糖尿病は血糖値が空腹時で126mg/dl(1デシリットルの血液中に126mg)以上、食後2時間後で200mg/dl以上が診断基準となっています。この数値を下回っていれば糖尿病ではなくて、診断基準を超えないように食事や運動を注意するのは正しいことです。しかし、この数字が一人歩きをして、血糖値が下がれば糖尿病ではない、血糖値を上昇させる食べ物を避ければ糖尿病は治せるということを言い出すようになると、これは大問題です。
それを言っているのが糖尿病の食事療法を充分に理解していない患者なら仕方がないと考えることはできるのですが、医者が言っていて、しかも糖尿病の治療を得意としているというような紹介をされると、これは放ってはおけません。そのことはメディア関係者、中でもテレビ番組の担当者には再三伝えているのですが、今もって「糖質が多く含まれる食品を食べなければ糖尿病が治る」という言い方をしている専門家を登場させています。そして、ゲストのタレントが、なるほどと言って専門家の説に納得しているような顔をしているのを見ると、これは黙ってはいられないことです。
血糖は血液中のブドウ糖のことで、食事をすると血糖値が上昇するのは、主食(ご飯、パン、麺類など)にブドウ糖が含まれているからです。このブドウ糖の量を減らせば血糖値は大きく上昇しないようになります。それをもって、血糖値が糖尿病の診断基準を下回っていれば、見た目だけは糖尿病でないようになるものの、血糖値は診断のための数値であって、糖尿病の本質が改善されたわけではありません。
糖尿病は膵臓から分泌されるホルモンのインスリンの分泌量が減るために、細胞に取り込まれるブドウ糖が減る病気で、その取り込まれなかったブドウ糖が血液中に戻ることから血糖値が上昇したままとなります。そして、多くなりすぎたブドウ糖は尿とともに捨てられます。
血糖値が下がって、尿の中のブドウ糖(尿糖)が減れば、見た目的には糖尿病ではないのと同じになるわけですが、血糖値が下がればインスリンの分泌量が元の状態に戻るわけではありません。膵臓は血糖値が高いうちは、インスリンを出し続けます。そして限界まで働き続けると急にインスリンの分泌量が減って、血糖値が下がらなくなります。これが糖尿病で、一時的に血糖値が下がっても、膵臓が回復するわけではありません。血糖値が低い状態が長く続くことで徐々に回復させることは可能ではあっても、それは難しいことです。
というのは、ブドウ糖が足りないとインスリンを分泌させる膵臓のランゲルハンス島のβ細胞も、他の細胞と同じように、その中にあるミトコンドリアによってブドウ糖を材料にしてエネルギーを作り出しています。細胞の中で作られたエネルギーは、細胞の中で使われて、それぞれの細胞の機能が発揮されます。β細胞はブドウ糖を取り込んでインスリンを分泌させるわけで、インスリンが不足するとβ細胞にブドウ糖が充分に取り込まれなくなり、インスリンの分泌が低下します。ブドウ糖はβ細胞を回復させて正常に働かせるためにも必要であるので、ただブドウ糖の摂取を減らせばよいということではありません。
適度にブドウ糖を摂って、余分となったブドウ糖は運動で消費して、細胞の中のエネルギー産生を増やすことです。このことはブドウ糖を多く取り込んで、血糖値を下げるために働く筋肉の細胞の働きを高めることにもなるということです。
投稿者「JMDS」のアーカイブ
運動をすることは健康づくりの基本で、血圧や血糖値が高くなっている人には、まずは簡単な運動であるウォーキングがすすめられることが多くなっています。血圧は血管が硬くなることが原因の場合のほかに、末梢の血流が低下したことから細胞に送られる血液が減ったために血流を盛んにするように血圧が高まることがあります。中には、血液は充分に送られてきているのですが、栄養不足から細胞に送られるビタミンやミネラルが減ったことから、それを補うために血圧を高めるということも起こります。
運動をすると血流がよくなり、酸素も多く送られるようになって、さらに動脈硬化を進める中性脂肪やブドウ糖がエネルギーとして使われることで血管が健康になっていくというメリットもあります。こういうこともあって運動をしていたのに、血圧や血糖値が充分に下がっていないと、医薬品の種類を変えられたり、量が増やされるということも少なからずあります。
これはセミナーの参加者の質問コーナーであったことですが、「ウォーキングをしていても血圧が下がらなかったので薬を増やされた」という体験談を語ってくれた方がいました。医者が指導したとおりの運動をしているのに血圧が下がらないということは悪化しているから薬を増やそうという発想です。これと同じことは糖尿病にもあって、ウォーキングをして血糖値が下がらないと、運動の効果が現れにくいので薬を増やそうと考えるわけです。
患者の中には、運動をしていないのに指示を守らないとわれてはいけないからと医師に嘘をつく人もいて、それで下がらないなら薬を変えるか増やすしかないと考える医師がいて、実際に必要な量よりも多くを出されてしまったというのは、よく聞くことです。
患者にしたら、努力をしているのに薬を増やされたということで、面倒な運動を辞めてしまおうと考える人も少なからずいます。血圧も血糖値も薬にだけに効果があるのではなくて、食事と運動で充分に対策をして、それで下がりきれなかったら医薬品もプラスするというのが基本的な考えです。だから、歩いていて、運動をしていて効果が現れなかったら「効果のある運動法を教えよう」という答えのほうを望んでいるのに、それは一切なしで、薬だけで下げようとするような対応では困ってしまいます。
医師は病院においては栄養士や健康運動指導士の上位の立場で、医師の指示に従って栄養や運動が実施されているので、医師なら適切な指導ができるものと思われるかもしれませんが、医学部で栄養学や運動科学を学ぶ機会がないまま医師になった人もいます。むしろ栄養学と運動科学の両方を習得している医師は少なく、具体的な指導は無理ということは当然のことです。
そういったことを地方自治体の健康づくりに参加して実感していることから、日本メディカルダイエット支援機構では当たり前の歩くことをプログラムにして、検査数値に合わせた効果的な歩き方の指導に取り組んでいます。
国民健康・栄養調査(平成28年)では糖尿病の患者は約1000万人、その予備群も約1000万人と推定されています。患者調査(平成26年)によると高血圧患者は1010万8000人と推定されています。予備群は1.5倍と言われているので、2500万人にも及ぶはずです。国民健康・栄養調査(平成28年)では糖尿病の割合は男性で34.6%、女性で24.8%となっています。これは成人人口の約1億人に対する割合なので、3000万人であってもおかしくはありません。
こんな状態で、もっと増えていくことは容易に想像がつくことなので、状態に合った歩き方の指導を自治体が中心になって始めるのは当然の流れといえます。
「孫世代の10代後半に健康づくりの正しい情報提供を」ということを前回書いたところ、さっそくメディア関係者から問い合わせが相次ぎました。協力の申し出を期待していたところですが、「10代後半にアピールする方法として何をやろうとしているのか」、「10代後半にウケるネタを教えてほしい」という声が多く、やっぱりという感じでした。そんな中に「10代後半に糖質制限をすすめても大丈夫か」という質問がありました。糖質制限については身体が完成した段階の年代や高齢者の場合の話は過去にも取り上げ、それに関する情報提供もしてきましたが、成長途中の段階での制限はどうなのかということは触れてきませんでした。
触れてこなかったのは重要でないと思っていたからではなく、10代後半にアピールする場が少なかったからです。なかったのではなく少なかったと書いたのは、ダイエットSNS最大の「ダイエットクラブ」のラボに日本メディカルダイエット支援機構が監修するダイエットコンテンツを提供しているくらいで、それ以外は直接的な情報提供のルートがなかったからです。しかし、これから始まるダイエットコンテンツの提供先は15〜30歳の女性がメインの情報メディアで、正しいダイエット情報を正しく伝えて、健康づくりを根幹から支えていきたいという願いが一致しています。
今は仕組みの構築とコンテンツの作成に取りかかっていて、詳しいことは実際に情報提供が始まってから報告させてもらいますが、今ここでは10代後半の女性に糖質制限は有効なのか、そもそもやっても大丈夫なのかという話をさせてもらいます。
糖質制限の理屈は、ブドウ糖による脂肪合成の抑制です。糖質食品に含まれるブドウ糖が血糖値を上昇させて、それによって分泌されるインスリンが余分となったエネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)を材料にして脂肪酸を合成すると同時に、脂肪酸が3個結合してできた中性脂肪を脂肪細胞の中に蓄積させる働きがあります。ブドウ糖が血糖値を上昇させることが始まりなので、ブドウ糖を減らすことが体脂肪を減らす基本となっています。
ブドウ糖は細胞の中で最もエネルギーに代謝されやすく、細胞の中で作り出されたエネルギーは細胞を正常に働かせて、成長させていく重要なエネルギー源となっています。ブドウ糖によって体脂肪が蓄積されるなら、その体脂肪をエネルギーとして代謝させればよいわけで、体脂肪を代謝させる、つまり一般でいうところの燃焼させるために身体を動かす機会を増やすことです。成長期の締めくくりの10代後半には食べる量を減らすのではなく、エネルギーを作り出すための運動をすすめるようにしています。
また、ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源で、脳を充分に働かせるためにも、もちろん必要であり重要ですが、脳が全身の働きをコントロールしています。脳は全体の2%しかないのに全エネルギー量の18%ほどを消費しています。糖質が摂取エネルギー量の半分だとすると、40%近くが脳で使われていることになります。だから、10代後半に限らず、厳しい糖質制限によって脳のエネルギー源が不足するようなことはしてはいけないということです。
国民全体の健康状態を考えるとき、どうしても「高齢化」というキーワードが出てきて、それに振り回されがちになります。現在の日本はWHO(世界保健機関)の定義に従うと、高齢化社会でも高齢社会でもなく、超高齢化社会となっています。そして、最後の段階の超高齢社会が目の前に迫っています。そのときには高齢者の健康、それを支える世代の健康が重要であるとの考えが中心になりがちですが、長期戦略が必要な超高齢社会の対策は、さらに下の世代の健康を考えなければならないと以前から考え続けてきました。
超高齢社会で支えられる祖父母世代、それを支える親世代、さらに下の子供世代という分類ですが、高齢化が大きく進んだ今、祖父母世代は80歳代、親世代は60歳代、子供世代は30〜40歳代、その下の孫世代は10代後半にもなります。子供世代から健康づくりを始めるとしても、そのための知識教育は孫世代から始める必要があるという年齢構成になっています。
10代後半は勉強に習い事に遊びにと忙しい時期で、食生活調査をしてみても、親が食事を作っていて、それを食べているはずなのに、バランス栄養とは程遠い結果も見て取れます。次代を担う人材なので国の調査で重点的に調べてほしいところですが、国民健康・栄養調査は栄養素の摂取だけは乳幼児から調査されていても、私たちの専門であるダイエットの範疇になると20歳からのデータしか発表されていません。同じ食事内容であるだろうと想定して10代後半の親の世代の30〜40歳代の食事内容を当てはめてみても、あまりよい状態ではありません。
この年代は太り始める時期で、親がダイエットのために食事を減らしているのに合わせさせられて成長期なのに不足した栄養状態になっていることがあったり、親が仕事をしていることから子供が自分で簡単に食べられる朝食しか食べていないということもあります。学校給食に栄養補給状態のデータを見ると、多くの栄養素が給食に頼っている実態があり、学校給食がない日には栄養不足という例も珍しくありません。学校給食から卒業して、弁当や外食が始まると、その乱れはもっと激しくなります。
そんな食事をしていては、その子供(祖父母からしたら孫)世代の栄養状態だけでなく、その子供たちが成長して、支える側の30〜40歳代になったときに、本当に支えられる身体であるのかと心配になってきます。心配になってくる、という他人事の考えではなく、私たちは、そこになんとか手を差し伸べられる立場にいるので、まずは実践的なことを踏み出したいと考えています。
その話を健康寿命延伸による地方創生で関わっている自治体の方にしたところ、「では高齢者だけでなく親にも子供にも、そして孫にも話をする機会を設ける」という提案がありました。もちろん目の前にいる人に対しての教育や情報提供は必要なことはわかっていますが、それと同時に孫世代に向けて、正しい健康情報を提供することを始めることが重要と考えます。今、そのチャンスに巡り合うことができました。
ダイエットの話をするときに、例として糖尿病をあげることがあります。糖尿病というと、血糖値が上昇しすぎることによって血管に影響が出る病気で、血糖は血液中のブドウ糖のことを指すので、ブドウ糖が含まれる糖質の食品を減らせばよいという考えにつながりがちです。糖質制限も、ブドウ糖を摂らなければよいという極端な考えを展開しているところもありますが、糖尿病対策の食事はバランス栄養食です。ブドウ糖を摂らない、ブドウ糖が含まれている糖質を減らすというのではなく、脂質もたんぱく質も摂って、全体的にエネルギー量を減らすことが治療のための基本であり、予防のためにも応用できます。
というのは、糖尿病は膵臓から分泌されるホルモンのインスリンは、ブドウ糖を細胞に取り込んで血糖値を下げるだけでなく、脂肪を脂肪細胞の中に蓄積させる働きがあり、脂肪を多く摂るとインスリンが多く必要になって膵臓に負担がかかります。膵臓に負担がかかりすぎて、インスリンを分泌させる能力が大きく低下したのが糖尿病です。そのために血糖値が下がらなくなり、血液中で増えすぎたブドウ糖が尿とともに捨てられることになり、そのために糖尿病という名となりました。
エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質を摂りすぎると、肝臓で脂肪に合成されます。その助けをするのもインスリンの働きで、糖質も脂質も摂りすぎずに、たんぱく質が含まれる食品だけを食べるようなことをしても、食べすぎればインスリンの必要量が増えて、やはり膵臓に負担がかかるのです。
糖質のエネルギー量は1gが約4kcalで、脂質の約9kcalに比べると少なく、全体のエネルギー摂取を抑えるためには脂質を減らすほうがよいことがわかります。
糖尿病に効果があることをうたっている健康食品の宣伝で、「これ以上ご飯を減らすなんて」という表現をしているところがあり、茶碗に3分の1もご飯が盛られていない(盛るほど入っていないのですが)シーンが出てきます。これは極端としても、糖尿病の食事というと、ご飯の量は少ないと思われています。そして、糖尿病を予防するためには、ご飯を減らせばよいとも考えがちです。
糖尿病の方の食事指導では、三大エネルギー源のバランスを取るようにPFCバランスが使われています。Pはたんぱく質(protein)、Fは脂質(fat)、Cは糖質=炭水化物(carbohydrate)で、たんぱく質が13〜20%、脂質が20〜30%、糖質は50〜65%とされています。糖尿病であっても糖質は50%とすることが求められています。
この事実を知らないと、病院に入院したときに、ご飯の量が多くてビックリした、中には糖尿病を悪化させるつもりかと文句をいう患者がいるというようなことにもなります。
糖尿病は、インスリンが不足するか、インスリンが分泌されていても細胞に取り込む能力が低下することによって細胞がブドウ糖不足になる病気です。細胞レベルでみると、エネルギー源不足になっています。取り込む能力が低下しているのに量を減らしたら、もっとエネルギーが不足して飢餓状態になるので、必要な糖質を摂れるように、ご飯の量を調節しています。ご飯を減らせばよいという単純な考えでは対応できないのですが、それを理解していない患者や家族どころか、なぜか指導する医者にもいるのが問題だということです。
羨(うらや)ましいという言葉は、あまり使いたくはないのですが、何でも断定的に言い切れる人は、ある意味で羨ましくて仕方がありません。日本人の体質と食事の関係を分析した書籍をよく知っている方が出していたので、気になるページだけを立ち読みしました。いくつも突っ込みを入れたいところがあったのですが、中でも驚いたのは「日本人に肉食は合わない」というところです。
このことは私たちも主張していることで、脂肪酸の種類や血液の温度、消化酵素、腸内細菌など複数の理由をあげているのですが、その先生は「豚や牛のエサに使われる抗菌剤が原因」と断言しています。抗菌剤が少なからず影響することは私たちも認めるところですが、それがすべてだという書き方は、私たちにはできないことです。
以前に、身体の不調の原因は、すべて有害ミネラルのせいで、デトックスで改善できると言い切って人気となったドクターがいます。活性酸素の存在が知られたとき、やはりすべての不調の原因は活性酸素だと言い切って、抗酸化物質さえ摂れば健康になれると断言した研究者がいましたが、身体はそんなに単純な仕組みにはなっていません。NHKの特集の「人体」では、身体の各部分は連携していて、調整し合って健康が保たれているというのがメインテーマとなっています。
それがすべてとは思わないものの、単純に一つのことだけが健康被害を与えることで、その一つを解決すれば健康が保たれると、“死ぬまでに一度でいいから”言ってみたいものです。おそらく、そんな時は来ないとは思うのですが。
ダイエットでは、すべてを血糖値のせいにして、血糖値が上昇しなければ太らないと言い切っているドクターがいて、その主張を取りまとめた食事術の書籍がベストセラーになっています。糖質だけを食べると血糖値が急上昇するので、脂肪と一緒に糖質を摂ると血糖値の上昇度合いが低くなり、太らないという主張です。
血糖値が上昇するとインスリンが分泌されて、インスリンには肝臓での脂肪合成を進める作用があるので太らないというのは間違っていません。しかし、インスリンは血液中の脂肪を脂肪細胞の中に蓄積させる働きもあります。血糖値が上昇したときに脂肪があると、どんどんと脂肪細胞に蓄積されます。ということは、糖質と脂肪を一緒に摂ると太るということになるのですが、そのドクターの主張は違っています。
同じエネルギー量の和菓子と洋菓子を食べた場合、糖質がほとんどの和菓子よりも、糖質と脂質(脂肪)が含まれた洋菓子のほうが圧倒的に脂肪の蓄積量が多くなります。これは普通にダイエット指導をしているだけでも気づくことです。ましてや患者と付き合っているドクターならわかりそうなはずですが、その書籍には多くの患者の検査をしてわかったことだと記載されています。
断定するときには、その根拠をデータをもって示してほしいところですが、多くの書籍は文字で読ませることが中心となっているので、根拠のデータが示されていないことが多いのです。
運動は無酸素運動と有酸素運動に大きく分けられます。ミトコンドリアの能力を効果的に高めるのはAMPキナーゼという酵素が働きやすい有酸素運動で、ウォーキングなどを長く続けるか早歩きをしてエネルギー不足状態を起こすと、ミトコンドリアが活性化され、ブドウ糖と脂肪酸の代謝が進んでいきます。有酸素運動は定期的に実施することが大切で、有酸素運動を休んでいる期間が長くなるとミトコンドリアの体積が減少することが知られています。
また、ミトコンドリアの体積は加齢によっても減少することが確認されており、年齢を重ねるほどミトコンドリアの能力が低下していくことになります。中高年者や高齢者はミトコンドリアのエネルギー産生の能力が低下することから、必要なエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が充分に産生されなくなり、これが老化を進める要因となっています。そのため、年齢を重ねるほど有酸素運動によってミトコンドリアの体積を増やすようにすることが重要となるわけです。
ミトコンドリアの体積を増やしてミトコンドリアでのエネルギー産生を増やすことによって、老化の抑制とともに、血液中の糖と脂肪の濃度を適切にコントロールして生活習慣病の予防を図ることができるようになります。ミトコンドリアでのエネルギー産生は酸素が用いられることから有酸素運動が有効となるのですが、無酸素運動もAMPキナーゼの働きによって有効であることが確認されています。
無酸素運動は息を止めて行う筋肉トレーニングや短距離走などを一般に指していますが、本来なら有酸素運動であるジョギングも身体的な負担が高まると無酸素領域の運動となります。運動をやり慣れていない人にとっては1時間程度のウォーキングであっても無酸素運動となる場合もあります。
無酸素運動は酸素を用いなくてもできる運動のことですが、有酸素運動によってミトコンドリア内でATPが多く産生されるのに対して、無酸素運動では逆にATPが消費されます。
無酸素運動によってATPが消費され、一つリン酸が外れたADP(アデノシン二リン酸)、さらには二つリン酸が外れたAMP(アデノシン一リン酸)が増えることによって細胞内エネルギーのレベルが低下します。その結果、エネルギー不足のサインを細胞内のエネルギーセンサーであるAMPキナーゼが察知して、ミトコンドリアでの脂肪燃焼能力が高まっていきます。この状態で有酸素運動を行うとATPが多く産生されるようになることから、脂肪を効果的に燃焼させるためには無酸素運動と有酸素運動を交互に行えばよいことになります。
全身の細胞にあるミトコンドリアは糖(ブドウ糖)と脂肪(脂肪酸)をエネルギー源として、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を作り出しています。ミトコンドリアにブドウ糖を取り込む作用をするのはα‐リポ酸で、脂肪酸を取り込む作用をするのはL‐カルニチンです。この2種類の代謝促進成分は20歳をピークに体内での合成量が減っていくことから、年齢を重ねた人はサプリメントとして補うことで代謝を高めることができます。
では、若い人は補う必要がないのかというと、ミトコンドリアは細胞によって100〜3000個と違いがあり、筋肉には多くのミトコンドリアが存在しています。そこで筋肉を刺激する無酸素運動をすればよいように思われがちです。しかし、ミトコンドリアが増えるのは有酸素運動であることが確認されています。
運動をするとミトコンドリア内で産生されたATPが使われて筋肉が動いているわけですが、ATP(アデノシン三リン酸)のリン酸が一つ離れることによってADP(アデノシン二リン酸)となり、そのときにエネルギーが発生します。運動によってエネルギーを使い続けると、ADPからさらにリン酸が一つ離れたAMP(アデノシン一リン酸)が増えていきます。AMPが増えると身体はエネルギー不足の飢餓状態であることを察知して、骨格筋に多く存在するAMPキナーゼ(AMPK)という酵素が活性化されます。この酵素はAMPによって活性化される蛋白リン酸化酵素であることからAMP活性化プロテインキナーゼとも呼ばれています。
AMPキナーゼが活性化されて働くとPGC1aというタンパク質をさらに活性化させていくのですが、PGC1aにはミトコンドリアの合成を促進するための指令が核内遺伝子に与えられます。指令を受けるとミトコンドリア合成のために必要な核内遺伝子が働き、ミトコンドリアを構成するタンパク質成分が細胞質で作られます。その結果として、すでに存在しているミトコンドリアに構成成分が付け足されてミトコンドリアの体積が増えていくことになります。
運動をすることでミトコンドリアが増えていくと一般に言われているのですが、これはミトコンドリアの数が増えるのではなく、ミトコンドリアが大きくなり、エネルギー産生の能力が高まっていくことを示しています。
AMPキナーゼはブドウ糖の代謝を促進させ、血糖値を下げる働きがあることが知られています。内臓脂肪には生理活性物質のアディポネクチンを分泌する作用があり、アディポネクチンは血液によって骨格筋細胞まで運ばれ、AMPキナーゼを活性化しています。これによってAMPキナーゼは細胞膜に存在するグルコース輸送体のGLUT4に信号を出し、グルコースを外部から多く取り込むように指令が出されます。GLUT4は筋肉細胞の中にあり、通常は奥にあるのですが、指令を受けると細胞の表面に出てきてブドウ糖を取り込んでいきます。これによって血液中のブドウ糖は細胞に取り込まれ、ミトコンドリアに取り込まれて、ATP産生に利用されることになります。
内臓脂肪に脂肪が多く蓄積されるとアディポネクチンの分泌量は大きく低下します。これが継続的に起こるとブドウ糖は消費されなくなり、糖尿病であった場合には悪化させる原因となります。AMPキナーゼは運動によって活性化され、運動をするとGLUT4が骨格筋細胞の表面に出ることによってブドウ糖の取り込みが促進され、血糖値は下がっていきます。この仕組みによって運動をすると血糖値を効果的に下げることができるわけです。
AMPキナーゼが活性化されるとミトコンドリアのエネルギー産生が高まっていくことから、運動はブドウ糖の代謝とともに脂質の代謝も促進して、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化症など、さまざまな生活習慣病の対策にも役立つということです。
ダイエット指導をする立場からすると、やせている人がダイエット希望をするのは、できれば対象者から外したいと思うことであり、できることなら太っている人にメディカルダイエットの手法を実施して効果を上げたいと思うことも多々あります。ただ、太っていることで健康に問題があって、生活習慣病の改善のためにやせることを医師から強く指導された人でもなければ真剣に実施してくれません。太っている人は楽天的な考えの人が多く、太っていることを気にしていないことが多いので、理屈ではわかってくれても実際には何もしない、やったとしても中途半端、自分の都合のよいように勝手に解釈して適度に実施するというのもよくあることです。
これに対して、やせている人が、もっとやせたいと希望する例が多く、これがダイエット法が通じないと言われる所以となっています。日本メディカルダイエット支援機構の理事長がよく口にするように、「やせないといけない人がやせたがらず、やせる必要がない人がやせたがる」というのがダイエットの指導者の悩みとなっています。せっかくの科学的に裏付けられたダイエット法であっても、真面目に取り組む人が少ない、本来ならやる必要がない人が取り組むということでは結果が出にくいのは当然のことで、それをダイエット法のせいにされて責められても困るという指導者の気持ちもよくわかります。
太っている人がダイエットに取り組むのは指導する側からしたらラッキーかもしれませんが、もともと身体は太るようにできていて、必要性もあって太っていた人は、少しくらいの期間のダイエットでは効果が出にくく、それが「このダイエット法はダメ」「私には向かない」「私はダイエットができない」という否定的、悲観的な考えに陥ることにもなります。これに対して「しかし」と当法人の理事長も理事も言います。
しかし、太っているというのは、素晴らしいエネルギー源をたっぷりと体内に蓄積している人で、これを代謝の促進によって、つまり一般的な感覚では燃焼させて、エネルギーを作り出すことができれば、たくさんのエネルギーを作り出して、活動のエネルギー、脳活性のエネルギー、そして何よりも全身の細胞のエネルギーを増やして、健康を維持して、病気に負けない、さらには老けない身体づくりもできるのです。そんなにも大切なエネルギー源の体脂肪を持っているのだから、身体を動かして使うことをすすめています。
体脂肪1kgは7200kcalものエネルギー量となります。これは通常の3日分以上のエネルギー量です。体脂肪が10kgも多い人は1か月分のエネルギー源を、20kgも多い人は2か月分のエネルギー源を蓄積しているので、うまく代謝させれば素晴らしいパワーとすることができるのです。
疲れてくると食べるようになるのは、年を取ってくると食べるのが楽しみになるのはエネルギー源をため込むために必要なことですが、食べた後に何もしなければ、せっかくのエネルギー源が“贅肉”という無駄な脂肪、無駄どころか病気を引き起こす脂肪になるので、エネルギー源をためたらエネルギーにするということをすすめているのです。
とはいっても、これまで以上に身体を動かすのはきついという人が多いのも事実です。「やせて身体が動くようになったらダイエットの運動をする」ということを言い出す人がいるくらいですが、そういった人には代謝促進成分の三大ヒトケミカルのR‐αリポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10を紹介しています。
最近の研究の話題として「グリコーゲンにならなかったブドウ糖の28%が脂肪に合成される」ということがあり、この28%についての質問が複数ありました。中でもメディア関係者には「糖が脂肪に合成されるときのエネルギーロス率は23%」と話していることもあって、28%と23%の関連性も聞かれます。
エネルギーとして使われなかったブドウ糖はグリコーゲンに合成されて、筋肉や肝臓に蓄積されます。蓄積される量は筋肉と肝臓を合わせて300gほどで、それを超えたブドウ糖があると肝臓の中で脂肪酸に合成されて、これが中性脂肪に変化した後に脂肪細胞の中に蓄積される体脂肪となります。中性脂肪は脂肪酸が3個結びついた形をしています。肉や魚を食べて身体に入ってくる脂肪の多くは中性脂肪となっています。
ブドウ糖100gが脂肪28gになるということは割合では28%の変化となるわけですが、これは重量を指しています。エネルギーロス率の話をするにはエネルギー量で比較しないといけないわけですが、糖質は1g当たり約4kcal、脂質は1g当たり約9kcalと2倍以上となっています。4kcal×100g=400kcalの糖質が9kcal×28g=252kcalとなり、エネルギー量だと63%にもなります。
糖質が脂質に変化するときに肝臓で使われるエネルギー量が23%も必要になるということで、この量を差し引いた結果が28%となります。エネルギーロスが起こらなかったら、もっと多くの脂肪が蓄積されていたわけです。
これだけ多く脂肪に変化して、それが蓄積されるとなると糖質も脂質も食べすぎを控えることがダイエットの基本となることは理解しやすいわけですが、日本人は糖質が脂質に変化しやすい体質を持っている人が特に多い国民となっています。その体質は肥満遺伝子の影響を受けていて、糖質が脂質に変化しやすいのはβ3アドレナリン受容体遺伝子タイプといって、日本人の30%ほどが持っています。このタイプの人は脂肪が増えやすいだけでなく、蓄積された脂肪が分解されにくく、糖質制限が求められる人となります。
ということは、このタイプでない人は糖質制限の効果が出にくいということも言えるわけです。この質問をしてきたテレビのディレクターは、すべての人に共通するテーマを求めてきます。彼に限ったことではなくて、テレビ業界の常ですが、こと肥満遺伝子の話になると少なくとも3タイプ、その中間の3タイプ、さらにすべてのタイプの遺伝子を持つ人もいます。そう簡単な話ではないと説明するのですが、わかってもらえないのか、わかっていてやっているのかはわかりませんが、なかなかテレビ番組では伝えられていないことです。





