こだわりがあるのは発達障害児だけじゃない

発達障害の自閉症スペクトラム障害は、独特のこだわりを持っています。“おたく”的なこだわりだけでなく、生き方そのもののこだわりがあって、指摘をして直そうとするものではなくて、その特性を活かしてあげることが大事だと考えています。こだわりがあり、それを達成することに喜びを感じて、またやりたい、続けていきたいという気持ちは得意なことを伸ばしてあげるには重要なこととなります。
こういったこだわりは、発達障害児を支える人たちにもあって、成功例と自負している人たちの中には、この方法をすれば改善ができる、子どもの負担も親の負担も減らせると信じて活動をしている方々もいます。身勝手ではいけないからと、発達障害児を支えてきた親と交流を重ねることで同じ経験と体験をした人の声を集め、それを見える形に構築して、そして広めていかれています。その活動は立派なことで、是非とも続けてほしいのですが、それがすべてのことか、という疑問だけは自身に投げかけて、反芻して自信にしていってほしいということも願っています。
科学的なエネビデンスを重視して研究活動に取り組んできた立場としては、共通して起こったことが事実であるのかを確認してからでないと、怖くて他に伝えることができません。あまりに卑近な例かもしれませんが、過去に静岡県で緑茶を飲んでいる地域には、がんの発生が少ないものの、みかんを多く食べる地域では発生が多かったので、ビタミンではなく他の要素が関係しているという論拠から、テレビ番組にしたいという話があって、監修者の紹介を求められたことがあります。しかし、みかんを多く食べる地域で他のことがされていないのか、逆にリスクを高めることをしていないのかと確認することなく、みかんを犯人にすることはできないということで紹介も断りました。
これは私たち自身の反省点でもあるのですが、こだわることなく見る角度、切り口を変えて観察してみて、それでも間違いがない、同じ結果が導かれるということでないと、確実なこととして打ち出すことはできないという認識をしています。例えば精神的なケアで効果が上がった成功例も、他の要因がなかったのか、他のことをプラスしたらより効果があったのではないか、ということも考えて、そのことを学び、自分たちの方法をバージョンアップさせる方法についても検討していくべきではないか、ということを連携して進んでいこうと考えている方々に伝えさせてもらっています。