食事摂取基準91 脂質(脂肪エネルギー比率)3

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から脂質(脂肪エネルギー比率)の健康の保持・増進の「欠乏の回避」の生活習慣病との関連を紹介します。

〔欠乏の回避〕
◎生活習慣病との関連
脂質(総脂質)摂取量との関連が認められている生活習慣病は多くはありません。その関連が観察される場合は、次の3つの理由によるところが大きくなっています。

1つ目は脂質が供給するエネルギーとの関連が認められる場合(他のエネルギー産生栄養素に差や変化がなく、脂質摂取量だけに差や変化があった場合が、これに相当)、2つ目は脂質に含まれる脂肪酸の中でも、その割合が高い飽和脂肪酸との関連が認められる場合、3つ目は炭水化物(特に糖)との関連が認められる場合(炭水化物摂取量と脂質摂取量の間には通常かなり強い負の相関が存在するため)のいずれかです。

例えば、脂質(総脂質)摂取量の制限が体重減少に与え得る効果を検証した介入試験のメタ・アナリシスでは、脂質(総脂質)摂取量が少ないことが体重の低さ、または体重減少と関連していました。

しかし、介入前の肥満によって、その効果が異なることを示した総説も存在していて、肥満度の低い集団においては、脂質(総脂質)摂取量を低く留める必要性が示されており、観察研究をまとめたメタ・アナリシスでは、脂質(総脂質)摂取量を減らすことは循環器疾患の発症と死亡に有意な関連は示されず、脂質の内容(脂肪酸の種類)の調節や、脂質(総脂質)摂取量の低減によって飽和脂肪酸が減ることで循環器疾患発症リスクが低下する可能性を示唆しました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕