「三」7 三段構成

文章を書くことを仕事にしてもよいかなと思ったときに、学びの基本として示されたのは「天声人語」でした。これは朝日新聞の朝刊1面のコラムで、当時は800字でした。今は新聞の活字が大きくなったことから603字となっています。

800字は400字詰め原稿用紙の2枚分で、天声人語の場合は改行がないので、丸々800字を詰め込むことができました。この800字を4分割して、「起承転結」の文の流れを作る四段構成が基本だと教わりました。

「起」は話の書き出しで、何を伝えようとしているのかを示します。「承」は始まりの続きで、テーマの深掘りをします。「転」でストーリーにアクセントをつけるとともに結につなげる状況を書き、最後に「結」で何が起こったのかの結果を書きます。いわばオチの部分で、結に伝えたい内容の確信が示されます。

起承転結で文章を書くことが基本だというのは短文でのことで、書籍1冊分(原稿用紙で300枚程度)の分量になると、起承転結の構成では間伸びがしてしまいます。そこで読んでいる人が集中して、飽きることなく受け入れやすい形として教えてもらったのが「序破急」の三段構成でした。序破急は、ゆっくり(序)、中間(破)、速く(急)のスピード展開を示す用語で、発祥は雅楽の舞楽から出た概念です。

芸能の世界では、緩やかに始まり(序)、これまでの流れを打ち破って変化を持たせ(破)、短く軽快に終わりに向かって進める(急)の演じ方を指しています。
講演でも書籍でも、初めから慌ただしい感じでは受け入れてもらいにくく、かといって緩やかすぎると期待感が湧きにくくなります。緩やかに始めるものの、先々への期待感を抱かせて、期待通りであっても期待が裏切られる形であっても、変化を感じさせて引き込んで、最後に向かって強い興味を抱かせたまま進めていくのが序破急の展開です。

この三つに分けた書籍の構成は、ゴーストライターとして150冊を手がけたPHP研究所で学んだことです。これは、テーマが健康に代わり、講習テキストの作成が中心になってからも変わらず、各章の書き方の基本となっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕