健康食品は機能性食品と呼ばれていた時代があります。そのときに「機能性食品は“うの字”がいらない」と言われたことがあります。日本メディカルダイエット支援機構の理事長は当時の厚生省のお役人から言われた「うの字はいらない」というのは「気のせい」ということだと気づきましたが、すでに機能性食品はエビデンス(科学的根拠)に裏づけられたものが登場していたので、実は気のせいのものと機能性のものがあることは承知していました。
その「うの字はいらない」は話していたお役人は、それ以降に特定保健用食品(トクホ)の制度に関わり、それが今の機能性表示食品制度につながっています。気のせいと揶揄されたのは効果がないものが機能性、健康という名前をつけられて販売されているということを指していたわけですが、機能性表示食品はエビデンスのデータを示して、消費者庁から表示を許可されているので、これは気のせいではなく、機能性があることを公に認められていることになります。
機能性表示食品として販売されているものは、以前に健康食品として販売されていたものと、どれくらい機能性が高まったのが気になって、消費者庁によって示されているデータを見ながら、メーカーに問い合わせをしました。ところが、多くの会社からは以前の商品と同じであるとの返答がありました。以前から優れた機能性があったものを、データを示すことで消費者庁が機能性ありとして、機能性表示食品の記載を認めてくれた、ということです。
では、機能性表示食品でないものは効果がないのか、という議論がありますが、そんなことはありません。通常の健康食品の中には、よいものもあれば、よくないものもある、というような言われ続けた話ではなく、「気のせい」の有効性があるという話です。医薬品の有効性を確認するための試験でプラセボ(placebo)が使われます。これは偽薬と呼ばれるもので、外見上も口に入れた感じも本物の薬と同じにして、試験に参加している人が本物の医薬品なのか偽薬なのかわからないようにして試験が実施されます。
普通に考えると本物には効果があり、偽薬には効果がないということかもしれませんが、実際には例えば高血圧に効果がある医薬品成分を飲んだ人だけではなく、偽薬を飲んだ人も血圧が下がるということが起こります。そこで医薬品の有効性を確認するときには、本物の医薬品によって得られた効果から偽薬による反応の分を差し引いたものが医薬品の効果とされます。これは有効成分が含まれていないか、少ししか入っていない健康食品でも摂取した人が効果があると信じていると、それなりの効果があるということでもあります。
機能性表示食品についてメーカーに問い合わせをしたのは、ある目によいとされる健康食品が機能性表示食品に変わったことで、「強く効果がある」と感じたという人が増えたことがあるからです。実際は中身が同じだったわけですが、効果を信じて摂ることは気のせいではなく、実際に効果が高まることにつながるので、機能性表示食品として販売することには大きな意味があるわけです。
投稿者「JMDS」のアーカイブ
「水を飲んでも太る」ということを言う人がいます。三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質には、それぞれ約4kcal、約9kcal、約4kcalのエネルギー量があります。これ以外にはエネルギー源になるものはありません。水はエネルギー量がゼロで、水に糖質(砂糖など)を加えれば、その分だけエネルギー量が高くなります。水そのものを飲んで太ることはない、というのが原則的な答えです。しかし、水を飲むことによって体重が増えることはあります。それは体内の水分が減っている場合です。
体内の水分は60%ほどだとされます。これは若い人の話で、年齢を重ねると水分量は50%ほどまで減っていきます。この体内の水分の多くは細胞の中にあります。水をできるだけ飲まずに、汗をかく、利尿効果のあるコーヒーなどを飲んで排出される水分を増やすということをすると水分が減っていくので、その分だけ体重を減らすことはできます。やせるために減らしたいのは水分ではなく、脂肪細胞の中に蓄積された体脂肪です。体内の水分を減らしても脂肪が減るわけではないので、体脂肪率は変わらないどころか、水分が減った分だけ高まることにもなります。
細胞の水分が少ない状態になっているところに、水を飲んだら無駄なく吸収されて体重は元に戻っていきます。体重だけに注目すれば、これは水を飲んで太ったということになります。しかし、実際には正常な状態に近づいているだけで、水分が少なかった状態が問題だったわけです。こういった水分が少ない状態の人が水ではなく、普通の食事をしても普段以上に体重が増えます。これは普段なら吸収されない食品の中の水分が、あまりに体内が水分不足になっているために吸収されることになるからです。
もう一つ、水を飲んでも太る理由として塩分の摂りすぎも考えられます。塩分のナトリウムには水を吸着する作用があり、ナトリウムが体内に多く入ると、それだけ吸着される水分が増えます。これは細胞の中の水分だけでなく、血液中にもナトリウムが増えることで血液の量が増えていきます。塩分の摂りすぎは血圧を上昇させると言われますが、これは血液中の水分が増えることによって血管が圧迫されるようになることと同時に、血管の細胞にナトリウムが入り込んで細胞の水分が増えることによって細胞が膨らみ、結果として血管を細くするという両方の作用があるからです。
血液中のナトリウムが濃い状態になると、腎臓から血液が濾過されるときに余分なナトリウムは徐々に排泄されるようになっていきます。それによって調整されていくわけですが、腎臓に負担がかかりすぎると調整能力が低下していくことになります。腎機能は年齢を重ねるほど低下する傾向がありますが、若い人でも低下することがあり、その原因としてたんぱく質の摂りすぎがあげられています。糖質制限によってダイエットに取り組んだのはよいけれど、肉や魚を食べる量が増えたことで腎臓に負担をかけ続けることも心配されているのです。
やせるか太るかは食事量と運動量のバランスの結果だとされています。食事量が少なくて運動量が多ければやせるし、食事量が多くて運動量が少なければ太るというように考えられています。ダイエットに必要な生理学のメカニズムはほぼ確認されています。そのメカニズムどおりに食事も運動も実施すればやせることも逆に太りたいと希望する人の願いをかなえることもできるはずです。しかし、実際にはダイエットができない、やってみたものの続かないという人は少なくありません。
確認されているメカニズムは、どのようなものなのかということですが、私たちが代謝生理学の研究に取り組み始めた20年ほど前は、例えば運動をしてダイエットをするとリバウンドしにくいものの、運動なしで食事を減らしただけのダイエットではリバウンドしやすいということはわかっていても詳細のメカニズムまでは充分に理解はされていませんでした。しかし、ちょうどテレビ番組でダイエットが盛んにテーマとして取り上げられていたときだったので、これまでの実績を例示して、「これさえすればやせられる」という表現が平気でされていました。
なぜかはわからなくても、結果としてダイエットが成功したのだから、これは正しいということで済んでいましたが、エビデンス(科学的根拠)の時代になると、なぜがわからないと始める気にもならず、始めたとしても続かないということが増えてきました。食事量が増えると太るのは、1日に必要なエネルギー量を超えると、その分の糖質や脂質を肝臓で脂肪に合成して、これが脂肪細胞に蓄積されるからです。このメカニズムがわかると蓄積される脂肪を増やさないように食べる量を減らすか、蓄積されないように肝臓での合成量を減らすか、蓄積された脂肪を減らすかという選択肢の中から選ぶこととなります。
二番目の肝臓での合成量を減らすというのは、なかなか難しいことです。というのは、脂肪は重要なエネルギー源で、もしも何も食べられない状態になったときには、この脂肪が生き延びるためのエネルギー源になるので、少しでも余ったものは脂肪に合成するという仕組みが身体の中に備わっているからです。となると、やはり食事を減らすか、蓄積された脂肪を減らすかということになるわけですが、この脂肪は重要なものなので簡単な運動くらいでは減らないようになっています。
例えば、脂肪細胞の中に蓄積されている1kgの体脂肪は約7200kcalのエネルギー量があります。男性の1日の食事のエネルギー量は約2400kcalとされるので、3日分の食事を減らさないといけないことになります。42.195kmのフルマラソンのエネルギー消費量は約2400kcalとされるので、毎日1回、マラソンをしていれば3日で1kgの体脂肪が減らせることになります。
それは無理だと考えるか、チャレンジ可能と考えるかは、脂肪の燃焼のメカニズムが理解できているかどうかにかかっています。そのメカニズムですが、脂肪が燃焼するのは全身の細胞にあるミトコンドリアのTCA回路で、この回路で酸素を用いて脂肪がエネルギーとして変化します。燃焼のためには酸素が必要で、ミトコンドリアは筋肉に多くあるので筋肉を動かす運動が必要になります。ただ、食事を減らしただけでは脂肪は減りにくく、運動も取り入れることで脂肪が減っていくということです。
活性酸素は細胞を酸化させ、細胞を遺伝子から傷つけていくことから、その活性酸素を消去することこそが健康の秘訣ということで、活性酸素を消去する抗酸化能力が高い食品を取ることがすすめられています。活性酸素は通常の酸素の電子のバランスが崩れたもので、欠けている電子が補われると正常な酸素になって、健康被害が起こらなくなります。電子を補う役目をするのが抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEです。この他にも活性酸素を消去する方法があって、細胞よりも電子を奪いやすいものがあると、そちらから電子を奪っていきます。その奪われやすいものが抗酸化成分で、抗酸化成分が豊富に含まれたものを摂ることで細胞を酸化から守ることができるというわけです。
抗酸化成分として初めに広く知られるようになったのはポリフェノールで、赤ワインのポリフェノールが動脈硬化を予防するということで人気に火がつきました。動脈硬化に有効なのは、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロールが活性酸素によって酸化すると、白血球の一種のマクロファージが異物として取り込んで処理して、限界まで取り込むと活動を停止して血管壁の中に入り込みます。これが動脈硬化の始まりで、動脈硬化の最大の原因は活性酸素、最大の対策は抗酸化成分ということが知られるようになりました。
そういったこともあって、お酒を飲めない人が赤ワインを飲んで、かえって不調を起こしたという話まで伝わったことがあります。それはポリフェノールのせいではなくて、正しいことを伝えていないメディアのせいとも言われましたが、もう一つメディアのせいと言いたいことがあります。それは抗酸化成分の強さを示すORAC値(スコア)のことです。
ORAC値は活性酸素吸収能力といって、1992年にアメリカの農務省と国立老化研究所が開発した食品の抗酸化力の指標で、Oxygen Radical Absorbance Capacityの頭文字を取ったものです。さまざまな食品の抗酸化力を測定して、栄養データラボとしてランキングも示されました。ORAC値のランキングを示して、自分の会社の食品は活性酸素を消去する力が強い、活性酸素に負けないための健康食品だという宣伝合戦がされたものです。
実際に、どのようなランキングなのかを見たいと多くの人が思うところでしょうが、ORAC値のランキングを示すことは今ではできなくなっています。というのは、掲載が許可されなくなったということではなく、アメリカ農務省が2012年にORAC値を取り下げたからです。その理由ですが、ORAC値が人間の健康と関係がないことがわかったからです。
このことは事実ですが、抗酸化力が強いものほど、多く含まれるものほど活性酸素を多く消去するのも事実です。ただ、抗酸化成分は得意とする活性酸素があり、すべての活性酸素に対して、どの抗酸化成分も同じように効果があるというわけではありません。目によいと言われるベリー類に多いアントシアニンは目に優先的に届いて効果を発揮します。肝臓によいと言われるクルクミンは、やはり肝臓に効果を発揮して、それで余ったら他の部位に働きます。
こういったことを告げずに、未だにORAC値を示して有用性を示そうとする会社もあり、こういったことに惑わされないようにするには、やはり情報収集が重要になります。
正しい表示というのは基準があって、それに従っていれば“正しい”と認められます。日本メディカルダイエット支援機構の理事長は、食品表示の法律の専門家でもあり、食品の中でも一番表示が面倒とされる健康食品の表示や広告でも、「これが正しい」と言える定義を示すことは簡単だと話しています。それに違反すると医薬品医療機器法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)、食品表示法、健康増進法、特定商取引法、不当景品類及び不当表示防止法、医師法などによって罰せられることになります。
食品・健康食品のように誰の目から見ても、これは正しい、これは正しくないと判断がつくものならよいのですが、ダイエット法となると、これが正しいと言うのは難しく、そのことが頑張って続けたのに効果が得られなかったという不幸な結果につながることにもなります。今はエビデンスの時代で、科学的に正しいと認められる方法で試験をして、一般的に認められる評価法を用いて判断されれば、これは正しいと判断できるかもしれません。
しかし、そう言った例は少なく、特別な(?)研究をした専門家(?)が、これが正しい方法で、自分が正しいと判断したのだから……という信じてよいのかどうかわかりにくいことも少なくありません。そもそも正しいことの根拠として示された試験方法や過去の学会発表などで定説となっているというのは、私たちなら見極めることはできても、研究発表を日々チェックして情報を更新していないと、一般的な常識をもっては、なかなか判断がつかないものです。
アメリカは、そういったことに対しては実にシビアで、正しくないこと、効果がないことにはお金を使わない、という態度がはっきりとしています。アメリカにはダイエットのデータベースがあり、一つのダイエット法が対象者(人種、性別、年齢など)によって、どの程度の効果があったのかの評価が行われています。その評価は一部の対象者の意見に従うようなことはなくて、複数の研究者が世界の論文、研究発表を収集して、分析して、信頼の置けるデータを載せているのです。
また、期間や回数によっての差も示されていて、自分に合った方法を選ぶことができるようになっています。つまり、自分に合ったダイエット法の中から効果があるものを選び、それくらい続けたら、どんな効果があるのかを知ることができるわけです。ダイエット法だけは、やってみないことにはわからないということではないのです。
だからこそデータベースを構築して、それを参考にして実践した集団のデータも積み重ねられていくことになります。一般向けに発表されるデータは各ダイエット法の有効性の評価ランキング(5段階評価の3など)ですが、専門家向けには人種、性別、年齢などによる評価ランキングとデータ、さらに個人の条件によって、どれくらいの努力が必要なのかという、実践者が本当に知りたいと思っているデータも載っています、そのデータベースは、成績がよかったものだけを選んでわけではなく、中には酷評されているものもありますが、日本では紹介されることもないようなデータが載っているのも、さすがにアメリカの研究データです。
ノルディックウォーキングのポールは、もちろんノルディックウォーキングをするためのものです。それと同時に、ノルディックウォーキングを始める前の準備運動のストレッチにも使われます。歩くために手に持っているので、歩く前の準備運動に使おうというのは普通の発想です。そして、歩いた後の整理運動にも使われます。
手に何も持たない状態のストレッチは足を大きく前後させて深く腰を沈め、アキレス腱などの筋(すじ)を伸ばすのも大変です。ましてや高齢者となると、準備運動で充分に伸ばすことができないということにもなります。ところが、2本のポールがあると上半身を支えることができるので、充分に曲げ伸ばしすることができます。深いストレッチだけでなく、支えがあるので長めに時間を取ることもできます。
これは手首のストラップとポールがつながっているノルディックウォーキングのポールだけでなく、ポールのグリップ部を握るポールウォーキングのポールの場合も同じことです。準備運動のためのストレッチにも使えますが、足腰の力が衰えてきて、歩くのには問題がなくても座ったところから立ち上がるのに苦労をする人でもポールをしっかりと地面につけば楽に立ち上がることができます。そこで腰掛けた姿勢からポールを使って立ち上がる動作を繰り返すことで、起立筋(立ち上がるのに必要な筋肉)を強化すると同時に、腕の力を鍛えることもできます。
ポールを左右について、片足ずつ前に降り出したり、左右に振ったりして足の動きをスムーズにする動作もできます。これをポールの支えなしにしようとすると大変です。ポールを左右についたところから腕を回します。イメージとしては水泳の平泳ぎの動きです。腕を逆方向にも回します。
ポールを2本とも右側について状態を捻るストレッチをします。これは左側についても行います。これらの動きはポールのグリップを握ったままの動きになりますが、ポールを棒のように使って、グリップと先端近くを握り、左右の体側を伸ばすストレッチも行います。
この他にも、いろいろとストレッチの方法はありますが、初めは無理に伸ばすことはやめておきます。ポールの支えがあると深く、強く、長く行うことはできるのですが、まだ筋力がついていないとき、充分に伸びていないときにやりすぎると身体を傷める原因にもなります。そして、これらは周りに人がいるところではやらないことです。ポールは振り回すと、これは近くにいる人にとっては武器にもなりかねません。
ポールを使ったストレッチをするときに、ポールの扱いについて注意も行っています。歩く方としては、いつでもポールを使っていたいところかもしれませんが、混雑しているところではポールは使わずに持って歩くようにします。狭い道では前方・後方から来る自転車や自動車、バイクなどにとってはポールを使って歩いている人は邪魔になります。それを意識して、止まって通過してもらうことも場合によっては必要です。
杖の代わりのような感覚なのでしょうか、横断歩道の青に切り替えるボタンをポールの先端で押している人を見かけたことがあります。一緒にいた人は、地面につけた先端でボタンを押すことに汚いという反応をしていましたが、それよりも危ない感覚のほうが先立ちます。もちろん、これから歩く方向や周りの人に見てほしいものがあったときに、指差しがわりにポールを使いたくなる気持ちもわからないではありませんが、ポールでの指示は危ないことです。
少なくともポールの先を腰よりも高い位置に上げてはいけません。ましてや、子供がいる場合は(案外と大人もですが)チャンバラ遊びには使わないことを言っています。もちろん本気で言っているのではなく、こういった言い方をすると印象に残りやすく、覚えてもらって、他の人に伝えてもらえるからです。
「短期間に、こんなにも効果があったのだから、続けていれば、もっと効果がある」というのはダイエットの世界だけでなく、さまざまな健康効果、美容効果を示すときのトークとして使われています。実際に取り組んでいる人も、頑張ってやっているのだから、もっと効果が得られることを期待したいのは当たり前のことで、その方法が高価なものだったら、なおさらのことです。
ダイエット効果では、本当なら1週間の結果、1か月の結果、3か月の結果、そして6か月の結果と順を追った結果を示してくれたら本当のところが見えてくるのですが、そこまでのことをするにはお金がかかります。機能性表示食品のエビデンス(科学的根拠)でも、そこまでのことを求められていないので、限られたデータしか出さないのが普通のことです。そこで、どれくらいの期間のデータを出すのかというと、お金と手間を考えると、どうしても一番短いものとなりがちです。
1週間でウエストサイズ(腹囲)が急に短くなったら、これは効果がある方法だと信じたくなる人も多いことです。しかし、ウエストサイズを大きくする原因となっている内臓脂肪は蓄積されやすく、減少しやすいという特徴がなります。余分なエネルギーを摂ると脂肪に合成されやすく、有酸素運動をすると脂肪細胞に蓄積された中性脂肪が分解されて出ていくので、ウエストサイズを短期間で大きくすることも逆に小さくすることも比較的簡単です。
中には、ダイエット法を始める前に運動をせずに食事量を増やしてウエストサイズを大きくしておいてからダイエット法を始めるということも当たり前のようにされます。例えば、ダイエットの健康食品を摂ってやせたのかと思っていたら、テレビコマーシャルの画面に左側や左下という目線が向かいにくいところに「適切な食事と運動も実施しました」と書かれているものもあります。
どんなダイエット法でも、間違った方法でなければ内臓脂肪が先に減るので、1週間の取り組みでもウエストサイズは一定のところまで減っていきます。問題はそこからで、内臓脂肪が一定の量になってからは、なかなか減りにくいのが通常です。そして、今までよりも全体的に体脂肪が落ちていくと、重要なエネルギー源である体脂肪を減らさないようにする恒常性調整能力が働いて、減少にブレーキをかけるようになります。
しかし、この状態でもダイエット法を続けていると、また落ちていきます。ダイエットは停滞期があって、それを越えると落ちていくという階段状の減り方をするので、とにかく続けることで効果が得られるわけです。
内臓脂肪の蓄積を測定するにはヘソの高さで一周するのが基本的な方法です。内臓脂肪がつく位置は個人差があるので、いくつかの位置で測ってみて、その中で最も減少したところを採用するという困った方法をやっているところもありました。これでは数字が優先になって正確な効果が見えにくくなってしまいます。そんなちょっとしたところも効果的な方法なのかを見抜くために、チェックしたいところです。
健康を扱ったテレビの情報番組を見ていて、この内容だとメディア関係者から質問が来るな、と思っていたところにメールが入りました。ここらへんの質問だろうかと想像していましたが、その想像と違った質問でした。番組の内容は“血圧の波”のサージ(Surge)で、血圧を上昇させる危険因子が重なると早朝に大きく血圧が高まるモーニングサージが起こり、それが脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす要因ということを紹介していました。確かに救急搬送される人は早朝に多くなっています。その危険因子として喫煙や深酒が取り上げられていて、それに関連することと思っていました。ところが、あったのは「血管を軟らかくする運動は早歩きですか」という質問でした。
番組の最後のほうで、「血圧を安定させるためには運動がよい」という話があり、それを説明するようにウォーキングのシーンがありました。これは「この運動がよい」という説明映像ではなく、イメージ映像のようでした。ウォーキングのシーンで、しかも早歩きをしていたことから、“早歩き”を推奨していると感じた人も多かったようです。しかし、血圧を上昇させるような“速歩き”であったのですが、専門家のコメントは「運動は一時的に血圧を上昇させるものの血管を軟らかくする物質(一酸化窒素)が出るので血圧上昇を抑える」という主旨でした。
あまりに早く歩くと血圧が大きく上昇して、一酸化窒素のプラス分を超えてしまうことにもなるので、少し早歩き程度のウォーキングのシーンを出してほしかったところです。
想像をしていた質問と違った、という話を伝えたところ、そのことに追加質問がありました。深酒も喫煙も血圧を20mmHgほど上昇させるということでしたが、朝に起床しただけでも20mmHgほど上昇します。早朝に55mmHgの上昇があると危険度が大きく高まります。さらに深酒によって睡眠不足が起こることでも15mmHgの上昇があるので、深酒と喫煙、起床、睡眠不足の4つで75mmHgとなると通常の血圧の範囲の方でも完全に危険エリアに突入していくわけです。
これは正しいことではあるのですが、単純な足し算ではないということです。タバコを吸うと胃の中に入って胃壁についたニコチンなどの有害物質が徐々に腸に流れていって血管に入っていきます。そのときに飲酒をしているとアルコールが有害物質を一気に溶かして、濃い状態で胃壁から吸収されて血管に入ってしまいます。この有害物質が血圧を一気に上昇させることになります。つまり、深酒だけでなく、適度な飲酒であってもタバコを吸っていると血圧を急上昇させることになってしまうのです。
どれくらいの飲酒量なのかというと、日本酒換算で1合(ビールなら大ビン1本)では血管が緩んで血圧が下がり、2合までは下がった状態が続くというのが一般的です。これ以上の飲酒量になっても血管の緩みは続きます。しかし、血管が大きく緩むと全身の血流量が減って脳や内臓などの血液量が減るので、危険を回避するために反転して血圧が上昇します。つまり、2合以上の飲酒は血圧を大きく上昇させていく可能性が高いということです。
早歩きというと、中強度の歩行が有名になってきたこともあって、なんとか会話ができる程度の速さの歩き方だというイメージが抱かれるようになってきました。これは高齢者を対象とした健康研究で、1日に8000歩以上、そのうち20分以上の中強度の歩行が最も健康度が高く、これ以上の歩行は身体を傷める可能性があるという報告(中之条研究)を受けて、実践する人が増えてきています。
会話ができるレベルよりも強度が高いのが“鼻歌”を歌いながら歩ける程度で、これは人によっては高強度領域になります。こうなると“早歩き”というより“速歩き”になります。
これ以上の負荷がかかるスピードになると、これは有酸素運動のレベルではなく、無酸素領域の運動となります。無酸素領域というのは無酸素運動の入口のレベルで、有酸素運動であるはずのウォーキングが無酸素運動と同様になってしまうということで、そう長くは続けられなくなります。このレベルの強度を体験してみたいという人には、1分間の超速歩きを途中で入れるウォーキングを紹介しています。超速歩きは、とにかく一番早いスピードで歩くもので、走るところまではいかない限界の速度での歩行です。
これは、まず普通歩行を3分ほどした後にギアチェンジをして、必死のスピードで歩きます。歩行ということで、片足は必ず地面に着いています。一瞬でも両足が宙に浮くのが走るという行為になります。同じ歩くことであっても、普通歩行の速度では背筋をまっすぐに伸ばした姿勢でも歩くことができます。しかし、超速歩きとなると上体が立った姿勢ではスピードが最高レベルには高まりません。少し前傾姿勢になることで筋肉が強く使われるようになり、また足の力が路面に伝わりやすくなることでスピードが高められます。
この歩き方を言葉だけで理解できる人は少ないので、体感してもらうために、私たちは帯かゴムチューブを使います。これを左右ともに襷(たすき)掛けして、つまり胸のところでXになるようにして、端を他の人に持ってもらって後方から引いてもらいます。これに抵抗するように頑張って上半身、下半身に力を入れると、自然と前傾姿勢になります。これが最もパワーが出やすい姿勢となります。足を強く踏み出すためには、腕も大きく前後に使わないと勢いよく前進することはできません。
この歩き方を1分間頑張ると、筋肉の中に血液が多く取り込まれ、酸素も充分に送り込まれます。この状態で普通歩行をすると多くの酸素を使いながら、糖質(ブドウ糖)と脂質(脂肪酸)を効果的に燃焼させて多くのエネルギーを作り出すことができます。このエネルギーが運動の活力源になり、運動による全身の機能向上につなげていくことができるわけです。
この歩行姿勢による有酸素運動と無酸素領域の運動の活用法については、インターバルウォーキングや生活習慣病対策のウォーキングの指導の中で紹介しています。
筋肉には赤筋と白筋があります。赤筋が、その名のとおり赤い色をしていて、酸素を多く取り込んで多くのエネルギーを作り出して大きな力を持続的に発揮することができる筋肉です。スピードからいうと遅めで、一瞬のうちに身体を動かずことができる筋肉ではありません。大きな力を長く発揮できなくても瞬時に動くことができるのは白筋で、これも名のとおり白い色をしています。
魚の場合には赤身魚のマグロやカツオなどは赤筋がほとんどです。白身魚のタイやヒラメなどは白筋がほとんどです。マグロは海中の酸素を取り込みながら長距離を泳ぎ続けます。スピードに乗ってからは勢いがついているので猛スピードに見えるものの、泳ぎ出しは実にゆっくりです。それに対してタイは普段は動きが少なくても敵に襲われそうになったときなどには急に動くことができます。
この違いは有酸素運動と無酸素運動の関係と同じで、赤筋は酸素を用いて大きなエネルギーを作る有酸素運動用の筋肉であり、白筋は大きなエネルギーは作れないものの瞬間的に動くための無酸素運動用の筋肉であるといえます。魚の場合には筋肉(身)の色がはっきりと別れています。タイが長く泳ごうと頑張ったからといって赤身が増えていくわけではありません。
男女で比較すると、男性は白筋が多く、運動によっても白筋が増えやすくなっています。女性は白筋が増えにくい分だけ赤筋が増えやすくなっています。年齢を重ねると強い力を発揮する白筋が減りやすいので、男性の高齢者は白筋が大きく減ることによって、だんだんと早く歩けなくなっていきます。同じ年齢の男女が参加する運動教室では、高齢者といっても60歳代、70歳代前半くらいまでは男性は早く歩くことができても、75歳を過ぎると早く歩けなくなる傾向があります。女性は70歳代前半までは男性よりも早くは歩けなかったのが、75歳を過ぎると衰えが少なくて男性の低下のほうが大きかったことから女性のほうが優位になっていく傾向があります。
この75歳というのが分岐点のようで、75歳前の男性は白筋が多く、早く動けた白身魚のタイのような感じだったのに、75歳を過ぎると早く動けないものの長持ちしやすい赤身魚のマグロのような感じになります。これに対して、75歳前の女性は赤筋のほうが多いマグロのような感じだったのに、75歳を過ぎるとタイのような感じになります。これは白筋が優位になるというよりも赤筋の衰えが激しい結果といえます。これは個人差も大きいのですが、同じ年齢でも女性の高齢者はチョコマカと身体を動かすことができるものの、体力が長続きせずにタイのようになり、男性の高齢者は早くは動けなくても長持ちはするというマグロのようになっていきます。
そもそも女性は男性の3分の2の筋肉量という平均値ですが、高齢の女性は赤筋の持久力が低下して、疲労物質の蓄積が多くなって、そのために体力が続かず、急に体力切れで歩けなくなります。それまでしっかりと歩いていたようなのに、急にガクンと持久力が落ちて転ぶようなことになります。高齢の男性は疲労物質が蓄積してきても、筋肉が多い分だけ分散させて急に持久力が落ちて転んでしまうようなことは比較的少なくなっています。
過去の運動経験や筋肉量の差によって違いがあり、中には逆になっている人もいますが、こういったことが高齢者の場合には起こるということを意識して、歩き方を変える、長めに歩くときには休みを入れる、無理をしないで出歩かないということがあってしかるべきだと考えています。





