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代謝科学の100回目の連載を祝して(?)、100kcal単位の運動量が得られるウォーキングについて紹介します。

100kcal単位の運動量を知るためには、METSを用いて消費エネルギー量を計算する方法を活用します。消費エネルギー量は、以下の計算式となっています。

「消費エネルギー量(kcal)=体重(kg)×METS×運動時間(h)×1.05(係数)」

この計算式を逆算する方法で100kcal単位の運動をする時間がわかります。

「100kcal÷体重(kg)÷METS÷1.05(係数)=運動時間(h)」

METSは、運動に合わせたメッツ(METS)表の運動と生活活動のMETSを使います。

普通歩行(67m/分)は3METSで、体重50kgの人は、以下の計算となります。
「100kcal÷50(kg)÷3METS÷1.05(係数)=0.6349(h)」
1時間(60分)×0.6349は約38分です。

速歩(95〜100m)は4METSで、体重50kgの人は、以下の計算となります。
「100kcal÷50(kg)÷4METS÷1.05(係数)=0.4761(h)」
1時間(60分)×0.4761は約28分です。

ジョギングの場合は7METSと運動量が多く、同じく体重50kgの人が100kcalを消費するための運動量は以下の計算で求められます。
「100kcal÷50(kg)÷7METS÷1.05(係数)=0.2721(h)」
1時間(60分)×0.2721は約16分となります。

性別や年齢によって差は生じるものの、100kcal単位の運動は概ねで当たっています。体重が多いほど身体を動かすために多くのエネルギーが必要となることから運動の時間が短くなっていきます。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)

1日に必要な摂取エネルギー量は、性別、身長、体重、活動量などによって異なりますが、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2025年版)に計算法が示されています。これを参考に、多すぎず、少なすぎないエネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)を摂れば健康が維持されるというのは基本的な考えです。

エネルギー源が不足していてはエネルギーも多く作り出せないということになるのですが、それだけで可能なのかというと、そうではありません。1日分の摂取エネルギー量で不足する分を補うエネルギーチャージという方法もあるものの、エネルギー源を摂っても、これがエネルギー化されないのでは、エネルギー源が余分なものとして脂肪に合成されてしまいます。

エネルギー源を摂って、身体を動かしていても太ってしまう、やせないという人は、エネルギー源を代謝させるために必要な栄養成分が不足していることが考えられます。

糖質はブドウ糖に分解され、脂質は脂肪酸に分解され、たんぱく質はアミノ酸に分解されたのちに、細胞のミトコンドリアに取り込まれて、高エネルギー化合物のアセチルCoAに変化します。その後にミトコンドリアの中でエネルギー代謝が行われるTCA回路に入ります。

このうちエネルギー源から脂肪酸、アミノ酸に分解されるときに水溶性ビタミンが必要になります。また、ブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸からアセチルCoAに変化するときにも水溶性ビタミンが必要になります。

さらに、TCA回路でエネルギーが発生するときには4種類のビタミンB群(ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂)が必要になります。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)

有酸素運動によって中性脂肪の分解が進み、血液中の中性脂肪も脂肪細胞に蓄積されている内臓脂肪も減るようになります。中性脂肪もコレステロールも脂肪であることには変わりがないので、有酸素運動によってコレステロールが分解されるように思われることがあるのですが、そのようなことはありません。

コレステロールは全身の細胞膜の材料であり、ホルモンの原料、脂肪を分解する胆汁酸の材料ともなっています。有酸素運動によってコレステロールそのものが減ってしまったら、運動をするのは健康維持にマイナスになりかねません。

コレステロールが健康によくないと言われるのは、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDL(低比重リポタンパク)で、LDLが増えると動脈硬化のリスクが高まるからです。リポタンパクはコレステロールとタンパク質が結びついたもので、コレステロールを血液中に運ぶ役割をしています。

肝臓からコレステロールを運び出すのがLDLで、血液中の余分なコレステロールを肝臓に戻すのが善玉コレステロールとも呼ばれるHDL(高比重リポタンパク)です。HDLが多くなるとLDLが減って、動脈硬化のリスクが低下します。

HDLは肝臓の末梢血管で作られていて、末梢血管の血流が盛んになることで多く作られるようになります。有酸素運動をすると、末梢血管の血流が盛んになるので、結果としてLDLが減っていきます。

そのための運動としてすすめられるのはウォーキングで、1週間に合計で120分の有酸素運動が有効とされます。ただ歩くだけでなく、歩く速度を早めると、より血流が盛んになり、多くの酸素が運ばれて、LDLが減る(LDLコレステロール値が下がる)という結果になるのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)

血液検査によって中性脂肪値が高いことが確認されると、運動がすすめられます。

どのような運動をすればよいのかということは、医療機関によって伝え方が違っています。医師が概略を話して終わることもあり、中には「歩くようにしてください」と言われるだけということもあります。

医師が概略を話した後に、運動の専門家である理学療法士や健康運動指導士がいるリハビリの担当部門に回されることがあります。

リハビリなどでは有酸素運動としてのウォーキングの方法を教え、そのために必要な姿勢の確保、足づかいなども指導されますが、一緒に歩いて正しい歩行法を身につけさせてくれるというのは、あまり多くはありません。

歩くことがすすめられるのは、脂肪酸を主なエネルギーとして使って消費する筋肉である赤筋が刺激されるからです。中性脂肪は脂肪酸が3つ結びついたもので、それが分解されると脂肪酸となり、これが細胞のミトコンドリアに取り込まれて、エネルギー化されます。

ミトコンドリアは多くのエネルギーが必要な細胞に数多く存在しています。特に多く存在しているのは筋肉(骨格筋、心筋)、肝臓、脳です。筋肉が多ければ、それだけミトコンドリアも多くて、脂肪酸を多くエネルギー化することで、血液中の中性脂肪を減らしていくことができるようになります。

日本人は筋肉が増えにくい体質ではあるものの、赤筋の割合が高くて、70%ほどを占めています。それだけ赤筋を積極的に動かすことで脂肪酸を多く消費できる特徴があります。

筋肉量は増えなくても、日本人の場合は歩くことによって脂肪酸を減らして中性脂肪値を抑えることができるようになるのです。
歩くといっても速度が大切で、普通歩行よりも速歩のほうが酸素を多く筋肉に取り込んで、酸素を使って脂肪酸のエネルギー化を進めることができます。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)

エネルギー代謝の促進が最も活かされる生活習慣病は糖尿病の予防と改善といえます。

糖尿病は血糖値(血液中のブドウ糖の割合を示す値)が高くなりすぎて、細胞のエネルギー代謝が低下するために血管の新陳代謝が低下して、血管の老化が進んでいく疾患です。

血液中のブドウ糖(血糖)は、細胞に取り込まれてエネルギー化されますが、多くのブドウ糖が取り込まれるのは筋肉の細胞です。筋肉の細胞にブドウ糖が多く取り込まれると、細胞内のミトコンドリアで優先的にエネルギー化されます。

生命維持のための基礎代謝のうち筋肉の消費エネルギーの割合は、一般には35〜38%とされています。基礎代謝は全体の消費エネルギーのうち約70%を占めているので、全体の24〜27%を筋肉が使っていることになります。

そのため、筋肉が多い人はエネルギーが多く使われ、ブドウ糖の消費も進んでいきます。また、筋肉量が多くなくても、筋肉を使う時間を長くすることによって血糖値を下げることができるようになります。

糖質を多く摂ることで血糖値が上がりやすく、糖質を制限すると血糖値が下がりやすくなることから、糖尿病になると食事による糖質の摂取量を減らすか、糖質からブドウ糖に分解される胃で分泌される酵素の働きを抑える医薬品が使われます。

糖尿病の治療は、本来なら食事療法で血糖値を下げるようにして、それで効果は得にくい場合には運動療法が行われます。これでも血糖値が下がりにくい場合に医薬品が使われるのが原則です。

その運動療法としてすすめられるのはウォーキングなどの有酸素運動ですが、糖尿病では筋肉のエネルギー代謝が低下していることが多いため、筋肉量を増やす無酸素運動もすすめられます。

歩くことで筋肉も強化できる早歩きは無酸素運動まではいかなくても、無酸素領域に近づくことで筋肉強化の効果もあり、少なくとも筋肉を減らさない効果を得ることが可能です。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)

生活習慣病の改善には食事療法と運動療法の両方が重要だと言われても、治療段階になって医薬品を使っていると食事療法も運動療法も二の次にされることがあります。

しかし、肥満は見た目でもわかりやすく、治療の基本はやせることであるので、やせるためには食事と運動が重要であることもわかりやすくなっています。

ところが、実際には効果的な医薬品が使われた瞬間に、これまでの食事と運動への心がけが消え去ってしまう人がいるのも事実です。

日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」によると、治療薬を使用するのは食事療法と運動療法によって効果が得にくい患者だけであって、その両方をしないままに医薬品を処方することを厳に戒めています。

ガイドラインではBMIが25以上を肥満、BMIが30以上を高度肥満としています。

肥満症の食事療法は、BMIが25以上の場合には3〜6か月で現在の体重の3%減を目指します。そのために目標体重の1kgあたり25kcalを1日の摂取エネルギー量にします「25kcal×目標体重(kg)」。

高度肥満の場合には「20〜25kcal×目標体重(kg)」と少なめの食事摂取を目指すことになります。

肥満症の運動療法は、有酸素運動を中心として、軽度〜中強度の運動を1日に30分以上、あるいは1週間に150分以上が目標となります。

厚生労働省の国民健康・栄養調査ではBMIが25以上の人は約30%と、思ったよりも多くの人が肥満症であることが指摘されています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)

日本の栄養学は終戦後の食糧難からの脱却を目指した“食物栄養学”から本格的に始まりました。

必要なエネルギー源が補えない状態を改善するために、食物の研究が行われ、食物を大きく育てること、食物も栄養素を充分に吸収することを目指した摂取・吸収の研究が盛んに行われました。

経済的に回復してくると、今度は食べ過ぎによる弊害が叫ばれるようになり、栄養の不足から過剰摂取対策への研究が移ってきました。その頃から言われるようになったのが“人間栄養学”です。

過剰摂取による肥満症、高血圧症、糖尿病、高脂血症をターゲットとしたエネルギーコントロール食が研究の中心になりました。高脂血症は当時の呼び方で、今では脂質異常症と呼ばれています。

脂質の中でも善玉コレステロールとも呼ばれるHDL(高比重リポタンパク)は多いほうが動脈硬化を抑制できることから、高脂血症という呼び名が相応しくない状態となったからです。

脂質異常症は高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症を指します。

肥満症、高血圧症、糖尿病、脂質異常症は、エネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)の摂取が多くなりすぎることが要因となっています。摂取量を減らすのがエネルギーコントロール食ですが、せっかく摂取したエネルギー源を効果的にエネルギー化して、発生したエネルギーを使って生活習慣病の予防と改善に向けていくことが重要になります。

そのためには、エネルギー代謝に必要な水溶性ビタミンを充分に摂取することと同時に、細胞の中のエネルギー産生器官であるミトコンドリアでは酸素が充分にあることで代謝が進んでいきます。

酸素の充分な摂取は栄養学の範疇ではないものの、エネルギー代謝の促進という観点では食事と同時に運動も必要になってくるということです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)

身体の中で作り出されたエネルギーは、全身を巡るようにイメージされることがありますが、エネルギーは細胞の中で作り出されて、その細胞の中だけで使われています。

細胞の中で作り出されるエネルギーは、食事で摂ったエネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)を細胞の中のミトコンドリアでエネルギー化させる生化学反応によって発生します。

このエネルギーは熱エネルギー、活動エネルギー、神経エネルギーの他に、新たな生化学反応を起こすために使われます。生化学反応は細胞の中で起こる、さまざまな反応で、細胞に必要な成分(タンパク質、酵素、ホルモン、神経伝達物質、代謝促進物質など)を作るために使われます。

例えばホルモンや神経伝達物質を作り出すアミノ酸が含まれる食品(たんぱく源)を摂ったとしても、細胞の中にエネルギーが充分になければ、成分が期待するほど多くは作られず、身体機能も期待どおりには盛んになっていかないということです。

多くのエネルギーが細胞の中で作り出されても、そのエネルギーが他の細胞の電気のように流れていくわけではないので、全身の機能を高めようとしたら、全身の細胞にエネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)を届けて、それぞれの細胞でエネルギーが盛んに作られるようにしなければなりません。

エネルギーは流れてはいかないものの、神経細胞の情報は神経伝達物質によって隣接している神経細胞にバトンタッチされていきます。また、ホルモンは細胞から分泌されて他の細胞に伝えられていきます。

また、エネルギーは流れていかないとしても、作り出された神経伝達物質やホルモンなどは流れていくので、それによって離れた細胞を働かせることができるという仕組みになっているのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)

リラクゼーションというと、心身ともに緊張を解きほぐして、リラックスすることを指しています。医学的にはストレス反応として自律神経の交感神経が興奮するのに対して、副交感神経の働きを優位にすることを指しています。

ゆっくりと身体を休めることが目的とされますが、休んでいるだけでは身体をよい状態に改善することができないというのが、エネルギー代謝科学の考え方です。心身ともに回復させていくためには、エネルギーが必要で、そのエネルギーを体内で多く作り出すことが必要となります。

積極的に動くことによって、リラックスした状態になることはアクティブ・リラクゼーションと呼ばれます。

この場合のアクティブというのは、リラックスできる環境を積極的に求めていくということではなくて、身体を動かすことによって神経伝達物質を多く作り、神経伝達を進め、脳の緊張状態を積極的に改善していくことが重要となります。

神経伝達物質は興奮作用があるアドレナリンやドーパミン、抑制作用があるセロトニンが代表的なものです。リラクゼーションのためには抑制作用があるセロトニンを多く作り出すことが必要で、セロトニンが多くなるとアドレナリンやドーパミンが減って興奮が抑えられるようになります。

セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから体内で合成されます。脳神経で多く使われるものの、脳で合成されるのは全体の10%ほどで、90%ほどは腸内で作られています。

腸内環境がよい状態で多く合成されるので、腸内細菌の善玉菌を増やすために、善玉菌の栄養源になる糖質や食物繊維を多く摂ることが第一条件となります。糖質は脳のエネルギー源のブドウ糖の補給源ともなります。

トリプトファンは大豆・大豆製品(納豆、豆腐、豆乳など)、牛乳・乳製品(チーズ、ヨーグルトなど)に多く含まれています。アクティブ・リラクゼーションのためには、こういった食品を多く摂ることも大切になります。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)

余計なことを何もせずに、ゆっくりと休むことは「充電する」と表現されることがあります。

身体にエネルギーを溜め込むことを最優先させて、エネルギーが使われることを避けて過ごすには、いわゆる「食っちゃ寝」がよいとの考えがされることもあります。

「食っちゃ寝」生活を繰り返していたら太ってしまうわけですが、これはエネルギーを大きく使いすぎて、休養が必要になった人には必要と思われるかもしれません。しかし、人間の身体は食べて、動かないようにすれば充電されるようにはなっていません。

充電というと外部から電気を入れて、内部に溜め込むという電気製品がイメージされますが、身体には充電される装置に当たるものはありません。生きている限りはエネルギー源を使って、細胞のミトコンドリアの中でエネルギーを作り続けています。

このエネルギー代謝は、ただエネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)を体内に取り入れば自然に起こるものではありません。エネルギー源がミトコンドリアのTCA回路で使われる高エネルギー化合物のアセチルCoAに変化するときには、ほとんどの水溶性ビタミン(ビタミンC以外)が必要になります。1種類でも不足するとアセチルCoAに変わりにくくなって、エネルギー代謝が低下することになります。

ミトコンドリアで作り出されたエネルギーは、その細胞の中でしか使われないので、多く発生した部分があっても、そこで余分となったエネルギーが他の細胞に流れていって使われることもありません。

全身の細胞で作り出されるエネルギーを増やそうとしたら、エネルギー源と水溶性ビタミンは必要ですが、もう一つの要素があります。それは酸素です。

酸素を多く使うことでエネルギー産生が進むので、「食っちゃ寝」ではなくて、必要な物を食べて酸素を多く取り込むために動くというのが身体のメカニズムに合った“充電法”ということです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)