「飲酒をすれば太ることができる」という話

お酒を飲んでいる人は太っている印象があります。中には、お酒を飲むときには純粋にお酒の味だけを楽しみたいからと、あまりというか、ほとんど食べなくなる人もいます。飲むほどにやせるという人もいるにはいるのですが、多くの人は太ります。その理由としてあげられることにアルコールの摂取エネルギー量の高さがあります。1g当たり約7kcalと、約9kcalの脂質よりも少ないものの、糖質とたんぱく質の約4kcalよりも多くなっています。
糖質、脂質、たんぱく質ともに吸収されるには消化酵素の働きが必要で、腸からの吸収率も食品と成分によって異なっています。だから、口から入れたものが、そのまま身体の中に入ってくるわけではありません。ところが、アルコールは吸収がよくて、ほとんどが入って来ます。しかも胃からも吸収されます。濃いアルコール飲料を飲むと、すぐに酔うのは、吸収される場所と吸収率が関係しているのです。
そんなにもエネルギー量が高いなら、さぞかし太るのだろうと考えがちですが、ここでいうアルコールは100%アルコールの話で、力士のようにウイスキーをストレートで飲んだとしてもアルコール度数は25%ほどで、エネルギー量は4分の1です。日本酒は15%、ワインは13%で、ビールなら5%です。
飲酒をすると体温が上昇しますが、この上昇によってエネルギーが使われるので、この分を差し引くと、それほど太りやすいわけではないのです。それなのに飲酒で太るのは一緒に食べるもののエネルギー量に関係しています。お酒が入ると食欲が増してきます。消化液の出方もよくなります。そして、脂っこいものを特においしく感じて、エネルギーの摂りすぎになります。
多くの量を飲むと、肝臓がアルコールの分解を優先させるために他の機能が低下します。その低下する機能の一つにブドウ糖の放出低下があります。肝臓の中にはブドウ糖が結合したグリコーゲンがあり、血液中のブドウ糖が減るとグリコーゲンが分解されてブドウ糖が血液中に放出されます。この働きが飲酒によって乱れて、ブドウ糖の放出が起こりにくくなり、一時的に血糖値が下がります。多くの量を飲み食いしているにも関わらず、血糖値が下がって急に食欲が高まります。
このときに食べたくなるのが〆(しめ)の一品です。〆のほとんどは糖質が含まれたものです。これを食べて血糖値が上昇して満腹を感じます。アルコールは、こういった仕組みで、多くの量を食べられるようにするために飲むものでもあるのです。
また、飲酒をすると肝臓での脂肪酸合成酵素の働きが盛んになり、これによって脂質だけでなく、糖質も材料にして脂肪酸が多く作られるようになります。脂肪酸3個がグリセライド1個によって結びつくと中性脂肪となります。この中性脂肪が脂肪細胞の中に蓄積されていきます。これも飲酒をすると太る大きな原因となっています。