「水を飲んでも太る」は本当か

「水を飲んでも太る」ということを言う人がいます。三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質には、それぞれ約4kcal、約9kcal、約4kcalのエネルギー量があります。これ以外にはエネルギー源になるものはありません。水はエネルギー量がゼロで、水に糖質(砂糖など)を加えれば、その分だけエネルギー量が高くなります。水そのものを飲んで太ることはない、というのが原則的な答えです。しかし、水を飲むことによって体重が増えることはあります。それは体内の水分が減っている場合です。
体内の水分は60%ほどだとされます。これは若い人の話で、年齢を重ねると水分量は50%ほどまで減っていきます。この体内の水分の多くは細胞の中にあります。水をできるだけ飲まずに、汗をかく、利尿効果のあるコーヒーなどを飲んで排出される水分を増やすということをすると水分が減っていくので、その分だけ体重を減らすことはできます。やせるために減らしたいのは水分ではなく、脂肪細胞の中に蓄積された体脂肪です。体内の水分を減らしても脂肪が減るわけではないので、体脂肪率は変わらないどころか、水分が減った分だけ高まることにもなります。
細胞の水分が少ない状態になっているところに、水を飲んだら無駄なく吸収されて体重は元に戻っていきます。体重だけに注目すれば、これは水を飲んで太ったということになります。しかし、実際には正常な状態に近づいているだけで、水分が少なかった状態が問題だったわけです。こういった水分が少ない状態の人が水ではなく、普通の食事をしても普段以上に体重が増えます。これは普段なら吸収されない食品の中の水分が、あまりに体内が水分不足になっているために吸収されることになるからです。
もう一つ、水を飲んでも太る理由として塩分の摂りすぎも考えられます。塩分のナトリウムには水を吸着する作用があり、ナトリウムが体内に多く入ると、それだけ吸着される水分が増えます。これは細胞の中の水分だけでなく、血液中にもナトリウムが増えることで血液の量が増えていきます。塩分の摂りすぎは血圧を上昇させると言われますが、これは血液中の水分が増えることによって血管が圧迫されるようになることと同時に、血管の細胞にナトリウムが入り込んで細胞の水分が増えることによって細胞が膨らみ、結果として血管を細くするという両方の作用があるからです。
血液中のナトリウムが濃い状態になると、腎臓から血液が濾過されるときに余分なナトリウムは徐々に排泄されるようになっていきます。それによって調整されていくわけですが、腎臓に負担がかかりすぎると調整能力が低下していくことになります。腎機能は年齢を重ねるほど低下する傾向がありますが、若い人でも低下することがあり、その原因としてたんぱく質の摂りすぎがあげられています。糖質制限によってダイエットに取り組んだのはよいけれど、肉や魚を食べる量が増えたことで腎臓に負担をかけ続けることも心配されているのです。