食品の表示に関する法律講師を担当していたときのこと、いわゆるネットワークビジネスの会社から会員と社員の法律講習を依頼されたことがありました。会員が違法なことを言って勧誘することがないように厳しい法律の規制と罰則について話すことと、会社の幹部には規制とともに対応法を伝えることはあったのですが、全社員に法律の話をしてほしいという依頼があったときには、そんなことをしても大丈夫かという思いがありました。
法律遵守は当たり前のことで、医薬品医療機器法(旧薬事法)で規制されている健康食品の効能効果の標榜は許されることではありません。会員に法律遵守で活動するように、伝えるというよりも、「うちの会社は、ここまで厳しく対応している」という姿勢を示すために実施しているという雰囲気の会社もありました。
法律講習だけと聞いて会場に行ったら、私の話の前に商品の有効性を伝える講習があって、この講習で知ったことを“堂々と”伝えたら法律違反になるということで、釘を刺すために呼ばれたのだなと感じたこともありました。
全社員への法律の講習を、それも厳しい内容での講習を求められたときに、以前に失敗に終わった講習について話をして、本当に大丈夫かと確認をしました。失敗に終わったというのは、法律規制を知ることによって「自分の勤めている会社は違反をしているのではないか」と感じさせて社内の雰囲気が悪くなったことを経験しているからです。
それでも「うちの会社は大丈夫だから」「そんな社員は1人もいないから」と社長に言われて社員講習をしたのですが、少し気になって実際には求められた内容よりも少し緩めの話をしました。それについては担当者から、感謝をされるくらいだったのですが、講習を終えてから1か月もしないうちにコールセンターの社員を中心に大量離脱が起こりました。
だから、やめておけといったのに、と言っても後の祭りで、あとになって聞いたところでは、離脱した社員は、前から会社の方針と法律遵守については疑問を抱いていたとのことでした。大量離脱の原因は、社員のほうではなくて、経営者のほうの問題だったということです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)