メディカルダイエットは体内の代謝の仕組みを活用した科学的ダイエット法です。代謝の重要性についての話をしているときに必ずといっていいほど出てくるのが基礎代謝です。基礎代謝は生命維持のために使われるエネルギー量ですが、正式にいうと基礎代謝量といい「12時間以上の絶食後に安静状態で1日に消費されるエネルギー量」を指します。
1日に使われる全エネルギー量のうち60〜70%が基礎代謝量となりますが、約10%は食事をした後に使われる食事誘発性体熱産生量であるので、残りの20〜30%は活動代謝量、つまり身体を動かすことによって使われるエネルギー量となっています。60〜70%も占めているので「基礎代謝を高めてダイエット」というサプリメントや運動器具が登場するのも、それを買ってダイエットしようという人がいるのもわからないではありません。
基礎代謝量は生きていくのに必要なエネルギー量であるので、下がるということがあっても、なかなか高まるものではありません。下がった基礎代謝量は普通の状態に戻るということはあっても、例えば肝臓の働きが急に高まって多くのエネルギー量を使うようになるということは普通に生活をしていたら、ほとんど起こることではありません。ある成分を摂って代謝が高まったとしたら、それは代謝が低下していたのが普通の状態に戻っただけ……ということが少なくないのです。
基礎代謝のエネルギー消費量が多いのは、筋肉、心臓、肝臓、腎臓といった活動が盛んなところで、中でも筋肉は基礎代謝量のうちの35〜38%は占めているので筋肉が増えれば基礎代謝量が高まると考えられがちです。
筋肉を増やしてエネルギー源の燃焼が多くなれば何でもいいのかというと、糖(ブドウ糖)が燃焼した場合には、ブドウ糖が肝臓で中性脂肪に合成される量が増えにくくなります。その意味ではダイエットにつながるとしても、これでは積極的に体脂肪を減らしたいという希望を充分にかなえるものではありません。ブドウ糖だけをエネルギー源として使っているのは白筋で、筋トレをすることによって太くなっていく筋肉です。
それに対してブドウ糖と脂肪酸をエネルギー源として使っているのは赤筋です。負荷が少ない繰り返しの運動によってついていく筋肉で、有酸素運動をすると脂肪を多く燃焼させる必要性が高まることから、赤筋が増えて、酸素を使って脂肪酸を燃焼させる能力が高まっていきます。歩くことによって効果的に脂肪酸を燃焼させたかったら、そのための筋肉は歩くことによってつけていくのが効率がよい方法ということになります。
筋肉が増えても、筋肉を動かしていないと脂肪酸は燃焼しないような印象がありますが、筋肉は寝ているときにも脂肪を分解して、燃焼させてエネルギーを作り出しています。正確にいうと脂肪酸を細胞のミトコンドリアの中で燃焼させることにとって、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作られています。ATPにはリン酸が3個ついていますが、そのATPからリン酸が1個離れたADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが発生します。寝ているだけの何もしていないような状態でも、基礎代謝分のエネルギーは使われています。1日に8時間寝ていると、全エネルギー量の60%の基礎代謝量のうち20%が使われている計算になります。他の活動代謝量、食事誘発性体熱産生量の分がなかったとしても全体の20%は寝ている分に使われ、そのエネルギーを使っているのは筋肉が最も多いので、このことが「筋肉を増やせば基礎代謝が高まる」ということになるわけです。
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高齢者はWHO(世界保健機関)の定義では65歳以上とされています。我が国の厚生労働省も、これを採用して、さらに65〜74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と分類しています。この分類は「高齢者の医療の確保に関する法律」によって定められています。これに対して日本老年学会と日本老年医学会は、現在の高齢者は心身ともに若くなっていることから、高齢者を75歳以上とすることを提言しています。そして、65〜74歳は准高齢者としています、つまり、現在の後期高齢者を高齢者として、前期高齢者は高齢者ではなく、“准”は準じるという意味の言葉であるので、高齢者に準じる存在であって高齢者ではないということを示しているわけです。
准高齢者という言葉は、これは単純に高齢者の年齢を高くしたから他の呼び方が必要になった、あえて新たな用語として作ったということではありません。高齢者というと、介護ということでは支えられる側という印象があり、高齢者が高齢者を介護するのは老老介護と呼ばれて、特別な状態のように思われていました。しかし、高齢化が急速に進んで、高齢者が高齢者を介護することが例外とはいえない時代となると若くて元気な高齢者が、そうでない高齢者を支えることが重要になります。
65歳を超えた人は、支えられる側から支える側になれるように健康で元気でいること、それも自分のことができるだけでなく、他人のためにも元気な状態を使えるようにしておくことが重視されるようになりました。ということで、支える側の人を、過去の分類の高齢者を使いつつも別の存在ということから准高齢者という考え方をするようになったのです。
このようなことを言っていられるのは、まだまだ本格的な高齢社会ではなく、高齢化社会だったからです。“化”があるのかないのかのボーダーラインは、どこにあるのかという議論は、これまでも各場面で行われてきましたが、高齢者(75歳以上)が支えられる側で准高齢者(65〜74歳)が支える側ということからいうと、支えられる側が支える側よりも増えたときが限界を超えたと判断されます。これまでは高齢化社会と言われてきたものの、支えられる側の高齢者が支える側の准高齢者を上回ることはありませんでした。しかし、2018年のうちに高齢者が准高齢者を超えることが明らかになり、それまでに何をすべきなのかが議論されてきましたが、とうとう先だと思われてきた年に突入して、もう待った無しの状態になりました。
前期高齢者が後期高齢者を支えるためには、65歳になってから、もしくは65歳を前にして健康づくりを始めたのでは間に合わないので、できるだけ早く始めてもらいたいところですが、その重要な年齢は50歳です。代謝機能が大きく低下して、年齢を感じることが多くなり、機能低下が体質的なところから病気に結びつくようになる年齢です。支えるということを考えると、50歳以降の男性は外での仕事が忙しいときで、まだ支える側と言われてもピンとこないはずです。それに対して、女性でも男性と同じように働いている人が増えてきたことを認めつつも、家庭でも地域でも支える側であることを期待されているのは50歳以降の女性です。
この支える側である重要な50歳の女性は、自分が支えられる側になるまで25年もあります。この期間に体力をつけ、健康であるように頑張ったら、支える側であるときも楽であり、支えられる側になったときには支える人を楽にすることができます。その重要な50歳以上の女性が、全女性の半数を超えるのが2020年に迫ってきています。今こそ、取り組みを始めるタイミングということを強く意識して、日本メディカルダイエット支援機構は全国対象で健康教育と情報発信をしながら地域での実践活動にも取り組み始めます。その第一弾が、未病をテーマにした健康づくり体験イベントです。
健康セミナーのQ&Aコーナーでのこと、「ビタミンで様がついているのは、すごいビタミンなんですか」という質問を受けました。ビタミンは身体の中では作られないものなので食品から摂る必要があるわけですが、様(さま)がつけられるほど優れた働きがあるなら是非とも摂りたいと言われて、様(よう)を様(さま)と読んでしまったことがわかり、ビタミン様(よう)物質の意味を紹介しました。
専門家のセミナーに参加していたときに、やはりビタミン様物質の話が出て、「それはビタミン様物質で、ビタミンとは違うもの」と簡単に決めつけて質問への返答にした講師がいましたが、疑問にはわかってもらえるまで付き合うのが私たちのスタンスです。
それで答えとして話したのは、「体内で作られるビタミンのような働きをする物質ということで、ビタミン様物質と呼ばれています」ということから始めます。ビタミンのような働きというのは何かというと、代謝に関わる働きです。代謝にはエネルギーを作り出すエネルギー代謝と、身体に必要な成分を作り出す物質代謝があります。ビタミンのうち代謝に関わるのは主には水溶性ビタミン(ビタミンB群、ビタミンC)です。水溶性ビタミンではないのに、これと同じように働くのがビタミン様物質で、α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10、多価不飽和脂肪酸などがあげられます。
ビタミン様物質には、ビタミンではないのにビタミン◯◯とビタミン名がつけられているものがあります。これは発見当初はビタミンであると考えられたことから起こったことですが、ビタミンFは多価不飽和脂肪酸、ビタミンNはチオクト酸です。チオクト酸はα‐リポ酸の別名です。ビタミンQはコエンザイムQ10です。三大ヒトケミカルのうちα‐リポ酸とコエンザイムQ10は英字一文字がつけられていますが、もう一つのL‐カルニチンはビタミンBTとなっています。
この他に通常のビタミン名ではなく英字がつけられたビタミン名としては、ビタミンH(ビオチン)、ビタミンM(葉酸)、ビタミンP(ケルセチン)、ビタミンS(サリチル酸)、ビタミンU(塩化メチルメチオニンスルホニウム)があります。ビタミンUはキャベツから発見されたことからキャベジンとも呼ばれる胃粘膜を保護する成分です。
ビタミン様物質は体内で合成されるということは摂取しなくてもよいという考え方もされがちです。「摂取する必要はない」と書かれている教科書も存在しています。それなのにビタミン様物質が使われたサプリメントもあります。これは必要がないのに“効果がある成分”ということで無理に加えていると考えられることもありました、しかし、体内で合成されるといっても、合成のために必要な成分が足りていなければ充分に合成されなくなります。また、合成能力は年齢を重ねていくと低下していくために、代謝が低下する年齢では充分に合成されていない結果であるということも、よくみられることです。その代表的なものが三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10です。
ビタミン様物質は代謝に必要な成分ということで、代謝をテーマとしている日本メディカルダイエット支援機構の講習と情報発信の中で頻繁に出てきますが、それぞれの有効性と使用法などの情報は、このコーナーでも次々に行っていきます。
エネルギー代謝に必要な成分の代表がα‐リポ酸とL‐カルニチンであることは随分と知られてきました。α‐リポ酸はブドウ糖を細胞のミトコンドリアに取り込んでエネルギー代謝を起こさせるために欠かせない成分です。L‐カルニチンは脂肪酸をミトコンドリアに取り込んでエネルギー代謝を起こさせるために欠かせない成分です。ともに体内で合成されているものの20歳代をピークに合成量が減ってくるので、減少は脂肪の燃焼を減らし、ブドウ糖から脂肪に合成される量を増やすという結果につながります。
α‐リポ酸もL‐カルニチンも医薬品であったものが食品として使うことが許可され、サプリメント成分として使われるようになったことから、代謝の有効性は確認されています。L‐カルニチンが許可されたのは2002年、α‐リポ酸が許可されたのは2004年であったので、すでに長い期間を経ていますが、その割にはダイエット効果が得られる成分と広く認められていません。それはα‐リポ酸とL‐カルニチンに効果がないからではありません。
L‐カルニチンの場合には2002年当時には海外のデータでは有効と言えないような報告がありましたが、これは調査対象となった欧米人は肉食を歴史的に続けてきたことから民族的に体内にL‐カルニチンが多く蓄積されているために、サプリメントとして摂っても効果が得にくかったということがあります。日本人は年齢を重ねると体内合成が大きく減ることからサプリメント摂取で大きな効果が得られることが確認されています。
α‐リポ酸には天然型のR体と非天然型のS体があり、体内で作用するのはR体だけです。しかし、R体は胃液で分解されてα‐リポ酸として吸収されなくなるので、そのままでは使うことができません。そこで、R体とS体を組み合わせたものがサプリメント素材として使われています。これによって分解されにくくはなりましたが、分解されないわけではないので、吸収されるR体は半分以下となります。
量が少なくなるだけでなく、そもそもサプリメントに使われる量が少ないという問題があります。サプリメントは一般の食品とは違って味わいは関係ないものとされています。しかし、これはおいしいという感覚ではないということであって、味がないわけではありません。サプリメント素材が凝縮されているので、刺激的な味が強くなっては多くは摂れなくなります。
α‐リポ酸にはピリピリした刺激的な味があり、L‐カルニチンには苦味があります。多くの量を使うと、他に味を付加する成分を入れてもカバーできなくなります。そのために使う量を少なくしているという実情もあります。
サプリメント成分の特徴的な味を隠して、しかも成分の有効性は失わせない方法があり、その代表的なものは環状オリゴ糖のマスキング効果を活用した茶カテキン、ウコン、ブラックジンジャーがありますが、α‐リポ酸とL‐カルニチンも、その環状オリゴ糖の効果を活用することで、多くの量を有効に摂ることができます。環状オリゴ糖はシクロデキストリンとも呼ばれています。
α‐リポ酸、L‐カルニチン、シクロデキストリンについては、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。
「必須アミノ酸は11種類ではないのですか」という質問が、科学情報紙の編集者からありました。体内で合成することができない必須アミノ酸は食品から摂る必要があり、体内で必要な20種類のアミノ酸のうち体内で合成されるアミノ酸(非必須アミノ酸)は11種類なので、これを引くと必須アミノ酸は9種類ということになっています。それに2種類プラスしてきた意味がわかっているので、さすがと言いたいところですが、その理由を聞かれたので、さすがとは言いにくくなりました。
必須アミノ酸はスレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファンの9種類です。
ヒスチジンは体内で合成されます。以前は乳幼児には必須アミノ酸とされてきましたが、今では成人でも必須であることがわかり、どの年代においても9種類となっています。これに対して、アルギニンは成人では非必須アミノ酸ですが、乳幼児では合成量が少ないために必須アミノ酸と非必須アミノ酸の中間的な立場の準必須アミノ酸とされています。
ここまで説明してきて、準アミノ酸という言葉は聞き慣れていなかったようで、繰り返し質問されました。
非必須アミノ酸のシステインとチロシンも合成量が少ない人がいることから、これも準必須アミノ酸とされます。というのは、この2種類のアミノ酸は必須アミノ酸から合成されていて、必須アミノ酸が不足していると合成量が足りなくなるという事実があるからです。システインはメチオニンから合成され、チロシンはフェニルアラニンから合成されます。
グルタミンはグルタミン酸から合成される非必須アミノ酸ですが、ストレスで不足しやすく、ストレス社会の現在では、これも準必須アミノ酸とされています。
こうなると必須アミノ酸と非必須アミノ酸の定義がわかりにくくなりますが、ここで非必須アミノ酸を列挙しておくとグリシン(セリン、スレオニンから合成)、アラニン(グルタミン酸、ピルビン酸から合成)、セリン(グリシン、グルタミンから合成)、チロシン(フェニルアラニンから合成)、システイン(シスチン、メチオニンから合成)、アスパラギン(アスパラギン酸から合成)、グルタミン(グルタミン酸から合成)、プロリン(グルタミン酸から合成)、アスパラギン酸(グルタミン酸から合成)、グルタミン酸です。
合成されるルートを見ると、グルタミン酸がスタート地点にあることがわかります。グルタミン酸は魚介類や昆布などの旨味がある食品に多く含まれています。これらの食品が不足していると、非必須アミノ酸であっても不足する可能性があることがわかります。
リシン(lysine)はリジンとも呼ばれていましたが、今では英語読みのリシンに統一されています。脂質代謝に必要なL‐カルニチンは必須アミノ酸のリシンとメチオニンから合成されています。リシンが不足するとL‐カルニチンが不足して、ミトコンドリアに脂肪酸が取り込まれにくくなり、ダイエットにはマイナスとなります。また、糖質代謝に必要なα‐リポ酸は必須アミノ酸のヒスチジンから合成されます。
「糖と脂肪は、どちらが身体によくないのですか」という質問が来ました。もっと条件をつけてくれないと、どう答えても間違いということになってしまうので、質問者の雑誌記者に何を目的としているのかと質問返しをしたところ、「脂肪のほうがよくないという人が多いので、糖のほうがよくないという理屈がないかと思って」とのこと。こういった質問があるということは、一般に“脂肪はよくない”という考えが広まっているからですが、あえてよくないほうをあげろと言われたら、糖をあげます。
これは糖尿病と脂質異常症を比べると糖尿病が圧倒的に多いことが関係しています。国民健康・栄養調査(平成28年)によると糖尿病が強く疑われる者(糖尿病患者)は約1000万人、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)は約1000万人と全国民の20%が糖尿病か予備群と推定されています。この割合とされているのは調査対象が20歳以上人口の約1億人だからです。
それに加えて、脂質異常症という言葉が一般に広まっていないこともあります。脂質異常症は、以前は高脂血症と呼ばれていました。高脂血症とされたのは高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症ですが、HDLコレステロールは数値が高いことが悪いわけではなくて、低いことで動脈硬化のリスクが高まることから高脂血症という名前がふさわしくなくなり、2007年から日本動脈硬化学会によって脂質異常症という病名が使われるようになりました。
“脂肪はおいしいのでたくさん食べられる”と言われていますが、これは脂肪が多く含まれる肉や魚がおいしいのであって、脂肪だけを取り出して脂身を食べてもバターを舐めても、そんなに多くの量を食べられるものではありません。それに比べたら糖質が多く含まれた主食(ご飯、パン、麺類)は相当の量が食べられます。限界に近いほど食べた後でも、まだ食べられます。主食に脂肪だけでも食べることができます。肉だけを食べていて、もう食べられないという限界を過ぎたときに、ご飯と一緒だと、さらに食べられるようになります。これが糖質の威力です。
これは“別腹”というよりも、血糖値と満腹中枢の関係があるからです。ブドウ糖を多く摂って血糖値が上昇すると膵臓からインスリンが分泌されてブドウ糖が細胞に取り込まれることから血糖値が下がります。血糖値が下がると摂食中枢が盛んに働くようになり、食欲が高まってきます。その結果、また食べられるようになります。
砂糖はブドウ糖と果糖が1対1の割合で構成されていて、一気に血糖値を上昇させます。砂糖が多いものは、食べても食欲が進むために、いつまでも食べられるという恐ろしさがあります。もっと恐ろしいのは砂糖とぶどう糖果糖液糖が使われたスポーツ飲料などのペットボトル飲料で、血糖値の上昇が引き金のインスリンによる血糖値の急降下、そのための空腹感、それを解消するための飲料の過剰摂取というペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)に陥り、血糖値が高まりっぱなしの状態にもなります。
血糖値が高い状態が長く続くと、血管の細胞に多く取り込まれたブドウ糖によって細胞の新陳代謝が低下します。これが血管の老化の始まりで、血管から老化は始まるものの全身の細胞に影響が出てきます。こうなると少しコレステロールが増えて、コレステロールが活性酸素によって酸化しただけでも動脈硬化のリスクが大きく高まることになり、脂肪の増加と比べ物にならないくらいに健康被害を引き起こすという説明をさせてもらいました。
糖質を摂ると肝臓で脂肪が合成されるという話について、テレビ関係者から連絡がありました。今回は質問というよりも、つぶやきのようなもので「脂肪が作られるなら脂肪は摂らなくてもいいんですよね」という内容でした。体内で合成されるなら、わざわざ摂らなくてもよいという話は、三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10のところで何度も触れてきました。三大ヒトケミカルは若いうちは合成量が多くても年齢を重ねると合成量が減ってきて、摂取の必要性が高まってきます。
脂肪はというと、年齢を重ねると合成量が逆に増えるのではないかと思えるほど、脂肪細胞の中に多くたまってくる感じですが、これは合成量が増えたからではなくて、代謝が低下してきて、エネルギーとして使われなかった分だけ脂肪がたまってきた結果です。この代謝というのがキーワードで、「代謝によって体内で合成されない脂肪だけは摂る必要がある」というのが答えです。
脂肪は、いくつかの分類方法があります。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸という分類もありますが。ここで取り上げているのは必須脂肪酸と非必須脂肪酸という分類です。必須脂肪酸は体内で合成されないために食品から摂らなければならない脂肪酸です。非必須脂肪酸は体内で合成されることから、食品から摂らなくてもよい脂肪酸です。なぜ合成されるのかというと、体内に合成のための酵素があるからで、合成されないのは合成のための酵素がないからです。
非必須脂肪酸の合成は、水素のやり取りによって脂肪酸の組み換えが行われるので、特に何かの成分を摂らなければいけないということはないのですが、これがアミノ酸となると話が違ってきます。身体を構成するアミノ酸は20種類あり、そのうち9種類は体内で合成されないために食品から摂る必要がある必須アミノ酸となっています。それ以外の11種類は体内で合成されるので食品から摂らなくてもよい非必須アミノ酸です。
必須アミノ酸がバランスよく、しかも必要量に達しているのは肉、魚、卵、大豆で、これらは良質なたんぱく質と呼ばれています。これらの食品には非必須アミノ酸もバランスよく含まれているので、とりあえず食べておけばアミノ酸不足になることはないと考えられています。しかし、ここで問題となるのは非必須アミノ酸を体内で合成するために働く酵素を補う補因子の存在で、ビタミンB₆がないと酵素は働くことができません。ビタミンB₆はアミノ酸を異化するトランスアミナーゼ補因子となっています。
ビタミンB₆は肉、魚、牛乳、大豆に含まれているので、通常の食事では不足することはないのですが、たんぱく質が不足した食生活ではビタミンB₆も不足するので、非必須アミノ酸も不足するようになります。三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10はアミノ酸を材料としているので、アミノ酸不足、つまりたんぱく質不足は代謝を低下させることになり、生命時のためのエネルギーが充分に作られないことにもつながるということです。
血糖値が上昇すると肝臓での脂肪合成が盛んになるという話を再三してきましたが、「どれくらい増えるのですか」という質問が雑誌記者からありました。どれくらい増えるのかというのは、ご飯100gを食べると脂肪が10g増えるのか20g増えるのかということを聞いてきているわけですが、脂肪酸の合成量は遺伝子でも異なり、血糖値の上昇度合いでも異なるので、かなりの個人差があります。しかし、多くの人の例から計算式が出されていて、ご飯は茶碗1杯160gを食べた場合には、その中に含まれている糖質は60gほどとなります。この60gの糖質のうち肝臓で合成される中性脂肪は17gとなります。
ご飯160gに対して17gの中性脂肪というと少ないように思えるかもしれませんが、エネルギー量で比較してみると、糖質は1gあたり約4kcalなので60gでは240kcalです。ご飯に含まれるたんぱく質は4gで1gあたり約4kcalなので16kcalとなります。脂質は0.5gで1gあたり約9kcalなので4.5kcalとなります。エネルギーとなるのは糖質、脂質、たんぱく質だけなので、これを加えると260.5kcalとなります。
17gの中性脂肪のエネルギー量は153kcalとなり、58.7%ものエネルギー量が中性脂肪として脂肪細胞の中に蓄積されることになります。糖質を肝臓で変化させて、わざわざ中性脂肪としているのは、エネルギー量が高いものとして蓄積させるための仕組みです。エネルギー量が高めれば、それだけ少しの容量で済むことになります。
ブドウ糖は1分子でエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を38分子作り出すことができます。これは無酸素状態で2分子、ミトコンドリアのTCA回路で36分子の発生を加えたものです。これに対して脂肪酸は1分子で129分子のATPを作り出すことができます。エネルギー量で比較すると糖質と脂質は2.25倍の差ですが、ATPの数で比較すると3倍以上の差になります。
こういった計算は、ご飯だけを食べたときの話で、ご飯と中性脂肪が多く含まれる肉類、揚げ物を食べると、さらに蓄積されるエネルギー量が増えます。脂肪細胞の中に蓄積される中性脂肪は、食事で摂った脂肪と似たような形であるので脂肪合成されるときに使われるエネルギーロス率は3%ほどで済みます。それに対して糖質とたんぱく質が脂肪合成されるときには異なる形に変化することから20〜23%ものエネルギーロス率となります。
これだけの差があるので、糖質を多く食べると、中性脂肪が多く作られて、太っていくようになるわけです。これはダイエットで考えると困った仕組みと見えるかもしれませんが、生命維持のために重要となる中性脂肪の蓄積ということで考えると、これほど重要なメカニズムはありません。人間の身体は食糧危機に対応できるようになっているので、それに逆らってダイエットすることは、そう簡単なことではないということがわかります。
太るかやせるかは食事量と運動量のバランスだと言われています。食事で摂るエネルギー量が運動で使うエネルギー量よりも多ければ太る、運動で使うエネルギー量よりも食事で摂るエネルギー量が少なければやせるという考えです。これは基本中の基本で間違ってはいないのですが、10代から20代前半の若い女性の場合には食事を減らしても、運動を増やしてもやせないということはよくみられることです。
“成長期”という表現は10代を指していますが、ダイエットに関しては10代から20代前半の女性は成長期に当たり、体内で生化学反応を起こす酵素の量は充分にあります。
成長のためのホルモンも充分すぎるほどあるので、“放っておいても太る”というような状態にあります。そして、22歳から23歳ころにかけて身体は引き締まるようになり、25歳を過ぎると酵素の減少から健康面と美容面の変化が起こってきます。
このような変化がある時期だけに、普通のダイエット法が通じないことがあります。普通のダイエット法というのは、食事を減らす、運動を増やすということですが、どうして食事を減らしてもやせないのか、運動を増やしてもやせないのかというと、一つには成長のための身体の働きが上回っていることが考えられますが、もう一つが実は大きな問題で、それは代謝成分の不足です。
脂肪を燃焼させるにはブドウ糖と脂肪酸を燃焼する形に変化させるためのビタミンとミネラルの不足です。これと同時に不足が指摘されるのはアミノ酸の不足です。20代前半までは代謝促進成分であるα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は体内で多く合成されていて、不足することはないとされています。しかし、この合成のためには材料となるアミノ酸が必要です。身体を構成するアミノ酸は20種類あって、そのすべてが充分に含まれているのが良質なたんぱく質です。それに該当するのは肉、魚、卵、大豆です。
アミノ酸の種類が揃い、それらが充分な量に達していれば、体内で必要となるたんぱく質が不足なく作られます。身体を動かすために必要な酵素もホルモンもたんぱく質です。これらの食品を充分に食べていないとアミノ酸が不足して、酵素もホルモンも不足することになるということです。
α‐リポ酸はブドウ糖を細胞のミトコンドリアに取り込むのに必要で、ブドウ糖が変化したアセチルCoAをエネルギー化させるためにも必要となります。L‐カルニチンは脂肪酸をミトコンドリアに取り込むのに必要となります。そして、コエンザイムQ10はミトコンドリア内でエネルギーを作り出すときの補酵素となります。この重要な働きをする成分であることから体内で合成されるわけですが、その合成のために絶対に欠かすことができないアミノ酸が不足しているのでは、運動をしても脂肪燃焼が充分に起こらないということになります。
そして、食事の量を減らしても脂肪の燃焼が充分に起こらないので、食べていないのにやせない、ということにもなります。
「食べることもダイエット」と言われますが、これは燃焼のために必要になる栄養素が含まれた食品を摂ることを指しています。燃焼に必要なビタミンはビタミンB群で、中でも不足しがちで多く摂らなければならないのはビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂です。これらは肉、魚、卵に含まれています。つまり、動物性のたんぱく源を欠かさないようにすることが重要だということがわかります。
ボケ(呆け)というのは使いたくない言葉ですが、今回のテーマが「ボケとトボケ」なので、あえて使っています。ボケはよくない表現なので痴呆症という言葉が使われましたが、これもよくないということで認知症が広く使われています。認知症と物忘れは似たような状態と感じる人もいますが、物忘れは忘れたことを覚えています。それで思い出そうとします。これに対して認知症は忘れたことを忘れているので、頑張って思い出そうとはしません。この“頑張って”という行動があるかないかが重要で、頑張る気力がないと、そのまま思い出せなくなり、結果として忘れたことを忘れるのと同様の状態にもなります。
高齢になると思い出すために頑張ることは面倒なことで、忘れたまま過ごすことは楽といえば楽です。それもあって「年を取ると思い出せなくなって」と言って、少しでも面倒なことはパスしようとする人がいます。こうなると外から見ている分にはボケなのかトボケ(惚け)なのか見分けがつかなくなります。
最新の統計では、認知症患者は462万人、軽度認知障害患者は400万人と推定されています。合わせた862万人は65歳以上の4人に1人の割合となっています。2025年には認知症患者は700万人、軽度認知障害は600万人を超えると推定されています。3人に1人以上が認知機能に問題があるようになるということです。
医療機関において軽度認知障害と診断されても治療薬はなく、認知症のリスクを高める生活習慣病の予防・改善のための治療などに加えて、食事の改善、適度な運動、休養が指導されるだけとなっています。こうした指導によって軽度認知障害からの改善が見られる人は約30%で、約20%が軽度認知障害のままで維持され、1年で10〜15%が認知症になり、5年で約50%が認知症に進行しています。
ここまで認知機能の低下が進むと、高齢者を対象にしたセミナーで一生懸命に聞いているようでも、頷いてわかっているという反応を示しても、半分は理解していないと思って進めなければならなくなります。
軽度認知障害は本人はボケていないと思っていて、トボケているくらいのつもりでいても、認知症に向かっている段階であるのは違いがありません。ここでストップがかけられれば現状維持か、場合によっては“健脳”状態に戻ることもできます。軽度認知障害と診断されても的確な治療薬はないので、バランスの取れた栄養、適度な運動、充分な休養という健康づくりに、あまりに当たり前のことを指導されるだけです。それでも30%は元に戻っているということは、忘れたことを思い出そうと頑張るという気力が大切だということです。トボケているうちにボケにならないように、まだその年齢になっていない人にも今から心がけてほしいことです。





