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未病の師匠である都島基夫先生は、病気にならないように先回りして対処する未病医療に取り組むきっかけは、慶應義塾大学病院で循環器の患者を診はじめたときに、救急医療で虚しさを感じたことだと話しています。救急医療の発展は目覚ましく、医療が進めば進むほど命を失わずに済む人は増えていきましたが、その一方で完全に治ることがなく、障害を一生涯抱えて暮らすことを余儀なくされる人を増やす結果になるという現実があります。
以前であったら治療が及ばずに亡くなっていたかもしれない人の生命が救われるのはよい結果であったとしても、治療後に寝たきりになる、寝たきりではないものの退院後に家から出られない、自由な生活を送ることができないというのでは、不幸な長生きを強いることにもなりかねません。
救急車で搬送されて来る患者、それも慶應義塾大学病院に搬送されて来る患者となると相当に重い状態であって、医師としての限界を感じるであろうことも当然に想像がつくところです。
もちろん救急医療も、その後の治療も重要であるのは間違いがないことですが、それと同時に救急状態にならないようにすること、もしも救急搬送されるような立場になったとしても自力で回復できるような状態であってほしいとは医師も家族も感じることです。
病気になると、医療の介入なしには悪化する一方という状況にもなるわけですが、検査数値に異常が見られた段階でなら、医薬品が使えるレベルであれば初期段階の軽いものを使って、医薬品がいらない状態に戻すことも可能です。医薬品が使えるレベルまで達していない人の場合にはサプリメントを用いて改善を目指すということも当然のように考えられます。
サプリメントは薬ではないので、食品と同じように自由に使ってもよいと考えられることもありますが、特定保健用食品や機能性表示食品が登場した今の時代には医薬品と同様のメカニズムで作用するものもあり、使い方が正しければ、医薬品を使わなければならない状態に進むことがないようにすることができます。
どうしても医薬品を使わなければ対処できない状態では、医薬品が第一義になるのは仕方がないことですが、その前の軽い医薬品でも対応できる段階では医薬品だけでなく、運動習慣や食事習慣の改善によっても対応できます。その指導もできるのは未病医療のドクターの腕の見せどころであり、幅広い知識を得て対応するために、付き合う範囲を広げることも未病医療を完成させるためには必要との考えです。
この未病段階での対応は、身体の病気だけでなく、認知機能の病気の予防にもつながります。認知症の原因はアルツハイマー病が一番多いものの、脳血管の疾患がなかったら発病しなかった人が数多くいます。アルツハイマー病のほうは防ぎようながいとしても、脳血管の健康は食事と運動で保つことができるので、認知機能の未病は循環器医療の専門家の得意分野と言えます。今、都島先生は認知症専門病院の理事長として活躍されています。

日本メディカルダイエット支援機構の理事長は、過去に公益財団法人日本健康スポーツ連盟の理事を務めていました。同連盟は、厚生労働大臣認定運動型健康増進施設というハイレベルのフィットネスクラブの調査と指導をする唯一の団体で、そこで働く健康運動指導士と健康運動実践指導者の更新教育を担当しています。両資格認定者は5年間に20単位の更新単位を取得することで資格を更新することができる規定で、その更新教育を実施しているわけです。当法人の理事長は、更新教育の一つのサプリメント講習を担当していました。2日間の講習で10単位が取得できることから人気がありました。ただ更新教育として実施されるだけでなく、日本健康スポーツ連盟が認定する健康スポーツサプリメント指導者の認定講習も兼ねていました。
日本健康スポーツ連盟を創立した玉利齊先生は理事長として健康スポーツという新しい分野を作り出し、各スポーツを健康という観点で取りまとめてきました。そのために多くのスポーツ団体の理事として名前を連ねてきましたが、専門分野としては筋肉トレーニングのプロ中のプロとして知られています。日本健康スポーツ連盟の理事長と同時に、公益社団法人日本ボディビル・フォットネス連盟の会長を務めていました。この連盟は玉利先生が立ち上げたときから長らく日本ボディビル連盟として活動してきましたが、ムキムキの肉体美を競うだけでなく、玉利先生の主導で美しいスポーツ体型を競うことも取り入れてフィットネスが加わりました。
玉利先生は、これまでに60団体の役員を務めてきましたが、公益財団法人日本プロスポーツ協会の会長補佐理事としてスポーツの頂点から、アマチュア競技スポーツの特定非営利活動法人日本ワールドゲームズ協会の副会長としてオリンピックに採用されていないスポーツを取りまとめ、山にたとえると裾野に当たる生涯スポーツの一般社団法人日本ウオーキング協会の理事、ウォーキングコースの認定をする一般社団法人日本市民スポーツ連盟の副会長などを務めました。
また、異色なところでは特定非営利活動法人医療機関支援機構の理事長として、医療機関支援とともに医療機関で配布する医療・健康情報誌(フリーマガジン)『カルナの豆知識』にも携わってきました。日本メディカルダイエット支援機構の理事長は、医療機関支援機構の特別顧問として、こちらの分野でも玉利先生を支えてきました。
こういった活動を通じて玉利先生から教えられたのは、「スポーツは競うこと、体力づくりに役立てること、団体での位置と立場での活動などが注目されがちだが、いかに生きる活力を高めることだ」ということでした。この「活力」こそがキーワードで、活力を高めるために何をするか、活力を高めることを継続させるには何が必要か、高まった活力を何のために使うか、多くの人の活力を一本化させるために何をするか、その結果を社会に還元するためには何が必要か……結論を出そうと思えば出せることではあるかもしれないけれど、すぐに結論を出すのではなく、結論に向かって歩み続けていくことの重要性を教えてもらいました。
その教えは、日本メディカルダイエット支援機構が分岐点で、どちらに舵を切るかを決断するときの判断基準となっています。

ダイエットというと、食べるものを我慢する、休む時間を削って運動をする、それも無理をしたほうが効果はある……でも、無理は続かなくてリバウンドする……しかし、頑張らないと効果がない、という堂々巡りのような話が出てきます。食べるべきものを食べていないと、食事量を減らしたのにダイエット効果が得られないということにもなりかねません。というのは、脂肪細胞に蓄積された体脂肪を減らすためには代謝に必要なビタミンB群(ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂)をはじめとした水溶性ビタミンが必要になるからです。
食べるものを減らす→代謝のための成分が不足する→代謝が充分に進まない→体脂肪が減らない→無理な運動をする→おなかがすいて我慢できずに食べる→太ってしまってガッカリする→もうダイエットは無理と考えて食べてしまう→もっと太ってしまう……ということにならないように、食べるものは食べて、それをエネルギーにするために運動をするのが正解です。
運動をすると脂肪を燃焼するというように言われていますが、代謝は実際に燃えているわけではありません。詳しい話は他のところで書いているので、ここでは省略しますが、頑張って運動をした割には体脂肪が減ってくれません。「それでは運動の効果がないのではないか」という人がいて、運動をしたがらなくなるので脂肪の燃焼の話は対象者によってはしないようにすることもあります。
脂肪は燃焼していなくても、細胞のミトコンドリアの中では代謝によってエネルギーが発生しています。このエネルギーが全身の細胞を働かせています。運動をするときにも、このエネルギーが使われるので、元気に身体を動かすためには三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質を充分に摂って、これらの栄養素がミトコンドリアの中にスムーズに入ってくるようにすることが大切になります。その役割をしているのがα‐リポ酸とL‐カルニチンで、α‐リポ酸が糖質のブドウ糖の取り込み、L‐カルニチンが脂質の脂肪酸の取り込みを担っています。この2種類の成分がないと、充分に取り込まれなくなり、代謝量も減ることになります。
取り込まれなかったブドウ糖と脂肪酸は、血液中に戻って、肝臓で蓄積型の中性脂肪に合成されます。この中性脂肪は脂肪細胞の中に蓄積される、つまり太る原因になるのです。
ミトコンドリアの中に入ったブドウ糖と脂肪酸はアセチルCoAに変化して、TCA回路の中で代謝が行われます。実際の変化については、これも過去に何度か説明しています。TCA回路での代謝には酵素が働いていますが、酵素は酵素だけでは働くことができません。わかりにくい表現かもしれませんが、酵素は欠けている部分があって、この欠けているところを補酵素が補うことによって酵素の本来の働きをすることができるようになります。その代謝の補酵素がコエンザイムQ10です。
要は、三大ヒトケミカルと呼ばれるα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10を補うことが体脂肪の減少にも役立ち、作り出したエネルギーによって充分に身体を動かして、またエネルギーを作り出すという好循環につながるということです。

コエンザイムQ10というと細胞のミトコンドリア内のTCA回路でエネルギー代謝が起こるときに使われる補酵素で、代謝が促進されることによって活性酸素を消去する抗酸化作用が知られ、美容系のサプリメントの成分ともなっています。ダイエット成分だと認識をしている人もいます。それは間違ってはいないのかもしれませんが、コエンザイムQ10だけでダイエット効果を期待するのは難しいことです。ブドウ糖をミトコンドリアに取り込むα‐リポ酸、脂肪酸を取り込むL‐カルニチンがあり、これにコエンザイムQ10が加わることで、エネルギー源を取り込んで、それをエネルギーに変換させることができるのです。
三大ヒトケミカルは健康維持に必要だと常に説明していますが、免疫の向上だけは3つの組み合わせの効果は確認されていません。免疫を司っているのは白血球です。白血球は全身をパトロールしていて、外敵(細菌やウイルス、病原菌など)の侵入を確認すると直接攻撃をします。白血球で戦えないほどの強敵の場合には、次にマクロファージが登場しますが、マクロファージは敵を取り込んで、こんな敵を、これくらい退治したとの情報物質を出します。この情報を受けて、より強いリンパ球が登場するという順番になっています。
白血球は免疫細胞と呼ばれるくらいで、ちゃんとした細胞です。細胞はエネルギー源を取り込んで、これを細胞内で代謝させて作り出したエネルギーによって活動しています。免疫を高めるのはキノコだという話が広まり、それはキノコに含まれる多糖類が白血球のエサになっているからだと説明されています。それは間違っていないのですが、エサを食べても、これが代謝によって充分にエネルギーにならなければ仕方がないわけで、それに対してα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10のどれに効果があるのかの試験が行われています。試験の結果は省いて結論だけをいうと、コエンザイムQ10には効果がありました。
コエンザイムQ10は免疫の活性のためにはサプリメント成分としても摂りたいところですが、吸収率が低くて1%ほどでしかありません。どうして、そんなにも吸収率が低いのかというと、もともと体内で合成されている成分で、20歳をピークに減少していくものの30歳代までは大きく減少しません。人間が今ほど長生きではなかった時代に作られた吸収の仕組みを今も守っているのが人間の身体です。そのためにコエンザイムQ10は食品から多く摂る必要がないということで、吸収率は低いままとなっているのです。
こんなにもコエンザイムQ10が入っていると書かれていても、こんな吸収率とは書かれていないので、実際のことを知らずに期待だけが膨らんでいる面もあります。シクロデキストリンのγタイプを用いたものでは10倍以上の吸収率が得られています。中には18倍になったとの試験結果もありますが、それでも18%で、今はこれが限界です。
多くの量を体内に取り込もうとしたら、吸収率が高いものを、多めに摂るしかないということです。
コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。ついでにシクロデキストリンも参照してください。

健康スポーツの関係者が集う場で、顔見知りの先生方に「エネルギー代謝のヒトケミカル」という話をして回っていたら、多くの方から言葉こそ違うものの「脳のエネルギー代謝を高めたら認知症は予防できるのか」という質問を受けました。会合の席だったので詳しくは別の機会にということで、できるだけ多くの方と話をするほうを優先させたのですが、この情報を見ている方も多いので、これを利用して簡単な答えを出させてもらいます。
ヒトケミカルのうちα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10の三大ヒトケミカルは糖質と脂質をエネルギー代謝するために必要な生化学成分であり、細胞の中で作り出したエネルギーは細胞の中で使われます。一つひとつの細胞を充分に働かせるためには、その細胞の中でのエネルギー代謝を高めなければならないわけで、エネルギーの“地産地消”のようなものです。
エネルギーになる材料は三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質で、これ以外の成分はエネルギーとはなりません。ほとんどの細胞は三大エネルギー源を使うことができるのですが、脳細胞だけは特別で、糖質のブドウ糖しか使うことができません。ブドウ糖を細胞のミトコンドリア内に取り込んで代謝を起こすときに必要となるのはα‐リポ酸です。体内で使われるα‐リポ酸といえば天然型のR体のα‐リポ酸と決まっているので、専門家の間ではα‐リポ酸と言ったら「R‐αリポ酸のこと」とすぐにわかってもらえるのですが、人工型のS体のα‐リポ酸と区別するために、一般向けにはR‐αリポ酸と明記しています。
脳細胞の機能を充分に高めるためには、脳のエネルギー源となるブドウ糖が含まれている糖質を充分に摂って、ブドウ糖をミトコンドリアの中に取り込んで、そしてエネルギーとすることです。頭が回らない状態になると、よく「エネルギー切れ」というような表現をする人がいますが、まさにブドウ糖が不足することと、R‐αリポ酸が不足することで脳細胞のエネルギー切れになってしまうこともあるわけです。
ダイエットのため、生活習慣病の改善のために糖質制限をする人がいます。糖質を制限するのは、ある程度の量ならよいとしても、行き過ぎて何も食べない、糖質が含まれた調味料もダメというような極端な制限となると脳のエネルギー源が足りなくなります。ブドウ糖が不足して脳が働かなくなったら大変なので、体内にはタンパク質からブドウ糖を作り出す糖新生という仕組みがあります。これによって補えるといっても生命維持に必要な量の補充であって、脳をフルに働かせるには足りません。ましてや認知症の予防、認知機能の維持を考えると、ブドウ糖を充分に摂って、R‐αリポ酸によってエネルギー代謝を高めることが正解です。
R‐αリポ酸は全身の細胞のブドウ糖をエネルギー化する代謝促進作用があるので、ブドウ糖が脳を働かせるために使われる量を上回っても、余分な分はエネルギーとしてくれるので、太るようなこともなくなるわけです。R‐αリポ酸は20歳をピークに減少し続け一方であるだけに、認知機能が心配になる年齢になったらR‐αリポ酸はサプリメントで補うことを考えないといけないということです。

羊肉にはL‐カルニチンが豊富に含まれているので、「肉を食べても太らない」と言われてきました。もちろん、肉であるので脂肪が多く含まれていて、エネルギー量も高いのですが、L‐カルニチンは脂肪酸と結びついて細胞のミトコンドリアに取り込む働きがあり、ミトコンドリア内のTCA回路でエネルギー代謝が盛んに起こるので、いわゆる燃焼によって脂肪が減っていきます。
それを信じて羊肉を食べたのに、太ったという人は少なくありません。これは食べすぎのせいなのかというと、そうとばかりは言えません。同じくらいの羊肉を食べていた人で比較しても、太りやすい人と太りにくい人がいました。これをもって、体質の問題にしたり、代謝の違いの問題にしている人もいますが、よくよく調べたら、食べていた羊肉の種類が違っていたということがあります。
羊肉というと、ラムとマトンに大きく分けられます。このほかにラムとマトンの中間的な食感と味のサフォークもありますが、飼育数が少なくて価格も高いので、一般向けの分類には加えていません。
マトンは生後1年以上の羊で、一般には2年以上の大人の羊が出回っています。特有の匂いがあり、ラムに比べたら硬さもあるので、ラムを好む人も多く、中でも女性はラム派が主流となっています。味と軟らかの利点があり、それにL‐カルニチンのダイエット効果の話が加わると、ついつい食べる量が増えるようになるのもわからないではありません。
これが羊肉なのに太る要因となっています。というのは、ラムは100g当たりL‐カルニチンは80mgが含まれていますが、マトンの208mgに比べると半分以下の量でしかありません。L‐カルニチンは含有量が多いほど脂肪の代謝が高まることがわかっているので、同じ量だったらマトンを食べたほうがダイエットに効果があるということが言えるわけです。
ラムはL‐カルニチンの含有量が少ないといっても、他の肉類よりは多くて、牛肉(ヒレ)は60mg、豚肉は35mgとなっているので、ラムでも食べすぎなければ効果が期待できるということがわかります。羊肉で太ったという人は、どちらの種類であったのかを、まずは知っておくことです。
脂肪のことを考えると、脂肪の吸収を抑える作用がある食物繊維を摂るとよいわけですが、野菜に含まれる不溶性食物繊維には、その働きは高くはありません。余分な脂肪を吸着して吸収量を減らすのは水溶性食物繊維です。その中でも、私たちが注目しているのは環状オリゴ糖とも呼ばれるα‐シクロデキストリンです。
機能性表示食品としても知られる難消化性デキストリンが人気になっていますが、α‐シクロデキストリンは2倍以上の効果があることが試験結果で得られています。これはαオリゴ糖とも呼ばれています。
シクロデキストリンについては、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。

未病というと東洋医学の考えで、その療法も東洋医学だと思われがちです。もちろん未病の看板を掲げて東洋医学の治療院を開業しているところもありますが、ここでいう未病は西洋医学で、その師匠も西洋医学の循環器のドクターです。西洋医学といっても、東洋医学も使うという先生ではなくて、慶應義塾大学医学部で教授を務め、日本臨床栄養学会の理事、そして日本未病システム学会では理事長も務めた都島基夫先生です。都島先生には未病の取材をして、日本健康倶楽部(巡回健診の社団法人)の月刊情報誌『健康日本』に連載記事を掲載したところから付き合いが始まりました。
日本未病システム学会のシステムは現在の医療システムを指していますが、実施する検査も治療も西洋医学であっても、その発想は東洋医学の未病の考えを重要視しています。そのことは都島先生が理事長時代に作り上げた未病ガイドラインでも明らかです。
一般には未病は健康と病気の間に位置づけられるものであり、病気になってから治療を始めるのではなく、少し血圧が高い、血糖値が高いという未病の段階で治療を始めるもので、これなら医薬品が必要であっても弱いものを少し使うだけでも対応できます。医薬品を使うまで検査数値が高まっていない場合には食事や運動、場合によってはサプリメントを使うこともあります。
都島先生の教えで感化されたのは、その先で、例えば血糖値が検査で異常とされても、まだ合併症が出ていない状態で、医薬品は少し使うにしても専門家の介入によって健康に戻れる状態が未病であって、そのために専門家は、それぞれの特技を活かして手を組んで取り組むべきという考えです。合併症まで進んでしまったのでは、専門家が束になっても健康状態に戻すことはできないので、いかに未病のうちに発見して治すかが重要となります。
では、合併症が出たら、これは未病の範疇ではない“立派な病気”なので未病の専門家の出番はないのかというと、それも違っていて、「自立ができる状態で天寿を全うすることを目指す」という道があります。WHO(世界保健機関)は、自立できない状態を病気としています。“自立できているうちは健康だ”という考え方もありますが、今は自立できていても将来的に自立できなくなる可能性が高い人の場合には、未病と捉えて当たるべきだということです。
日本は超高齢化社会であり、もうじき超高齢社会に突入する段階となっています。また、2018年は後期高齢者の数が前期高齢者の数を上回る分岐点であり、ここまで高齢者が増えると、何らかの状態の変化は必ず起こっています。都島先生は「病気の最大の要因は年齢」と言います。年齢だけは努力をしても止められないだけに、年齢が進んだ分だけ他の対策を取ることが重要であり、そこに私たちの専門性も活かす意義を教えられています。

東洋医学と言ったら叱られてしまうかもしれませんが、医学にしても薬学にしても栄養学にしても、西洋医学一辺倒であった日本メディカルダイエット支援機構の理事長に、立ち止まって異なる発想から考え直す機会を摂るべきであると教えてくれたのは鈴木實先生です。鈴木先生は日本武道医学会の元理事長で、武道の世界に脈々と受け継がれてきた体操法を受け継いでいます。
武道医学は、いくつかの流派があり、戦いのための身体のケアをするのが現在の日本武道医学会の主流で、医学を活用した戦いの手法を受け継ぐ流派は多いのですが、各流派の基本として伝わってきた体操法は、あまり注目されてこなかったことから、今では伝えられていない流派も増えています。
体操というと学校の授業のような印象がありますが、「体を操る」という意味で、いかなる状況にあっても充分な状態で身体が動かせなければ敵と戦うことも困難な状況を生き抜くこともできません。疲れた、熱がある、酒に酔ったということでは、どんな達人であっても勝てません。そこで、常に身体の状態を最高レベルに保つための方法が生み出され、その一つとして今でいうツボ療法が取り入れられてきました。
ツボ療法は東洋医学の一つですが、ツボを刺激する方法は同じであっても、刺激する部位が少し違っています。その部位は急所です。急所は古くから伝わる武道では基礎中の基礎として学びます。急所に敵の攻撃が当たったら、大して強くもない刺激であっても動けなくなるほどの衝撃があります。そこで急所を知り、攻撃の手足、武器などが当たりそうになったときに、急所だけは避けるようにします。これなら少々痛い思いをしても、戦い続けることができなくなるということはありません。
急所とツボはまったく異なるものではなく、かなりの部分で共通したところとなっています。ということは、ツボだと思っていたところが実は急所であったということもあり、ツボは適度な刺激であれば身体にはよいものであっても、激痛を伴うような刺激は危険でもあるということです。
急所の知識は、いざというときに急所の知識は敵を動けなくして、その場から離れるためにも知っておきたいことではあります。そんなに凄い技なら先制攻撃に使わない手はない、と言ってくる人もいます。しかし、それは師匠の教えに反することです。鈴木先生は柔道の達人でもありましたが、戦って勝つのは当たり前のこと、戦わずして勝つことが最良であるが、どうしても一戦を構えなければならないときには、攻撃ができないようにして去るほうが正しいと言われていました。
病気との闘いにおいても同じことで、病気になってから手を施すのではなく、病気にならないように手を施すべきであり、そのために戦いに全力を尽くせる身体にしておくための体操術としてのツボ療法を、健康維持のために使うことを教えてくれました。それが急所のツボを刺激することで身体の状態を知る方法で、急所のツボに触れていくと他とは違った反応(張りやコリ、痛みや鈍痛など)があるところがあります。そこと経絡でつながっている臓器があり、まったく自覚症状は現れていなくても、正常ではない状態になり始めていることを知ることができます。
いわば診断術ですが、西洋医学では診断と治療は異なるものです。しかし、この方法であれば、状態を知るために使ったツボが、そのまま治療のツボとなります。ここが面白いことで、闘わずして勝つ方法として、健康づくりに急所を活用した「自分でできるツボ療法」を健康寿命の延伸を目指した活動の中に取り入れています。

健康食品に批判的な記事を載せている雑誌の編集者から、「公的機関の健康食品情報は裏付けがないんですか」という質問がありました。その質問を受けたときに、“あの本を見たのか”と思って聞いてみたら、案の定の返事でした。その本というのは、医学博士が自分の闘病体験から健康術を書いたもので、その中にわずかなページですが、サプリメントの項目があり、そこに「健康食品に科学的根拠はほとんどない」と書かれていました。“ほとんど”というのを忘れたのか、科学的根拠がないと書かれていたものと思ってしまったようです。
そんなことよりも問題は、ほとんどであろうと全部であろうと科学的根拠がないという意見ですが、その意見を述べている先生が以前に公的な栄養研究機関の理事長を務めていたことがあり、その機関が今に到るまでずっと健康食品の有効性と安全性のデータベースとなる情報を公式サイトに載せ続けています。
編集者は、「前に理事長だった人が健康食品に科学的根拠がないと断言しているということは、公的な情報と信じて参考データにしていたのは間違いだったのか」と心配になって質問したとのことでした。
それに対する返答ですが、その先生の断言には疑問もあって、科学的根拠がある健康食品は数多くあります。特定保健用食品も機能性表示食品も科学的根拠がなければ表示できないので、その制度を否定するような断言です。特定保健用食品や機能性表示食品でなくても、科学的根拠に裏付けられたものを私たちは多く確認しています。
編集者が情報源としたのは、健康食品の商品についてではなく、使われている素材についての評価情報です。素材についての科学的根拠はあるものの、それが含まれた健康食品では科学的試験をしていないものが多いので、それをもって科学的根拠がないと言っているなら、これは理解できないことではありません。
ここでは情報源のことを信用しているような書き方をしていますが、本心から信じてるのかと聞かれれば、そうではないと返答します。その情報源の基となっているのは、アメリカのナチュラルメディシン・データベースで、健康食品の素材に関する世界中のデータが集められ、専門家が分析をした結果の有効性情報と飲み合わせの安全性情報が載っています。そのナチュラルメディシン・データベースの日本版の権利を出版社が得てから、前出の公的機関では最新の更新情報を出すことができなくなり、更新されていない過去のデータが基本となって載ったままとなっています。
健康に関わる情報は日々変化し、進歩しているので、古い情報は間違いともなりかねません。編集者には、日本版のナチュラルメディシン・データベースである『健康食品・サプリメントのすべて』を見るように、まずはすすめました。この中の有効性情報は、各成分について6段階で評価(医薬品レベルの有効性〜まったく効果なしまで)されています。そのような情報は、このデータベースだけであることも伝えました。

薬学というと医薬品の学問で、医療機関では薬剤師として医療を支えています。薬学は医薬品だけでなく、健康食品・サプリメントも活動範囲にあり、薬学系の大学で実施されている健康食品管理士制度も薬学研究の一部を占めています。
日本メディカルダイエット支援機構の理事長は、薬学の立場で健康食品・サプリメントの研究に取り組む多くの専門家と付き合ってきましたが、薬学博士としてテレビなどのメディアでも活躍してきた久郷晴彦先生は、当法人の理事をお願いし、今でも相談役として頼りにしています。生き字引のような存在で、91歳になられた現在も私たちの行く先を正してくれています。
健康食品というと、単品の素材だけのものと、メインの素材の効果を高めるために複数の素材をプラスするものがあります。本当に高まっているのか確認しにくいところですが、組み合わせで効果を高めたというのは消費者に響きやすいトークです。
薬学の発想は、これとは違っています。医薬品は単体の効果の薬を対象者に合わせて、複数の組み合わせで使用されています。この組み合わせが処方箋であり、お医者さまの腕の見せどころです。患者に合わせて、薬学の専門家の薬剤師が腕を発揮することはないわけですが、健康食品の素材については、まさに組み合わせの妙があり、それについて久郷先生から教えられたことがあります。
今でこそ健康食品の特徴的な成分として知られるα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10ですが、以前は医薬品の成分であって、2001年にコエンザイムQ10が食品としても使用が許可され、続いて2002年にL‐カルニチンが、2004年にα‐リポ酸が許可されました。
コエンザイムQ10は代謝の補酵素なので、使い方によってはダイエット効果が得られ、優れた抗酸化成分として使うことができます。かなり期待された成分でしたが、吸収率の低さもあって、思ったほどヒットはしませんでした。それに続いてL‐カルニチンが許可されたときに、コエンザイムQ10との組み合わせで脂質代謝を促進させることができることから、その組み合わせ商品を期待していました。しかし、なかなかヒット商品は生まれませんでした。
最後にα‐リポ酸が許可されたことで、糖質代謝をプラスして、画期的な健康食品になり、メタボリックシンドローム対策の決め手になるだろうと期待しましたが、これも期待を裏切られる結果となりました。というのも、組み合わせの効果に気づいていた人もいて、コエンザイムQ10、L‐カルニチン、α‐リポ酸を一つの健康食品の中に詰め込んだものが作られたのですが、単純に組みわせればよいわけではないことが理解されなかったために、せっかくの成分が活かされなかったのです。
そのことについては、これまでに何度か説明してきましたが、組み合わせのメリットとデメリットについて理解させてもらい、摂取のタイミングを考え、新たな加工法を追い求めたのも、久郷先生の教えがあったからです。