「おしょくじけん」とキーボードで打ち込んで変換キーを叩くと、最初に出てくるのは、これまでに変換したことがある用語というのが普通です。以前はリストに掲載されている順番に出てきて、上から何番目という感じで確定させていましたが、今ではAIが的確に(勝手に)選択してトップに出てきます。
通常なら“おしょくじけん”と打ち込めば“汚職事件”と変換されるのですが、食事に関する文章を作成していると“お食事券”が先に出てくるようになります。そのために、事件記事を作成しているときに、政治関係で“お食事券”と変換されたまま確定キーを叩いてしまったために、汚職で金銭ではなくて“お食事券”を受け取ったかのような妙な記事になってしまったことがあります。
ここまでなら笑い話、失敗談で終わるところでしょうが、その原稿を掲載する出版社の雑誌編集部が、そのままチェックせずに通過させてしまいました。その校正は原稿を書いた者の仕事ではなくて、編集者の仕事であるわけですが、たまたま編集部の用事があり、同じ特集記事に掲載される他の記事も見てほしいということになって、その指定された記事だけでなく、“ついで”の気持ちで自分の記事も目にすることになって、“お食事券”を発見しました。
偶然が重なったおかげで、間違った記事が出ないで済んだものの、打ち込んだ文字データが、そのまま掲載されるようになった時代には、常に起こりかねないことです。昔のように原稿用紙に書かれた文字を、編集者が手を入れて、それを印刷会社の印字の担当者が文字にして……という時代が懐かしい、よかったと言うつもりはないのですが、これからの時代も、そんな間違いがないことを願って、記録のつもりで書いてみました。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)