“断捨離”というと余計なものを処分する片付け上手のような印象があるのですが、もともとの意味は違っていて、2009年に発行された片付け術の書籍のタイトルに“断捨離”とあったことから一気に広まりました。
初めて書籍で断捨離が紹介されたのは1976年のことで、ヨガの解説書でした。断捨離はヨガの行法の断行(だんぎょう)、捨行(しゃぎょう)、離行(りぎょう)の三つを指していて、新たに手に入りそうな不要なものを断る、家にあるずっと不要な物を捨てる、物からの執着から離れるという意味です。
勿体無いというのは日本人の美徳のようにも言われるのですが、勿体無いから捨てない、他に活かすようにする、というのは断捨離とは違う固定観念です。その固定概念に凝り固まっている心を解放させて、身軽で快適な生活と人生を手に入れようという高尚な姿勢です。単純に片付けをすれば断捨離だというのは違っています。
断捨離は片付け上手のことではないというのは、断捨離の書籍がヒットして、テレビ番組にも引っ張りだこになっているときに、テレビ関係者にも話したのですが、そのときには聞いてももらえませんでした。なぜかというと、書籍にはコンビニで何でも手に入る時代に家に置いておくのは非効率ということが書かれていて、これは違うのではないか、と発言をしていたことです。
「万が一の災害があったときのことを考えて、備蓄をしておかないと」という考えは注目もされなかったのですが、2011年の3月11日を境に、世の中の反応が急激に変わりました。大地震の直後にコンビニに向かったら、すでに買い占めに走る人がいて、あっという間に店頭から商品が消えてしまいました。コンビニは自分の家の食料庫でも冷蔵庫でもなかったのです。
これを機会に、片付け上手の表現から断捨離が消えて、断捨離の教祖は海外に拠点を移して、世界的な片付けコンサルタントになっていました。ただ片付けて余計なものに囲まれた生活を改めるのではなくて、物にこだわらない生活をすることは、コロナ禍を経験して、重要性を理解する人が増えたのではないでしょうか。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)

