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発達障害の原因は多岐にわたっており、不明な点が多く残されています。複数の要素が関係し、遺伝的、胎児期の保健状態、出生時の環境、感染症、環境要因などがあげられています。

双子研究によって、遺伝要因と、それ以外の要因の影響度を算出することが可能で、自閉症スペクトラム障害と注意欠如・多動性障害に関しては遺伝要因の影響が大きいことが確認されています。

大部分の発達障害は乳児出生前に形成されますが、一部は出生後の外傷、感染症、その他の要素に起因することもあります。さまざまな原因がありますが、例として以下があげられています。

・中枢神経系の何らかの原因
・遺伝子や染色体の異常:ダウン症候群、レット症候群など
・妊娠中か生後7か月〜3年の環境
・妊娠期の物質使用(アルコール、喫煙など):胎児性アルコール・スペクトラム障害など
・妊娠期における感染症
・未熟児出産

かつては子育てが原因と指摘されていた時代がありましたが、近年の研究によって遺伝要因と環境要因が複雑に組み合わさっていることがわかりました。しかし、どのような遺伝子が関連して症状を引き出しているのか、親からの遺伝がどの程度なのか、遺伝しないで発症する確率がどのくらいかは明らかではなく、環境要因についても何が大きく影響しているのかわからないことが圧倒的に多い状況です。

また、発達障害は男子が女子の約2.4倍の発現率となっていることについても、脳の構造の男女差、遺伝子の違いなどについて研究は進められているものの、いまだに明確な理由は示されていないのが現状です。

発達障害のグレーゾーンは正式な診断名ではありません。グレーゾーンは生活習慣病においては診断域に達していないもののリスクが高い境界域を指していて、予備群とも呼ばれています。

発達障害のグレーゾーンは、専門家によって発達障害の可能性を指摘されたものの、すべての診断基準を満たしていないことから確定的な診断ができない状態を指している通称です。

グレーゾーンの主な症状3パターンとしては、①調子が良いときも悪いときも診断域外にいるが、診断域との境界に限りなく近い状態の人、②調子の悪いときのみ診断域に入る状態となる、③ほぼいつも診断域内の状態で、発達障害がある人と同じくらいの支援を必要とする人に分類されます。

グレーゾーンは、どの発達障害の傾向があるのかによってみられる特性が異なるため、特定の症状は存在していません。また、グレーゾーンには、それぞれの人がもつ特性の程度や現れ方が、体調や環境、場面によって左右されるという特徴があります。学校では症状が強く出るものの、家庭では比較的症状が弱いといったことが起こりやすく、家族に気づかれにくいこともあります。

発達障害は数値的な基準がないために見極めにくく、学業成績がよいためにグレーゾーンと気づかれず、大人になってから発覚することがみられます。発達障害の特性に気づかず、適切な支援が受けられないことから、周囲に理解されないまま成長して失敗体験を積み重ねることにもなります。そのために新たな障害が生じることは二次障害と呼ばれています。

二次障害としては、いじめ、不登校やひきこもり、うつ病などの精神疾患、家庭内暴力、アルコールなどの依存症などがあげられます。

二次障害は適切な対処が行われないと状況が悪化して、長期化する傾向にあります。グレーゾーンでは二次障害の防止が重要なポイントとなります。二次障害を防止するためには、子どものもつ発達上の特性を家族などが認識して理解している必要があります。

二次障害が生じたとしても早期に発見、対処することによって、悪化や長期化を防ぐ可能性を高めることができることから、発達障害の理解を進め、社会的な支援を充実させることが大切なことです。

自閉症スペクトラム障害
幼児期に診断された場合には、個別や小さな集団での療育を受けることによってコミュニケーションの発達を促し、適応力を伸ばすことが期待できます。また、療育を経験することによって、新しい場面に対する不安が減り、集団活動に参加する意欲が高まります。

言葉によるコミュニケーションに頼りすぎず、視覚的な手がかりを増やすなどの環境面の工夫をすれば、子どもの不安が減り、気持ちが安定し、パニックが少なくなることが期待できます。

幼児期から成人期を通して、身近にいる親などが本人の特性を理解していることがとても重要です。それによって本人が安心するだけではなく、親から教師、上司などに対して特性を伝えることによって、本人にふさわしい学校や職場環境が整い、支援の輪が広がっていきます。

注意欠陥・多動性障害
幼児期や児童期に診断された場合には、行動変動や生活環境の調整が行われることが多くなっています。生活環境の調整としては、勉強などに集中しないといけないときには本人の好きな遊び道具を片づけ、テレビを消すなど、集中を妨げる刺激をできるだけ周囲からなくすことが重要です。

また、集中しないといけない時間は短めに、一度にこなさなければいけない量は少なめに設定して、休憩をとるタイミングをあらかじめ決めておくことも効果的です。

自閉症スペクトラム障害と同様に、親をはじめとする家族が注意欠如・多動性障害に対する知識や理解を深め、本人の特性を理解することが、本人の自尊心を低下させることを防ぎ、自分を信じ、勉強や作業、社会生活への意欲を高めることにつながります。
学習障害

学習障害の子どもに対しては、教育的な支援が重要になります。読むことが困難な場合は大きな文字で書かれた文章を指でなぞりながら読んだり、書くことが困難な場合は大きなマス目のノートを使ったり計算が困難な場合は絵を使って視覚化するなどのそれぞれに応じた工夫が必要です。

親と学校とが、子どもにある困難さを正しく理解し、決して子どもの怠慢さのせいにしないで、適切な支援の方法について情報を共通することが大事です。

発達障害の子どもは疲れやすく、これが発達障害の状態を悪化させることにつながっています。通常では自然に、無意識のうちにできることであっても、発達障害の子どもは環境に合わせるために心身をフル回転させて対応させていることがあります。

感覚過敏は、刺激に対してストレスを感じやすく、そのために神経をすり減らしやすい傾向にあります。効率よく身体を動かすことが苦手な人は、脳が運動を調整しにくく、極端に不器用であったり、力加減を調整しにくいために、服を着たり、靴ひもを結ぶといった日常的に行われる動作でも苦労するために脳の疲労が蓄積されやすい傾向があります。

多動・衝動性のタイプは思考や行動のコントロールが効きにくいことから活動量が多く、日常的なエネルギー消費が激しくなっています。また、衝動性をコントロールしようとすることによって、神経をすり減らして疲れる例も多くなっています。

発達障害に共通する自律神経の乱れから、緊張感が続いたり、身体や脳の休養をとることも苦手で、中でも注意欠如・多動性障害の子どもの半数ほどに睡眠に関する障害が起こっているとされています。

発達障害の子どもが疲労を訴えるのは、このような理由があるからですが、さぼろうとしていると勘違いされがちです。心身に負荷をかけることからエスケープ(脱出、逃亡)したがっています。中には疲労を訴えないために気づかれないことも少なくありません。

ストレスを軽減させる方法や休息を与えることだけでなく、疲労の根本原因である自律神経の働きを調整するために、睡眠、食事、排泄、運動といった生活リズムを整える家庭での過ごし方が大切になります。

ストレスが高まり、精神安定が必要なときには脳内のセロトニンの分泌量が増えます。セロトニンは生理活性アミンの一種で、脳内の神経伝達、メラトニン合成など脳の活動を高める作用のほか、平滑筋の収縮、血管収縮などの働きをしています。

発達障害がある人はセロトニンが不足しているために、精神安定がはかりにくいという特性があります。そのために興奮作用があるドーパミンやアドレナリンの働きが強まり、興奮状態のまま生活をする、学習をするということにもなります。

セロトニンが不足すると精神安定を求める働きとともに、食欲が増進します。甘いものや肉類を食べると一時的にセロトニンの分泌量が増え、気持ちが落ち着くことから、甘いものへの欲求が強くなるとされています。発達障害児は、感覚過敏などから食べられないものがあり、栄養不足になりがちなだけに、より甘いものへの欲求が強まることがあります。

セロトニンの分泌量には性差があり、女性は男性に比べて脳内のセロトニン合成量が少なくなっています。そのため、女性はストレス状態に置かれるとセロトニンの減少の度合いが大きくなり、情緒不安定になりやすいのです。そして、甘いものや過食など食欲の高まりがみられるようになりやすくなっています。

女性は月経前の体調不良期(PMS期)に、神経伝達組織でのセロトニンの受け取りが阻害されるため、生理前には特に食欲が高まりやすくなります。

セロトニンは、食べることだけではなく、ストレスの解消や運動などによって分泌を高めることができます。そのため、精神的な原因によって食欲が高まったときには、運動の中でもセロトニンを分泌させやすい有酸素運動がすすめられます。

アミノ酸のトリプトファンはセロトニンの原料となります。体内では合成できず、食品から摂らなければならない必須アミノ酸で、トリプトファンは牛乳、チーズ、肉類、赤身魚、大豆製品、果実などに多く含まれています。

発達障害というと、発達の凹凸があることが要因としてあげられますが、神経伝達的には配線の違いや線を通る電気の容量の違いが大きく影響していると考えられています。コンピュータの基盤でいえば、正確につないだはずの配線の一部がつながっていなかった、つなぐ場所を間違えた、つなぎ方がよくないために電気の流れが悪い、といったようなイメージをされます。

コンピュータの場合には配線ミスが一部であっても正常に動きことができなくなります。それに対して人間の脳は、平常時には使われていない部分(サイレントエリア)が非常に多くて、脳で使われているのは10%しかないとの考えが広まっています。脳科学が進み、今では「10%神話」と言われるようになってきましたが、それでも脳は使われていない部分のほうが多いという考えに変わりはありません。

そのため、脳は一部に配線ミスがあっても、他の部分がカバーして正常に働かせることができると考えられています。しかし、これは定型発達の話であって、発達障害がある場合には、脳には大きな負荷がかかっていて、休んでいる部分の脳を使ってもまだ余裕がないということもあります。

そこで重要になってくるのは、神経伝達物質を充分に補うことです。定型発達であっても、神経伝達物質が不足すると神経伝達が正常に行われなくなります。そのために疲れやすくなり、神経を集中させることができなくなり、記憶にも影響が出るようになります。神経伝達物質の中で、発達障害で特に不足が指摘されるのはセロトニンです。

セロトニンは、幸せホルモンとも呼ばれる神経安定には欠かせないものですが、ストレスが高まると脳内での分泌量が増えていきます。ところが、発達障害ではストレスが高まってもセロトニンが分泌されにくいことから、精神安定ができにくくなります。このことが発達障害がある人の苦しさ、困難さを生じさせているのです。

学習障害の算数障害は、算数問題を解くことに困難があることを指します。計算障害とも呼ばれ、数量のイメージができなかったり、数量のイメージと数字を一致させることがうまくいかないことがあります。そのために、加減乗除(+−×÷)の操作(計算)がうまくいかなくなります。

計算のほかに図形や空間の認知、数学的推論などでも困難をきたすことがあります。全体的な知能には大きな遅れはないものの、他の教科に比べて不自然に習得が遅れる状態があります。

算数障害の具体的な特性としては、以下のことがあげられます。

*数の概念が身につかず、数系列の規則性などの習得が難しい

*計算を習得することが難しい

*指を使わなければ簡単な計算ができない

*繰り上がりや繰り下がりが正しくできない

*九九を覚えにくい

*九九を暗記できても応用して掛け算をすることができない

*掛け算ができても割り算ができない

*物差しや計量器で計測した目盛りを読むのが苦手

*図形の認知や構成ができないことがあり、正しく書き写すことができない

*文章題を解くのが難しい

学習障害の書字障害は、文字を書いたり、文章を綴ったりすることに困難があるものを指します。

バランスの取れた文字を書くことに問題がある、書字に関して誤りが多い、動詞などがうまく使いこなせない、板書など書き写しの速度が極端に遅いもの、考えた内容で書字をすることが難しいものなどが含まれています。

識字障害があると書字にも影響が出て、書字障害となることが多く見られます。読むことに困難はなくても文字の形を捉えること、形を正しく覚えておくことが困難で、書字の誤りにつながります。

書字障害の具体的な特性としては、以下のことがあげられます。

*年相応の漢字を書くことができない

*書き順を間違える

*書き順を気にしない

*書き文字がマス目や行から大きくはみ出してしまう

*バランスのとれた文字を書くことが難しい

*アルファベットの綴りが困難

*文字を書くときに鏡文字を書く

*形態的に似た文字(“め”と“ぬ”、“わ”と“ね”)を書き間違える

*促音(っ)、撥音(ん)、二重母音(おかあさんの“かあ”)など特殊音節の誤りが多い

*“わ”と“は”、“お”と“を”にように耳で聞くと同じ音(おん)の表記に誤りが多い

*形態的に似た漢字(雷と雪)を書き間違える

*画数の多い漢字に誤りが多い

*漢字を使いたがらず、仮名で書くことが多い

*文字を書く際に余分な点や線を書いてしまう

*句読点などを忘れる

*文章を書くときに助詞などをうまく使いこなせない

*考えた内容を書いて表現することが難しい

*板書など書き写しの速度が極端に遅い

*早く書くと雑になる

学習障害の識字障害は、読字障害と呼ばれることもあります。

識字障害は文字を音に変えることに困難さがあり、文字を見て、音を思い出すまでに時間がかかることがあります。そのために音読が流暢にできないもので、文章を読むときに時間がかかり、疲れやすくなります。

読むことを嫌い、知識の不足から学力の低下を招くことがあります。長文を読もうとすると、目で追っていくことが難しいことがあります。
識字障害の具体的な特性としては、以下のことがあげられます。

*ひらがなの音読が遅く、読み間違える

*文字を逐次読み(一つひとつ拾って読む)する

*単語または文節の途中で区切ってしまう

*単語の文字を逆さに読む(いか→かい)

*形の似た文字を間違って読む(“め”と“ぬ”)

*拗音(きゅ、しゅ)、促音(きって)が読みづらい

*読んでいる文字や文章の意味を理解することが難しい

*早く読むと内容が理解できない

*音読より黙読が苦手

*文章を読むのがたどたどしく、文章の内容(あらすじ)をつかんだり、まとめたりすることが難しい

*読んでいるところを確認するように指で押さえながら読む

*文末などは適当に自分で変えて読んでしまう

*見慣れた漢字は読めても抽象的な単語の漢字を読めない

*読み方が複数ある漢字を誤りやすい

*意味的な錯誤がある(教師をせんせい)

*長い文章を読むと疲れる

学習障害(LD:Learning Disabilities)は、全般的な知的発達には問題がなく、視覚、聴覚に問題がなく、さらに学習環境や本人の意欲にも問題がないにも関わらず、読む、書く、計算するなどの学習に必要な基礎的な能力のうち一つないし複数の特定の能力について、なかなか習得できなかったり、うまく発揮することができないことによって、学業成績や日常生活に困難が生じる状態を指します。

学習障害は「識字障害」「書字障害」「算数障害」の3つがあります。ある特定の課題の習得だけが他に比べてうまくいかない状態を指しています。しかし、識字障害があると理解ができないために書くことができずに書字障害が起こることがあり、また識字障害によって理解ができないことから計算ができない算数障害が起こることがあります。

目安としては、学校での学習到達度に遅れが1〜2学年相当、あるいは1.5標準偏差以下というのが一般的です。発現率は2〜10%と見積もられており、読みの困難については男性が女性より数倍多いと報告されています。

こういった能力が求められるようになる小学校2〜4年生ころに成績不振などから明らかになります。その結果として学業に意欲を失い、自信をなくすことがあります。

学習障害は、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害とともに起こることがあるだけに、複数が重なることによって状態が重くなり、改善も困難になることがあります。

発達障害の一つとして考えられているものの、自閉症スペクトラム障害や注意欠陥・多動性障害があることから、学習に集中できなくなり、そのために学習の習得がうまくいかない、理解しているのにうまく表現できないことから、学習障害と同じような状態になることもあります。