平成30年1月6日に健康情報メールの400号を発信しました。健康情報メールは平成22年の4月から原則毎週1回送っているもので、カレンダーの都合で順番が情報が集まらなかった2回だけは出しようがなかったのですが、休まずに送り続けています。何の情報なのかというと、広く健康に関わる官公庁や大学・研究機関の発表情報のサイトを紹介して、リンクして最新情報を確認できるようにしています。1回につき25〜30本の情報となっています。
誰に対して送っているのかですが、医師や研究者、団体の役員を中心に、この人には知っておいてほしいと願っている人向けにしていますが、それでも400アドレスは超えています。他に希望する人にも送っていて、このコーナーに登場するメディアの方々も送り先になっています。
無償で、こんなことを8年以上も続けることになったきっかけは、大学の医師とのやりとりの中で、こちらが最新情報をベースに話しているのに話が食い違うようになり、前の情報が更新されないまま話していることがわかったことからです。専門の先生なので、少し遅れても情報は入ってくるのは間違いないのですが、それまでの間に先生から情報を受けた人たちが古い情報から考えたり、行動したりしてはいけないと考えたこともあります。
本当なら、メディアを通じて古い情報のままにコメントしたり、原稿を書いている専門家の方々にも送りたいところですが、それだと押しつけにもなるので、当方から押しつけたとしても平気で受け入れてくれる(であろう)方々だけにしています。
大学や研究機関の発表を見続けていると、先に他の機関が発表したことと違った結果、違った内容になっていることも多々あります。当方の発信は余計なコメントをつけずに表題だけなので、そこのところは各人に判断をしていただきたいところですが、こういった変化もずっと見続けているからわかることです。
医学や科学は“定説”となっていることでも、後になって実は“仮説”であったことがわかるという例も少なくありません。それどころか間違いを定説のごとく考え、伝えてきたということも少ない例ですが起こっています。ということもあるので、私たちは今わかっていること、今やっていることを“仮説”だと考えることにして、常に本当なのか、理論が実践によって裏付けられているのか、違った方向の見方はないのか、といった目で情報収集と分析に努めています。
理論上は正しくても、こと健康に関しては実践して幸せを感じることができる結果に結びつかないことには、世の中に役に立つ情報とはならないと確信しています。その意識をもって、数多(あまた)ある情報の中から選択して、これからも気力が続く限りは発信していきます。もう少し先のこととは思っていますが(思い込みたいだけかもしれませんが)、そろそろきついと感じたら、私たちの代わりに情報収集、情報発信をしてくれる協力者を得て、できるだけ早い時期にバトンタッチするようにしたいと考えているところです。
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ダイエットの究極の目的はやせることで、それも無理をせずにダイエットができれば、方法は何でもよい、そのメカニズムも気にしないという人は少なくありません。その結果が普遍的なものであればよいのですが、たまたま身体の調子と合っていた、環境が適していたということだと、同じようにしても同じ結果が出ないということは、よくあることです。こういった結果重視のダイエット法は少しでも条件が異なると同じ結果にはならないことがあるわけですが、これをアレンジすることができれば自分の身体や環境、生活パターンなどに合ったダイエット法に変えていくことができます。
そのアレンジのために必要なのが、どうしてダイエットできるかというメカニズムです。このダイエットの経過がわかれば、どこが重要なのかがわかり、何をすればよいのかも見えてきます。テレビや雑誌などのダイエット情報は、どうしても個別の人に対しての情報ではなく、多くの人に通じる内容となってしまいがちです。
多くの人に通じるというのが定説のような内容なら、これを採用して実施することで、ある程度の結果は得られるかもしれません。しかし、メディア情報は性別も年齢も筋肉の量も運動経験や食事内容も、さらに健康状態も考えに入れずに、大雑把な内容となってしまいます。そのことを言ってくれるか書いてくれれば、頭から信じ込むのではなく、アレンジが必要だという意識を持って臨むこともできます。しかし、そうではないことは明らかで、万人に通用するような情報になりがちです。万人に通用すると言ったら聞こえはよいのですが、どんな人にもピンポイントではないことから、そこそこにしか効果がない情報ではないかと考えられても仕方がありません。
となれば経過追求をすることは非常に重要になります。例えば、夜遅くに食べると太るので食べないようにすることを指導する場合に、理屈も何もなしで、ただ食べるなと言っても目の前に食べるものがあったら手が伸びてしまうでしょう。少ない量なら大丈夫だろうと考えてしまうかもしれません。
そこで以前に紹介したBMAL1を示して、22時から2時の間には脂肪酸合成が進むので少しの量でも脂肪が蓄積されること、3時のおやつなら多めに食べても脂肪酸合成が進みにくくなるのに、ということを示してあげれば、夜の食欲にストップをかけやすくなります。
こういった経過を追求して示すことができれば、改善しやすくなるということで、理屈っぽくなるのは承知で、日本メディカルダイエット支援機構では教育でもコンテンツでも講演でも、とにかく身体のメカニズムを徹底的に教えるようにしています。一般向けの情報にコンテンツ提供するときには、できるだけ抑えるようにはしていますが、もっと知りたいという人のために、このサイトにリンクしてもらって、理屈を知ってもらうようにはしています。その理屈は、このサイトの「メディカルダイエット」に次々と新たなコンテンツを入れています。
酵素は身体の細胞の中で化学反応(生化学反応)を起こすために必要なタンパク質で、酵素が働くことで全身の機能が保たれています。この生化学反応が代謝で、代謝はエネルギー代謝と物質代謝があります。エネルギー代謝は三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質を材料にして細胞のミトコンドリアでエネルギーを作り出す働きです。物質代謝は身体に必要なものを作り出す働きで、一般に新陳代謝と呼ばれるのは物質代謝です。
酵素を売り物にしているドリンクや食品、錠剤などは、体内で作用する酵素とは異なるものだということは以前にも紹介しています。ドリンクなどに含まれている酵素は植物の酵素を発酵によって取り出したもので、人間の酵素とは異なるものです、それなのに酵素を摂ることで身体の調子が整えられていくのは、これらの酵素が消化酵素の働きをしているからです。
体内の酵素は消化酵素と代謝酵素があって、消化酵素が多く使われると代謝酵素として使われる分が少なくなります。消化酵素を外から摂ることで代謝酵素として使われる分が増えれば、これが細胞内で生化学反応を進めるようになり、酵素の働きが低下している部分がカバーされるので弱点となっているところが回復されていく……ということが説明されています。これは商品を販売する側が主張していることであって、「酵素を摂っているつもりで、実は補酵素を摂っている」との考えが示されてからは、販売者の中にはこの補酵素の有益性を主張するだけでなく、「酵素も補酵素も摂れる」と主張しているところに、なかなかの売り方を感じているところです。
補酵素とは何かということですが、酵素は酵素だけで働くのではなくて、補酵素と結びつくことで酵素本来の働きをすることができます。つまり補酵素が不足していると、酵素が足りていても、まるで酵素が不足しているかのような結果となるということです。その補酵素としては複数のビタミン、ミネラルがあります。このように補酵素の成分が含まれている食品を摂らないと補酵素が不足するものもあれば、体内で合成されるために補う必要がないものもあります。
補う必要がないものの例としてはα‐リポ酸とコエンザイムQ10などがあげられています。α‐リポ酸とコエンザイムQ10はエネルギー代謝に欠かせないものだけに、不足が起こらないようにしていると考えられています。ただし、α‐リポ酸とコエンザイムQ10も20歳代(中でも20歳)をピークに合成が低下していくので、若い人でも20歳を超えたら、スポーツをする人なら20歳前でも、そして高齢になったらサプリメントとして補う必要が出てくるものです。
α‐リポ酸とコエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。
健康を扱ったテレビのバラエティー番組で、カレーが認知症予防に効果があるということを取り上げてから、レトルトのカレーの販売数が増えたとか、以前からある正月のテレビコマーシャルのように「お節もいいけどカレーもね」を実践する家庭が増えたとか、再びカレー人気が高まっています。メディア関係者に聞いたところとでは、今回の番組はメーカーが仕掛けたのではなく局側の企画であったとのことですが、これを見ていて、まず気になったのは「何を今更」ということでした。
カレーと認知症の研究成果が発表されたのは今から18年も前のことです。その当時は健康ブームの真っ最中で他の健康の話題に埋没したところがあります。というのは、当時はカレーの有効成分とされたクルクミンはウコンの成分で、ウコンといえば肝機能向上一点張りでした。今のようにクルクミンがアスリートのパフォーマンス向上につながるということは考えようもない時代でした。ちなみにアスリートのパフォーマンスの研究は、日本メディカルダイエット支援機構の理事の研究機関での成果です。
18年前の発表は、65歳以上のインド人の認知症がアメリカ人の3分の1ほどであったことで、これはカレーを多く食べることが関係しているはずとのことで、カレーの摂取量で比較しても認知症の発生が3分の1ほどであったことから、カレーに含まれるクルクミンと認知症の研究が始まりました。インド人の認知症の発症率が低いことについては、「世界一認知症が少ない村がインドにある」という都市伝説のようなところから始まっているのですが、研究が進む中でクルクミンが血管脳関門を通過して脳に届くことが確認され、クルクミンにはアルツハイマー病の病変の一つであるアミロイドβタンパクを減らすことがわかってきました。
アミロイドβタンパクがアルツハイマー病を引き起こすのか、それともアルツハイマー病になったためにアミロイドβタンパクが増えるのかについては、まだ完全に決着がついていないことですが、どちらにしてもアミロイドβタンパクが減るのはよい傾向であるのは間違いありません。
カレーのクルクミンと言ってもピンと来ない人も少なく内容ですが、クルクミンは黄色い色素があるポリフェノールのターメリックです。「ターメリック=ウコン」だからウコンを摂ればよい、という考えがされた時期もありますが、ターメリックは秋ウコンのことです。日本にあるウコンは春ウコンです。秋ウコンにはクルクミンが3.6%含まれているのに対して、春ウコンは0.3%と12分の1の量です。秋ウコンの切り口はオレンジ色ですが、春ウコンは黄色です。それくらい色素成分に違いがあるということです。もう一種類の紫ウコンは黄色でもないのでクルクミンは含まれていません。
カレーのレトルトや固形のルウにはクルクミンは豊富に含まれているのかということですが、一般にはカレーには1皿で10mgのクルクミンが含まれているとされています。ウコン飲料は30mgの含有量ですが、10mgはインド料理の店で提供されているカレーの場合の話で、市販のカレーは含油量が少なくなっています。中には「少々」というカレー粉が1%以下のものもあります。クルクミンの量となると、その何分の1の量にもなります。市販のものを使う場合にはクルクミンを振りかけなければならない分量ということです。インドの家庭料理ではクルクミンを入れて味と香りなどを調整しているので、それを家庭で再現しようというか近づけようということです。
メタボリックシンドローム(metabolic syndrome)というと内臓脂肪症候群という言葉が当てられているように、内臓脂肪が多く蓄積される肥満になることによって起こる動脈硬化疾患を予防することが一番の目的と一般には認識されています。日本メディカルダイエット支援機構は「メタボ対策が重要な役割」ということを言い続けてきたので、「メディカルダイエット=内臓脂肪減少」とメディア関係者に認識されてきました。メタボ対策は重要で、その一部が内臓脂肪を適度な量に減らすことであることも正しいことです。しかし、私たちは内臓脂肪が多い人だけをターゲットにして活動をしているわけではありません。この説明については「メディカルダイエット=内臓脂肪減少」という認識で質問をしてきている方々に、ここだけは認識してほしいということで話していることですが、それは「メディカルダイエット≠内臓脂肪減少」ということです。
メタボリックシンドロームは2008年から始まった特定健診制度に合わせて登場したもので、メタボリックシンドローム該当者、その予備群には特定保健指導が義務づけられました。腹囲(ウエストサイズ)が一定を超えていて、つまり内臓脂肪が多いことに加えて、高血圧、高血糖、脂質異常のうち2つが該当するとメタボリックシンドロームと診断されることから、とにかく内臓脂肪を減らすことが重要として対象者には運動や食事指導などが盛んに行われました。
メタボリックシンドロームは「メタボ」と略されて使われていますが、2008年の前にはメタボといえばメタボリズム(metabolism)を指していました。メタボリズムは代謝を意味する言葉です。
代謝にはエネルギー代謝と物質代謝があり、私たちは、どちらも重要との認識をしています。エネルギー代謝は三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質を細胞のミトコンドリアの中で代謝させてエネルギーを作り出すことをいいます。基礎代謝と言われる生命維持に必要なエネルギーはエネルギー代謝の一部となります。物質代謝は体内で物質の化学変化を起こすことを指していて、新陳代謝は、これに当たります。
代謝(metabolism)が正常に行われないことを代謝異常(metabolic disorder)と呼んでいます。Disorderは障害、不調、混乱という意味で、取りまとめていうと“正常でないこと”となります。
Metabolicは「代謝の」ということなので、メタボリックシンドローム(metabolic syndrome)は代謝の症候群、代謝症候群ということになりますが、すべての代謝症候群ということではなくて、実施されている対応ターゲットは「動脈硬化についての代謝症候群」ということです。
現状で言えば、メタボリックシンドロームは内臓脂肪症候群ではなくて、動脈硬化性疾患症候群であり、動脈硬化性疾患予備群にだけ運動指導と食事指導を実施すればよいということになります。
日本メディカルダイエット支援機構が中心的なターゲットにしているのは、動脈硬化性疾患予備群となる前の予備群で、このままの生活パターンを続けると予備群の仲間入りをするであろうと思われる人に対する運動と食事の情報提供と指導です。太っている人だけでなく、将来的に太る可能性が高く、それによって生活習慣病のリスクが高まる人への対応です。となると危機感がまだまだ低い段階なので、充分に理解してもらうための情報発進と、誰もが続けられるような運動法をアドバイスしています。
大晦日が終わり、年明けした深夜0時にメールが入りました。いわゆる“あけおめメール”かと思って開いてみたら、初仕事となる質問でした。よく連絡をしてくるテレビ番組のディレクターから「TCA回路ではいきなりATPが発生するのですか」という究極の問い合わせでしたが、これは1年の情報発信の締めくくりであり、本年のテーマでも中心としていきたいテーマとも関係しているので、さっそく返答させてもらいました。
細胞の中には、それぞれ100〜3000個ほどのミトコンドリアが存在しています。細胞の図を見ると、核が真ん中に大きく描かれ、ミトコンドリアが3〜4個描かれているので、それほど多くはないと思われがちですが、かなりの量になっています。30倍も個数が違うのは、エネルギーを多く作り出さなければならない脳、心臓、肝臓、腎臓、筋肉には特に多くのミトコンドリアが必要となっているからで、必要性が高まるとミトコンドリアは増えていく特徴があります。ミトコンドリアは直径0.5μm、長さ2〜3μmと小さなものですが、全部のミトコンドリアを合わせると体重の10分の1ほどにもなります。
ミトコンドリアの中にはエネルギーを発生させるエンジンのようなTCA回路があります。ミトコンドリアの中に取り込まれたブドウ糖や脂肪酸がアセチルCoAに変化してTCA回路の中で生化学反応を起こしてエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作られます。このような説明がされていて、私たちも便宜上そういった表現をしていますが、いきなりATPが発生するわけではないのです。アデノシンは核酸を構成する塩基のアデニンとリボース(単糖)が結合したものですが、このリボースに2分子のリン酸が結びついたADP(アデノシン二リン酸)があって、これに1分子のリン酸が結びついてATPとなります。つまり、ATPは3分子のリン酸で構成されているわけです。
このATPから1分子のリン酸が離れてADPになるときにエネルギーが発生します。体内には100gほどのATPがあり、ATPとADPの間を行き来することで体重と同じくらいのATPが1日に発生しています。体重と同じくらいのATPが作られ、ここからエネルギーが発生しているということで、いかに多くのエネルギーが生命維持に必要かということがわかります。
ADPは充電前の電池のようなもので、充電されたのがATPという考えもされます。糖質1分子はTCA回路で36個のATPとなると説明されています。このほかに糖質がTCA回路の前に2個のATPが作られるので、合計で38個となります。
この返答をしたところ、さっそく返信があり、「エネルギーは他の細胞でも使われるのですか」という質問が追加でありました。多くのエネルギーが筋肉で作られて、これが他の細胞で使われるなら筋肉運動をすれば全身の細胞を元気になることができるということですが、残念ながら細胞で発生したエネルギーは細胞の中だけで使われています。細胞は、それ自体が一つの生命体のようなものなので自家消費しかされないのです。
となると、全身の細胞を元気にしていこうと思ったら、TCA回路の働きを高める成分が必要であり、それが日本メディカルダイエット支援機構として積極的に研究を進めている三大ヒトケミカルのα‐リポ酸(R体)、L‐カルニチン、コエンザイムQ10です。
次々と新しいダイエット法が登場していますが、実はリニューアル、看板の掛け替えという例も少なくありません。それですらなく、古くからあったダイエット法が新たなダイエット法のように急浮上することもあります。その例としてあげているのが時間遺伝子のBMAL1(ビーマル1)です。その存在が知られたのは1997年のことで、すでに20年も経過しています。その間に何度も小ブーム、プチブームがありましたが、今ではダイエットに関しては当たり前となっていることの裏付けデータとして登場することもあって食いつきがよくないのかもしれません。
BMAL1はBrain and Mascle Amt-like protein1というタンパク質で、遺伝子のDNAと結合して作用します。何の作用なのかというと脂肪合成促進です。脂肪合成というと、余分となった栄養素を肝臓で脂肪酸に変えて、これが3個結合して中性脂肪になり、脂肪細胞の中に蓄積されていくことはよく知られていることです。同じ脂肪酸合成であってもBMAL1は脂肪酸合成酵素を増やす働きがあります。この酵素が増えると一時的に脂肪酸が多く作られ、これが蓄積されていくので太るようになります。
BMAL1について解説している文章を見ていると「脂肪細胞を増やす」と書かれているものがかなり目につきます。脂肪細胞は中性脂肪を蓄積しておくところで、脂肪細胞が増えてしまったら蓄積スペースが増えて、その中に蓄積される中性脂肪が増えることになります。脂肪細胞は成長期以外は蓄積スペースを増やさなければならないくらいに中性脂肪が多くなってから初めて増えるので、BMAL1の解説としては間違っているということです。あくまで増えるのは脂肪酸合成酵素で、その結果として増えるのは中性脂肪です。
時計遺伝子と呼ばれているように時間によって増減しています。脂肪酸合成酵素が増えたときに食べると蓄積される中性脂肪が多く作られ、減ったときに食べると作られる量が減るということで、同じものを同じだけ食べても太りやすさが違ってくるということです。
となれば太りにくい時間帯に食べればよいというわけで、その時間帯が気になります。それは昼の14時前後です。ここを底(下限)として夜の22時から深夜2時に向かって増え続けていきます。そして、そこから朝、昼まで減り続けています。そのことからわかることは13〜15時は太りにくく、昼食で脂肪を摂っても朝食や夕食よりも太りにくく、3時のおやつも太りにくいということです。
もう一つわかることは22時から2時という時間帯の夜食は着実に太るということです。どれくらいの違いなのかというと、ピークを100とすると一番少ないときには4〜5くらいで、20倍もの開きがあります。これだけの開きがあると大きな結果の差となることも容易に想像がつきます。
このように当たり前に起こること、感覚としてわかっていることを説明されても……という感想を多く耳にします。その仕組みを活かして効果的にダイエットする方法はないのかという意見が出てくるのも当然のことです。
深夜から昼にかけて下がり続けるということは、朝食は脂肪合成が盛んな時間帯ということになります。12時からあまり離れていない夕食はピークの100に対しては10くらいです。それに対して朝食は40くらいになっています。朝食は1日の活動に必要な栄養補給の場となっていますが、糖質とたんぱく質は増やしても脂質(脂肪)の量は減らしたほうがよいということがわかります。
当たり前のことをメディア関係者から聞かれることがあります。「わざわざ聞いてこなくてもいいのに」と思わないでもありませんが、質問に答えているうちに私たちが当たり前と思っていただけで、周りの人たちはそうでもなかったと気づかされることがあります。だから、こんなことを聞いてくるのかとは思わないようにして、できるだけ返答するようにしています。
最近あったのは「水を飲んでいないのにトイレが近くなり、しかも多くの量が出ることがある理由は」という質問でした。これは塩分を多く摂っている人によくみられることですが、水分摂取が少ないと血液中の水分が少なくなり、塩分が濃い状態になることから、塩分を出すために排出量が増えることがあるからです。これを私たちは当たり前の反応だと認識しています。
塩分を多く摂っていると、血液中の水分が増えます。塩分のナトリウムには水を吸収する作用があり、血液中のナトリウムが増えるほど血液の中の水分が増えて、血管に圧力がかかるようになります。また、血液中のナトリウムが多くなると血管の細胞の中にもナトリウムが入っていきますが、細胞の中のナトリウムも水分を吸収するので血管の細胞が膨らむような状態になります。そのために血管が狭くなり、弾力も低下しやすくなります。これが塩分を摂りすぎると血圧が上がる原因の一つとなっています。
血圧の上昇を抑えるといった意図で塩分を控えると、ナトリウムが水分を離すことから、この水分が排出されるので一時的に排出量が増えることがあります。これも当たり前の反応です。
排出量ということでは「運動をして汗をたくさんかいているのにトイレが近くなる理由は」と聞かれたこともあります。これは代謝水が増えたためです。運動をして細胞での代謝が盛んになるとブドウ糖や脂肪酸が燃焼して、その結果として二酸化炭素と水が発生します。燃焼が多くなるほど代謝水が増えていきます。体内で水分が作られるということです。
それに生活習慣病の要素が加わることもあります。糖尿病は血液中のブドウ糖が多くなりすぎる病気です。本来なら細胞が取り込んでエネルギーとして燃焼するべきブドウ糖が、取り込みが悪いために排出量が増えます。すると体内の水分が減ったことで、それを補うために喉が渇いてきます。糖尿病の人が水を飲んで排尿量が増えるのは、水を飲むのが先ではなくて、水分が失われることが先に起こっているということです。
お酒を飲むと利尿作用が起こります。これはアルコールを分解することによる代謝水が増えることと、濃くなったアルコールを排出するために起こることと説明されています。
これも排出量を一時的に増やす原因となり、それによって体内の水分が減るので、飲酒後には水を飲むことがすすめられます。他に利尿作用を進めるものとしてはコーヒー、緑茶、紅茶などのカフェインが多く含まれるものがあげられます。これは飲み物を飲んだ結果なので、「水を飲んでいないのにトイレが近くなる」ということとは少し話が違っていますけれど。
蒟蒻(こんにゃく)は昔から砂おろしと言われます。古い文献には土砂下ろしと書かれていて、この場合の砂は体内の土砂、つまり腸内の不要なものを指しています。腸内には食事だけでなく、さまざまな口から入ってきたものが排泄されずにたまっていると考えられています。中には発がん物質のニトロソアミンのように普通に食べている魚と漬物に含まれている成分の反応によって発生するものもあります。また、腸内細菌の悪玉菌によって発生した有害物質もたまっていて、これが大腸の壁から吸収されて血液内に入ると全身を回って、健康被害を起こすことが指摘されています。
この有害物質は毒素とも呼ばれていますが、毒素は腸内で必ず発生するものであるので、できるだけ発生しないように、できるだけ吸収されないようにすることが重要になります。そのために注目されているのが食物繊維です。食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に大きく分けられます。砂おろしの蒟蒻は水溶性食物繊維と長らく認識されてきました。“きました”ということは今では違う認識ということを言いたいからですが、書籍の中には今も水溶性食物繊維と書かれたものがあります。水溶性食物繊維が豊富に含まれている食品として「こんにゃく、きのこ、海藻、果物」と書かれているものを多く見かけます。
この食品の列記の中から、こんにゃくを除いている書籍も増えています。どちらが正しいのか、現状に合っているのかということですが、その答えとなる実験がありました。胃の中のことは別の試験で再現しやすくて、食品を歯で噛んだのと同じ状態でガラス容器に入れて、そこに胃液と同様の消化性がある液体を入れると変化が起こります。水溶性食物繊維は胃の中で水分を吸って、膨らんでいきます。そしてネバネバになったゲル状成分が食品の成分の一部を吸着します。吸着されたものは小腸から吸収されずに通過していくことになります。
蒟蒻は、どんな変化をしたのかというと、というより変化をしなかったのです。胃の中で消化されず、変化もしないで通過していくのは不溶性食物繊維です。蒟蒻芋を粉にしたものは水溶性食物繊維の性質があります。この粉を凝固剤を使って固めたのが板蒟蒻や糸蒟蒻です。この固まった状態では不溶性食物繊維になるということで、これを水溶性食物繊維として扱い、その効果を求めるのには無理があるということです。
不溶性食物繊維の蒟蒻は砂おろしにならないのかというと、不溶性食物繊維は腸壁を摩擦して、腸壁に付着した汚れを落としながら先へ先へと進んでいきます。それによって刺激を受けた腸壁は蠕動運動が進みやすくなり、便通がよくなっていきます。水溶性食物繊維によって不要なものを吸着するのも大切ですが、便通をよくして早く排泄させることは、もっと大切です。砂おろしのために蒟蒻を食べて、さらに水溶性食物繊維のきのこや海藻を食べて、両方の作用で腸内を綺麗にすることを心がけてほしいということです。
前回の「卵は完全栄養食か」というテーマの話の中で、「“卵にはコレステロールが多いのでよくない”という意見には賛同することができない」と書かせてもらいましたが、“これはメディア関係者から問い合わせが来るな”と思っていたら、案の定の反応がありました。卵のコレステロールは血中コレステロールに影響しないということは常識になっていると思っていたのに、未だに「コレステロールが多い卵は動脈硬化の要因」と主張する人がいて、これは驚きと言うしかない状態です。
卵には確かにコレステロールは多く含まれています。それは事実で、血液中のコレステロールが多くなると動脈硬化のリスクが高まることも事実です。ということは、卵は動脈硬化を引き起こす要因と結論づけられてしまいそうですが、実際には、そうはなりません。
まずはコレステロールの吸収率ですが、腸からは半分も吸収されていません。口から入ったものは、すべてが吸収されるように考えてしまう人もいますが、そんな単純な仕組みにはなっていません。栄養素が効果的に吸収されない事実があるから、栄養摂取を高めることは大変なのです。
吸収率が半分以下だとしても、吸収されたコレステロールが血管にダメージを与えたのでは、量の多少を論じても仕方がないことになります。コレステロールが動脈硬化を引き起こすという話が広まったのは、旧ソ連の研究成果からでした。その研究は動物実験で、ウサギにコレステロールが多く含まれる卵を与えたところ動脈硬化が多く現れたということで、「卵=動脈硬化」ということが結論のごとく伝えられていきました。
ここで、よく考えたいのは、ウサギが卵を食べるのかということです。結論から言うとウサギは卵を食べていません。卵を食べていれば、卵のコレステロールの健康被害を抑える働きが身につくことはあるのですが、食べていないので“免疫”が備わっていません。この免疫というのは吸収されすぎないようにする能力のことですが、その能力が備わっていないためにコレステロールが吸収されすぎてしまうのです。
こういった身体の仕組みが解明されたことから、厚生労働省も医学界も卵のコレステロールが血中コレステロールに影響を与えないことが明らかにされました。では、卵のコレステロールは気にしなくてもよいのかということですが、コレステロールが動脈硬化と結びつくのはコレステロールの量ではなくて、コレステロールが酸化するかどうかに関わっています。コレステロールは細胞膜の材料で、ホルモンの原料となるなど健康を維持するために必要なものです。このコレステロールが活性酸素によって酸化すると、異常なコレステロールであると免疫細胞のマクロファージが認識して異物を内部に取り込む貪食を始めます。貪食が限界に達するとマクロファージは活動を停止して血管壁に蓄積されていきます。これによって血管が硬くなり、弾力性が徐々に失われていきます。これが動脈硬化の始まりです。
こういった仕組みがあるので、コレステロールが多く含まれる食品は、できれば減らすべきだということがわかります。





