投稿者「JMDS」のアーカイブ

身体が冷えやすい日本人には温泉は絶好の身体を温める機会です。温泉は低めの温度であっても身体が温まりやすく、冷めにくくなっています。その理由については以前に紹介しています。紹介はしているものの、過去の文章から探し出してくれというのは無責任とも言われかねないので、ここで簡単に振り返ると、まずは家庭の浴槽よりも深いことによる水圧の深さです。深いほど水圧が強くかかるようになって、特に下半身の血管が圧迫されて血流が盛んになります。血流が盛んになると温かな血液が早く廻るようになって身体が温まるようになります。
家庭の浴槽よりもお湯の量が多いと浮力も強く働くようになります。家庭の浴槽では肩まで完全に浸かるということは少ないのですが、温泉では肩も首も浸かるようになります。ここまでは温泉でなくてもお湯でなくても、水であっても同じことです。入浴のよさは温かなお湯にあるわけですが、入浴の効果は温度が高いほど高まると思われがちです。しかし、温泉は温度が低めであっても、身体が温まります。その結果をもって、温泉の成分の効能を述べている専門家もいますが、温泉成分が含まれていない単なるお湯であっても同じ効果が得られます。
温泉と家庭の浴槽を比べると圧倒的にお湯の量が違います。温泉は吹き出したときから温度が高い場合もあれば、湧き出してから温めている場合もありますが、どちらにしても多くの量を温めるためには多くの熱エネルギーが使われています。その熱量が、お湯から身体に伝わって身体を温めてくれます。これは大きな鍋で煮物をすると、早く軟らかく煮ることができることから理解することができます。
同じ温度の温泉に浸かっていれば誰もが同じように温まりそうなものですが、冷え性の人は温まるまでに時間がかかります。民族的にも違いがあって、血液の温度が低めの日本人よりも欧米人や北方系のアジア人は脂肪を燃焼する能力が高く、血液の温度も高く、体温も高めになっています。そのために、同じ温泉に同じ時間入っていても、身体が冷めにくく、お湯を出てからの汗の出方も激しくなっています。これを間近で見て実感したのは中国の北方から来た方々で、同じ時間だけ入浴していたのに、すっかり私たちは身体が冷めてきているのに、長く汗が出続け、入浴後に着替えているのに、再び着替えが必要になっていました。一人や二人のことではなく多くの訪日団の方々が同じ反応であったことから、体温の高さに驚くとともに、温泉の温度は日本人の体温、血液温度に合わせた設計と温度調整をしていることを実感しました。
スポーツ選手は屋外での入場行進のときに小雨が降ってくると、欧米人の周りだけが湯気が立ち上っている、とよく言われます。そのことは欧米人だけでなく、アジア大会でも中国やモンゴルの選手でも同じようなことが起こっています。それだけ体温が高く、入浴や運動でも身体が温まりやすく、冷めにくいことから、スポーツ選手にとっては有利に働いていることがわかります。身体が温まりやすいということは、それだけ細胞の中でエネルギーを作り出しやすく、このエネルギーがパワーの源担っているというわけです。

公的な事業や公共団体の仕事を受けるとき、以前だったら「損だけはしないようにしてください」と、本来なら仕事を出す上の立場の役所や団体から言われたものでした。公(おおやけ)の金、つまり税金を使うのだから、「儲けろとは言わないが、少なくとも損だけはしないようにしてくれ」という意向を伝えられても、実際に損をしないことだけに気を使っていれば“成功”と言われた時代があったものです。
ところが、今では、損をしないどころか「支援なり補助金なりがなくなっても事業が続けられるだけの力をつけて、しっかりと稼いでくれ」と言われるようになりました。これは民間の論理からすると、まだ甘いと言われるかもしれません。民間だったら、「初年度から黒字にしてくれ」、「少なくとも3年で黒字転換、6年で投資金額分を回収して、それ以降はプラスを継続し続けろ」と言われるのが当たり前の時代です。これでもまだまだ甘いと言われるかもしれませんが。
しっかりと稼げる仕組み、稼ぎ続ける体制を作ることは“稼ぐ力”と表現されます。公の金を使うのだから、資金が出なくなってもつぶれないだけの力をつけろというのは、経済産業省から補助金をもらっての事業を始めるときに、選考委員から何度も言われました。何度も言うということは、言っても言うことを聞かないところがあると言うことで、言われている側も“実際には、やってみたけれど資金不足になったので、なんとかしてください”と言える余地があったということでした。
ところが、地方創生の補助金の使い方の項目で“稼ぐ力”“自立自走”と言う言葉が使われるようになってからというもの、補助金が出ているうちに稼ぐ力をつけるのは当たり前のこと、稼ぐ力をつけられなかったら、それまでの補助金を丸々返せという雰囲気になっています。雰囲気どころか実際に返金を求められた例もあります。
具体的に何を言っているのか気になる人がいるであろうことは承知していますが、具体的なことは現在進行形で、実際に補助金を受けて、稼ぐ力をつけなければならない立場としては詳しくは紹介できないところですが、地方において、ずっと続く健康づくり事業を実施することは責任が重いと同時に、稼ぐ力を持っている団体への支援は、以前にも増して実施しやすくなっているということです。
私たちがやろうとしていることは、地域に暮らす方々が参加したくなり、参加するだけでなくて自分がリーダーになって地域に広めたくなること、先生として教えることだけでなく地域に実施団体の会長や役員になって続けていくことができる体制づくりです。実際に実施するのは運動のための実践法と知識を身につける講習となりますが、地域の特定の層が参加するだけでなく、高齢者が参加するプログラムなら子供も孫も参加して三世代に盛り上げていくことができます。その次の世代、さらに次の世代と続いていく仕組みとプログラムでなければ、稼ぐ力を継続させることができなくなります。
稼ぐ力の実際の事業については、近いうちに、お知らせすることができると思います。

歩くときには腕を前後に大きく振って、というのは西洋式の歩行法で、日本人には合っていない歩行法だと考える人もいます。長い江戸時代が終わり、明治時代になって持ち込まれた軍隊式の歩き方である、とうようなことを言う人もいます。私たちは日本人の体質を研究していて、体質に合った生活法による健康づくりを提案しています。それもあって、日本人に適した歩き方について聞かれることもあります。
以前の日本人は腕を大きく前後に振ることはなく、右足を踏み出すときには右手を前に出し、左足を踏み出すときには左手を前に出す歩き方をしていたことも記録に残っています。しかし、それでは走りにくく、早歩きもしにくいので、軍隊式と言われても右足を出すときには左手を前に、右足を後ろに振る、逆も同じようにするという歩き方が今の時代には合っています。
ウォーキングというと、肘を曲げて、前に、というよりも少し上に振る感じで歩いている人がいます。テレビで見かけるウォーキングのシーンでも、そんな歩き方をしていることから、腕は肘を曲げて前に振ったほうがよいと思っている人もいます。しかし、それでは歩幅が小さくなり、元気に見えたとしても勢いよく前進することはできなくなります。腕の振りは振り子と同じように振り幅が大きいほど前進のための運動エネルギーが大きくなります。肘を伸ばして歩くのが正しい歩き方といえます。
肘を曲げようが伸ばそうが、腕は前後に振るのが基本中の基本です。ところが、腕を左右に振って歩いている人をよく見かけます。横に振ると運動エネルギーが横に流れて、早く歩けなくなります。ゆっくりと歩いている人に多くなっていますが、なぜ横に振るのかというと上半身が前かがみになっていることが大きな原因です。
背筋を伸ばして胸を張り、モデルのように頭が上から吊られている感じの姿勢で歩くと腕を横に振ることができなくなります。勢いよく歩くと前傾姿勢になっていきますが、そのときにも腕は前後に振られます。ところが、前傾であっても猫背になると首が前に出て、肩の位置が下がります。こうなると腕を前後に振ろうとしても横に振れるようになってしまいます。そして、腕につられて上半身が少しであっても左右に振られることから前進のエネルギーが失われてしまいます。
そのようなことにならないために、前後に振るように意識をしても、長年の癖のようなものなので、ついつい横に振るようになり、そのために猫背になっていくこともあります。肘を曲げて前に腕を振って歩いている人の中には、左右に振れるのを防ぐためだという人も少なからずいますが、背筋を伸ばした歩き方をすれば腕を大きく前後に振るのが普通の動きになっていきます。
これを矯正するためというと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、ポールを用いたノルディックスタイルのウォーキングをすると、左右に腕をすることができなくなり、前後への腕振りが習慣になっていきます。ノルディックスタイルのウォーキングは背筋を伸ばして歩けるので、それによっても左右への動きが自然に矯正されていきます。

ノルディックスタイルのウォーキングは、ポールを後方に突いて勢いよく前進するノルディックウォーキングと、ポールを前方に突いて身体を安定させて歩くポールウォーキングに大きく分けられています。ノルディックウォーキングをアクティブ、ポールウォーキングをディフェンシブと呼ぶこともあります。
ノルディックウォーキングは北欧でクロスカントリースキーの夏場のトレーニングから始まったこともあり、スポーツ感覚で身体を動かすことができるのが特徴で、上半身も使って歩くことから消費するエネルギー量は通常の歩行に比べて20%ほども多くなっています。ポールウォーキングは日本で開発されたもので、日本ウオーキング協会の有志によって始められました。硬式テニスに対して日本人向けに開発された軟式テニスのようなものと言われることもあります。現在は全日本ノルディック・ウォーク連盟として活動していますが、その名称からノルディックウォーキングとポールウォーキングの理解をややこしくしていると発言する人もいます。
ノルディックウォーキングはポールが後方に大きく押し出されることからグリップと手首をつなぐグローブがあり、ポールの先端の路面と触れるゴムパッドは斜めの形状になっています。ポールウォーキングのパッドは丸くなっていて、ポールの角度が使う人によって少し違っても路面と触れる形状となっています。このパッドは接地面が狭く、道路の溝や排水の網に入って抜けにくくなったり、入ったときに無理に引っ張ると抜けることもありました。そこで平らな形状のものも開発されました。
ポールウォーキングは前方にポールを突くことを想定しているため、ポールを真っ直ぐにして平らに突くことで接地面が広がるようになっていますが、歩き慣れてくると以前よりも勢いよく歩けるようになり、ポールが自然と斜めになって突かれるようになります。すると接地面が狭くなり、ポールの力が路面に伝わりにくくなるという難点も指摘されました。
それを解決するゴムパッドが開発されました。それは平らになっているのに非常に弾力性がある素材でできていて、接地したまま角度が突いても、うまく曲がって路面に力を伝えられ、また接地面が広いまま歩けることで身体が安定します。
ポールウォーキングから始めて、勢いよく歩けるようになるとポールウォーキング用のポールでは物足りなくなってノルディックウォーキング用のポールに持ち替える人もいます。ノルディックウォーキング用のポールのパッドは斜めになっているので、45度に近い角度でポールを後方に突くことでピッタリと接地するようになっています。斜め後方に突く歩き方ができるようになっても、まだ45度にまでなっていない人は充分に接地していないので歩きにくくなります。その点、柔軟性のある新タイプのパッドは歩きやすく、安全ということで人気が高まっています。

ウォーキングの基本は足の裏に路面を感じながら歩くことです。足の構造を見ると、かかとが厚くなっているのは、かかとから着地する歩き方を歩行の歴史が始まってから続けてきたことによる進化です。クッション役のかかとから着地した後は足の側面を路面に徐々に触れさせながら体重を前方向に移動していって、もう一つのクッションの踏みつけ部が当たった後、指へと体重を移し、そして第一趾(親指)の腹で蹴り出す感じで足裏を浮かせます。この歩き方は、土踏まずがあるからできることです。
土踏まずは踏みつけ部とかかとの間がアーチ状になっていることからできた人間らしい歩き方をするための構造で、立って歩くことができる猿は、いわゆる扁平足状態になっています。このアーチがあるからクッションを補って歩くことも足へのショックが強くなる走ることもできるわけです。
かかとから指までの動きによって前方へと踏み出して、今度は逆の足裏を設置させ、移動させていくわけです。
シューズを履いていても、これと同じ歩き方をするのが基本で、ウォーキングシューズは足の機能を補って効率的に歩けるようにデザインされています。ところが、本来の歩き方ができるウォーキングシューズを履いていても、その機能を使っていない人を見かけます。高齢者に多くなっていますが、いわゆる摺り足で歩いている方々です。摺り足は柔道や剣道、相撲など下半身を安定させるのに適した方法で、農耕民族に適した歩き方とされています。足先を上げず、かかとから足をつくこともない穏やかな歩き方ではあるものの、高齢者の場合には足の力が全体的に弱まってきて、歩幅を広げられなくなり、それで安定した歩行をするためにチョコチョコと足を踏み出すようになります。
歩くことは足から刺激が全身に伝わり、骨を鍛え、脳も鍛えるということでウォーキングが簡単にできる効果のある健康法として紹介されています。その効果は、あくまでかかとから接地する歩き方によって得られるもので、ショックが極めて少ない摺り足では期待薄です。摺り足は楽であるかもしれませんが、それに慣れてしまうと、だんだんと歩幅を広げた歩き方ができにくくなります。できにくいだけでなく、できなくなり、ついには歩けなくなる不安もあります。
年齢を重ねると、以前は当たり前にできたことができなくなっていきます。それはやらなくなったことの結果です。走らなくなると走れなくなり、早歩きをしないと早歩きができなくなり、長く歩かないと長く歩けなくなり、正しい歩行姿勢で歩かなくなると歩けなくなります。歩いて脳に刺激を与えないと脳の機能が低下していきます。歩くことは腸の状態をよくすることが知られていますが、歩く時間が減ったり、外出する機会が減ると腸の状態も悪くなっていきます。
必ずしも、そうとは限らない人もいるものの、できることをやっておかないとできなくなるということを意識して、できるだけ歩くことが健康以上の基本となります。ということで、同じ歩くにしても本来の歩き方をするということを強く意識して、足の裏に路面を感じながら、路面に反応する足裏を意識しながら歩くこと大切です。
といっても、歩く力が落ちてきた人に以前と同じように歩くようにと言っても、無理だという人も少なくありません。そこでポールを用いたノルディックスタイルのウォーキングを進めていますが、ポールに頼って楽に歩くだけでなく、足腰の負担が減る利点を活かして足裏の感覚を呼び戻しながら歩くことが重要であるとポールを用いた歩行を指導するときに話をさせてもらっています。

転ばぬ先の杖は、失敗しないように、万が一に備えて充分に準備しておくことを指したことわざです。まだまだ杖などなくても普通に歩けるはずなのに、杖をついて歩けと言われても、実際には杖を使う人はいないでしょう。杖をついて歩くことで、杖なしで不安定なまま歩くよりも筋肉が刺激され、歩く能力を低下させないことはできます。そう言われても、積極的に杖を使おうとは思わないでしょう。それくらい杖をつきながら歩くことは“かっこ悪い”ことだからです。
杖をついて歩くと、正しい歩行姿勢と言われる左右のバランスを取って、前後に大きく上を振りながら歩くということはできません。杖をついている人を見ると、左右に身体が触れています。歩くというのは運動エネルギーを進行方向に効率よく進めて行くもので、身体が左右に動いたら動いた分だけ、前方向へのエネルギーが弱まってしまいます。となると杖は転ばないためには必要であっても、転ばないような丈夫な足腰のためには使わないほうがよい、ということにもなってしまいます。
そこでノルディックウォーキングのポールの話ですが、ある地方の駅に着いて、持ち運び用に短くしておいたポールを伸ばしていたときのこと、「その杖は、どこで売っていますか」と高齢の方に声をかけられました。これは杖ではなくポールだという話、ノルディックウォーキングの話をさせてもらいましたが、2本の杖をついて歩くようにしたいと言われていました。
杖は上側を持って足腰の負担を減らして歩くようにするものですが、ノルディックスタイルのポールは横から手を添えて握る形でポールを支えます。腕を使って歩くことによって足腰の負担が減り、前方向への運動エネルギーが大きく働くために歩行姿勢がきれいになり、転びにくくなります。
ウォーキングは通常は足の感覚と視覚、聴覚も使って歩いていますが、ノルディックスタイルのウォーキングはポールを持って歩いていることで、ポールに伝わる道路の状況もプラスされて、さらに状況を把握する能力が加わって安心して歩くことができます。ポールを使って歩くと、歩幅が広がり、かかとから着地してつま先が上がるので、足先が引っかかりにくくなります。もちろん、ポールを持っていることで思わぬ道路の状況や歩く本人の感覚的なことから軽くつまずきそうなことがあっても、ポールによって姿勢を保ち、転ばないようにすることもできます。
ポールを使いながら歩くのは、ノルディックスタイルのウォーキングが知られていない地域では“杖”と思われるかもしれませんが、どう見てもスポーティーで運動の要素があるので、見ている人に説明をすれば杖ではないことはわかってもらえます。杖ならぬポールを使って歩いていると、杖がいらないように足腰を鍛えることができます。これこそが転ばぬ先の杖であり、先回りして転ばないようにするために是非とも進めたい方法です。

介護保険制度が平成29年4月に改正され、要支援と要介護の負担が変わりました。負担というのは金額の負担の意味と、心身への負担の意味がありますが、今回の改正では両方の負担が変わりました。要介護は専門家の介護福祉士の仕事であることに変わりはないのですが、要支援は1と2の段階があり、これは以前には介護福祉士だけの仕事でした。急激な高齢化社会の進展を背景に、介護を受ける人に対して介護する側の介護福祉士が足りないこともあって、要支援の活動は介護福祉士でなくても実施できるようになりました。
そこで自治体によっては一般の方々に講習を実施して、支援が必要な方々の家庭に派遣することを始めたり、時間貯金制度を取り入れるところも出てきました。時間貯金というのは、支援を行った分の時間を貯金のように貯めておいて、自分が要支援となったときには貯金した分から引き出して無料で受けられるようにするという制度です。
要支援の方々に対する支援の実際を見てみると、買い物や掃除などが主で、確かに介護福祉士にはプロとしての仕事をしてもらいたいというのは当然の発想です。プロに力を入れて活躍してほしいというので要介護の実施に当たって受け取れる金額が増えました。その分だけ要支援の金額は減らされましたが、地域によっては受け皿の人材が足りないことから介護福祉士が支援をするしかなく、収入が減っているという実態もあります。
支援をすることによって、買い物や掃除などができない人を助けて、要支援の方々が外出したり、運動をする時間を作るということも期待されているのですが、なかなか身体を動かす時間を増やすというところまでは行っていません。それぞれの支援に当たる人が外出、散歩のサポートをして、要支援から要介護にならないようにするだけでなく、要支援から支援がいらない状態になれるようにしたいところですが、それぞれの要支援の方々に対して適した歩行法を教え、弱っている部分を強化する筋トレをするというのは、そういった技術を習っていない人には難しいことです。
積極的に歩くことは、歩けなくなる不安を感じてから始めるようなことではなく、普通に歩けるうちから今の状態をキープするために行うべきものです。積極的な歩行は、長く歩けばよい、歩数が多ければよいということではなく、勢いよく歩いて筋肉をつけるようにする、歩く前の運動で筋肉を刺激してから歩くことで筋肉が鍛えられることが大切です。
そこで私たちはメディカルダイエットの技術を活用して生活習慣病予防のためのインターバルウォーキングを実施すると同時に、要支援の方々をサポートする人材を対象とした歩行法の指導も実施しています。この歩行の技術は、要支援にもならないようにするために活用してほしいことです。歩行前の筋肉運動としては、ノルディックスタイルのウォーキングに用いられるポールを握って、全身を安定させながらのストレッチを採用しています。

腰を大きく左右に振りながらウォーキングをしている人を見かけました。65歳前後と見える男女2人組でした。どうして、そんな歩き方をしているのかと聞いて見たら、「腰を動かして歩くと腸の調子がよくなるから」との返事。ここのところウォーキングと腸の状態に関する健康雑誌の記事を見かけていたので、それを実践している人たちだったわけですが、私たちの理解とは少し違っていました。
歩くと腰が動いて腸が揺り動かされるので便通がよくなるということは、定説のように語られています。歩く機会を増やすことによって腸の調子がよくなって便通が改善されることは確かです。また、歩くと腸が動いて腸内細菌の善玉菌が増えると説明するウォーキングのテキストの記載を見たこともありますが、無理に左右に腰を大きく振って歩かなくても、そんな歩きにくい方法をしなくても、歩幅を広げて、勢いよく歩けば嫌でも腰の振れは大きくなります。
歩幅が広げられない、勢いよく歩けないという人のためには、ポールを持って歩くノルディックスタイルのウォーキングを紹介しています。ポールの支えがあるので、歩行姿勢がきれいになり、歩幅が自然と広がります。ポールを持って歩くことによって身体が左右に振れずに前進のために運動エネルギーを使う歩き方をすすめています。
歩くことによって腸の調子がよくなるのは、腸の温度が高まるからです。腸内細菌の悪玉菌と善玉菌は活躍する温度帯が異なっていて、悪玉菌は腸の温度が高くても低くても活動が盛んになり、増殖していきます。それに対して、善玉菌は腸内の温度が高めの状態で活動が盛んになります。腸は身体の中にある器官ですが、毛細血管が集まっていて、条件としては皮膚と同じ末端となります。血流がよくないと皮膚の温度が下がるのと同様に、腸の温度も下がっていきます。
腸内細菌の働きをよくするためには善玉菌と同様の働きをするプロバイオティクス(乳酸菌など)とプレバイオティクス(善玉菌のエサ)を摂ることが必要になりますが、それとともに腸内の温度を高めるために身体を動かすことが重要になります。ということで、有酸素運動のウォーキングは善玉菌の働きをよくして便通をよくすることにつながるというわけです。
もう一つ重要なこととしてすすめているのは、何度も登場している三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10です。これらの成分は体内で合成されるもので、α‐リポ酸は糖質を細胞のミトコンドリアに取り込むために必要で、L‐カルニチンは脂質を取り込むために必要になります。そして、コエンザイムQ10はミトコンドリア内で糖質と脂質を燃焼させてエネルギーを作り出すときの補酵素となるので、三大ヒトケミカルが充分にあることでエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)の産生量を増やすことができます。
体内で発生したATPのうち半分ほどは熱エネルギーとして使われています。身体を動かしてATPを増やそうとしても、三大ヒトケミカルは20歳代をピークに合成量は減っていきます。年齢を重ねると運動をしてもATPが産生されにくくなるので、三大ヒトケミカルを補う必要が出てきます。
α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は医薬品だけでなく、食品として使うことも許可されているのでサプリメントとして摂ることができます。
α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。

高齢者は介護をされる側という時代は、高齢化社会から“高齢社会”へと移り、超高齢社会とも呼ばれる時代となって、今では高齢者は介護もする側、介護をする側になりました。これを老人が老人を介護するということから「老老介護」という名前がつけられました。この老老介護は都市部で大きく増えています。都市部は結婚をしないまま高齢者になった人、結婚はしたが子供がいない高齢者世帯の割合が非常に高くなっています。高齢者の介護は子供がするという、かつての常識からいえば子供がいない高齢世帯は高齢者が高齢者の世話をする、介護をするしかないという状況になります。
都市部で老老介護が増えた最大の理由とされているのは集団就職です。集団就職が最も多かったのは東京と周辺地域で、東北から東京方面に向けての集団就職列車が初めて走ったのは1954年(昭和29年)のことで、これが終了したのは1975年(昭和50年)でした。集団就職列車というと、随分前の話と思われるかもしれませんが、終了したのは今から42年前のことです。そのときに中卒の15歳で上京した人は57歳になっています。まだ、老老介護の対象年齢ではありません。
これに対して初めの集団就職列車で“金の卵”として望まれて上京した方々は現在では78歳ということになります。現在の定義では高齢者は65歳以上ですが、日本老年学会と日本老年医学会の提言の75歳以上を高齢者としても、全員が高齢者となってしまいます。75歳以上を高齢者とすれば高齢者の数が減るので、老老介護も減るというような発言をした著名人がいますが、年齢の基準を変えれば、それで解決するような問題ではありません。
介護を受けないようにするには、まずは足腰の健康が重要で、自分の力で歩いて、買い物にも出かけられる、自分の意思で好きなものが選べる、そして自分の力で料理も食事もできるという基本的なことができる能力を維持することです。もちろん、生活習慣病になって、血管の老化が実年齢以上に大きく進んだら、脳梗塞や心筋梗塞の危険性、認知症の危険性が高まるために、これが介護の引き金になることもあります。生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防には食事の内容とともに運動習慣が重要であるので、歩けるようにすることで血管の健康を保てるようになります。
歩くことによる脳機能の維持については多くの研究機関で研究が進められ、厚生労働省の介護予防マニュアルでも歩行習慣は運動機能の向上よりも認知症予防として取り上げられています。
日本メディカルダイエット支援機構は、運動機能の維持向上のためにインターバルウォーキングを実施しています。インターバルウォーキングは、通常の速度でのウォーキングと中強度の歩行と呼ばれる速歩を交互に繰り返す歩行法で、筋力の強化、心肺機能の強化に加えて、脳機能の維持向上も目的として掲げています。歩き方を変えるだけでなく、運動の効果を高めるための食事(栄養摂取)と休養との組み合わせについても指導しています。

テレビ番組で歩行の話を取り上げているときにコメンテーターが「万歩計」と言ったところ、司会からストップをかけるような発言がありました。「万歩計」というのは特定の会社の商標で、一般には「歩数計」と表示されています。化学調味料、うま味調味料を「味の素」とは呼ばないようにしているのと同じことです。
万歩計という表現が出てきたのは、番組のテーマが1日に1万歩ではなく8000歩が健康によい、ということだったからです。何歩を歩くのが最もよいのか、という議論は前の東京オリンピック(1964年)のときから言われ続けてきました。国民健康・栄養調査で歩行数の結果が発表されるたびに、これを取り上げた番組や記事で、1万歩に対する充足率が言われてきました。一定の数値を掲げるときには、それぞれの対象者によって正しいことの基準が違っていることを考えるのは当然のことです。
今回のテレビ番組では65歳以上の高齢者を対象とした群馬県中之条町での結果が紹介されていました。65歳以上の全町民の約5000人の歩行数だけでなく、活動量も測定して、健診結果などとも比較して、高齢者には8000歩が適当で、そのうち20分間は中強度の歩行をすることが最もよいと紹介されていました。つまり、1万歩でなく8000歩にして、早歩きも取り入れるのがよいということを言っていたわけです。
65歳以上というと、高齢者とひと括りにされることがあるので、若い世代からみると“老人”“年寄り”と思えるかもしれません。しかし、当事者にしてみれば、65歳の人と男性の平均寿命の80歳とでは随分と身体の状況も違い、受け入れられる運動の強度も違えば、運動による効果も違っています。今の高齢者は心身の健康度が高まってきていることから、日本老年学会と日本老年医学会は「75歳以上を高齢者に」と提言するほど高齢者の健康度は高まっています。
大きな集団で傾向を捉えることは研究としては重要なことです。しかし、大きな傾向を、各人に当てはまること、これだけやっていれば大丈夫、これ以上やったら危険という基準にするのは考えものです。大集団で継続的に実施してきた基礎研究を尊重しつつ、その研究成果を元に条件が異なる人にとって最もよいプログラムを提供するのが、健康寿命を延伸するためには非常に重要になります。このプログラムは運動だけに注目するのではなく、どのような身体状況なのか、基礎疾患の有無と程度、食事や休養の条件なども考慮に入れる必要があります。
運動は運動だけ、食事は食事だけというのではなく、食事と運動のタイミング、食事と休養のタイミング、運動と休養のタイミングというトライアングルの関係で、それぞれの効果を高める方法があります。その方法を医科学レベルで研究したのがメディカルダイエットです。
ある地域で暮らす方々が、その環境の中で、どのような歩数がよいのか、どのような歩行法がよいのかを研究して、その結果を各地に広げることを目的として、日本メディカルダイエット支援機構は岡山の東備地域でリサーチを始めています。