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ダイエットに関しては糖質制限について何度かメディアにコメントしてきましたが、週刊誌の記者から「がんと糖質制限について」というテーマでコメントを求められました。芸能人が公益のがん対策の団体の講演会で糖質制限を行っているという話をしたことから波紋が広がっていて、これを後追いする記事を考えているとのことでした。
がんに対抗するために糖質の一種の多糖類を摂るということは以前からありました。多糖類は免疫細胞の重要な栄養源なので、これを摂ることで免疫を高めて、がんに対抗しようというのは普通に考えつくことですが、糖質制限によってブドウ糖の摂取を控えたら、どんなことが起こるのかという疑問を抱いたようです。
がん細胞はブドウ糖をエネルギー源としています。だから、糖質制限によってブドウ糖を減らすか、場合によってはブドウ糖を断つようなことをすれば、がん細胞を“兵糧攻め”にすることができると考えている糖質制限をしているようです。また、ブドウ糖によって血糖値が上昇したときに膵臓から分泌されるインスリンは細胞分裂を促進するホルモンでもあるので、がん細胞の増殖を抑えるためにも糖質制限がよいと考えているようです。
がん細胞は毎日発生していますが、これを免疫細胞が抑えて、増殖しないように戦っているわけです。がん細胞を増やさないという発想はわかるのですが、それと同時に、むしろ、それ以上に免疫細胞の働きを活性化させることが重要になります。免疫細胞は、人間の他の細胞と同様にブドウ糖をエネルギー源として、活動のためのエネルギーを作り出して活動しています。それなのにブドウ糖を断つようなことをしたら免疫細胞の活動を抑えてしまうことになります。
身体が冷えると、がん細胞が増殖するとの考えから、代謝を高める健康食品がよいと考える人もいますが、代謝を高めて体熱を高めるためには燃焼しやすいエネルギー源のブドウ糖が必要です。ブドウ糖を摂らずに、代謝を高めるのは難しいことです。
がん細胞のことで、よく勘違いされることに酸素の摂取もあります。がん細胞は嫌気性の性質があるので、酸素を多く摂ることで、がん細胞の活動が抑えられるという発想をする人がいます。これは用語の理解の問題で、好気性というのは酸素がなければ働かないので酸素を摂ることによって活動が高まっていきます。これに対して嫌気性は酸素が嫌いということではなく、酸素があってもなくても活動ができるものを指しています。つまり、酸素を多く摂れば、がん細胞を抑えられるというわけではないのです。それなのに、がんと闘っている人の中には、酸素を多く取り込む酸素カプセルや酸素吸入を有効な代替療法として紹介している人もいます。
酸素を多く摂ることは大切です。というのは、細胞がエネルギーを作り出すときには酸素が必要であり、免疫細胞は酸素が充分でなければ活動も高まらないわけです。しかし、特別なことをして酸素を取り込むことはなく、有酸素運動のウォーキング程度でも充分との考えです。

ポールを使ったノルディックスタイルのウォーキングは、大きくノルディックウォーキングとポールウォーキングに分けられているということは以前から繰り返し述べていることですが、利点についても何度か紹介してきました。利点ばかりを述べていると、本当に利点(メリット)だけか、難点(デメリット)はないのか、という意見が出てくるのは世の常です。利点ばかりだと思って続けていたのに、それが難点を積み重ねていって、ついには身体に悪影響が出るというようなことがあってはいけないことです。こういった指摘は医薬品では多く、健康食品についてもよく言われることです。
実際にノルディックスタイルのウォーキングに難点はあるのか、ということですが、よくノルディックウォーキングの指導者が話をしているのは、ポールウォーキングはノルディックウォーキングのエビデンス(科学的根拠)を利用していて、ポールウォーキングの効果とは異なる、ということです。中でも例示されることが多いのは、「通常のウォーキングに比べて20%もエネルギーを多く使う」ということです。世界の論文を検索すると、その研究成果が出てきます。確かにアクティブなノルディックウォーキングの成果であって、ディフェンシブなポールウォーキングの成果ではありません。
効果が出にくいのに、出るものと思って一生懸命になって続けて、なかなか体脂肪も減らないし、筋肉もつかないというので途中で諦めたり、効果を出そうと思って頑張ることで、かえって無理がかかって怪我をする、ということもあります。しかし、これは効果的な話を難点にしたようなことで、実際に難点かというと、どうかとも思われます。
これは難点かもしれないという話を、私たちが頼りにしている運動科学の研究者からうかがったことがあります。その先生はオリンピックにも連続して出場された大学の名誉教授ですが、ブレーキの掛け方が重要という話をされていました。
歩くために左右のどちらかの足を前に出すとき、普通は前進するための蹴り出すことに意識がいきます。これは自動車で言えばアクセルを踏んで勢いをつけることです。むしろ意識をしたいのはブレーキのほうで、前に踏み出した足は踵から着地して足の裏を地面につけたときにはブレーキがかかります。ブレーキがかかった状態だから、この足裏を起点にして、逆の足をスムーズに前に出すことができます。ブレーキをかけるためにも筋力を使うわけで、歩くということはアクセルとブレーキの筋肉を切り替えて使い分けることです。
ところが、ポールを使うと、それができにくくなることがあります。ノルディックウォーキングは歩幅を広げて、勢いよく前進するので、大きく前に踏み出した足はブレーキもかかります。ところが、ポールウォーキングは通常の歩行の歩幅か少し広めの歩幅であることから、常にブレーキをかける歩き方をしていない人だとブレーキがかかりにくくなります。ポールの支えがあると、ブレーキを意識しなくても歩くことができるようになります。これは上半身を使って歩くことによって身体の負担が減るということではあるのですが、ブレーキをかけることを意識しないまま歩行を続けて、年齢を重ねていくと筋力の低下につれてブレーキをかける能力も低下していくことになります。
そのようなことにならないように、ポールを使うときにも歩幅を広げてブレーキを意識する、ポールを使わないときには、もっとブレーキを意識するという歩き方をしてほしいということです。

前回の「ポールなしで歩けるようにするのが目的」という話に、すぐに反応して質問を寄せた編集者がいます。ポールウォーキングではなく、ノルディックウォーキングの場合にポールなしで正しい姿勢で歩行する方法を聞いてきました。その編集者とは以前に、ノルディックウォーキングの姿勢はモデルのように背筋をまっすぐに伸ばして歩く姿勢が正しいのか、それとも通常の歩行の正しい姿勢に合わせた歩き方をするのがよいのか、ということで論議をしたことがあり、結論を出そうという思いから連絡をしてきたようです。
ノルディックウォーキングのポールを使って歩くと、背筋が伸びて、胸を張り、歩幅が広がって、踵から着地して、足の筋肉の前側(大腿四頭筋)と後ろ側(大腿二頭筋)を同時に使って勢いよく前進できるようになります。モデルのように、という表現が正しいかどうかは論議の対象になるところですが、頭から上半身、腰、足先まで一直線になるような姿勢で歩くのは、これまで我流で歩いていた人にとっては筋肉に負担がかかることになります。
ポールなどで歩くと、上から下まで一直線になる姿勢は、どうしても保ちにくくなります。その前に前屈みの姿勢になっていきます。前屈みになると、顎(頭)が前に出て、視線が下向きになり、背中が曲がった歩き方になっていきます。そうならないようにするには、ポールを使って歩くときから、少し前屈みになって、その姿勢が保てるように筋肉がつき、スムーズに歩けるように指導をしています。
ノルディックウォーキングとポールウォーキングの各団体の指導者とも、このことを議論したことがあるのですが、それぞれのノルディックウォーキングとポールウォーキングの団体は、これが正しい姿勢、正しい歩き方という定義のようなものがあります。定義があることによって普及しやすいのは当然のことです。それが各団体が流派のように感じて、同じポールを使った歩き方なのに、教わるほうを混乱させているというメディア関係者もいます。
私たちは、どうなのかというと、複数の団体の指導者と付き合ってきて、またメディア関係者とも付き合ってきて、この方法でなければならないという考えはやめました。私たちはポールを使ったウォーキングを普及しようという手段と目的が一致したことをやっているのではなくて、ポールは手段としました。目的は、あくまでポールなしでもスムーズに歩けるようにすることです。
そこで私たちが実践しているのは、歩き出しの動きを身につけることです。まっすぐに立っている姿勢から片足を前に出すのが一歩目というイメージではなく、一歩目は身体を徐々に前傾させていって、前に倒れそうになったときに片足を前に出して支えるというイメージの身体の使い方です。そして、反対側の足を出し、それを続けて前進していきます。その方法だと、少し前傾姿勢になり、この前傾の勢いが腕の力をポールに伝え、それを足の力を補助にするのと同じような効果を生むことができるようになります。
この歩き方は、やってみれば簡単なことで続けられることなのですが、初めのときだけはコツが必要です。このコツだけは実際に教える場があって、それぞれの人の歩き方に合わせて修正していかなければならないので、体験会や教室が必要になります。だから、私たちが実施する教室なりに来てほしいということでは広まらないので、健康を重視したウォーキングの理論と実践を指導できる資格認定者を育成しているところです。

正しい歩行姿勢とされる、背筋を伸ばして、胸を張り、腕を大きく振って、歩幅を広げて踵から着くようにして、勢いよく前進するというのは、文字にすると簡単なようでも、実際に正しい歩き方をするとなると、腰が曲がった姿勢になったり、前屈みになりすぎたり、逆にモデルのような歩き方になったりと、歩く姿はバラバラです。それを矯正して、みんなで同じ姿勢で歩くことは面倒、無理だということで、よほど妙な歩き方でなければ注意をしないという例もあります。何の例かというと、ウォーキング教室やウォーキングイベントでも、そういったことを見受けます。
正しい歩き方を見につける方法として、私たちが採用しているのはノルディックスタイルのウォーキングです。ノルディックスタイルのウォーキングは、2本のポールを両手に持って、ポールを地面に突きながら歩くもので、北欧で誕生したノルディックウォーキングは体側から後方にポールを突いて勢いよく前進していくもので、若い人向けとされています。されていますというのは、65歳以上の高齢者でも体力がある人なら若者と同じように歩くことができるからです。ポールがあると上半身を支えて足腰にかかる負担を減らして、さらにポールの力も使って前進力を高めて歩くことができるので、年齢を感じさせない歩き方ができるのです。
もう一つのポールを使ったノルディックスタイルのウォーキングはポールウォーキングです。これはノルディックウォーキングから派生した日本生まれのウォーキングです。ポールは前方か体側に突いて、身体を支えるのでディフェンシブのウォーキングとも呼ばれます。対象者は高齢者や体力が低下している人であるので、一般に言われている“一般の歩行よりも20%ほどエネルギー消費が高い”というのはノルディックウォーキングのほうで、ポールウォーキングは、ここまでは高まらないとされています。しかし、ポールがあることによって普通の歩行速度で歩けるようになり、長く歩けるようになるので、全体としてのエネルギー消費が高まることになります。
ノルディックウォーキングを続けていると、ポールを使わないときにも歩幅が広がり、胸を張って、勢いよく歩けるようになります。では、ポールウォーキングのほうはというと、それぞれの人の体力の状態によって違ってきますが、体力がある人の場合にはノルディックウォーキングと同様の結果が得られるようになります。体力がない人の場合だとポールの支えがなくなることで以前と同じような歩き方になってしまう人もいますが、正しい歩行姿勢によってポールウォーキングを続けていることで、筋力も体力もついていくことによって、だんだんとポールなしでも正しい歩行姿勢で歩けるようになっていきます。
私たちがポールウォーキングの体験会、講習会を実施するときには、最終的にはポールなしでも正しい姿勢で歩行できるようになることを目指していると話しています。ポールを使って目的地まで歩き、休憩した後にポールを忘れて、そのまま歩き出した……ということが起こることを期待して一緒に歩き、指導をさせてもらっています。

健康をテーマにしたバラエティー番組で卵(鶏卵)を取り上げていました。初めに取り上げたのはコレステロールです。卵にはコレステロールが多く含まれていますが、コメントをしていた長寿研究に詳しい医師が、卵のコレステロールはLDLコレステロール値に影響しないというデータを示して、これまでの常識は非常識というような言いようとなっていました。これまでというのは、いつのことかというと最近の話ではなく、私たちが健康情報誌を通じて情報提供し始めたのは15年も前のことです。番組で取り上げていたデータも、私たちが使っていたものと同じものでした。
血液中には、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロールと、善玉コレステロールとも呼ばれるHDLコレステロールがあり、これらによって運ばれているのが血液中のコレステロールということになりますが、そのうち食事が影響しているのは約20%となっています。残りの約80%は肝臓で合成されています。その合成量は、食事によってコレステロールが多く入ってくると、肝臓が調整して減らしていくので、食事由来のコレステロール摂取はLDLコレステロール値には影響しないということです。
私たちにしてみれば、あまりに当たり前のことだったので、健康の話をする機会に、「何を古い話をしているのか」と言われてもいけないと思って、わざと避けてきたところがあります。ところが、別の局のディレクターと話をしていたら、「まだ知らない視聴者もいるので、もっと出していくべきでは」と言われました。
確かに、コレステロールが多く含まれた卵を食べることでLDLコレステロール値が上昇すると思って、卵を食べないか食べる回数を減らしている人がいたら、良質なたんぱく質が不足することにもなります。その番組ではアミノ酸のバランスがよい良質なたんぱく質だと説明していましたが、良質なたんぱく質は卵に限ったことではありません。肉、魚、大豆も良質なたんぱく質です。
卵は栄養バランスがよい完全栄養食品という話も出ていましたが、卵だけでひよこが生まれるのだから、すべての栄養が含まれているわけではありません。バランスが取れているのはアミノ酸や脂肪酸などで、ビタミンCも食物繊維も含まれていません。以前に卵ダイエットが流行したときに完全栄養食品という誤った情報が広まってしまいましたが、卵だけを食べていればよいということではないのです。
健康番組のテーマは、すべてとは言いませんが、何か商品と結びつく情報が入れ込まれていることが多く、この番組でもテーマは卵であったはずなのに、鶏肉の成分についても後半で紹介されていました。卵のコリンはリン脂質の構成成分で、脳機能を高めて認知症予防につながるという話に関連づけて、鶏の胸肉に多く含まれるイミダゾールジペプチドには認知症予防効果があり、さらに抗酸化作用から脳の疲労回復に役立つという説明がされていました。
イミダゾールジペプチドはイミダゾールを含むアミノ酸が結合したペプチドで、動物の肉に含まれていますが、羽を動かす渡り鳥の胸肉に特に多く含まれているのは事実です。鶏は今では飛ばない鳥ですが、飛ぶ鳥、中でも長距離を飛び続ける渡り鳥には、それに耐えるための成分としてイミダゾールジペプチドが蓄積されています。今は飛ばなくても、鶏の胸肉に蓄積されているという説明がされています。
認知症予防についての研究では、脳老化の抑制効果が確認され、3か月の継続摂取で脳老化予防作用が確認されました。このときに使われたのは鶏肉ではなく、鶏の胸肉を原材料としたイミダゾールジペプチドの顆粒、つまり健康食品の成分と同様のものでした。認知症予防だけでなく、うつ病の改善、脳細胞の萎縮の抑制も続く研究で確認されました。
認知症予防には卵がよいのか、鶏肉がよいのかということですが、両方ともによいというのが結論ではないでしょうか。

運動は無酸素運動と有酸素運動に大きく分けられています。無酸素運動は、その名のとおり酸素を使わずにできる運動のことで、筋肉の中で酸素を使うことなく糖(ブドウ糖)をエネルギーとしています。糖は酸素があることで、細胞のミトコンドリアの中のTCA回路の中で糖を効率よく燃焼させて多くのエネルギーを作り出しています。この仕組みを使ってエネルギーを作り出しているのが有酸素運動です。無酸素運動は息を止めてもできる運動で、短距離走や投てき競技、ウエイトトレーニングなどがあげられます。有酸素運動は長距離走やウォーキング、サイクリング、水泳など呼吸しなければできない運動を指しています。
無酸素運動と有酸素運動では、どれくらいのエネルギーの量の違いがあるかというと、酸素を使わない運動だと糖1分子から2分子のエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)しか作り出せないのに対して、酸素を使った運動では36分子にもなります。激しい運動のほうが多くのエネルギーを作り出すような印象があるかもしれませんが、無理なく続けられる有酸素運動のほうがエネルギーが多く作られているのです。
有酸素運動なら酸素を充分に取り込んで、全身の隅々にまで酸素を送り込むことができるのかというと、身体への負荷が強まってくると無酸素領域の運動となります。だから、無理をして続けるのではなく、負担が強くなったら強度を落として続ける、むしろ休むようにするといったことが必要になってきます。
この話をしたときに、よく寄せられるのが「無酸素領域になると酸素が届かなくなるのか」という質問です。無酸素領域というのは無酸素運動ではないのに身体の中は無酸素と同じような状態になっていることを指しています。無酸素領域といっても、酸素を吸い込みながらやっているし、無酸素運動と比べたら多くの酸素を吸い込んでいるのに、どうして酸素がないようなことになるのかという疑問が浮かんできているのです。その答えは、「酸素が多くても重要なところに酸素が充分に運ばれていないから」です。
有酸素運動をすると取り込まれた多くの酸素は、酸素を多く使ってエネルギーを作り出す筋肉に送られています。運動の負荷が高まるほど筋肉に運ばれる酸素が多くなります。この状態で有酸素運動のレベルまで負荷を減らすと、多くの酸素が筋肉に取り込まれた状態なので、筋肉の中で作り出されるエネルギーが増えていきます。つまり、だらだらと同じペースで有酸素運動をするのではなく、途中で早歩きするなど負荷がかかるようにすると、エネルギーが効率よく作られるようになるのです。
本題の無酸素領域の話ですが、筋肉の中に多くの酸素が運ばれると、毛細血管に運ばれる酸素が減り、その先につながっている臓器や脳などに運ばれる酸素が減ることになります。心臓は血液を送り出していますが、その働きをするために毛細血管を通して筋肉に酸素が送られています。その酸素量が減ることになると、酸素を確保するために血流を盛んにしているのに肝心な酸素が仕事の割には少ない量しか送られてこないので、心臓に負荷がかかるようになります。
他の臓器も同じような状態になるので、酸素を多く取り込んでいるはずなのに脳の末端まで酸素が充分に送られなくなって、頭が回らなくなってくるのです。酸素を必要なところに送り続けるためには、有酸素運動が重要です。特に血管の硬化が進み、弾力性が低下してくる高齢者や、血管の老化が進んでいる人では、有酸素運動をすることが大切になってくるわけです。

テレビのディレクターから辞書がわりの連絡がありました。辞書を引いたり、サイト検索をするよりも簡単で早いということでの確認のメールのことですが、今回の話はdietの意味です。私たちはdietには、もともとやせるとか、食べないという意味はない、と話しています。具体的な、どんな確認なのかというと「the national diet building」という表記は「国のダイエットのビル」ではなく、国会議事堂駅の英語表記で、dietは国会という意味、ということ番組で取り上げたいということでした。
これは正解なのでYesと返答すればよかったのでしょうが、そこは説明をしないと気が済まないところで、なぜ国会が一般の人がイメージするダイエットになったかという話をしました。
dietの元々の意味は作戦、方針、戦略などで、それが転じて国の方針などを決定する国会を示す言葉となりました。正しいと思うことを議論して決めていくのがdietで、それに従った行動することもdietとなりました。さらに健康のために正しいことをするのがdietとなり、そこから食事療法を指すようになりました。欧米人が健康の話をするときにdietを使ったら、そのほとんどは食事療法のことです。
Dietだから、やせるための食事療法、つまり食事の種類や量の制限、場合によっては糖質制限もdietとなりそうですが、目的に合った正しい食事をするのがdietであり、何も食べる量を減らしたり、食べたいものを我慢するのがdietではないのです。日本人が使っているダイエットは、そちらのほうの意味合いなので、あえて食事で我慢を強いることをダイエットと呼ぶようにしています。
それに対して、目的に合った正しい食事は英語のdietで表すと伝わりにくくなるので、どのようなネーミングがよいだろうかと臨床栄養の専門家の方々と検討をする中で生まれたのが「メディカルダイエット」でした。初めは食事療法としてのダイエットを指していたのですが、食事をコントロールするだけでは目的の達成が難しい人もいて、運動を組み合わせた方法を始めました。
例えば、やせたい人は、ただ食事量を減らして、運動量を増やすということではなく、食事の前の運動で体脂肪の蓄積を減らす、食後の運動で筋肉を減らさずに体脂肪の蓄積を適度に増やすということができることから、メディカルダイエットはタイミングダイエットとも呼ばれるようになりました。身体の生理的な機能を活かした方法で無理をせず、無駄なく目的とする効果が得られるようになるということで、その研究と普及のために設立したのが日本メディカルダイエット支援機構です。
ここまでのくだり(件)をディレクターはしっかりと聞いていたはずはなくて、おそらくダイエットは食事療法のところまでだったと思いますが、最後に、運動もダイエットという言葉を使うときは、食事療法と同じ意味合いで運動療法であるべきで、それぞれの人に合った方法をやらないと運動療法にならないので、ただ歩けばダイエットというわけではない、というところはメモを取って理解してくれたようです。

「信じる者は救われる」という言葉は、信じて続けることによって救いが得られるという意味で使われていますが、何を信じるのかというとイエス・キリストです。イエスの言葉は神様の意思を伝えるということで、ひたすら信心を重ねることで救いが得られるというわけです。以前に『信じる者は救われない』という書籍が発行されたことがあります。「信じる者はバカをみる」ということを言う人もいますが、今回のテーマの「信じる者は足元をすくわれる」です。漢字では掬われるとなります。これは隙をつかれて失敗することをいいますが、本来は「足を掬われる」で、そこから変化して頻繁に使われているうちに日常語になったようです。
信じて一生懸命に尽くしたのに、思いもかけないところを攻められて、ひっくり返されるということは対人関係ではよくあることです。今回の話は対人関係のことではなく、いつもと同じようにテレビで取り上げられた健康ネタへの疑問です。
長寿の人が何を食べているのかは気になるテーマの一つです。1万人調査というのならわかるのですが、100人ほどに聞き取りをして、好きな食べ物のベスト3を紹介して、それが長寿に結びつくのかを解説するという以前からよくあるパターンの番組を目にしました。この番組はメディアのプランナーと一緒に見ていたのですが、長寿者は肉が好きで、トップは生姜焼きではなくトンカツでした。なぜトンカツがよいのかという解説の理由が豚肉にはビタミンB₁が豊富で、揚げてトンカツにするとビタミンB₁が溶け出ないので効率的に摂れるということでした。ビタミンB₁は水溶性ビタミンで、炒めるよりも揚げたほうが流れ出にくいのは確かです。衣がブロックしてくれるのはわかりますが、衣の中に揚げ油が染み込んでいることには触れていませんでした。
なぜビタミンB₁が長寿につながるのかの説明もありませんでした。解説した専門家は述べているのにカットされたのか、それとも解説をしないまま収録が終わったのかはわかりませんが、プランナーのツッコミは、そこではなく「トンカツを食べたから長寿なのか、トンカツを食べられる体質だから長寿なのか」というところです。
ここでいう体質は、身体が温かいとか冷えるといった東洋医学の体質のことではなく、胆汁酸の分泌量のことを指しています。脂肪は十二指腸から分泌される胆汁によって分解されます。若いときには分泌量が多いのですが、加齢によって分泌量が減り、脂肪を分解しにくくなり、だんだんと肉が食べられなくなっていきます。欧米人は歴史的に肉食を続けてきたので高齢になっても胆汁の分泌量は多くなっています。トンカツは肉の脂肪に、揚げ油の脂肪が加わっているのでピックアップした長寿者は胆汁が分泌しやすい人だったのではないか、という疑問の提示です。分泌が少ない人がトンカツを食べて、長寿になれるというわけではないという話です。
同じ番組の中で、長寿者はアイスクリームが一番好きだと紹介していました。これに対する解説は乳製品にはカルシウムが豊富に含まれているから。カルシウムを多く摂ると、どうして長寿になれるのかがわかればよかったのですが、それも番組の中では解説なしでした。
それでも著名な解説者が言うことだからと信じて、それを救いにしたい気持ちもわからないではありませんが、なんだか足元を掬われるのではないかというのがプランナーと一致したい感想でした。

日本メディカルダイエット支援機構は、効果的なダイエットについても健康づくりについても「無理なく無駄なく」をモットーとして、誰もが取り組める方法を研究して提供しています。目指すところは、これによって病気にならないまま過ごせる幸せな生活で、これを「無病息災」として掲げています。しかし、これについては異論の声も寄せられています。私たちが情報提供している中にある“未病”のほうがよいのではないかという声もあり、「無理なく無駄なく未病息災」のほうが相応しいと言ってくれた方もいます。
このサイトには「無理なく無駄なく無病息災」としたのは3つの無を並べたかったからですが、未病のほうが実は活動内容に合っているのは以前から承知していました。無病というと病気にならないという意味で、息災は元気で過ごすことという意味の他に病気をしないという意味もあります。ということは病気にならないことを重ねて言っているのが「無病息災」です。
無病といっても、これだけの高齢社会になると病気をしないで最期を迎えるというのは難しいことと思えます。ただ、これは病気の意味の捉え方の問題で、以前から繰り返し伝えていることですが、WHO(世界保健機関)は自立できなくなった状態を病気としています。我が国も、これを基本的に採用しています。つまり、生活習慣病の高血圧症、糖尿病、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)であっても、がんであっても自立して生活できているうちは病気ではないことになります。
生活習慣病によって合併症が起こったら、これは病気の範疇となりますが、腎臓病が悪化して人工透析を始めると、的確に続けていたとしても腎機能は確実に低下していきます。そして限界を越えると残念ながら亡くなることになりますが、人工透析とともに食事療法を的確に続けることによって限界の期間を長く引き延ばすことができます。これによって平均寿命以上に延ばすことができれば、これは腎臓病で亡くなったのではないということにすることができます。
これと同じような考え方をするなら、高齢になって、がんになっても、それでも一般的な生活ができて、自立したまま平均寿命を大きく上回ることになれば、これは病気でないと言ってもよいのではないか、という話を高齢でも頑張っている人、その高齢者を支えるために頑張っている人に話しています。こう言えるようにするためにも、無理なく無駄なく実践できる、プログラムを研究して提供しています。
プログラムとってもメニューのようなものを想像している人もいます。実際にプログラムの提供と言われて、見てみたら統一的なメニューで、その中から好きなものを選ぶだけ、ということもありました。それに対して私たちのプログラムは、個人に適したものを作り出すもので、もちろんパーツ的なメニューはありますが、それをいかに組み合わせて、それぞれの人が満足できる結果を生み出すかを重視しています。

身体の状態がよくなるときに一時的に起こる現象は好転反応と呼ばれます。瞑眩(めんげん)反応とも呼ばれますが、一時的に何が起こるかは気になるところです。良い反応の前に、それを予兆させる良いことなら歓迎すべきことかもしれませんが、あまり良いとは言えないような反応も起こります。よく例に出されるのは体内の毒素が排出されて健康状態になっていくときに、一時的に皮膚の状態が悪化することがあります。その悪化はかゆみだったり、炎症や肌荒れだったりすることが多いのですが、毒素が出ようとするのだから皮膚からも出ている証拠というようなことを言う人もいます。
実際にはどうなのかと言うと、好転反応は人間の恒常性保持能力があるためだと考えられています。身体が歪んでいると、その状態でも生活できるように骨や筋肉だけでなく内臓の働きも神経の伝達も歪んだなりに、できるだけ正常な状態に近づけようとします。周りから見ると正常ではないように映るとしても、本人は正常な状態と同じようにバランスを取っています。それをまっすぐな状態でなければ健康ではないのだからと、例えばカイロプラクティックのように急にまっすぐにしたら、筋肉のバランスも血液の流れも神経の流れも急に変化して、これまでバランスを取っていた全身の働きが変調を起こすことにもなります。
ここでいう歪みというのは、まさしく身体が歪んでまっすぐの状態ではないことを指していますが、身体の歪みだけでなく、一つの臓器の状態がよくないと、それを別の臓器がカバーするために積極的に働くようになります。肝臓の解毒能力が低下すると、充分に解毒されなかった有害物質を分解するために腎臓に負担がかかります。腎臓で濾過されたものを排泄する能力も必要になります。負担がかかるということはフルに働いて、バランスを取るようになるというわけです。
好転反応は身体の反応をわからせるために起こっているとしても、これを物売りの手段に使われると話は違ってきます。中でも問題とされているのは健康食品の販売テクニックです。健康食品を使って身体に変化が起こり、気になって販売会社に連絡をしたら、「よかったですね」などと言われることがあります。めまいやふらつき、発熱などが起こって文句を言うつもりで電話をかけた人にも「よかったですね」と言うようにしているマニュアルを用意している会社もあります。なぜ、そんなことを言うのかというと、それは好転反応のことで、「好転反応が出たのは健康食品が効いているから、よくなる前の兆候だからという安心して使い続けてください」とまで言っています。
健康食品に毒物や医薬品成分などが含まれているというのは問題外の話としても、有効成分であっても使った人にとって量が多すぎることによって過敏な皮膚反応や体調不良が起こることもあります。こういった健康被害は、厚生労働省による取り組みで、情報収集、研究機関による分析、注意喚起、そして販売者への指導(販売禁止、回収など)が行われる体制となっています。健康被害の事例は書籍になるほど医療機関からの情婦提供は続いています。
健康被害なのか好転反応なのかを調べるには医療機関で診てもらうのが一番ですが、健康食品の摂取量を減らしてみて症状が弱まり、また元の量にしたときに症状が出なかったら好転反応とする方法もあります。健康被害かもしれない、本来ならすぐに摂取中止しなければならない状態かもしれないのに、継続したほうがよいというのは筋が通らないことです。