をプラスすることによって血糖値が下がっていてもよいわけです。それでも充分に下がらない人には治療薬が使われることになります。薬を飲んで血糖値が下がった場合でも血糖値が安定していればコントロールできていると考える医師がいる一方で、治療薬を使って血糖値が下がっているのはコントロールできていないと考える医師もいます。
飲酒をしてよい人の基準があれば簡単なのに、そんなものはありません。何が基準になっているのかというと、実に曖昧なことで、お酒を飲む医師は薬を飲んで血糖値が下がっていればコントロールできていると言い、お酒を飲まない医師は薬を飲んでいるのはコントロールできていないと言うといった傾向があります。こうなると、お酒を飲みたい患者は判断基準が甘い医師のところに行くのが第一ということになります。
血糖値のコントロールができているとして、次の条件となるのは合併症が出ていないことです。合併症が出ている人は、食事療法と運動療法を頑張って血糖値を低く抑えることに努力をしようとします。それによって血糖値が低めに抑えられていると、糖尿病がよくなった、治ったと思う人がいます。患者が思いたがるというのが正しい表現かもしれません。しかし、血糖値を抑えることで膵臓の負担が減っていても、膵臓が元の状態に戻っているわけではありません。飲酒によって、また血糖値が上昇して、膵臓に負担がかかり、インスリンの分泌が低下するきっかけにもなるのです。
飲酒が許可される状態になったら、次にクリアしなければならないのは飲む量とタイミングです。お酒を飲んで摂るエネルギー量の分の主食を減らさなければなりません。日本酒1合のエネルギー量は190kcalほどになります。ご飯は茶碗1杯が約200kcalなので、1合を飲んだら、ご飯が1回食べられなくなります。ということで半分の量が許可されて、ご飯も半分を減らすように指導されます。この飲み方を、いつでもやっていいわけではなく、糖尿病患者は糖質の摂取が必要なので、1週間に1〜2回の飲酒が許可されます。
ちなみにですが、糖尿病になると細胞がブドウ糖を取り込む能力が低下するので、エネルギー源となるブドウ糖が不足しないようにしないとエネルギー切れを起こしてしまいます。
もちろん、飲んだことにとってストップが効かなくなって、もっと飲んでしまうようなことがない意志の強さが求められる、ということは編集者に話をさせてもらいました。

糖尿病は高血糖状態が続くことで、膵臓から血糖値を下げる作用があるホルモンのインスリンが出続け、そのために膵臓が疲弊して、急にインスリンの分泌量が大きく低下します。これが糖尿病の始まりです。糖尿病を改善するためには、血糖値が大きく上昇しないようにすることと同時に、血糖値が低くなる時間を長くすることが必要になります。血糖値が低い時間帯には、膵臓を休めることができます。休めば、それで回復ができるとは限らず、インスリンが元にように分泌されるようになるのかも保証の限りではありません。
血糖値が低い時間を長くするという話は、あまり目立った方法ではなく、メディアのネタとしても弱すぎるので、ほとんど取り上げられることはありません。少しメディアで話題になったのは血糖スパイクくらいです。1日に3回の食事の後に上昇した血糖値は、空腹時(食事と食事の間)には正常値に下がるのが通常です。ところが、血糖値が下がらずに、高いまま変動することを指しています。インスリンの分泌が低下しているために下がらないという人もいますが、案外と多いのは空腹時の糖分摂取です。
食事は、ゆっくりと吸収されるので血糖値も急激に上がることはありません。ところが、砂糖はブドウ糖と果糖が1分子ずつ結合したもので、すぐにブドウ糖に分解されます。血糖は血液中のブドウ糖のことを指すので、ブドウ糖が吸収されると血糖値は一気に上昇します。血糖値の高さに応じてインスリンは多く分泌されるので、砂糖が使われたものは膵臓に大きな負担をかけるのです。だから、糖尿病になったら間食は禁止されます。しかし、糖尿病患者は甘いものを食べたがります。
もともと甘いものを食べて糖尿病を悪化させた人なら甘いものが好きで、甘いものを食べると血糖値が上昇して脳の満腹中枢が働くようになります。空腹を感じて甘いものを食べた人は、それで空腹が抑えられるようになるのです。空腹は抑えられても、血糖値が上昇しているので、膵臓には負担をかけています。
甘いものを食べたために糖尿病になった人、糖尿病を悪化させた人がいる一方で、お酒を飲んだために糖尿病になった人、糖尿病を悪化させた人もいます。お酒のほうは体にはよくないという意識が持たれることが多いので、糖尿病になったらお酒を飲まないように、どうしても飲みたければ条件がつけられます。その条件をクリアした人だけが許可されるのです。
糖尿病にとっては甘いものも同じであるはずなのに、甘いものだけには考えが甘くなります。“糖だけに甘い”などと冗談を言っている場合ではないのですが、甘いものは週に1回だけ、それも少しの量で、すべての糖尿病患者が許可されるわけではなくて、血糖値の管理が完全にできている患者で、合併症も少しでも出ていないことが条件となります。ここまでの状況であることを伝えなければならないはずなのに、患者ウケを狙ったのか甘いものには甘い考えをして、食事指導をしている専門家がいるのも事実です。

ここのところ糖尿病の話ばかりしているので、交流しているテレビのプロデューサーから「糖尿病になったのですか」と連絡が入りました。糖尿病ではなく、糖尿病の研究をしているだけで、健康寿命延伸による地方創生に関わっていると、嫌でも糖尿病患者と家族、糖尿病の治療に関わる専門家との交流が増えていくので、問題点を実感させられる機会が多くなっているだけです。
理事長の父親は42歳の厄年に糖尿病になり、祖父も糖尿病だったことから高校生のときに市の図書館に通って糖尿病の勉強をしたといいます。そのときに、糖尿病は体質的に糖尿病になりやすい人が、食べすぎか運動不足になると発症するもので、体質は遺伝しやすいということも知りました。当時の高校生のレベルではその程度の理解で、当時の図書館には今ほど糖尿病に関する書籍もなかったので、今にしてみると、そこそこの知識しか得ることができなかったということです。
理事長は社会人になってから病院栄養士との付き合いが増え、その栄養士の多くがエネルギーコントロールを中心として扱っていたので、糖尿病の情報が当たり前のように多く飛び込んでくるようになりました。そこで理解したのは、糖尿病は膵臓の機能が低下してインスリンの分泌が低下することから治すことは難しいものの、血糖値が高くなりすぎないように食事、運動を工夫して、血管の老化を防いで合併症にならなければ、糖尿病でなかったのと同じように生涯にわたって生活することができる、ということでした。
糖尿病は合併症が出なければ自覚症状もなくて、合併症も発症しても悪化するまで気づかないことがあり、合併症の恐ろしさを伝えることが重要になっています。それを実現するために今、糖尿病治療の専門家は「しめじ」という言葉を使って指導をしています。テレビ関係者に糖尿病を扱うなら「しめじ」をキーワードにしたらよいと話したときに、キノコのしめじを使ったレシピを送ってきたときにはビックリしました。詳しく説明しなかった当方もよくなかったかとも思うのですが、インターネットで「糖尿病 しめじ」と検索すれば、すぐに三大合併症が出てきます。
三大合併症は神経障害(し)、眼の網膜症(め)、腎症(じ)です。合併症が出たときに、すぐに対処していれば、それ以上は進行させないようにすることはできるものの、対処をしないと次には「えのき」が待っています。悪化した場合の合併症は壊疽(え)、脳梗塞(の)、虚血性心疾患か狭心症(き)です。
「えのき」が出てしまったら命を失いかねないだけに、「しめじ」で止めておくように、というようなことを言う専門家もしますが、患者や家族にしたら「しめじ」でも、とんでもないことです。糖尿病は細くてもろい細小血管が血液中のブドウ糖が濃くなりすぎたために傷んでいく病気で、傷んでしまったら元に戻すことは不可能です。だから治らない病気と言われるのです。血糖値が高い状態にあるということは日々、血管が傷んでいるということなので、そのことを理解して食事と運動で血糖値を安定させなければならないのですが、それができないから合併症で苦しむ人が増える一方となっているのです。

言い方がよくなくて、せっかくの話が伝わらなくて、なんだか面白くないセミナーや講演になるというのは、よくあることです。それなら、少し評判が悪くなる程度で済むのですが、相手が反発して元も子もなくなるということもあります。まずは、評判に関わる話のほうからさせてもらいます。
日本メディカルダイエット支援機構の相談役である薬学博士の久郷晴彦先生は、「講演で知らない言葉が三つ出てくると聞いてくれなくなる」と言っています。有料の講演会なら元を取り戻そうという思いもあって、それなりに頑張って聞いてくれるのですが、無料の講演会で、しかも義理で参加したという人になると、三つどころか二つ知らない言葉が出てきただけで眠ってしまうこともあります。
天気がよくない日のほうがまだマシで、久郷先生は晴彦という名前のとおりで、講演の日は圧倒的に晴れが多くて温かな日差しのために眠気を誘いやすいのだといいます。その傾向は女性のほうが強いのだとか。
できるだけ専門用語を使わないようにして、専門用語を使うときには簡単に説明を加える、難しいと感じさせる話をしたときには“ひと呼吸”を入れるようにすると話します。ひと呼吸というのは案外と難しいのですが、ちょっとしたギャグでもよくて、免疫細胞のマクロファージの話をするときに、覚え方として次の話をされます。
タバコを吸う人の肺の中のマクロファージは白い色がだんだんと黒くなり、最終的には真っ黒になるということを話した後に、「そこでマックロファージと覚えたらよい」と言うと、その場でウケるだけでなく、記憶に残って、帰り際にもマクロファージのことを話している人がいるといいます。
次に反発された人の話ですが、その場に当法人の理事長が同席していたことから何度か聞いています。ウォーキングの全国団体の専務理事を紹介してほしいというので面談の場を設けたときのこと、専務理事は、仕事を理解してほしいとの思いもあって、いろいろと団体の実績や自分の関わりについて話をしてくれました。この話を聞いて、では自分の実績は、という話をして、一緒にできること、組めることは何かということを探っていく場であるはずなのに、その仕出かしてしまった人は、なんと「今度は私が自慢話をさせてもらいます」と言って話を始めたので、完全にぶち壊しになってしまいました。
それなのに、先方から反応がないことに対して、?を繰り返すだけで、まったく気づいていないようでした。これを批判するのではなく、例えば講演をしているときに自分のこと、自分たちの団体のことを話すのはよくあることですが、これを自慢話と捉えられないようにすることは、多くの方々に理解してもらい、実践してもらって、健康になってもらうことを願っている立場としては肝に銘じなければならないことです。
経歴は自慢するようなことではなくて、反省すべきことの連続であった身からすると、当然のことではあるのですが。

ダイエットというと、なんだか“いかがわしい”ムードが漂う言葉と思っている人は少なくありません。私たちが日本メディカルダイエット支援機構の立ち上げを考えて、各方面に説明をしたときには「たかだかダイエットなのに“メディカル”はないだろう」という反応が多く、「メディカルダイエットという言葉は医学界に失礼だ」という反応さえありました。それが今ではメディカルダイエットは独立した言葉として浸透しています。「私たちの努力のおかげ」と言うつもりはなくて、正しいダイエットへの認識が高まってきた結果だと考えています。たまたま、そういった流れの中で、当法人の名前がヒットしたと考えるのが当たっているのかもしれません。
ダイエットの本来の意味については過去に何度か説明していますが、英語ではdietは「作戦、戦略、方針」といった意味があり、それが正しいことをするということで食事療法や運動療法となりました。そんなダイエットがいかがわしく思われるのは、その手法の健康食品、運動法などが科学的な根拠があると思われないからであり、他人を騙すために使っている人もいて、その被害者も数多くいるからです。そもそも新たなダイエット法が次々と登場してくるのは、その前のダイエット法に効果がなく、新たな方法に期待を抱きつつも実際には期待をしていないということが多いからです。
ダイエットは、それぞれの人にとっての正しい食事法、運動法ということであるなら、健康管理の基本であり、健康管理の英訳のヘルスケア(health care)であってよいはずです。しかし、ヘルスケアというと、日常的な食事や運動、休養といった当たり前のことであって、あまり有難味のない感じもします。
健康になるための方法というと、メディアは特徴的なこと、これまで取り上げられてこなかったことを紹介したいという思いもあって、当たり前のことは取り上げられにくくなっています。その特徴的なことを実践するだけで本当に健康が維持されたり、病気の予備群から正常な状態に戻ったり、病気の人にも効果があるということなら、それだけが紹介されるのもありだとは思います。しかし、メディカルダイエットがターゲットにしている生活習慣病は、生活習慣の結果であるだけに、生活習慣を正すための基本中の基本となっているのは食事です。
誤った生活習慣であったなら、それを改善するのがヘルスケアであり、その基本となるのがメディカルダイエットの手法です。ヘルスケアのための方法である、と言っても、差し迫って病気の不安を感じていない人、若い年齢層には響きにくいのですが、そんな人たちにメディカルダイエットという表現をすると「将来を考えてダイエットをやろうか」「私はダイエットは必要ないけれど、周りの人のために学んでおこうか」「今はダイエットは必要はないけれど、知識として知っておくのもいいか」という反応で関心を示してくれます。
今、自分は必要ないというようなことを言う人ほど、実は必要だったりするのですが、そこはあまり指摘しないようにして、ヘルスケアを目指してメディカルダイエットの手法の指導や情報提供を実施しているところです。

糖尿病は、尿に糖が混じるのは、あくまで身体の二次的な反応であって、根本は細胞のエネルギー源になるブドウ糖が取り込まれないために、血液中のブドウ糖が濃くなることです。そのために尿に混じるブドウ糖が増えるし、血糖値も高くなります。ちなみに、血糖は血液中のブドウ糖のことで、その量が多いと糖尿病と診断されます。全身の細胞に必要なエネルギー源となるブドウ糖が充分に取り込まれないということは、細胞にとっては栄養不足になり、その量が少なすぎると飢餓状態にもなります。
血糖値を下げる働きがあるインスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、膵臓の細胞もブドウ糖をエネルギー源にして働いているので、糖尿病になってブドウ糖が取り込まれにくくなるとインスリンの分泌量が減り、どんどんと悪化していくことにもなりかねません。
細胞レベルで考えると、脳もそれぞれの脳細胞によって構成されていて、ブドウ糖が必要になります。脳のエネルギー源はブドウ糖だけです。ということは、脂肪を構成する脂肪酸もたんぱく質を構成するアミノ酸も脳ではエネルギーにはなっていないということで、ブドウ糖だけが脳細胞を働かせることができるのです。
脳を働かせるためにはブドウ糖が含まれる糖質のご飯、パン、麺類などを食べなければならないのに、血糖値が高くなると糖質を減らそうとする人がいます。その考えを助長するかのごとく、糖質制限をすすめる医者がいて、しかも「糖質制限は糖尿病治療から生まれた」と言っています。こんな話を聞くと、糖尿病治療には糖質制限が当たり前のように医療機関で行われているようにも思われがちですが、臨床栄養の世界では糖尿病の患者に、流行しているような糖質制限は行っていません。
糖尿病はインスリンの分泌が低下するために細胞にブドウ糖が充分に取り込めないために、細胞がエネルギー不足になっているので、そこにブドウ糖の量を極端に減らすようなことをしたら、さらにエネルギー源不足になってしまいます。ブドウ糖を多く摂らせればよいわけではないものの、必要な量のブドウ糖を摂らなければならないのは当たり前のことで、行き過ぎた糖質制限は細胞の働きを低下させます。
特に考えなければならない細胞は脳の細胞です。糖尿病になると認知機能が大きく低下することは知られていますが、その理由は解明されていませんでした。しかし、この脳の細胞にブドウ糖が必要なのに、ブドウ糖が不足するような食事をさせていることが認知機能を低下させることになっているのは当然のように考えられることです。
ブドウ糖を細胞のミトコンドリアに取り込んで、エネルギーとする働きはα‐リポ酸が担っています。詳しくいうと、α‐リポ酸の中でも天然型のR‐αリポ酸でなければ取り込まれないので、R‐αリポ酸が不足しないようにしなければなりません。R‐αリポ酸は若いときには体内で充分に合成されていますが、年齢を重ねるにつれて合成量が減っていきます。その減り方と、脳の認知機能の低下は同じような曲線となっています。脳に充分なブドウ糖を取り込んで、充分な働きをさせるためにはR‐αリポ酸が必要になるのです。
R‐αリポ酸は、以前は医薬品としてしか許可されていなかったのですが、今では食品として許可され、サプリメントの成分ともなっています。そのため、サプリメントを摂ることで、脳の細胞の働きを高めることができるのです。
糖尿病になっても誰もが認知症になるわけではありません。脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が不足するようなことがないように、ブドウ糖を減らし過ぎないことと、R‐αリポ酸を充分に摂ることが脳機能を保つための条件となっているということです。

糖質、脂質、たんぱく質は三大エネルギー源で、エネルギー代謝のときには、それぞれブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸に変化してから使われています。この3種類以外は細胞の中でエネルギーとはならないので、食事で摂る必要があります。全身の60兆個以上の細胞のうち脳細胞だけは特別な存在で、ブドウ糖しかエネルギー源として使うことができません。ブドウ糖が含まれた糖質が不足すると、脳が充分に働くことができなくなります。砂糖が脳を働かせるためによいと言われるのは、ブドウ糖と果糖が1分子ずつ結びついた特にブドウ糖が多い食品だからです。
点滴の成分もブドウ糖です。点滴を使うと元気になるのは、全身の細胞のエネルギー源であり、中でも脳のブドウ糖が不足しているときには優先的に脳に届けられるので、それも大きく影響しています。点滴の応用で開発されたポカリスエットなどの栄養補給飲料は“飲む点滴”と言われるくらいで、たっぷりとブドウ糖が含まれています。
頭を使うとき、脳が使われているとき、脳の機能が低下してきたときにはブドウ糖を補給すればよいという発想になるところですが、ブドウ糖を摂っても、それだけでエネルギーが作り出されるわけではありません。これは脳細胞に限ったことではないのですが、細胞の中にあるエネルギー産生の小器官のミトコンドリアの中にブドウ糖を取り込むためには天然型のα‐リポ酸であるR‐αリポ酸が必要になります。また、R‐αリポ酸はミトコンドリアのエネルギー代謝にも使われます。
脳細胞以外の細胞は、ブドウ糖のほかに脂肪酸もエネルギーとすることができます。脂肪酸をミトコンドリアの中に届けているのはL‐カルニチンです。脳細胞はブドウ糖以外はエネルギー源として使うことができないので、ブドウ糖の摂取とともにR‐αリポ酸の摂取が必要になります。R‐αリポ酸は体内で合成されているものの、20歳をピークに減少し続け、脳の衰えを感じる60歳代以降は大きく減っています。脳機能の改善にはR‐αリポ酸の摂取と言われる理由は、ここにあります。
R‐αリポ酸は胃液で分解されるために、吸収させることができません。吸収させる方法の一つは非天然型のS体のα‐リポ酸(S‐αリポ酸)と組み合わせる方法ですが、それでも分解されにくくなるだけで、少しの量が体内に吸収されても半分(S‐αリポ酸)は使われません。もう一つの方法がγ‐シクロデキストリンによって包接されたR‐αリポ酸を摂る方法で、これなら胃で分解されず、小腸から効果的に吸収されます。具体的にはR‐αリポ酸を包接したγ‐シクロデキストリンが小腸壁に接着して、そのときにはR‐αリポ酸を腸壁から取り入れて、血液中に送り込んでいます。この方法なら胃液で分解されないまま体内に入れられるので、食事の前後でも空腹時でも関係なく摂ることができます。
α‐リポ酸とシクロデキストリンについては、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。

高齢者が増える話ばかりが続いていたとき、雑誌記者から「少子化のほうの日本の健康事情への影響は」という質問が寄せられました。2018年は後期高齢者が前期高齢者の数を初めて上回る分岐点の年であり、これから高齢者は全体的に増えるけれど、さらに75歳以上の後期高齢者は急激に増えていくので、高齢者の数の増加を気にするよりも、高齢者の高齢化を問題にしなければならない時代となりました。
それと同時に、2018年は18歳以下の人口が大きく減り始める年でもあり、“若い人”の減少は少子高齢化に拍車をかけていきます。このことも合わせて、2018年は記録に残る分岐点であり、転換点となっていきます。2016年に年間出生数が97万6979人と100万人を割ったのですが、少子化は進む一方となっているのは女性が子供を産まなくなっているからです。2020年は女性の半分が50歳以上になる年で、50歳を過ぎると子供を産む可能性が極めて低くなることから、さらに少子化は進んでいきます。
高齢者を支える人というと、これまでは子供の世代を指していましたが、すでに孫の世代が支え始めていて、“若い人”が健康でいなければ、高齢者の健康は支えられなくなります。自分の家には高齢者がいないから平気ということではなくて、離れていても祖父母が健在なら孫の世代の健康が影響してきます。
2025年には団塊の世代がすべて後期高齢者となります。そのときには65歳以上の高齢者は全国民の30%を超え、後期高齢者だけでも18%を超えると予測されています。そして、2035年には団塊ジュニアがすべて65歳以上の高齢者となります。団塊の世代の人口も多いのですが、団塊ジュニアも多く、さらに団塊ジュニアはバブル崩壊の煽りを受けて、経済的にも厳しい人が多いので、高齢化の問題を金で解決するわけには行かなくなっています。
さらに2035年に人口の半分は独身になるとの予測があり、ますます子供が生まれなくなり、子供はまさに“国の宝”となります。“宝”だからといって丁寧に扱われるだけではなく、国を支える宝になってもらうために、学び、健康になってもらわなければなりません。その健康について学んでもらわなければならない15〜29歳の“若い人”は国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」によると2015〜2025年で年率0.9%、2025〜2−35年で年率1.4%のペースで減少すると予測されています。
少なくなる一方の“若い人”に頑張ってもらうためには、密度の濃い教育と情報提供が必要であり、そこにアプローチできる位置取りを得た私たちも頑張って教育と情報発信に取り組まなければならないタイミングとなったということです。

「あまたある」という表現を国会でした方がいて、その数を聞かれたら二つだったという返答があったときに、雑誌記者からLINEが入りました。「あまたは、いくつが常識ですか」という質問に、うちは辞書か、と思ったりもしましたが、これをきっかけにして健康の話をしてやろうという考えもあって返答しました。
「あまた」は漢字では「数多」と書きます。数が多いということで、1個や2個ではないだというというのが普通の感覚です。「引く手数多」という言葉があって、イメージからすると「引っ張りだこ」です。この「だこ」は凧ではなくて蛸のことです。凧の糸を引っ張って高くあげることではなくて、蛸の足を四方八方から引っ張って乾燥させたものが「引っ張り凧」です。
四方八方というのは言葉の綾(巧みな言い回し)で、蛸は8本、烏賊(いか)は10本と子供のときに習いました。だから八方からの引っ張りだこというのが正しい表現です。ちなみに実際には烏賊の足も8本で、2本は腕だということです。
2人からプロポーズされたのは引く手数多とは言いません。「数人」というのは少なくとも3人以上という印象があり、タレント業界では「多数参加」というと5人以上という感覚もあります。
私たちも「数多ある健康法の中から……」という表現をすることがありますが、私たちはしつこいのが調査するときには10個以上のものを引っ張り出して検討をしています。2〜3個の例では偏ったことになるからです。よく健康効果を語るときに、2〜3人の例を出して、いかにも効果があるようなことを言う人がいます。テレビに出演している先生の中には、自分の体験を話して、医学的に裏付けられるから真実であるというようなことを堂々と話していることもあります。エビデンス(科学的根拠)や統計を引き合いに出す人の言葉とは思えない、と言いたくなることもたびたびです。
100人の統計であっても、条件がバラバラであって、一定の条件に整えたら10人にしかならなかったということもあるのですが、これを「数多」のような表現をされると困ってしまいます。10%くらいは例外となることもあり、その例外だけを引っ張ってきて、いかにもすべての人に通じるようなことを言う人もいます。
ここまで書かれたら、健康を扱っているメディア関係者なら誰の、どんな説なのかわかってしまうところですが、物凄く特徴的な結果に見えても、何度も研究を重ねて、数が増えていくと、どうでもなかったということはありがちなことです。だからこそ「数多」のデータを見て、判断をしているのに、少ない数で優位性を出そうとしても無理があるというものです。

食事療法は英語では「diet」と表現されることもあり、私たちのところに食事療法に関する番組を作っている関係者からコメントを求められることがあります。今回の話のネタとなる問い合わせをしてきたディレクターから、「どうしてドクターは独特の食事療法を展開しているのですか」と聞かれました。糖質制限に対する私たちの考えに対する質問ですが、医学的な話になると、ほとんどといっていいほど共通したコメントをしているのに、食事に関する話になるとドクターの中には独特の説を述べて、病院やクリニックの中で患者に対して実践をさせていることがあります。
そういった新たな説を医学者が言っているので、メディアとしては飛びつきやすく、視聴者の反応もよいことから、取り上げられる機会が増えています。その内容が、患者にとって厳しい食事療法となっているならウケにくいものの、「これまでの厳しい食事制限をしなくてもいい」という内容だと飛びつく人がいるのはわかるところです。
研究成果は多く人を対象にして、長く研究が続けられてこそ、その結果がエビデンス(科学的根拠)となっていきます。しかし、テレビなどで取り上げられる研究成果(?)は少ない人、短い期間で、中にはドクター本人が体験したことを裏付けとしていることもあります。
どうして、そんなことになるのかというと、医学部の教育の中で栄養学が学べる大学は全体の4分の1くらいでしかなくて、その多くは義務ではなくて選択なので、栄養学を知らなくてもドクターになれるということがあります。栄養は食品から摂るものですが、食品学を学ぶ機会はありません。卒業してから一生懸命に勉強したこともあるのでしょうが、中には本当に勉強したのかと疑問を抱かないわけではないこともあります。
食事療法のための栄養指導は医学的な行為であると思われるのですが、栄養指導で保険点数がつけられるのは栄養士による指導だけです。ドクターが栄養指導をしても収益にはならない制度です。それでも栄養指導をしてくれるドクターはいますが、収益にならない制度では力が入らない、最新情報を得て間違いのない指導をしようという気持ちが充分でないということは普通に考えられることです。となると、食事療法の話はテレビに登場して独特の説を述べているドクターのことではなくて、医療現場のドクターの指導そのものとなります。
ドクターから治療や予防のための食事の指導をされたときに、「それは本当のことですか」と聞くわけにもいかず、「大学で勉強しましたか」とか「どれだけ卒業後に勉強しましたか」と聞くのもはばかられます。ドクターが言っていることは本当なのかと疑問を抱きながら指導されたことを実践するわけにもいかないとなると、患者や家族が勉強して臨むしかなくなります。
それに役立ててもらいたいという思いもあって、このサイトには「健康チェック」を掲載しています。チェックと書かれていますが、チェックの先にはチェック項目の解説があり、その先にはチェックした項目の詳しい説明がされています。そして、食事のポイントも詳しく説明してあります。さらにサプリメントの活用法にも触れています。なかなか、ここまで見てもらえないのですが、せっかくの情報なので参照してもらえればと思います。