本人にとってよくなかった出来事を、周囲が慰めの言葉を積み重ねてみても、結果が変わるわけではありません。結果は変わらなかったとしても、本人の受け止め方が変わり、それを失敗とせずに前進するための糧にすることができるなら、声かけは意味があります。
もちろん、根拠のない励ましはすべきではありません。お笑い芸人の「やればできる」は、多くの人の心に響き、コロナ禍で苦境にある人への応援メッセージともなっています。この場合には根拠のない励ましであってもよいと思うのですが、発達障害児の支援を行っている中で感じているのは、根拠のない励ましは発達障害で苦しんでいる子どもを、もっと苦しめる結果になっていることを、嫌というほど見聞きしているからです。
お笑い芸人の「やればできる」という言葉の意味については、本人もインタビューで答えていますが、“やれば成功できる”ではなくて、“やれば成長できる”という思いが込められています。やってきた結果が思ったことと違っていても、それを自分の成長のためになった、今後の成長のためになると発想を変えて、今後に取り組むことが大切との思いから、「発想の逆転」というテーマを掲げました。
これは自分のためのことでもあって、大学進学で上京してから44年間、東京で暮らしていたのに区切りをつけて縁がない岡山に移住しました。人脈とコンテンツを武器に生き延びてきたことから、「地方に行っても活かせるからよい」と言ってくれた方もいましたが、人脈もコンテンツの近くにいて滔々と語るから重要性が伝わるのであって、オンラインでは通じにくくなっています。それはコロナ禍でオンラインが当たり前になっても変わらなかったことです。
移住の目的は、介護施設の運営の依頼があったからでしたが、途中でコンセプト変更で介護予防施設になり、最後は運動設備もあるアミューズメント施設になり、仕事を失いました。それでも移住した意味があるはずと発想を転換させるというよりも「発想の逆転」をして、悪かったと感じるような仕打ちは、実は自分にとって良いことをしてくれたのだと切り替えることができました。
その経緯と、どんな逆転だったのかということは、次回に続きます。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)