ゆで卵ダイエットは“今は昔の話”と思っていたら、「完全栄養食なので卵だけ食べれば大丈夫」「卵だけでやせられる」と言ってダイエット指導をしている人がいて、「そんなに古すぎる情報を信じて実践する人なんているのか」と思っていたら、信者はかなりの数いると聞いて驚いたものです。その指導している方は卵(鶏卵)を売っているわけではなくて、ダイエットのためのエクササイズの指導をしていて、“正しいダイエットには良質なたんぱく質が必要”と聞いていたので、卵をすすめるようになったとのことです。
エクササイズが効いているのか、卵が影響しているのか、よくわからないとしても、“信者を作ることが儲かる秘訣”ということのようです。なにしろ「信者」の2つの文字をくっつけると「儲」という文字になるのですから。
卵が完全食と言われるようになったのは、私たちの身体を構成するたんぱく質を作るのに必要なアミノ酸がバランスよく含まれているからです。アミノ酸のバランスがよくて良質なたんぱく質が作られたとしても、糖質と脂質もバランスよく摂れるわけではありません。完全なのはアミノ酸だけということです。ビタミンではビタミンA、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ビタミンD、ビタミンE、パントテン酸、ビオチン、葉酸は多いのですが、ビタミンB₁、ビタミンC、ビタミンKは不足しています。ミネラルではカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、リン、セレンは多いのですが、それ以外のミネラルも卵を食べれば充分に摂れるわけではありません。また、食物繊維も少なくて、これだけ食べていれば大丈夫などとは、とてもじゃないが言えない内容です。
それでも卵だけを食べていると体重が減って、体脂肪も減っていきます。その結果だけを見たら、「卵はダイエットに効果がある」と見えてしまうかもしれませんが、そんなことがないのは冷静に考えればわかることです。卵は大きさにもよりますが、平均的には1個が100kcalほどです。1日に2000kcalが必要な人は20個を食べなければならないことになります。これだけの数を食べ続けるのは、さすがに辛いことです。それよりも少ない量だと必要なエネルギー量が足りないので、やせていくのは当然のことです。
こうなると、やせるというよりも、やつれるという状態になります。余分に身体についた体脂肪を減らしていくには、脂肪を燃焼させるためのビタミンB群が必要になります。個別にあげると、ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸で、これらは卵には比較的多く含まれるので、通常の食事をしている人が追加で摂る分には効果的な食品だと言うことができるのですが、穀類、豆類、野菜類、肉類(中でもレバー)、魚類を摂ることで充分に補うことができるので、これを見ても完全栄養食とは言えないことがわかります。
「卵にはコレステロールが多いのでよくない」という意見には賛同することができないところですが、卵だけのダイエットではなく、卵をプラスしたダイエットを採用すべきだということはダイエット講習で話しています。ただし、自然な状態の卵を食べることを前提とした話です。
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入浴剤についてのテレビ番組があった翌日に、他局のディレクターから連絡がありました。普通は疑問を感じたことの解決や新たな切り口はないかといったことに答えることになるのですが、今回は「見ていなかったのでポイントを教えてほしい」ということでした。“私たちはVTR代わりか”とも思いましたが、よい番組を作るための参考になるのなら、という気持ちで返答しておきました。
入浴剤からブクブクと出ている泡は炭酸ガスで、これを浴びることで身体の中に炭酸ガスが入ってくることによって、血管が拡張して、血流がよくなるので老廃物が流されて、疲労も回復する、というのが主旨で、なんだか入浴剤を販売している会社の主張と同じになっていますが、番組では入浴剤から泡が出ているときではなく、泡がなくなってからのほうが効果はある、というプチ驚き情報が伝えられていました。
これをスタジオで見ている芸能人から、ちょっとリアクションが大きいのではと思える反応があるという、いつものパターンでしたが、伝えられた内容は間違っていません。泡が出なくなったということは入浴剤から充分に炭酸ガスが出たということで、お湯の中に溶けている炭酸ガスの量も多くなっています。この炭酸ガスが皮膚から身体の中に浸透していって、炭酸ガスによる血管拡張効果が得られます。だから、入浴剤の泡を皮膚に当てるのではなくて、泡が出終わってから入るのがよい、できるだけ長く入っていたほうがよいという話です。
結局は当たり前の話を取り上げただけ、ということをディレクターに使えましたが、「ところで、なぜ炭酸ガスで血管が拡張するのかの理由は知っていますか」という問いかけをしました。このことがわかっていたほうが理解は深まるのではないか、という、いつものお節介です。これはメディア関係者から“小さな親切、大きなお世話”とも呼ばれていることです。
その小さな親切というか、大きなお世話の情報ですが、炭酸ガスは二酸化炭素です。炭酸ガス入りの飲料を飲んでも、胃腸から浸透する前に呼気と一緒に口から出てしまうので、飲料の炭酸ガスには血管拡張作用は期待できません。それに対して皮膚からは浸透して、そのまま血管まで入ってきます。なぜ、ということですが、二酸化炭素は体内の細胞で老廃物と一緒に発生するもので、これが血管の中に入ってきたときには早く排泄させなければなりません。そのために血管を拡張させて、血流を盛んにするので、二酸化炭素を入浴剤によって血液中に多くすることで血流促進させているわけです。
二酸化炭素というと排気ガスや老廃物、有害物質というイメージを持たれることもあるので、あえて炭酸ガスという言葉を使い続けているわけです。運動をすると血流がよくなるのは、筋肉が動いてポンプ作用で血流が促進されていることに加えて、運動によって細胞の代謝が高まって二酸化炭素が多く作られることから血管が拡張することもプラスされての効果だということです。ということで、運動の後の炭酸ガスを活用した入浴の効果についても話をさせてもらいました。
肉の摂りすぎは身体によくないこと、魚は身体によいものという印象が強すぎるのか、健康のためにといって魚をたくさん食べる人がいます。その食べる魚が油脂がたっぷりと含まれているトロのような魚になると、本当に身体によいのか、かえって身体によくないことになるのではないかとの不安も湧いてきます。
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準』(2015年版)によると脂質の摂取量は全エネルギー量のうち20〜30%とされています。思ったよりも多いという印象ですが、そのうち「飽和脂肪酸は7%以下」という目標も示されています。動物性脂肪の中でも食肉に多い飽和脂肪酸は動脈硬化のリスクを高めるので減らすようにして、同じ動物性脂肪であっても魚や植物油に多い不飽和脂肪酸は動脈硬化のリスクを低くしてくれるので積極的に摂るべき脂肪酸だということが知られています。
それなら魚の脂肪酸をたくさん摂ろうと考えるのもわからないではありませんが、エネルギー量ということでは牛肉の脂肪も秋刀魚の脂肪も1g当たり約9kcalであることに変わりはありません。30%までという上限が定められているので、それを超えるほど摂ったら、余分な脂肪として血液中の中性脂肪値を高めたり、脂肪細胞の中に蓄積される脂肪(中性脂肪)を増やして太ることになります。
30%というと案外と多いように感じるのは、これがエネルギー比だからです。糖質とたんぱく質のエネルギー量は1g当たり約4kcalです。脂質は2倍以上のエネルギー量があるので、分量で考える場合には半分以下に減らさないといけないのです。
『日本人の食事摂取基準』(2015年版)では20〜30%という基準ですが、2010年版までは上限は25%でした。この基準には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の区別はなく、2015年版から5%増えたのと同時に飽和脂肪酸の上限目標が加わりました。当時の25%や現在の30%に近づける必要はなくて、下限の20%であっても健康面の問題はないというのが、この基準の主旨です。無理に多くの量を摂る必要はなくて、肉を食べる回数を減らして、その分だけ魚を食べるようにするといったことでも対応できるということです。
脂が乗ったマグロの大トロやトロサーモンはおいしく感じるので、これをたくさん食べるための口実に不飽和脂肪酸の効能(血液サラサラなど)を使っていた人は、そろそろ通じなくなってきていることを感じて欲しいところです。
血圧サージという言葉が随分と広まってきました。サージ(surge)というのは高波の意味だと紹介されていますが、正確には「波のように押し寄せる」ことを指しています。血圧サージは、普段は正常な範囲の血圧であるのに、一時的に高波のように血圧が高まることを示しています。瞬間的に高まるだけでなく、高い波のように防波堤を乗り越えていくことから堤防の先に被害を与えるというイメージによる命名です。血圧の高波によって与えられる影響は血管の損傷です。
一時的なものなら、それほど身体に大きな影響はないと思われがちです。階段を昇ったり、少し駆けたりしても血圧が一時的に急上昇するのはよくあることで、すぐに元に戻るのが一般的です。しかし、高齢で血管が老化していたり、冬場の寒暖差(部屋と廊下、屋内と屋外)や強いストレスを感じているときにはドンと急上昇した後に血圧が戻りにくくなることもあり、急上昇したことで血管が切れることもあります。
高齢というキーワードが出てきましたが、自動車でいうと新車と旧車にたとえられます。新車はエンジンを吹かすだけ吹かして急発進させてもエンジンが壊れることがないのに、旧車で、しかも長年乗り続けてきていると急発進させたらエンジンが壊れてしまうこともあります。若いということは調整能力が高くて、血管が弱っていたとしても血管を拡張させて血圧上昇に対応することができる状態であっても、年齢を重ねると対応しにくくなり、ある時に限界を超えるとプッツンと切れてしまうことにもなるのです。
血圧サージについて、講演会などで質問を受ける機会が多くなってきたことから取り上げていますが、血圧サージは一時的なことなので、毎日、決まったタイミングで血圧を測定していても気づきにくいものです。血圧サージの原因としては、朝の急な起床、喫煙、激しい寒暖差、ストレスがあげられています。これは血圧を上げることとして普段から注意しなければならないことです。これらは急性的な原因です。自分で取り除くことが可能な原因となっています。
それに対して慢性的な原因の糖尿病、塩分の摂りすぎ、肥満、老齢化となると、これは急になんとかなることではありません。慢性的な原因がある人は急性的な原因を減らすことから、まずは始めることです。
そういった対策をしても、年齢を重ねると、自然に進んだ動脈硬化によって血圧が上昇しやすくなります。今さらですが用語説明をすると「心臓から送り出された圧力によって動脈にかかる圧力」のことです。圧力がかかっても血管の弾力性が高いと圧力を柔軟に受け止めるので、血管壁への圧力は弱められます。そのために、動脈がダメージを受けても動脈硬化になるのが抑えられるわけです。
ところが高齢になると、病的な動脈硬化まで進まなくても、動脈硬化は間違いなく起こっています。「動脈硬化の最大のリスクは加齢」と言う専門医は多く、“抗加齢”が可能なら、それが一番の動脈硬化対策になるはずです。しかし、そうはいかないのが現実で、血圧サージを起こさないように日々の対策を心がけるしかないのです。
血圧サージが起こっているのかどうかは、24時間血圧計を装着して1日を過ごすことでわかります。これで計測すると、実は通勤・通学の電車の中で混雑を我慢していること、嫌だと思う人の前にいることの他に、ストレス解消のつもりでしていることが案外と血圧を上昇させていたことがわかるようになります。
ダイエットの指導をしていて、感じていたことを、運動指導の専門家に話したところ、まったく同じように感じていると言われました。その感じていたことというのは「女性向けのダイエットと同じ指導をしないと通じない男性が増えている」ということです。それについて2人で話していても結論が出ないかと思ったのか、知り合いの研究者にも意見を求めようと呼び出してくれました。その研究者は「男性の脳が女性化している」と切り出しました。
発生学からいうと“女性化した”というよりも“女性に戻った”と言ったほうが正しいかもしれません。受精した後に胎内で成長して人間の形になったときには身体は女性の形をしています。胎内では1個の受精卵が分裂して原生魚類、古代魚、両生類、爬虫類、哺乳類、猿という5億年の変化をしながら人間の形になっていくわけですが、この人間の形も男性は男性の身体、女性は女性の身体になるのではなく、まずは女性の身体になってから受精後40〜50日で男性は徐々に男性の身体となっていきます。
男性は男性ホルモンを分泌することで脳が男性タイプになり、ホルモンの影響を受ける器官が男性の形へと変化していくという過程を経ています。男性と女性で外見的に明らかに異なっているところも、実は女性形から変化していったということについて、詳しいことは別に紹介させてもらいますが、一つだけあげると男性にも乳首があることです。
女性脳から男性脳に移っていく段階で分泌されている男性ホルモンは女性ホルモンによって影響を受けて減少します。男性も女性脳からスタートするのは、母親の女性ホルモンを受けているからです。その男性ホルモンを上回る女性ホルモンが一時的にでも分泌されることで、男性ホルモンの働きが抑えられてしまいます。そのために脳が女性化して、男性機能も低下するようになります。女性ホルモンは抗ストレスホルモンで、女性が妊娠中に強いストレスを受けると多く分泌されるようになります。
男性の中に女性のように優しい性格の人が増えたり、女性の特技とされてきた繊細なことを得意とする男性が増えていること、そして身体は男性でも中身は女性という人が増えてきたりしているのも、母親の女性ホルモンの影響と説明する専門家も増えています。
女性化したからといって男性に通じる筋トレが通じなかったり、女性に共通しているダイエット法が使えるようになるといったことはありません。脳が女性化していても筋肉の増え方が男性の特徴ではなくなったり、脂肪が女性のように増えやすいということは起こりません。しかし、男性にストイックに続けてもらえるはずの筋トレが、その日の気分でやる気が起こらなかったり、こちらのほうが簡単、私に合っているかもと勝手にアレンジするようなことは起こりがちです。
女性にモチベーションを維持してもらって継続してもらうように気を使って指導しなければならないことを、男性にも同じように気を使わないといけないというのはダイエット指導の現場では、よく感じていることです。そのために、男女の区別なく、全員が女性だと思って指導しても通じるという場面も多くなってきたということです。
機能性表示食品が登場してからというもの、特定保健用食品(トクホ)の販売は不振です。特定保健用食品は人間を対象としたヒト試験を実施して(動物試験ではなく)、健康機能を確認して、販売に当たっては有効性を証明しなければならないものです。その確認と証明に3億円はかかると言われています。それと比べると機能性表示食品は使われている素材の健康評価の論文があるだけでも申請することができるので、ハードルの高さが特定保健用食品とは大きく違っています。
しかし、販売に当たって述べられることは特定保健用食品と機能性表示食品では似たようなところがあるので、特定保健用食品を販売している会社が可哀想になるほど販売量が下がってきています。
特定保健用食品にしても機能性表示食品にしても、特定の機能に絞って研究が進められてきているので、それを摂っていれば全般的に健康機能が高まるというものではありません。食品は、それぞれ含まれている成分には特徴があり、一つの食品だけを食べていれば完全に栄養補給できるというものは存在していません。「卵は完全食」ということが言われたことがありますが、これはアミノ酸のバランスが取れていることを指していて、ビタミンやミネラルが充分に補えるわけはないのです。
ビタミンやミネラルなどの栄養素を補うものというと栄養機能食品があります。これはネーミングからすると栄養豊富という感じがするものの、実際には特定のビタミン、ミネラルが多ければ表示して販売できるものです。一つの栄養素が多く含まれるだけでもよいというものです。
そこで登場したのが、複数の食品を組み合わせた加工食品にすることによって、完全栄養を目指して作られた栄養調整食品です。この名称は、これまで名前をあげてきた各食品のように法律(食品表示法)によって定められたものではなく、いわば通称です。今では、さまざまなものが登場していますが、走りは大塚製薬のカロリーメイトです。菓子として販売されているのですが、グループの食品会社からではなく、本体の大塚製薬から販売されています。ここが重要なポイントです。
大塚製薬の本業はというと病院で使われている点滴の製造販売の最大手です。点滴の技術を用いて開発されたのがポカリスエットで、販売当時は“飲む点滴”と呼ばれていました。点滴とともに病院で大きなシェアを占めていたのが濃厚流動食です。食事ができない人でも、これさえ飲んでおけば栄養補給は大丈夫という栄養管理食の代表的なもので、これをミルク味にして販売されたのがドリンクタイプのカロリーメイトです。今ではブロックタイプのカロリーメイトしか見かけないので、今ではドリンクタイプのことを知らない人もいます。
どちらのタイプにしても濃厚流動食をベースにして、「これを食べれば栄養補給は完了」という内容となっています。糖質、脂質、たんぱく質の量とバランスが取れていて、11種類のビタミン、6種類のミネラル、食物繊維も摂ることができます。1ブロックが100kcalとなっています。
この開発アドバイスをした大学病院の管理栄養士で、大学教授も務めた先生は一時期、日本メディカルダイエット支援機構の理事をされていましたが、販売価格を決めるときに「g(グラム)単位ではなくkcal(キロカロリー)単位で2ブロック入りで200円」とアドバイスして、その通りに販売されました。
「これさえ食べれば……」というのは、寝たきりの人の流動食とは違うので、1日3食を、ずっと食べ続けてもよいという意味ではありません。食事をする時間が取れなくて、空腹を抑えるためにお菓子でもいいから食べるという人に食事の代わりとして食べてほしいと考えています。
1ブロックが100kcalで、2ブロック入りと4ブロック入りが販売されています。200kcalというと茶碗に軽く持ったご飯の量と同じです。肉か魚は1切れで、卵は1個で100kcalなので、このうちの2つを加えると200kcalのプラスとなって、400kcalに収まるエネルギー量となります。
前回の岡山県の女性の平均寿命が全国2位になった背景は何か、という話は近いうちに紹介したい、と載せていたのですが、「すぐにも紹介してほしい」という声がメディア関係者と自治体関係者から寄せられました。そういった情報は当方から受けるまでもなく、探せば簡単に見つかるレベルのことです。にも関わらず、当方に聞いてくるのは「サイト検索より楽だから」ということではなく、「切り口を期待しているから」という喜ばせて引き出そうという思いが感じられるような理由が告げられました。
その期待を裏切るような返答から始めました。
平均寿命が実際に長生きした人の状態を示すものなら、健康づくりの食事面と運動面の施策をあげていけばよいのでしょうが、平均寿命は、そういったものではありません。今年の平均寿命は今年生まれた赤ちゃんが今の生活環境と経済環境が続いたとして何歳まで生きられるかという推定の年齢です。そのために特徴的な食べ物や運動などを示しても意味がないと思うのですが、おそらくテレビ番組では、私たちが意味がないと思っているような表現をされるものと思っています。
そういって突き放したのでは面白くないので、何か番組の流れを変えられる情報を、と考えて岡山県の歩行数のデータを紹介しました。これは都道府県別の男性と女性の1日の平均歩数を比べて、最も男女差が大きな県を割り出しました。その結果、男女差が一番大きかったのが岡山県だったのです。男性の歩数は8136歩、女性の歩数は6042歩で、男女差は2094歩となっていました。
ウォーキングは最も簡単に導入できる健康のための運動です。歩数が多いほど健康度が高いとされますが、歩くことができる土地的な環境は、都道府県で大きな差はないはずです。気候的な環境は寒すぎる地域、暑すぎる地域は不利です。岡山県は“晴れの国”と呼ばれるほど年間の降水量1mm未満の日数(30年間の平均値)が日本一多くて276.8日です。でも、これで女性が歩いていない理由は、少しも説明がついていません。
「雨の日が少ない=晴れの日が多い」ではありません。日照時間の長さは県別ではなく県庁所在地別の統計(20年間の平均)ですが、それによると1位は山梨県甲府市(2213.9時間)で、岡山市(2028.6)は14位です。
生活習慣病のデータを見てみると、心臓病の年齢調整をした死亡率は岡山県の男性は3位、女性は4位となっています。トップ5を見てみると男性は福島県、高知県、岡山県、山形県、鳥取県、女性は福島県、鳥取県、高知県、岡山県、茨城県の順となっています。生活習慣病に関わる死亡率は経済状況に比例するところがあり、大都市部を抱える都道府県ほど状況はよくなっています。男女ともトップの福島県は気温や塩分摂取などから、この状況はわからなくはありません。しかし、岡山県は温暖であって塩分の摂取量は男性が30位、女性が40位と特に女性は少ない摂取量となっています。高血圧の割合は男女合同の統計ですが、下から数えて7番目ということです。
年齢調整をすると高齢者が多い地域は低くなり、若い人が多い地域は高くなる傾向があります。岡山県の高齢化率は28.1%ですが、2040年の高齢化率予測は34.8%です。岡山県内には、すでに40%に達した地域があるものの、それを含めても好成績です。そして、現状と予測との差の伸び率を見てみると6.7%と、日本で一番低くなっています。若い人が多く、交流が盛んな地域では高齢者を支える活動も盛んになります。これが岡山県の女性の平均寿命が全国2位になった大きな背景の一つであるということを伝えたところです。
テレビの制作会社のディレクターから岡山県の女性の平均寿命が2位なったことについて、その理由と今後の見通しの質問がありました。この調査結果は厚生労働省による「平成27年都道府県別生命表の概況」によるものですが、質問への当方の返答をもってコメントをする専門家のところに取材に行くとのことでした。このような扱いには慣れていて、正しい情報が正しく伝わるなら、コメントする方に注文をつけるようなことはしないようにしています。
長寿県といえば今は長野県で、昨年までの発表データでは男女ともに平均寿命ランキングは1位でした。“でした”ということはランクが下がったということですが、男性が1つ下がって2位になりました。どこが抜いたのかというと滋賀県です。女性は長野県が1位を守りましたが、2位に上がってきていて1位の座をうかがう勢いの県が出てきました。それが今回の質問のテーマとなっている岡山県です。
長野県の女性の平均寿命は87.675歳なのに対して岡山県の女性は87.673歳と、これまでの下二桁の発表では同点となるので、三桁目まで発表するという初めての出来事が起こりました。
このデータが掲載されている都道府県別生命表の推移統計は5年毎の統計が原則で、飛び飛びの発表になっていますが、岡山県の女性の平均寿命は昭和40年と50年は4位、昭和60年は5位、平成7年は6位と微妙に下がり続け、平成17年に4位に戻り、平成22年には8位となったので、これは下がり続ける予兆かと思われたところでの2位への躍進でした。
この推移を見ると、もともと長寿県で、よい環境と条件が整っているところに健康づくりの施策が加わることでランクアップするのは、これまでにも見られたことです。その施策が何だったのかということは、コメントをする先生の範疇に足を踏み入れることなので、今回は見送りましたが、近いうちに紹介させてもらいます。
「長寿県といえば今は長野県」と初めに書きましたが、昔はどこだったのかというと沖縄県でした。以前に沖縄県の平均寿命ランクが下がるのと、脂肪摂取量の減少がリンクしていることを紹介しました。「だから、脂肪を減らすのはよくない」という考えには賛成しにくいところですが、沖縄県の男性の平均寿命のランクを見ると、昭和50年に10位、昭和60年に1位、平成7年に4位、平成17年に25位、平成22年に30位、平成27年に36位となっています。この飛び飛びの発表の間の年である平成12年に26位に急に下がったことから“26ショック”と呼ばれました。
下から数えたほうが早いという26ショックから、さらに落ちて36位となると、新たなデータしか見ていない人は、かつては長寿県であったことを知らずに、過去のデータを見せられて初めて知ったという人も少なくありません。
沖縄県の女性はというと、昭和50年に1位、昭和60年にも1位、平成7年にも1位、さらに平成17年にも1位でしたが、平成22年に3位、平成27年に7位となっています。まだまだ上位にいることは確かですが、今後も下がり続けることは容易に想像がつくことです。これは脂肪の摂取量が減ったからということではなくて、むしろ脂肪の摂取量が増えたことであって、その当時には青年期であって多くの肉食をしていた人が高齢になったことと関係しています。
前回の「BMI22よりも24〜27が長生き」という話の続きです。標準体重よりも少し太っている人のほうが長生きだということは以前から言われてきました。この「少し」というのが、どれくらいなのかということですが、定説的には5%プラスと言われています。標準体重が60kgの人なら63kgということです。“標準体重”と聞くと、標準的な体重という印象があって、「この体重を目指せばいい」というようにも思われがちです。しかし、この認識は違っています。
標準体重というのは、1日に摂取してよい食事のエネルギー量を計算するときに使われる表現で、「身長(m)×身長(m)×22」で求められます。身長が170cmの人なら「1.7×1.7×22」で63.58kgとなります。単純に、この5%プラスなら66.759kgとなります。
この体重をBMIの計算式を使って計算すると「66.759÷1.7÷1.7」で23.1となります。
BMI22が日本人にとっては健康な体格指数だと言われて、それを目指すように指導をされてきましたが、少し体重が多いほうが健康と言われる時代にはBMI23を一つの目標にするのがよいということがわかります。それなのに朝の人気テレビ番組で紹介していた目標はBMI24〜27です。BMIが25を超えると肥満となるので、BMI24までなら、まだわからないでもありません。
BMI24〜27ということに条件をつけて、筋肉を増やして体重を増やすということなら、これもわからないではありません。しかし、番組では脂肪をもっと摂ることをすすめていました。
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準』(2015年版)では脂質の摂取割合を20〜30%としています。その5年前に発表された2010年版では20〜25%となっていました。それが「5%も上がったのは脂肪を多く摂るように国が示した」と考える人もいますが、ただ脂肪を増やせと言っているわけではありません。
脂質の摂取割合を20〜30%としたことに加えて、飽和脂肪酸の摂取量を7%以下にすることも掲載されています。飽和脂肪酸は動脈硬化のリスクを高める脂肪酸で、畜産肉に多く含まれています。これに対する不飽和脂肪酸は逆に動脈硬化のリスクを低くする脂肪酸で、魚や植物油に多く含まれています。簡単に分類すると、飽和脂肪酸は血液をドロドロにする脂肪、不飽和脂肪酸は血液をサラサラにする脂肪ということです。
このようにドロドロ系の脂肪酸が7%としても、サラサラ系の脂肪酸を13〜23%にするということで、肉に含まれる脂肪を増やしてよいということではありません。しかし、昨今では「高齢者は肉を食べろ」と言われるように動物性のたんぱく質を多めに摂ることが健康づくりに必要という考えが広まってきました。肉を食べれば飽和脂肪酸を多く摂ることになるのは当然のことで、このバランスを考えながら、どれくらい肉を食べればよいのかを決めなければならないことになります。
ところが、肉を食べろ、BMI24〜27がよいということだけが一人歩きすると、脂肪で太る人が増える、わざわざ太ろうとする人が出てくるということにもなります。
ここで取り上げたように、もっと大きな視点から見て紹介しないと、健康のための情報が、不健康な人を増やす結果ともなりかねないのです。
朝の人気テレビ番組が「BMI22は痩せすぎ、24〜27が長生き」と紹介してから、BMIと脂肪摂取の是非についての質問が急に増えました。この数字に驚いた人もいましたが、それよりも「自分のBMIからみて24は健康的ではないと感じていて、その感覚が正しいのか、それとも感覚のほうが間違っているのか」という疑問を投げてきた人が案外と多かったことに、こちらが驚かされました。
BMI(Body Mass Index)は体格指数のことで、「体重を身長の二乗で割る」ことで求められます。この表現を難しく感じる人は多いのですが、要は体重を身長(m)で割って、さらに身長で割って計算できます。近くにいる人をモデルにすると体重が65kgで身長が170cmだと、「65÷1.7÷1.7」となり、BMIは22.49となります。
これまで最も健康的とされたBMI22を基準にして別の計算をすると「22×1.7×1.7」で63.58kgとなります。健康的に見える人は、だいたいそれくらいの身長と体重の関係なので、BMI22に、それほど違和感を抱かないまま来ました。それがBMI24となると69.36kgとなり、かなり多い感じがします。運動をしていて筋肉質の人なら、これだけ体重があっても腹が出ていないスタイルでしょうが、あまり運動をしていない人だと完全に腹が出ています。
筋肉は脂肪よりも同じ容量で20%ほど重いので、筋肉が多い人では体重が多くて健康面で問題はなくても、同じ体重でも脂肪が多い人だと少し問題も出てくるようなのがBMI24の体重です。
日本の基準では肥満はBMI25からなので、BMI24はギリギリ健康の範囲とみられてきました。ちなみに先ほどの計算式に当てはめるとBMIは72.25kgとなります。それがテレビ番組で紹介されていたBMI27になると78.03kgとなり、さすがにこれは「健康的な体重の範囲」とは言いにくい、というか言えない、言わない、となってしまいます。
それなのに、どうしてBMI24〜27が長生きとの発言があったのかというと、沖縄の脂肪摂取量と平均寿命の順位が証拠としてあげられていました。沖縄の平均寿命は長らく全国1位でしたが、平成2年から順位を下げ続けてきました。それが脂肪の摂取量の減り方と同じような曲線を描いていることが強調されていました。これは事実としても、どこの地域でも高齢化率が高まってくると脂肪の摂取量は減ってきます。若い世代は肉食が多く、高齢者は少ないということですが、沖縄県は高齢化率が高く、それが年々高まっているので当然の結果です。
脂肪の摂取量が多いといっても、それが平均寿命に現れてくるのは一番に肉食をしている世代が高齢者となるまでの30年ほどのタイムラグがあります。平成2年の30年前というと終戦から15年の昭和35年です。沖縄県は昭和47年にアメリカ統治から返還されましたが、それ以降も肉食の歴史が長く、脂肪の摂取量が多かったのが高齢化によって平均的なところまで減ってきたというのが正解といえます。
沖縄県は昔から肉食をしてきたといっても、歴史的に食べてきたのは豚肉です。戦後に多く食べるようになったのは牛肉です。動脈硬化のリスクを高める飽和脂肪酸は牛肉のほうが多く、そもそも日本人の体質に合ってないので、こういったことを考慮したデータでないと比較対象には使いにくいのではないかと質問者には伝えておきました。





