食品の高騰が続き、それを受ける形で食品製造会社も飲食店も決断が迫られています。その決断というのは値上げをするのか、それとも量を減らすのか、という二択のことです。今の時代、値上げをすると着実に消費者の反応が悪くなり、売り上げ低下につながるのは当然のことです。そこで各社が採用しているのが量を減らすことです。これを業界ではスモールチェンジと呼んでいます。これがNHKの番組で取り上げられてからというもの、食品の量が減ることによる健康面の影響への質問が増えました。他局のディレクターからも質問がありましたが、1食分を食べているのに思ったよりも栄養が取れないということがあるのかということを気にしているようです。
ダイエットを気にする人は、食品の表示を見て、エネルギー量が少ないほうを選ぶようにします。チョコレート1枚が307kcalのものと279kcalのものがあれば、後者を選ぶはずです。実際に279kcalとエネルギー量が少ないからと喜んでチョコレートを食べている人がいました。
300kcalというと、ご飯(米飯)なら茶碗に1杯半の量になります。少食の人だと1日に食べるくらいの分量のエネルギー量になります。
それが10%分ほども少なくなったので、安心とまではいかなくても、少しは気が許せる量になります。この10%分の差が別の商品なら話はわかるのですが、これは同じ会社の以前の商品とスモールチェンジした後の商品の差です。いつの間にか板チョコが小さくなっていました。実際の重量では55gから50gになっています。その前には1枚が70gだったときもあるので、食べすぎるといけないと言われたチョコレートが、知らないうちに食べすぎないようにされていたということです。
10%分の減量となると多くの人が気づきます。牛乳も1パックが1000mlという常識から900mlに減らされて、価格は同じというものが出てきています。牛乳が1000mlでないというのは以前に沖縄の牛乳パックで言われていました。
アメリカの一部であった時代にはガロン(gallon)という単位で、販売される容器も大きかったのですが、本土復帰のときに1000mlに近い量にするということで4分の1ガロンの946mlとなったという経緯があります。
米も値上がりしていて、コンビニでは人気のない産地の米を使っても、おにぎり1個100円のセールということは難しくなってきました。おにぎりの重量は110g前後で、白米の量が100gで、具材は10gが一般的です。白米100gのほうを維持するのではなく、100円を維持するほうが選択されていて、白米95gのおにぎりの登場となりました。
これからも食品が小さくなる傾向は続くはずですが、食品が小さくなると当然、1食で摂ることができるエネルギー量が減ると同時に、大切な栄養素も減ることになります。コンビニの食品なら買うものも量も自由に選ぶことができるのでよいのですが、業務用の食品となると、これに栄養摂取を頼っていた場合には、いつの間にか摂れているはずの栄養が実は摂れていなかったということにもなります。
これは量の問題だけでなく、加工食品の場合には価格が高い素材が減らされる場合があります。これによって病院で使われる入院患者のための食品の栄養量が低下しているということも起こっています。中身を変えられたら、それが表示されなかったら消費者は知ることができないということをディレクターに話をさせてもらいました。
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「ATPは代謝のエネルギーですか」という質問をしてきた雑誌記者がいました。詳しく答える代わりに、専門書を紹介することを以前はしていましたが、今は資料を出すのではなく、口で言ってわかる程度の話をして、わかりにくいところだけを資料を渡すようにしています。以前のように専門書を示すと、それを読んで、もっともっと詳しく知りたいという質問が次々に寄せられるようになって、返答に1日かかったというのはまだよいほうで、返答すると質問がきて、また返答をするといった調子で3日も4日もかかったことがありました。それからは“適当”な返答、つまり“適して当然”の返答にするようにしています。
それでATPは代謝のエネルギーかという話ですが、ATP(adenosine triphosphate)はアデノシン三リン酸というアデニンとリボースにリン酸が3個つながったものです。アデニンは核酸を構成する塩基で、リボースは単糖です。リン酸を結合する働きがあるのですが、リン酸が1個離れて2個になるとADP(adenosine diphosphate)となります。そして、リン酸が1個離れるときにエネルギーが発生します。ATPはエネルギーではなく、ADPになるときに発生するのがエネルギーです。
例をあげると、ATPはガソリンのようなもので、ガソリンはエネルギーを発生させる燃料です。だから、ATPは代謝のエネルギーということではなく、あえて言うならエネルギー源です。
ATPは活動が盛んになり、エネルギーの材料となる糖質(ブドウ糖)や脂質(脂肪酸)が燃焼したときに多く作られるので、体内での発生量は個人によって、活動量によって行っています。ですが、だいたいの発生量は体重と同じ重量とされています。そんなにも多くのエネルギー源が発生しているのかと思われるかもしれませんが、ATPとADPの間をリン酸が行き来しているので、ATPが多く発生したといっても体重が増えるようなことではありません。
ATPが作られるのは細胞のミトコンドリアの中のTCA回路ですが、ミトコンドリアに糖質と脂質が多く取り込まれて、TCA回路で燃焼が進めば多くのATPが発生します。そして、エネルギーが多く発生するわけですが、このエネルギーは電気の流れのように他のところに送られて、離れたところで使われることはありません。あくまで発生した細胞の中で自家消費されているだけです。それぞれの細胞には役割があり、ホルモンを発生させる細胞であればエネルギーを使ってホルモン分泌を高めることができます。細胞を働かせているのは酵素ですが、酵素は酵素を作り出している細胞の中で発生するので、そのためにもエネルギーは使われています。もちろん細胞分裂も遺伝子の分裂もエネルギーが使われています。
一部の細胞だけでなく、すべての細胞を働かせて、全身の機能を高めるためには、すべての細胞の中で発生するATPを増やし、エネルギーを増やすことが必要になります。そのために重要になってくるのはミトコンドリアに糖質と脂質を取り込まれる量を増やして、燃焼しやすい形のアセチルCoAに変換される量を増やすことです。そのために欠かせないのが三大ヒトケミカルと呼ばれるα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10です。α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。
エスカレータの左右の立ち位置については前回、「西が右側、東が左側」ではなくて、大阪を中心とした関西圏が右側に立ち、他の地域は左側に立つのが大原則であるということを紹介しました。東西での右と左ということでは、お雛様の左右の並びについて語られることが多く、それについても述べたいと思います。
雛壇の右、左というのは正面から向かって、ではなく、上座から見た方向を指しています。京都は地図の右側が左京で、左側が右京ですが、これは京都御所から見た方向となっています。左右は上位が決まっていて、左が上位に当たります。役職でいうと左大臣が上位(上座)で、右大臣が左大臣に対して下位(下座)となっています。
ということになると、雛飾りは男雛が上位なので左(正面から右側)、女雛は右(正面から左側)となっているはずですが、関東の大手の人形会社のお雛様は男雛が右(正面から左側)、女雛が左(正面から右側)になっています。伝統的なお雛様はどうなのかというと、京雛は男雛が左(正面から右側)、女雛が右(正面から左側)となっています。
この東西の、というよりも京都と京都以外の違いの理由として、昭和天皇の皇太子時代のご成婚のときに、皇太子殿下が右(正面から左側)、妃殿下が左(正面から右側)の位置したことから、それに合わせて入れ替わったと説明されています。一般の結婚式の並びも、これと同じになっています。
お雛様の主流の並びからいうと、女性が上位になっているというわけですが、今の時代を考えると女性が上席にいても不思議はないというか、当たり前にも感じるところです。
お雛様と書いてきましたが、内裏雛というのが正式ですが、男女を合わせて一対で内裏雛と呼んでいます。ところが、男雛が“お内裏様”、女雛が“お雛様”と呼ばれることが多くなっています。これは童謡の「うれしいひなまつり」が影響しています。これはサトウハチローの作詞で、「お内裏様ととおひな様、二人並んですまし顔」という歌詞がもとになっているようで、この歌詞を聴くと、そして歌っていると、男雛がお内裏様、女雛がお雛様という印象になりますが、どうしてこのような歌詞になったのかというと後日談としてサトウハチローが間違って書いたということが伝わっています。
これは間違いというよりも、感覚的な許容範囲といえるかもしれませんが、左右で気になるのは「すこし白酒めされたか赤いお顔の右大臣」の歌詞です。赤い顔をしているのは知識・知恵のある老人を表したもので、勢いのある若人は白い顔となっています。この歌詞のために左右を間違って雛壇に飾る人もいて、赤い顔の人形を雛壇の右側に飾っていた知人に、正しい並べ方だと話したところ、上座から見た左右のことを知らず、赤い顔をしたのが右大臣と思って並べたと聞いて、歌詞の威力を感じたことがあります。
赤い顔をしているのは上位である左大臣で、だから上座の右側となっています。これも作詞者が左右を間違えたという後日談があります。これこそは間違いであるので直してもらいたいところですが、ここまで広まっている歌詞を今さら変えられないのなら、この逸話を話して、子供のときから正しく伝えてほしいところです。
いつも固いことばかり書いているという声が寄せられることもあり、たまには軽く読める話をということで、別の切り口で語りたいと思います。書くテーマが詳しく説明するほど固くなるものだと、どう頑張っても軽く読めるようにはならないからです。
日本メディカルダイエット支援機構は東京と岡山に活動拠点を置いて、頻繁に移動して、その途中で下車することもあり、“東京一極集中”のときには気づきにくかったことにも気づけるようになっています。そんな気づきの中からの小ネタですが、エスカレータの立ち位置の話です。
東京ではエスカレータは左側に立ち、急ぐ人には右側をあけておくという慣習があります。大阪との行き来が多かったときには、「東京は左、大阪は右」と単純に考えていましたが、大阪の一つ手前(新幹線で)の京都は観光都市、国際都市だけあって、右にも左にも立っています。前の人が右に立つと、その後に続いて立ち、左だと左に立つという感じになっています。渋滞緩和のために、東京でも左右ともに立って、追い抜かないようにという乗り方が推奨されるようになってきましたが、大阪を過ぎて神戸、姫路まで、おそらく兵庫県内では右に立って左をあけています。
ところが、その先の岡山は左に立って、右をあけています。さらに先まで新幹線でいうと広島、山口、博多まで、ずっと左立ちです。東西で違うというよりも大阪を中心に右立ち文化圏があり、そこから離れたところが左立ち文化圏ということです。もしも日本が丸い地形だったら、中心の京・大阪から離れると別の文化になっていくという考えもあります。
東京と大阪だけで比較していると、その間の名古屋はどちらかという議論も出てきますが、理屈はどうあれ実際には左立ちと東京と同じになっています。
江戸時代の東西対立文化圏というと、武家の街の江戸は左側通行で、追い抜く人は右側を通り、商人の街の大坂(江戸時代は大阪ではなく)では右側通行で、追い抜くときには左側を通るという大原則がありました。武士は左腰に刀を差しているので、右側通行をするとすれ違うときに刀の鞘が当たる、いわゆる鞘当てが起こって、喧嘩の元、揉め事の元になります。全国から江戸在勤のために武士が訪れるためにルールが必要で、左側通行が定められました。
一方の大坂はというと、利き腕の右手に金目の商売の元となるものを持ち、安全のために通りから離れた側に道具や帳面などを持つことから右側通行になったということです。この説は納得がいくところです。
京都は右立ちも左立ちもあると書きましたが、以前は東京と同じ左立ちでした。左右が混ざってきたのは海外からの旅行客が大きく増えたことと関係しています。来日客が最も多い中国は右立ちです。韓国もアメリカもヨーロッパも右立ちです。全員が右立ちの大阪なら旅行客も、それに合わせるようにしますが、左右のどちらもあると自分の国で馴染んでいる側に自然と立つようになるのは当然のことです。
世界標準は右立ちで、東京の左立ちのほうが珍しいのに、東京一極集中的な目で見ていると、大阪だけが違っているというような考え方、書き方になってしまうところですが、東京と地方を行き来していると、一極集中の目線ではなく、全国目線、世界目線で見ていかないといけないということに気づかされたところです。
ウォーキングのスタイルが正しくない人が多いのは、歩き方を教えている書籍や番組の画像に問題があるから、ということは何度が触れてきました。ある健康雑誌が別冊として、正しい歩き方と間違った歩き方を取り上げて、ウォーキング理論を前面に打ち出して特集を組んでいました。これをテキスト代わりにすれば正しいウォーキングを紹介するときに使えると思って、中身も確認しないで購入しました。
中身を見ないで購入したのは、もしも正しい方法であるとして間違った方法でも紹介していたら、これはネタとして使えるという考えがあったからです。その“もしも”をいきなり見つけてしまいました。記事の中身は、それなりの専門家が監修していて、編集者もチェックをしているので、重箱の隅を突くようなことをする必要はなかったのですが、これだけは見逃せないというのがウォーキングのスタイルです。
歩き方の別冊なので、歩いている姿の写真ばかりですが、歩いているシーンを切り取ったのではなくて、歩いている形で止まってもらって撮影したことがわかる画像でした。そのため、文章で表現していることと画像が合っていないのですが、それがわからない人にとっては、この違和感がある歩き方が正しいようにも思えてしまいます。文字に書かれていることよりも画像で覚える人が多いので、間違ったと思える歩き方が、まさに“一人歩き”してしまいます。
特に気になったのは、腕を大きく前後に振って、勢いよく前進することの効能が書かれているところで、肘を曲げて前後に振っています。これでスタスタと歩幅を広げて歩くようにと書かれていても、肘を曲げると腕の振りは早くなりますが、歩幅は広がりにくくなります。肘を曲げると振り子の長さが肘までになって、短い振り子が数多く動くようになります。それに合わせて歩幅を広げるとなると歩くというよりも走らないといけなくなります。別冊に載っていた写真のように歩幅を大きく広げて歩くことと、肘の振りが早くなることは一致しないのです。
では、どうすればよいのかというと、肘を曲げずに、振り子の長さを肩から指先までにします。こうして振り子を長くすると歩幅は自然に広くなり、勢いよく歩けるようになります。
もう一つ気になったのは、効果的な歩き方として紹介されていたノルディックウォーキングです。これも理論は正しくて、ポールを使って勢いよく前進することによって普通に歩くよりも20%もエネルギーを多く使うことができると書かれていました。これは事実ですが、ノルディックウォーキングとして紹介されていた写真がポールウォーキングのポールを使った歩き方で、しかもポールを前方に斜めについていました。これは腕の力も使って、足腰の負担を減らして歩くためにはよい方法であっても、勢いよく歩くという主旨とは違います。
ノルディックウォーキングのポールは設置面のゴムパッドが斜め45度になっていて、後方に斜めにつくことで推進力を得て、勢いよく前進することができます。このことを監修者が知らなかったということではなくて、監修者が見た後で写真が違って入ったのか、そもそも写真を見せないままOKを出してしまったのだろうと思いますが、この写真の歩き方を頭の中に入れてしまったら間違ったままの歩き方をして、それで文章に書かれている通りの効果があると思い込んでいたら、これは不幸なことです。
このような間違いは、これまでも何度となくあり、何度も指摘してきましたが、今回の別冊は正しい歩き方と間違った歩き方を指摘する内容であるのに、正しいといって間違いを示すようなことだけは見逃すことができないのです。
前回は六大栄養素から食物繊維を除いて、代わりにヒトケミカルを加えるという話をしましたが、すぐに反応があって「食物繊維は代謝に関わらないのか」という声があり、中には「食物繊維は必要ないのか」という声まで寄せられました。食物繊維がいらないと言っているわけではなくて、エネルギー代謝で考えると6番目は食物繊維ではなくヒトケミカルだろうと言っているだけです。
食物繊維というと便通に必要なものという認識がまずあります。食物繊維は消化も吸収もされないものという原則があります。代謝のためには消化が必要となります。“原則”と書いたのは、胃で消化されず、小腸で吸収されないのであって、大腸では腸内細菌によって分解されます。そして、代謝に必要なビタミンB群の中でも特に重要なビタミンB₆が大腸内での発酵と吸収によって補われます。となると、食物繊維は代謝には必要なものということになります。
食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類に大きく分けられます。不溶性食物繊維は水に溶けることがない性質があり、水溶性食物繊維は水を吸って膨らんでゲル状になります。不溶性食物繊維は腸壁を刺激して腸の蠕動運動を進めてくれます。しかし、不溶性食物繊維には便を硬くする作用があります。それに対して水溶性食物繊維は水分を多く取り込むことによって便を軟らかくして通過しやすくする作用があります。
また、水溶性食物繊維は粘度が高まることから、胃から腸にゆっくりと移動します。そのために糖質も脂質も、ゆっくりと通過していきます。糖質の中に含まれるブドウ糖は吸収がよいと血糖値が急上昇しますが、通過に時間がかかることで血糖値の上昇が緩やかになります。血糖値が高くなると、それに応じて膵臓からインスリンが多く分泌されます。インスリンはブドウ糖の細胞への取り込みを進めるホルモンですが、肝臓での脂肪の合成、中性脂肪の脂肪細胞への蓄積を進める役割もあります。また、水溶性食物繊維は脂肪の一部を吸着して吸収されにくくさせる働きもあります。
不溶性食物繊維、水溶性食物繊維に関わらず、食物繊維を多く摂ることで腸内での善玉菌の活動が盛んになります。というのは、食物繊維が善玉菌の栄養源(エサ)となっているからです。善玉菌が増えると悪玉菌が減ります。悪玉菌は腐敗によって有害物質(毒素)を作り出します。この有害物質は大腸壁を通り抜けて血液中に入ります。肝臓で完全に分解されない場合には再び血液中に入って、全身を回っていきます。細胞にとって有害物質は不要なもので、代謝にも悪影響を与えます。便通がよくないことは代謝を低下させる原因となっているのです。
便通だけでなく、栄養の吸収に影響を与えるということは、吸収されたエネルギー源の糖質と脂質の代謝にも影響を与えるということです。有害物質による悪影響も考えると、代謝に関わらないどころか、大いに関わっていたということです。そんなにも重要な役割をしているのに、六大栄養素から除こうとしているのは、あくまでもエネルギー代謝という側面から見たときの重要性の順番であって、あえて7番目の存在として重視するのは当然のことです。
三大栄養素といえば糖質、脂質、たんぱく質です。この3種類の栄養素はエネルギー源で、これ以外にエネルギーとなるものはありません。エネルギー源といっても、たんぱく質は身体を構成する成分で、ホルモンや酵素の材料でもあり、さまざまな働きがあることから、たんぱく質がエネルギーとして使われるのはよいことではありません。先に糖質と脂質がエネルギーとなり、それで不足しているときにエネルギーとなります。もしも糖質、脂質、たんぱく質ともに食事から不足していた場合には、身体のタンパク質が分解されてエネルギーとして使われてしまいます。
三大栄養素に続くのがビタミン、ミネラル、食物繊維で、これらを合わせて六大栄養素と呼ばれています。このうち食物繊維を除いて、代わりにヒトケミカルを加えようというのがエネルギー代謝の面で考えた分類で、私たちも、それを採用するのがメディカルダイエットを進めるのによいのではないかと考えています。
ヒトケミカルという言葉は、今では随分と知られるようになってきましたが、正式の科学用語ではなく、栄養学の教科書にもまだ掲載されていません。ケミカル(Chemical)は化学物質を指す言葉で、ヒトは人間を指します。つまり、人間の身体の中で使われている化学物質で、細胞の中の生化学反応を起こしている成分です。代謝のためには、三大エネルギー源もビタミン、ミネラルも使われています。五大栄養素に数えられているものを除いて、残ったものを特に他のヒトケミカルとは異なるということを示すために三大ヒトケミカルと呼んでいます。それに該当するのはα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10です。
この名前を聞いて、サプリメントを思い浮かべる人も多いかと思います。代謝を促進する成分であることから多くのサプリメントに使われていますが、元々は体内で合成される成分です。というのは、この3種類の成分がなければ代謝が起こらないからで、だから合成されているのです。合成されるのなら、“わざわざ身体の外から摂る必要がないのでは”と思われがちですが、体内でのピークは20歳代で、最も多く合成されているのは20歳です。それを過ぎると減少していきます。
減少していっても大きく不足しなければ影響が出ないとも思われがちですが、女性が皮膚の老化を初めて感じるのは25歳前後です。代謝が低下して、同じ食事量、同じ運動量であっても太りやすくなるのは30歳を過ぎたころです。この変化に影響を与えているのが三大ヒトケミカルの減少です。
三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は体外から摂るものとしては、以前は医薬品成分だけが認められていましたが、2001年から2004年にかけて食品の成分としても認められ、サプリメントにも使われるようになりました。
三大ヒトケミカルを六大栄養素にラインナップさせようとするのは、エネルギー代謝に欠かせない成分で、高齢社会の今は不足した状態で過ごしている人が多いからです。α‐リポ酸は糖質のブドウ糖を細胞のミトコンドリアに取り込むことと、ミトコンドリアの中で燃焼させるために作用している成分です。L‐カルニチンは脂肪酸をミトコンドリアに取り込むために必要となる成分です。そして、コエンザイムQ10は細胞内での燃焼に必要となる補酵素です。この補酵素があることで、生化学反応を起こすことができるのです。
三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質と、三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10があればよいわけではなく、糖質はブドウ糖になり、ミトコンドリアの中でアセチルCoAとなって燃焼回路(TCA回路)に回ります。脂質は脂肪酸になり、たんぱく質はアミノ酸となって、やはりアセチルCoAとなります。この変化の段階で、すべてのビタミンB群が必要になります。また、燃焼回路にもビタミンB群が必要になり、さらに鉄などのミネラルも必要になります。つまり、ビタミン、ミネラル、ヒトケミカルがあって初めてエネルギー代謝が起こっているということです。だから、六大栄養素に加えようとしているのです。
テレビの健康をテーマにしたバラエティ番組の中で消化の話があり、「大根にはジアスターゼが含まれている」という言葉が出たときに、このまま気になる発言がなければよいけど……と思って見ていたら、いきなり気になる発言が放送されました。大根に消化酵素のジアスターゼが含まれているのは事実です。だから、消化酵素が破壊されていない状態の生の大根を食べると消化が進むのも事実です。しかし、「ジアスターゼは肉を消化するので、肉を食べるときには大根おろしを食べればいい」という話になると、これは事実に反した情報です。
ジアスターゼは糖質の消化酵素であって、たんぱく質と脂質の消化酵素ではないのです。酵素は特異性があって、それぞれの酵素は一つの仕事しかしません。それなのに消化の専門家(?)として語った医師が、ジアスターゼをたんぱく質の分解酵素のように言ったのは、「ジアスターゼは酵素」と書かれた教科書が以前はあったからです。あくまで以前の話で、栄養学や生理学を学んでいる人なら情報更新されているはずです。
ジアスターゼ(diastase)というのはフランスの研究者が名付けた言葉で、今では英語のアミラーゼ(amylase)を糖質の消化酵素の名前として使っています。アミラーゼは糖質(デンプン)の消化酵素だと教科書に書かれているので、それを間違えて発言する人はいないと思うのですが、ジアスターゼというと消化酵素全般を指す用語で、“アミラーゼとジアスターゼは別物”という情報がインプットされたままの人も少なからずいます。だから、番組の内容をチェックする立場の人もスルーすることになったのだと思います。
アミラーゼが唾液や膵液として分泌されて消化酵素として働くと何が起こるかというと、デンプンが分解されて二糖類のマルトースや単糖のブドウ糖になって、これが吸収されます。ブドウ糖にまで消化されるのは、ただ吸収が早くなって胃腸に負担がかからなくなるだけでなく、ブドウ糖が早く吸収されることによって血糖値が早く上昇するようになります。血糖は血液中のブドウ糖のことをいいます。血糖値が上昇すると、脳の満腹中枢が反応して、食欲にストップがかかるようになります。早く消化されるということは、早く満腹を感じるようになり、食べすぎが抑えられるということです。
血糖値が上昇すると膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンにはブドウ糖を細胞に取り込むのを進める働きがあるので、食事で摂った糖質をエネルギーとして効率よく使うことができるようになります。インスリンには肝臓での脂肪合成を進める働きもあるので、血糖値が上がることによって脂肪細胞に蓄積される脂肪(中性脂肪)が多く作られるようになるのです。
ダイエットということで考えると、脂肪合成が進むのはよくないことのように思われるかもしれませんが、脂肪は重要なエネルギー源で、それを増やすことができるのだから、大切なことであるわけです。もちろん、それが行きすぎた場合には、ありがたくない反応ということになります。
日本の少子高齢社会への警鐘を鳴らし、「少子高齢に歯止めをかける」と発言した地方創生大臣を批判した研究者の講演に期待を持って参加しました。日本メディカルダイエット支援機構は活動拠点を東京と岡山の二か所にして、東京と地方の両面からのアプローチで、メディカルダイエットを高齢社会対策に役立てようとして活動を進めてきました。その参考になるのではという期待を抱いていました。その対策として10の考えがあるというのでワクワクもしていましたが、一つ目の対策を聞いただけで、この後も聞くべきかと思ってしまいました。
その対策というのは「高齢者を減らす」というテーマで、“まさか、この話だけはないだろう”と思っていた“まさか”の話をされて、その後に“ひょっとしたら別の話があるのでは”と淡い期待も持っていたのですが、それもないまま次の話題に移ってしまいました。
示された対策は、「高齢者の年齢を引き上げる」ということでした。高齢者は現在、65歳以上となっています。それを75歳以上にするというのです。65歳を75歳にというのは、日本老年学会と日本老年医学会が提言していることで、今の高齢者は心身ともに10歳は若くなっているので、高齢者を75歳からにして、65〜74歳を准高齢者にしようという内容です。
10歳ほど身体が若くなっているのは認めるところですが、年齢を重ねるほど増えていく認知症患者と軽度認知障害の該当者は年齢に比例して増えていく一方です。身体は若くなっていても認知機能が低下したのでは、若年性認知症が増えたのと同じ、高齢者が増えたのと同じになってしまいます。
軽度認知障害で患者と書かなかったのは、軽度認知障害と診断されてもピンポイントの治療薬がなくて、バランスの取れた栄養、適度な運動、充分な休養という当たり前の指導しかされないので、患者と呼ぶのに抵抗を感じるからです。
高齢者の年齢を上げると高齢化率は改善できます。しかし、今の75歳が昔の65歳と同じ状態なのかというと、同じとは言いにくい状況です。その状況の一つとしてあげたいのは、生涯医療費のデータです。一生涯に使う医療費のうち半分が70歳以降で使われています。70歳前の70年間と、男性の場合は後の10年間で同じだけの医療費が使われているということです。
高齢者を65歳から75歳に変えたことで、生涯医療費の半分を使う時期が75歳に5歳だけでも上がったというなら75歳になるまで病気があったとしても“元気”ということが言えるかもしれません。高齢者のイメージというと、身体が弱い、病気が多い、医療費がかかるという現状から考えると、医療費のピークにズレてくれないと、なかなか認めること、納得することはできないところです。
生涯医療費のデータを見ていて気づくことは、60歳くらいから大きく上昇する曲線を少しでも低くできないかということです。高齢になってから、病気になってから対応するのではなく、高齢になる前に、病気になる前に対応して、悪化しないように少しでも医療費がかからないように、そして改善ができる状態で治療を始めるようにすることが求められるということです。
高齢者の基準の年齢を上げるのではなくて、65歳を超えたら高齢者であることを意識して、早めに検査を受ける、早めに改善に取り組む、早めに治療する、そして早めに治して通院しなくてもよいようにするということが理想であると考えます。その考えからすると、高齢者の年齢を上げるなら、別の対応もしなければいけないのではないか、ということが言いたいのです。
そのようなことを指導して日本メディカルダイエット支援機構の仕事が終わるわけではなく、実践してナンボ、結果を出してナンボの世界です。高齢者とされる年齢になっても、高齢者の身体の状態ではなくて、年よりも若々しくいられるように運動指導、栄養指導などを行い、指導の意味を充分に理解して継続してもらえるように教育にも力を入れているところです。
「バーチャルウォーターって、どんな飲み物ですか」という質問を受けたことがあります。バーチャルというと、その後にはリアリティーが続くのが昨今の流行ですが、バーチャルは仮想現実ということからするとバーチャルウォーターは仮想現実の水ということになり、飲んでいるつもりでも実際には飲めていない水ということになります。
なんだか、よくわからない話ですが、環境省の説明によると「輸入している食料を生産するために使われている水」を指しています。日本は国内での食料自給率はエネルギーベースで38%となっています。実際に食品を販売している店舗を見ても、62%が輸入品ということではないのですが、エネルギーベースというのがキーワードです。生産額ベースでは68%となっています。
日本で生まれた牛を育てるために使われている飼料が輸入されたものであると、この牛はエネルギーベースでは100%が輸入ということになります。育てるための飼料まで考えに入れるのはバーチャルウォーターについても同じことです。
海外から輸入している食品を国内で生産する場合にかかる水は、1kgのトウモロコシでは1800ℓの水が必要となります。そんなにも多くの水がいるのかと感心していてはいけないということで、このトウモロコシを飼料として育てられたオージービーフやアメリカンビーフは出荷までに2万kgのトウモロコシを食べています。1000kgが1t(トン)なので20tものトウモロコシが必要になります。そのトウモロコシを育てるために必要な水は3万6000klとなります。
海外から食料を輸入しているということは、その生産に必要な分の水を使わないで済んでいるので、水を輸入しているのと同じことだ、というのがバーチャルウォーターの考え方です。
今よりも食品の輸入比率を下げて、国内生産による自給率を高めようとすると、それだけ多くの水を使わなければならなくなります。日本は降水量も多く、一部の地域を除いては水資源に困らない国だと言われていますが、現在の食料自給率を100%にするとしたら、日本全体で消費されている水と同じだけの量が必要になると計算されています。こう考えると、日本は水が豊かな国であるというのは本当なのか、という疑問も湧いてきます。
それは無理だとすると、海外から輸入される食料を確保し続けることを考えようということになってきますが、それが可能かという話があります。現在は食料が自給できていても、将来的には不足することが懸念されている国が日本の近くにあって、その国の人口は世界人口の37%を占めています。中国の約14億人、インドの約13億人を合わせた27億人の食料は今でも不足しているのに、両国とも経済発展をしているため、さらに増え続けます。
その両国に日本が頼っている食料が回されることで、日本が今と同じように食料を確保できるのかというと、それは甘い考えだとされています。バーチャルウォーターは今よりも減っていくということですが、その分の食料を作るための水を確保しなければ「水も飲めない」という状況が“仮想現実”として迫っているということを質問者に話したら、唖然とした顔をされていました。





