「昭和100年」9 固定電話の中身が変わる

連絡先として書類などに記入する電話番号は固定電話が当たり前の時代から、徐々に携帯電話を記入するようになり、今では携帯電話を記入する例も増えてきました。以前は役所に提出する書類には固定電話を書く必要があって、わざわざ固定電話も設置するということがありました。

ところが、今では役所の書類でも携帯電話が認められるようになりました。そして、今や通信の主役であった固定電話が設置されていないという家庭も増えています。

最も多いNTTの固定電話は固定電話網のPSTN(固定電話の加入回線ネットワーク)が使われていますが、施設維持の限界や契約数の減少などを理由に2025年1月までにアナログ回線からIP網へと転換されます。

違いを簡単に説明すると、従来のアナログ固定電話は音声信号が通信回線を伝って電話局を中継して声が届くという方式で、IP電話は音声をデジタル化してインターネット回線を通じて相手方に届き、アナログ音声に変換されるという方式です。

IP電話の利点は、距離に関係なく料金が同じということで、IP網への転換によって距離に関係なく通話料金の全国一律化が実現されます。これまでの距離によって料金が異なるという常識が通じない社会が訪れます。

通信回線は全国に通じているといっても、過疎地や離島などの不採算地域もあり、こういったところでは転換が遅れるところも出てきます。
では、電話が通じなくなる地域が出てくるのか、という懸念があるかもしれないのですが、実際にはNTT法(日本電信電話株式会社等に関する法律)によって固定電話の安定提供が義務づけられています。

NTT法は1984年に日本電信電話公社が民営化される際に設けられたもので、ユニバーサルサービスとして全国一律に固定電話を提供する責任を負わせています。ユニバーサルサービスは負担が大きく、固定電話だけをみるとNTT東日本とNTT西日本で550億円を超える赤字となっています。

こういった背景から、ユニバーサルサービスは必要なのか、固定電話に固執することはない、全加入者が携帯電話でよいのではないかという議論も交わされるようになっています。

便利なことを覚えてしまうと、以前なら当たり前であったことが不便と思われるようになり、それを苦に感じてしまうことになります。昭和100年問題は、デジタルの元号移行がうまくいかなくなり、デジタル社会に悪影響が出ることになることが想定されています。

便利な世の中に普通のこと(以前は常識であったこと)が起こっても、平気で受け入れることができる意識が昭和100年になる2025年には求められているのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕